精密爆撃と絨毯爆撃

2012-12-03 21:01:29 | 軍事ネタ

今回のイスラエルと武装組織ハマスの紛争で、
ガザ地区にあるハマス幹部の家がイスラエル空軍機に空爆される映像。




この映像が撮影されたということは、恐らくガザ地区のパレスチナ人の中にスパイがいたということであり、
そのタレコミでこの住所が割れたかなんかだと思うが、攻撃の様子が鮮明に記録されている。
住宅地のど真ん中にも関わらず極力他への被害を拡散させないピンポイント爆撃である。
この様な家一軒のみを破壊する精密爆撃は、現代の発達した技術があってこそである。




第二次世界大戦は初めて爆撃機が大規模に投入され、制空権が戦略的な影響を与えた戦争である。
前線で戦う兵員だけでなく、その背後の都市や工場を大規模に爆撃し、
一般市民を殺傷、生活基盤を破壊、交通網の寸断、生産能力の低減、
そして継戦意欲の喪失といった効果を狙ってのものだった。

一都市を丸ごと壊滅させるには途方も無い量の爆弾の運搬を必要とするが、大型戦略爆撃機の登場によりそれは実現した。
絨毯を敷き詰めるように端から順に爆弾をバラまいていく手法は、その様子から絨毯爆撃と呼ばれる。
コース上にあるものは何もかもを破壊する無差別攻撃である。
連合軍により特に日本とドイツのいくつかの都市はこれにより壊滅的な被害を受けており、
明らかな戦争犯罪であると当時から非難されている。

しかし軍事施設や生産工場を狙ってのものであっても、
当時の爆撃技術では目標だけに被害を集中させる精密爆撃は難しく、
その低精度を補う意味である程度の範囲を焼き払う絨毯爆撃的な手法を採ることもあった。




現代では誘導ミサイルや誘導爆弾の発達により、高精度のピンポイント爆撃が可能となった。
これは目標だけを確実に破壊する精度を得たことにより、
昔のように低精度を補う意味で目標周囲を丸ごと壊滅させるような作戦が不要になったことを意味する。
精密爆撃で正確に目標を破壊することで、無駄弾の多い絨毯爆撃以上の効果を発揮できるのだ。

精密爆撃で戦略目標を達成できる以上、
人道上の理由から現代では市街地への絨毯爆撃を実施することはなくなったが、
大型爆撃機で戦術的に敵の戦線や基地などに絨毯爆撃を実施した例はある。


しかし精密爆撃が可能になったからといって誤爆が無いわけではなく、
例えば爆撃する目標の選定自体を間違えるケースがある。
敵性施設と思い爆撃したものの実は一般施設だったといった事件は多くあり、
また様々な理由から目標以外へ被害が拡散し一般市民に被害が出ることも多い。

今回のパレスチナ紛争やその他いくつかの戦争のように、武装組織が市街地へ潜伏し、
武装組織を狙った軍隊の攻撃や締め出しが結果的に一般市民に及ぶこともある。
また一般市民が武装組織を支援し、市民か構成員か曖昧な場合もあり、
一般市民への被害を完全に無くすということは未だに、たぶんこれからも実現が難しいだろう。

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2 コメント

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Unknown (Unknown)
2012-12-04 22:15:52
確かに動画主は空爆を待ってるね。
本当イスラエルは空爆好きやね。
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Unknown (ゆっきぃ)
2012-12-05 19:13:49
>>Unknown
IDFの空爆頻度といったら!
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