スコットランドの独立とウクライナ情勢への影響について

2014-09-19 20:16:29 | 軍事ネタ

スコットランドの独立を懸けた住民投票は結局否決されたね。
もしかすると本当に独立するのかと思ったけども、
リスクを伴う急激な変化を嫌う層もいるから、
一番妥当な結果だと思う。

でも、なぜイギリス政府はスコットランドの住民投票に合意したのだろう。
どうせ否決されるだろうと見てのガス抜きかな?
頑なに認めないよりは認めて現実を突きつけてやろう的な。
結果的には否決されたけど、「まさか本当に独立?」と現実感が出るほどには拮抗してたと思う。
イギリスは危ない橋を渡ったわけだ。

イギリスが住民投票を認め拮抗してたことで、
グレートブリテンは政情不安定であるという印象を世界に与えたし、
またウェールズやアイルランドなどの他地方だけでなく、
世界中に独立運動の気運が飛び火しかねない事態とも言えるのに。

ヨーロッパは元々都市国家や小国家の集合体である。
歴史的に様々な民族が入り混じり、日本と違って各地方に独立運動の火が燻っている。
バルカン半島がその最たるもので、実際に民族浄化を伴う激しい内戦が起きたり、
またスコットランドと同じくイギリスに関連して、アイルランドも独立を目指した武力闘争が有名だ。
スペインもイタリアもポーランドもロシアも同様の問題を抱えている。


一等の先進国ではもはや一地方の独立なんて非現実的である。
ヨーロッパといえどユーゴ紛争は後進的な地方での内戦だし、
ロシア周辺のこともソ連崩壊という特別な事情があってこそ。
それが世界的な常識であったはず。
しかし今回のスコットランドの件でそれが揺さぶられた。
するとどうなるか。

ヨーロッパ中に燻っている火種が再燃するかもしれない。
スペインだってポーランドだってロシアだって今は政情が安定しているからこそ、
独立を志向する地方の人々もどうせ実現しないと諦める風潮があったはず。
しかしそれが覆されるかもしれないぐらいの事態だったと思うんだよね。

よって万が一本当にスコットランドが独立しようもんなら、イギリスは近隣諸国から非難が集中していただろう。
しかし今回は否決されたといえど、それでも世界中の人たちに「もしかして」と思わせることができたのには変わらず、
長い目で見たらこの件はまだまだこれで終わりとはならないかもしれない。
飛び火する可能性が高いと思うね。


あとスコットランドを巡るこの事態はウクライナにとっても不都合となっている。
スコットランドが独立しても、イギリスは経済的な封鎖をやるかもしれないが、(ポンド使わせないとか言ってたようなやつ)
軍隊を動かしはしないだろう。
しかし現在進行形でウクライナは独立を目指す東部の親露勢力である東ドネツク共和国に軍隊を動かし、
テロリスト撲滅作戦を展開して実質の内戦状態となっている。

現ウクライナ暫定政府はEUの支援を受けて、今年初めに当時の親露政権に対してクーデターを起こした勢力で、
EUやアメリカが堂々と武力クーデターと弾圧を支援している今までの状況ですらちょっとどうかなと思われてたのに、
さらにスコットランドの独立意思を尊重したEUが、東ドネツクの独立を容認しないどころか武力弾圧をしているウクライナを支援するのは筋が通らない。
表向き対テロ作戦とは言ってもね。
ヘタすれば「東ドネツクでの住民投票結果をウクライナとEUは認めるべき」となる可能性も高い。
既に東ドネツク内で住民投票は実施されてロシア派の圧勝となっているが、ウクライナはこれを「茶番だ」と退けている。
だがスコットランドと同じく東ドネツクでの住民投票も尊重されるべき、という世論が展開される事態は今後大いに有り得る。
ウクライナが東西に分裂する危機が促進してしまってるのだ。

せっかくマレーシア航空撃墜事件によって世界中でロシア派に対しての非難が集中してたのに、
今度はEU派がウクライナ東部を抑えつける大義名分を失ってしまった。


海外の反応を漁ってたらイギリス人が、
「独立が否決された原因はスコットランド人しか投票できなかったから。
イギリス人も投票を許されてたらスコットランドは独立してたよ。」
(追い出したい人がYESに入れるから)
っていう書き込みが面白かった。

とりあえずはスコットランドの独立は中止となったが、
この事件の影響は今後各方面へ波及するだろう。

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