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おとらのブログ

観たもの、見たもの、読んだもの、食べたものについて、ウダウダ、ツラツラ、ヘラヘラ書き綴っています。

野田秀樹の演劇

2021-04-28 23:34:41 | 読んだもの
 長谷部浩さんの「野田秀樹の演劇」を読みました。長谷部浩さんは歌舞伎関係の本や劇評などもいろいろ書いていらっしゃるので、歌舞伎ファンの方も長谷部さんの名前はご存じの方が多いと思います。私も三津五郎さんの「歌舞伎の楽しみ」「踊りの楽しみ」、勘三郎さんと三津五郎さんのことを書いた「天才と名人」、菊ちゃんのことを書いた「菊之助の礼儀」を読んでいます。

 長谷部さんはご自身のWebsiteをお持ちで、野田さんのことを書いた本もあるなとチラ見しながら、そこまで「読みたい!」とは思ってなかったのですが、アウトレットブックとして半額で売ってたのでついポチッとしてしまいました。2014年出版となってますが、元々は2005年に出版された「野田秀樹論」の増補版だそうです。

 内容紹介です。
 約40年、演劇界を席巻し続けてきた野田秀樹。近年、多摩美大教授、東京芸術劇場芸術監督就任、話題作も次々に発表し益々進化する彼を、野田作品研究の第一人者が論じる、「野田秀樹論」決定版!

 ↑上を見て、野田秀樹ってもう40年も経つんですね、ってちょっと遠い目をしてしまいました。最初に見たのが大学を卒業してすぐくらいだったので、そのくらいになるんでしょうか。夢の遊眠社の関西初公演で、芦屋のルナホールで「野獣降臨(のけものきたりて)」を見ました。クロージングはみんなで「長崎は今日も雨だった」を合唱するのがお約束で、何となくまだ学生劇団のしっぽみたいなのがありました。それがあれよあれよという間に人気劇団となり、舞台装置や衣装もどんどん洗練されていき、「すっげー」と思いながら大阪公演はほぼ見てたような気がします。

 1992年に「劇団夢の遊眠社」を解散した後、ロンドン留学を経て、「NODA・MAP」となります。この本はNODA・MAP以降の活動を取り上げていらっしゃいます。引き続き、NODA・MAPも見てるんですが、大阪で拠点とされていた近鉄劇場や近鉄アート館が閉館してしまい、大阪での上演がなくなってからはしばらく私の野田さん観劇も途絶えます。もちろん、野田さんが「何かする」と必ず話題になるのですが、さすがに東京遠征するほどファンってわけでもなく、「あぁ、やったはるなぁ」って思いながらニュースを見ておりました。

 なので、本の中で取り上げられているお芝居も、見たのもあるし、見てないのもあるし、って感じです。それぞれのお芝居について俳優さんの名前やストーリーだけなく、演出の意図なんかも詳しく書いていらっしゃって、「見たかったなぁ」と思うのもいくつもありました。やっぱりお江戸ですよね。

 NODA・MAPだけでなく勘三郎さん(当時勘九郎さん)との歌舞伎も取り上げられています。「野田版 研辰の討たれ」と「野田版 鼠小僧」です。どうしても歌舞伎の箇所は熱心に読んでしまいます。「研辰」は勘三郎さんの襲名披露で、「鼠小僧」はシネマ歌舞伎で見ています。「研辰」の初演の初日は歌舞伎座でカーテンコールがあったそうで、野田さんも舞台に上がられたそうです。こういうのに出会えるといいですよね。

 「野田版」を見た後、「野田版ぢゃない研辰」も見ましたが、そんなに大幅にストーリーを変えてなくて「野田さん、そんなにめちゃくちゃしてないのね」と思った記憶があります。来月、シネマ歌舞伎が「野田版 研辰の討たれ」なので、見に行ってみようかと思います。

 「パンドラの鐘」以降、野田さんのお芝居には社会的・政治的メッセージが発信されるようになってるそうです。確かに「THE BEE」や一昨年の「Q」は私には難しかったような気がします。そういうのから目を背けちゃいけないんでしょうけれど、できればお芝居はお気楽に見たいと思ってるほうなので…。ただ、メッセージの伝え方が野田さんらしいというか、掛詞・同音異義語・比喩など日本語の面白さを駆使してて、「凄いなぁ」とひたすら感心しまくっています。今年はまた新作があるようなのでそれはぜひ行きたいと思っています。その前に、来月は「パンドラの鐘」がくるので、この本を読んだこともあり、ついポチッとしてしまいました。野田さんの演出ではないのですが。予習して臨みたいと思います。
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TIMELESS 石岡瑛子とその時代

2021-04-04 16:53:30 | 読んだもの
 河尻亨一さんの「TIMELESS 石岡瑛子とその時代」を読みました。ビジュアルページを含めると600ページ近く、本の厚みも3センチを超える大作です。ワタシ、基本、本は通勤電車の中でしか読まないので、文庫じゃない3センチ超の本を毎日持ち歩くのは結構大変でした。って、「じゃあ家でちゃんと読めよ」って自分でも思うのですが、家で読むというクセがついてなくて…。

 この本を読もうと思ったそもそもは、ワタシが「ずっと行きたい」と熱望していた東京都現代美術館(以下、現美と略します)での「石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか」展なんです。そのオープニングイベントで著者の河尻さんと現美のキュレーターの藪前さんのお二人によるトークショーがあり、それを見て何となく「この本、読まなあかんのかなぁ」と思ったのですが、厚さ3センチを超える大きな本なのでどうしようと迷っていたところ、どうも上京が叶わない様子になってきたので、本だけでも読んでみようかとお買い上げです。

 この現美の瑛子さん(河尻さんも藪前さんも“瑛子さん”と呼んでらしたので、ワタシもそう書かせていただきます)の展覧会、1月の時点で上京を諦めたので、全然ウオッチしてなかったのですが、会期終わりに向けて、いろいろな媒体で取り上げられ入場者が増え、1月末ごろから2月14日の会期終わりまでは当日券を買うのに150分待ちとかになってたそうです。「この人気にあやかって…」と次を期待したいところですが、展覧会は展示品を借りるのにいろいろ権利関係があるようで、特に瑛子さんのは映画製作の資料とか、映画や舞台の衣装とか、通常の絵を展示する展覧会とまたちょっと違うようで大変みたいです(←トークショーで藪前さんがおっしゃっていました)。

 この本、もともとは河尻さんがネットで2015年から不定期に連載されていたものを一冊の本にまとめられました。トークショーでおっしゃっていましたが、初稿はこの倍のボリュームがあったそうです。それを削って削ってこの量に落ち着いたとおっしゃっていました。

 非常に読み応えのあるとても面白い本でした。「展覧会に行きたい!」と何度も言ってたワタシなんですが、実は瑛子さんのことは全くって言っていいくらい、何も知りませんでした。じゃぁ、なぜあんなに「行きたい!」と熱望していたのか?自分でもナゾ?なんですが。たぶん、現美のサイトの予告を見て「資生堂の宣伝部の人」「コッポラといっしょに仕事した人」「アカデミー賞をとった人」というようなワードを見て、何か感じるものがあって「見なきゃ!」って思ったんだと思います。読んでびっくりしたのは、「紅白歌合戦」(審査員として)も「プロフェッショナル仕事の流儀」もご出演で、であればもう少し認識しててもよかったはずなんですが、そのあたりも全くスルーしておりました。

 ただ、まんざらご縁がなくもないんですが…。瑛子さんのお父様がウィリアム・メレル・ヴォーリズとつながりがあったそうで、ヴォーリズさんはワタシの母校の校舎を設計された人でした。それと瑛子さんが1976年に文学座の「ハムレット」の美術監督をされたそうで、「ハムレット」はワタシが生涯で初めて見たお芝居の舞台でした。この程度のことで「ご縁」っちゅうのも勝手な思い込みなんでしょうけれど。

 瑛子さんのキャリアのスタートとなった資生堂には7年しかいらっしゃいませんでした。1961年に入社し68年には退社されています。入社試験で「お茶くみはしません。グラフィックデザイナーとして採用してほしい。お給料は大卒男子と同じ」とおっしゃったそうです。このセリフもびっくりですが、それよりも天下の資生堂でも60年前は女性はお茶くみ要員だったのかということがびっくりでした。あ、ワタシ、資生堂の広告も好きで、銀座の資生堂本社で「資生堂の広告の歴史」みたいな展覧会にも行ったことがあります。前田美波里を起用したサンオイルの広告も見ました。そういえば、テレ東の美術展の番組で瑛子さんの展覧会が取り上げられた時、前田美波里さんも登場されましたが、相変わらずおきれいで格好良かったです。

 資生堂を退社後はご自分の事務所を持たれ、いろいろな広告にかかわっていらっしゃいます。有名なのはパルコと角川書店になるのでしょうか。ワタシなんかはパルコと言えば糸井重里のライトな感じの広告のイメージしかないのですが、その前にかなりメッセージ性の強いトンがった広告を作っていらっしゃるんですね。角川書店のもこちらにグイグイと迫ってきます。この本は、瑛子さんへのインタビューで瑛子さんが語った内容もあるし、その時にいっしょにお仕事された方たちのインタビューもあるし、いろいろな面から当時の仕事の内容や様子が窺い知ることができます。すごいアグレッシブな仕事ぶりです。もちろん才能もありますが、それ以上に瑛子さんの情熱がすごいなぁと思いながら読み進みました。

 1980年代に渡米し、ハリウッドやブロードウェイを舞台に美術や衣装デザインの分野で活躍、グラミー賞やアカデミー賞にも輝きました。ワタシは映画を見ない人なので、この映画のところを読むのはどうかなぁと思っていましたが、それこそ河尻さんが浜村淳よろしく“見てきたように”書いてくださっているので、「へぇ~~~」といちいち感心しながら、納得しながら読めました。映画とかミュージカルとかお好きな方なら、もっとワクワクしながら読めるかもしれません。

 アップルの創始者スティーブ・ジョブズもいっしょに仕事をしたいと熱望していたそうですが、スケジュールが合わずできなかったそうです。瑛子さんとジョブズって、どんなアウトプットになるんでしょうね。見られなかったのは残念です。

 とにかく圧倒されまくりの伝記でした。瑛子さんご出演のテレビ番組も見たことがないので、直接の声って聞いたこともないのですが、本の中から声が聞こえてきそうな、文字だけでは収まりきらないような、叱咤激励されているような本でした。読み終わった時、こういう本、30代前半までに読んでたら、ワタシももう少しヤル気がでたかもしれない、ってちょっと思いました。

 
 つい、勢いで展覧会の図録も買ってしまいました。一般の書店でも購入できます。でも、図録って“買った”ことで満足してしまうんですよね。
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演劇界2月号

2021-01-12 21:23:30 | 読んだもの
 雑誌「演劇界」の2月号は山城屋さんの追悼号です。読むところ多そうだし、先月の南座顔見世の舞台写真もあるので、久しぶりに買いました。

 山城屋さんの「追悼」ページの内容です。
 ◎追悼 坂田藤十郎
  多彩な当り役撰
   坂田藤十郎の芸    文=渡辺 保
   藤十郎と「近松座」  文=水落 潔

  坂田藤十郎丈を偲ぶ
   尾上菊五郎 松本白鸚 中村吉右衛門 片岡仁左衛門 
   中村梅玉 坂東玉三郎 片岡秀太郎 片岡孝太郎 
   片岡愛之助 中村亀鶴 松本幸四郎 市川猿之助

  師として、父として、祖父として
   中村鴈治郎 中村扇雀 中村壱太郎 中村虎之介

  一門が語る旦那の姿
   寿治郎 鴈童 鴈乃助 扇乃丞 鴈成 鴈洋 鴈大

  芸と人
   山田庄一 廓 正子 亀岡典子

  映画時代を辿る   文=児玉竜一
  『演劇界』で綴るバイオグラフィー

 山城屋さんと言えば、↑表紙になっている「曽根崎心中」のお初や「吉田屋」の夕霧、「先代萩」の政岡など女形のイメージが強く、立役と言っても忠兵衛とか「雁のたより」とか柔らかい立役の印象しかないのですが、「夏祭」の団七、「熊谷陣屋」の熊谷、「盛綱陣屋」の盛綱、「忠臣蔵」の大星や師直、平右衛門もなさっています。舞踊だと「道成寺」「藤娘」「隅田川」も。これまでのお役の舞台写真がたっぷり載っているのですが、本当に多彩なお役をお勤めになっています。

 少し前まで山城屋さんは苦手で避けていたところがありましたが、最近になってようやく「見よう」と思うようになってきたところでした。歌舞伎座新開場で見た「先代萩」の政岡はすごかったなと思います。何とも濃ゆいのですが、それが山城屋さんの魅力なんでしょうね。

 保っちゃんの文章を読むと、山城屋さんのすごさは武智鉄二の教育の賜物、原作第一主義・本文第一主義からくるものだそうです。次男の現・扇雀さんも義太夫狂言の時はまず文楽の台本を読み、文楽の太夫のお師匠さんにお稽古してもらうといつもブログに書いていらっしゃいます。そのわりに、お父様のような濃ゆさがないのですが。「言葉」なんでしょうかね? 以前、住太夫師匠の本でご子息二人がいずれも東京生まれの東京育ちで“訛り”があるので「お家でお父さんとお母さんともっとしゃべればいいのに」みたいなことを書いていらっしゃったような…。これってタカタロさんにも言えるんですよね。上方歌舞伎のお家なのに、訛ってるんです。

 スミマセン、話がそれました。いろいろな舞台写真を見ていると、見てみたかったなと思います。今なら、ちゃんと見られると思うのですが。玉手御前とか定高とか、濃密な空間が出来上がったんだろうなと思います。

 役者さんたちの追悼文、聞き書きなんですが、ライターさんたちがそれぞれの特徴?をよく捉えた書きぶりで、とても興味深いものでした。愛之助さんによると、2019年の永楽館歌舞伎にもご夫婦で見に来られたそうで、東京からだと本当に“遠路はるばる”だと思うのですが、ずっと通っているファンとしては「山城屋さんにも認めてもらえたのかな」と何だか嬉しくなりました。幸四郎さんと猿之助さんが結構しっかりと山城屋さんの芸を受け継いでいらっしゃるようで、ちょっと頼もしく思いました。猿之助さん、玉手御前を習っていらっしゃるのですが、それぜひ見てみたいです。「鳥辺山心中」のお染も習われたとか、「鳥辺山心中」って何度も見ているわりに「これっ!」っていうのにまだ当たったことがないので、そちらもヨロシクでございます。

 こうやって読むと、偉大な歌舞伎役者さんを亡くしたのだなと改めて思いました。ご冥福をお祈りいたします。

 後半の「2020年の歌舞伎界」というところも読み応えがありました。「最悪の1年」と書いてありましたが、こうやってまとめたものを読むと本当に大変な1年だったなと思いました。今年の年末には「復活した1年」と書かれるようにと祈ります。
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中村雅楽探偵全集

2021-01-11 17:38:50 | 読んだもの
 戸板康二さんの推理小説「中村雅楽探偵全集」です。戸板康二さんと言えば、歌舞伎や演劇の評論家として、「ちょっといい話」の名エッセイストとして有名ですが、推理小説も書いていらっしゃいます。それも、江戸川乱歩の熱心なお薦めで始められたそうです。「團十郎切腹事件」で直木賞も受賞されています。と、知った風に書いておりますが、↑文庫のあとがきを見て初めて知ったことばかりなんです…。

 歌舞伎役者でありながら名探偵「中村雅楽」は、土曜ワイド劇場で十七代目の勘三郎さんが演じていらっしゃるのを見た記憶があります。その後、文庫本も読んで「中村雅楽シリーズは読んだ」と思っておりましたが、どうもそれは傑作選のようなごく一部だったようで、雅楽ものは長編二本、短編八十数本に及ぶそうで、2007年に全作品を収録した「中村雅楽探偵全集」が創元推理文庫から刊行されました。オリジナル単行本では十三巻だったものを五巻にまとめたので1冊辺りがかなり分厚くなっています。

 2007年に出たものをなぜ今頃読もうと思ったのか? おそらく“歌舞伎”ってところに惹かれてなんでしょうね。ただ、この本自体どうやって見つけたのか、つい最近のことなのに自分でもナゾなんですが、戸板康二さんの本をネットで見ていて関連で出てきたのかなぁと。そして、雅楽なら昔テレビで見たなぁ、5巻もあれば当分読む本に困らないなぁと思って買ったんだと思います。でも、2007年の本なので、第3巻の「目黒の狂女」は品切れ、getできておりません。古書サイトか何かで探さなければと思っています。基本、読み切りの短編集なのでなくても全然困りはしないのですが、なぜかこういうところ“律儀”な性格?で、揃えなければと思ってしまうんです。

 さて、主人公の雅楽さん、勘三郎さんのイメージがあったのでてっきりモデルなのかと思っていたら、一本目の「車引殺人事件」の初出が昭和33年なのでそうではありませんでした。戸板さんご本人が書かれた「作品ノート」によれば、主人公の名前は中村歌右衛門の「歌」を酒井雅楽頭(さかいうたのかみ)の「雅楽」に変えて軽い気持ちで使い始められたそうです。高松屋という屋号とともに、この後この名前の出てくる小説を延々と書くとは思わなかったとも書いていらっしゃいました。

 歌舞伎役者が主人公なので、周りもいろいろな役者さんがとっかえひっかえ登場します。モデルを詮索されないように、ずっと同じ名前で登場することはありません。役者さんの名前を考えるだけでも大変だったのではないかと思います。中には「大塚の料亭の息子で、最近若手女形としてめきめき頭角をあらわし…」ってあって、これって絶対玉ちゃんよね、と思いながら読んでおりました。お古いことをご存じの方であれば、もっと「あ、これって、あの役者さんよね」っていう楽しみ方もできるのではないかと思いました。

 歌舞伎の演目も毎回のように出てきますが、ここ7、8年歌舞伎にずぶんと入れ揚げてきたので、結構わかります。自分でもそれが嬉しくて嬉しくて…。これは落語の歌舞伎噺でも同様で、演目とか登場人物とか関係図とかがわかるのでよけい噺が面白く思えるようになりました。

 1巻2巻5巻と読んで今は4巻「劇場の迷子」の途中なんですが、飽きることなく順調に読み進んでおります。短編なのですぐ読めるのが通勤のお供にはぴったりです。それにしても、よくこれだけ推理小説のパターンを考えられるものだと、今さらながら感心しながら読んでいます。普通、同じ作家さんの推理小説を読み続けると、その作家さんのクセみたいなものがわかって、結末が想像できるんですが、雅楽さんは毎度毎度文字通り「アッと」思わされることばかりです。読み終わるのがちょっと寂しいです。
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三島由紀夫歿後五十年

2020-11-25 23:49:50 | 読んだもの
 11月25日は「憂国忌」、三島由紀夫の命日です。亡くなって今年で50年となります。元・文学少女、「好きな作家は?」と尋ねられると三島由紀夫と答えることにしている三島ファンとしては触れなければなりますまいと思い、記事として残しておきます。

 50年前の割腹自殺の時は、さすがにまだ10歳だったので三島由紀夫のことは全く知りませんでした。ただ、学校から帰ってワイドショーでワーワー言ってたのは何となく映像として記憶があります。

 中学・高校時代は「日本文学の代表と言われるようなものは今読まなくてはいけない。大人になって『読んでない』って言うなんてすごく恥ずかしいこと」という訳のわからない強迫観念にとらわれており、よーわからんけどいろいろな本を読みました。と言っても、全てを網羅するなんて無理なことで、結局は自分が読みやすい本しか読んでなくて、非常に偏った読書でしたが。三島由紀夫の小説は中学時代から読むようになり、思想云々はまったく関係なく、エンターテイメントとして楽しく面白く読んでたと思います。最後の小説「豊穣の海」の「春の雪」なんて完全に恋愛小説でした。あ、でもこの小説で「輪廻転生」という言葉は覚えました。

 上の写真は私が持ってる三島の文庫本です。オレンジの背表紙の新潮文庫はほぼ揃えているというのがぷち自慢です。単なる文庫本コレクターみたいなものですかね。

 
 昔の新潮文庫は作家ごとに表紙のデザインが決まってたんですよね。この文字だけのすっきりとした表紙、好きでした。たぶん、三島のお好みなんでしょうね。いつぐらいからか、表紙がイラストとか写真とかになってつまらなくなりました。新潮文庫だと、谷崎は加山又造、川端は平山郁夫の装丁で、本当に「らしいな」と思っていました。今は文庫の種類も増えて、本屋さんに並べた時に目立たせないといけないのかもしれませんが、文豪の小説の表紙がちゃらいイラストとかだと悲しくなります。

 って、全然「歿後五十年」と全く関係ないことを書いていますが、ずっと好きだった作家さんが亡くなればそれなりに思い入れもあると思うのですが、好きになった時は既に亡くなっておられ、しかもいろいろある亡くなり方だったので、あえてそこには触れないで来たところはあって、感傷に浸るとかっていうのはありません。ただ、生きてらしたら、あれだけ才能がある人なので、どういう小説、どういう戯曲を書かれたのかなぁとは思います。玉ちゃんのための新作歌舞伎があったかもしれませんね。
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「技あり!」の京阪電車

2020-10-10 16:44:47 | 読んだもの
 「『技あり!』の京阪電車~創意工夫のチャレンジ鉄道~」を読みました。「関西人はなぜ阪急を別格だと思うのか」の著者伊原薫さんのご本です。同じ方が「京阪」のことも書いていらっしゃるのを見ると、“おけいはん(京阪乗る人おけいはん)”としては、やっぱり「京阪」の方も読まないといけないかなと思い、お買い上げです。こちらは2018年に発刊されました。

 内容紹介です。
京阪といえば「技術の京阪」「名匠」と呼ばれ、高い技術力を誇る鉄道会社。
テレビカーや座席が昇降する5扉車、空気ばね台車など、
日本初となる画期的な取り組みも数多い。
開業から100年余。そうして常に、きらりと輝く存在感を発揮し続けてきた。
そんな京阪電車の魅力を、数奇な歴史を交えつつ、
歴代の名車両や特徴的な駅・施設などを徹底紹介。

 ↑内容紹介を見ていただいたら想像できると思いますが「鉄道新聞社発行の本」でした。車両についてかなり詳しく書いてありました。8000系とか5000系とかいろいろあるんですね。特急の車両と普通電車の車両が違うのはわかるし、同じ普通電車でも古い、新しいぐらいはわかりますが、それ以上は特に意識したことはなく、なかなか奥の深い世界でした。来た電車を見て「これって何系?」と思うようになりました。でも、何系かはわからないんですけどね。

 特急のロマンスシートが一斉に向きを変えるのはあれはいいなぁと思います。たまに他の会社の電車に乗って、ロマンスシートだけど向きがバラバラっていうのを見ると、京阪みたいにバタッと変えたらいいのに、と思いますから。いつも見てるので、当たり前のように思っていましたが、なかなかないみたいですね。

 京阪電車の歴史っていうのは初めて知りました。苦難の歴史を歩んでいます。阪急電車の京都線って京阪だったそうです。戦争で阪急と京阪が合併させられ、戦後元の会社に戻る時に京阪電車には返されなかったそうです。衝撃でした。それ以外も、せっかく鉄道を作っても他社に譲るケースが何度かあって、悲運な会社です。大阪側のターミナルが淀屋橋っていうのも中途半端だと思っていたら、一応梅田の方へ延ばす計画があったそうですが、それもポシャリました。梅田が終点だとだいぶ使い勝手が変わるんですけどね。

 京阪にも「京阪百貨店」という百貨店があります。作る前に2年半、阪急百貨店の指導を受けたそうです。う~~~ん、おかしいです。全然違うんですけど。沿線住民の差なんでしょうかね?百貨店愛好家のワタシは百貨店というよりはスーパーのちょっと上、ぐらいに思っているのですが。あ、でも、高級スーパー(イカリとか紀伊國屋とか)ではありません。

 京阪電車に乗るようになって30年あまり、初めて知ることばかりで、面白い本でした。ただ、この本は2年前に発刊されたにもかかわらず1刷のままでした。ちょっと残念でした。
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関西人はなぜ阪急を別格だと思うのか

2020-10-08 20:29:53 | 読んだもの
 伊原薫さんの「関西人はなぜ阪急を別格だと思うのか」を読みました。

 内容紹介です。
 
 阪急といえば、個性派ぞろいの関西私鉄各社のなかでも「高級」「美しい」といったイメージが強い。
 さらに顧客満足度日本一の企業にも選ばれ続け、信頼のブランドを築いている。
 ブランディングという概念のない時代から、いかにしてそのブランドをつくりあげ、守ってきたのか?
 関西をはじめ全国の鉄道に明るい著者が、さまざまな視点から阪急の個性に注目。
 わかりやすいエピソードを交えながら、ビジネス書とはちょっと違うテイストで、「阪急ブランド」が強固である理由を浮かび上がらせる。

 交通新聞社から出ている新書なので、「阪急電車」がメインではありますが、内容紹介にもある「阪急ブランド」全体を取り上げています。ワタシの大好きな阪急百貨店もでてまいりました。2019年全国百貨店店舗別売上ランキング表が掲載されていましたが、1位は新宿伊勢丹、2位は梅田阪急でした。伊勢丹は2888億円、阪急は2507億円、3位の池袋西武が1840億円なので、上位2店舗の圧倒的な強さが際立っています。ちなみに大阪では大阪高島屋が1472億円で5位、あべの近鉄が1245億円で9位にランクインしていました。梅田阪急とあべの近鉄の売り場面積はほぼ同じにもかかわらず、売り上げは2倍となっていて、ブランド力の違いを見せつけています。

 関西ローカルのテレビ番組で「魔法のレストラン」という番組があるのですが、その番組で以前「梅田阪急vs あべの近鉄」というタイトルで対決させたことがありました(これが評判だったのか、それ以降もいろいろな関西の百貨店を対決させていました。これ、結構面白いです)。テレビ番組なので、ちゃんとどちらにも“花”を持たせるように良いところをいろいろピックアップされていました。面白かったのは、どちらの百貨店にも同じフルーツ大福を売るお店が入っていてその「客単価」が、阪急は600円台、近鉄は400円台ぐらいでした(正確な金額は忘れましたが、とにかく結構な差があったんです)。近鉄の店員さんは「阪急さんはお遣い物にされるお客様が多いから」と理由をおっしゃっていましたが、百貨店愛好家のワタシは「ちゃう、ちゃう、百貨店の格の違いやん、沿線住民の違いやん」とテレビの前でツッコミを入れておりました。いくら高級フルーツが入ってても、大福は大福、お遣い物って感じではないような気がするのですが…。

 阪急といえば小林一三なので、「逸翁自伝」と絡ませたお話もずいぶんと出てきました。ワタシ、昔に「逸翁自伝」そのものか、それを基にした小林一三の伝記なのか忘れましたが、小林一三さんについて書かれたものを読んだことがあるので、阪急電車の苦労した時代って読んでいます。阪急神戸線ってかなりの難工事で、その時にかかわったのが大林組でした。阪急百貨店の建て替えの時、最初は違う大手ゼネコンだったのですが、土地が軟弱か何かで途中で「できない」と言い出し、その後を大林組が引きうけたと新聞で読みました。「阪急と大林組は切っても切れない仲なんやんね~」と思った記憶があります。

 線路を作ってから電車に乗ってくれるお客さんを作るために宅地開発したとか、集客のために終点の宝塚に動物園や遊園地、宝塚歌劇団を作ったとか、ターミナルに百貨店を作ったのは日本初だとか、そういうよく知られたエピソードに加え、もちろん、鉄道の本ですので、電車(車両)のことも書いてあります。車両の内外に対する美意識がすごいです。電車に乗るのは好きだけど「車両が云々」というほど鉄オタではないのですが、読みながら、大学時代、阪急電車に乗ってた頃に漠然と感じていた「他の私鉄とは違うよね」っていうのを何度も再認識しました。

 本の帯の「家どこ?」「阪急沿線です」「ええやん!」っていう会話、わかります。ワタシ、これまでの人生で大学のたった4年間しか阪急電車(神戸線)に乗ってないくせに、「阪急電車で大学に通ってた」というプチ自慢?がまだありますから。

 この本、よく売れているみたいです。8月に第1刷が出て、9月に第2刷になっています。それだけ「別格」だと思う人が多いんでしょうね。
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Hanako「大銀座で叶うこと」

2020-09-28 22:28:49 | 読んだもの
 雑誌Hanakoの最新刊は銀座特集「大銀座で叶うこと」です。早速買ってまいりましたが、やはりこのコロナ禍の中、ずいぶんと紙面の構成が変わりました。これまでの銀座特集って紹介するお店の数で勝負、ひたすら数を競っているところがありましたが、今回は本当に少ないです。っていうか、どこに紹介してあるの?ってくらい目立たなくて、ひっそりとしています。そして、時節柄テイクアウトのお店も多かったです。今日が発売日で、取材は8月ごろに行われたようで、「新型コロナウイルス第二波か?」の頃と思われ、取材先も限られていたのかもしれませんが、ちょっと“肩透かし”な内容でした。

 それと先月号が京都特集でそれも買ってあるのですが、地図がないんです。住所しか載ってなくて、Googlemapで調べればすぐわかるとはいえ、不便です。Googlemapではピンポイントでそのお店しか探せません。雑誌の地図だと一つの地図の中に全て入っているので、お店とお店の位置関係もわかりやすいんですけどね。地図を載せるとお客さんが集中するからなんでしょうか。何かにつけ不自由な世の中です。
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お取り寄せ その6

2020-09-06 22:53:16 | 読んだもの
 「トラりんと学ぶ日本の美術」の第1巻と第2巻です。淡交社から出ており、書店で普通に買えるのですが、5月のStay Homeの最中に何気にネットを見ていたら、トラりんの直筆サイン本が淡交社のサイトで50冊限定で出ていたので、トラと聞けば買わねばなりますまい!とポチッとお取り寄せいたしました。

 サインはこちらです。
 

 サインに慣れていないのか、同じサインじゃないのがトラらしい?トラりんは“永遠の1歳”らしいので。

 本の内容は、トラりんが生徒、京博の研究員が先生になって、さまざまなジャンルの日本美術の歴史と魅力に迫るというもので、4巻シリーズで、現在、第1巻「王朝の雅」、第2巻「神仏への祈り」が刊行されています。第1巻では、大和絵などの都の絵画、公家装束、書といった、宮廷文化をはぐくんだ京都ならではの所蔵品を取り上げ、巻末では京博の成り立ちと歩みが紹介されていました。第2巻では、神社に納められた神への献上品や、仏教の広まりとともに生み出された仏像や仏画、仏典など、日本の宗教美術について、巻末では京博創立当初より続く文化財の修復が紹介されています。1歳?のトラりんにわかるようにというコンセプトのもと、非常にわかりやすく書かれてありました。とはいえ、1回読んだだけで全て理解できるわけはなく、これから何度か読んで、京博の展覧会に備えたいと思います。

 第3巻は「異国へのあこがれ」、第4巻は「暮らしのデザイン」というタイトルで順次刊行されるそうです。

 普通の書店の美術のコーナーに置いてあります。です。
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小公子

2020-08-08 15:57:45 | 読んだもの
 

 児童文学の名作「小公子」です。昔々に読みましたが、今回新潮文庫から川端康成訳で新しく出たので、「川端先生の翻訳ならば買わねばなりますまい」ということで元文学少女はお買い上げです。帯にも「川端康成の名訳でよみがえる児童文学の傑作」とありました。

 まあ、もちろん、川端先生ほどの方が一から辞書を引きながら訳されたとは思わず、どなたかが下訳されたのを先生が直されたんだろうと思っておりましたが、後ろの解説でいきなり「本書は共訳書である」とありました。秘密でもなんでもないそうです。であれば、表にもそう書くべきちゃうん?と思ってしまいましたが。野上彰さんという方との共訳で、他にも何冊もあるそうです。川端先生の名義が訳者と入った「小公子」はいろいろな出版社から出ているそうです。「川端康成」というブランド力なんでしょうね。

 といきなりドロドロ、モヤモヤしたことを書きましたが、「小公子」の物語自体はとても美しく、清らか、心洗われるものです。主人公のセドリックは人のことを決して悪く言いません。それも決して、無理くり、片目をつぶって良いところを探すのではなく、本当に心からそう思っているのです。周りの人たちもセドリックに影響されて、みんな気持ちの良い人になっていきます。読み進むうちに、こちらまで何だかきれいな心になるような気がしました(あくまで“気”ですが)。どのページを読んでもとても心地よく、自然と微笑みがこぼれてきます。不規則に波打った水面が静かに落ち着いていくような、そんな感じです。

 何かとウツウツとする日が続く中、でございます。

 
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