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つれづれなるままにパソコンに向かいて旅日記・斜読・よしなしごとを綴る

2007埼玉設監協主催「卒業設計コンクール」で東京駅を舞台にした働き方提案が最優秀賞

2017年07月14日 | studywork

2007「第7回埼玉卒業設計コンクール」埼玉建築設計監理協会主催

 ・・略・・ 主催は埼玉建築設計監理協会であるが、日本建築学会埼玉支所、埼玉県建設業協会、埼玉住宅検査センターに加え、日本建築家協会JIA埼玉、総合資格学院の協賛、埼玉県、テレビ埼玉の後援を受けるほど幅広い支援を受けており、埼玉卒業設計コンクールの定着ぶりをうかがわせる。これも、埼玉建築設計監理協会のご苦労の賜物である。聞くところによれば、このコンクールで最優秀賞に選ばれた卒業生は、大学院に進んでより建築デザインの研修に励んだり、著名な建築家のもとで実践的な修行を行ったりしているそうだ。埼玉卒業設計コンクールが建築家への登竜門の一つになりつつあることは喜ばしい限りである。
 今年度は以下の25点の作品が9大学から寄せられた。
・・略・・
 審査は公平を期すため、・・略・・ 優秀賞作品候補として3作品、埼玉賞候補として3作品、審査員特別賞候補として3作品を選考し、単純計算でそれぞれの候補作品を絞り込む。次いで、優秀賞候補者、埼玉賞候補者に作品の前でプレゼンテーションを行ってもらい、審査員とのあいだで質疑応答を行ったうえで、特別審査委員が最優秀賞、埼玉賞を各1点選び、単純得票で最優秀賞1作品(残り2作品が優秀賞)、埼玉賞1作品を選考する。
 ところが今年度は優秀賞候補の得票がほどよく分散してしまった。これは優劣がつけがたいほど応募作品のレベルが向上したともいえるが、むしろ、一歩ぬきんでたアイデア、力量を見つけることができなかったというほうが、当を得ている。上記の応募作品のテーマをみても設計意図が分かりにくいように、コンクールの主旨にある「次代を先取りした・・」作品は少なく、現状に対する妥協的解決や個々人の身近な問題への解答、あるいはこれまで繰り返し出されてきたアイデアの焼き直し、社会的な話題に誘発された思いつきなどが大勢を占めた。そのことが得票の分散や決選投票、あるいは審査員から最優秀賞無しの意見が出るなどの結果になったようだ。
 審査会の進行を務める私は審査員の意向を勘案しつつ、主催者と十分協議し、最終的に下記の最優秀賞を2作品(副賞は最優秀賞+優秀賞の折半)、優秀賞1作品、埼玉賞1作品、審査員特別賞候補4作品を選考した。おめでとう。
最優秀賞:Work live Office  および Subako in Urawa
優秀賞:もう一度つながりを求めて
埼玉賞:Subako in Urawa(最優秀賞とダブル受賞)
審査員特別賞:イナバウアーとお花の織り成す緊急時シェルター、Schizo cityスキゾシティ、ヴァルールのような、そこは都会にできた新しい散歩道

 Work live Officeは東京駅を舞台にした新しい働き方の提案である。東京駅に象徴されるサラリーマン達のオフィス街は働くことに特化された街としてつくられ続けてきた。ダークスーツに身を固めたサラリーマンは、しかし、朝早く郊外から満員電車に揺られて出勤し、ささやかな昼食で一日を乗り切り、夜になるとまたまた満員電車で家路につく。たまの花金に居酒屋でうっぷんを晴らしては、定年まで勤勉に働き続ける。こうした働き方への疑問を、働くに楽しむを加えた、あるいは楽しむや自由な生き方と働くが同等の重みを持つ、さらには今風の学生の考えともいえる楽しむに比重がかかった楽しみながら働くライフスタイルの提案である。丸の内側の東京駅は風景として保存し、線路上空から八重洲側の高層ビル街にのびるワークプレイスをデザインしていて、評価を得た。


 Subako in Urawaは最優秀賞と埼玉賞のダブル受賞となった。埼玉賞には、朝霞の自然再生をテーマにしたココロノイバショ、川口の商業施設などを組み込んだマンションをテーマにした重なる町が候補にあがったが、Subako in Urawaのアイデア、力量が群を抜いた。コンセプトの分かりやすさや表現がよく、最優秀賞も獲得した。しかも短期大学なので、2年間の成果が4年制を圧倒したこともあわせ、評価したい。テーマは、浦和に若手アーティストを育てる場所、Subakoの提案である。若い人が集まり、育っていくことが町の持続、あるいは活性化の基本であり、テーマ性も評価された。浦和は古くからの狭小住宅地と新しい再開発高層ビルの2面を持つが、森の広場をデザインし、緑の少ない浦和に潤いの場をも提案していて、これも評価された。

 もう一度つながりを求めては、神宮前を舞台に、刑務所や少年院を出た若者が社会復帰をしていくための厚生施設の提案である。疎外感を感じている初期段階から仲間と活動を共にする中期、町の人と交流する後期を経て、社会に復帰していくプロセスを空間化している。建築計画の確かさや建築技術のレベルは高く、表現も評価された。
 最優秀賞、優秀賞の3作品は、着想、建築計画、建築デザイン、表現に優れた作品であり受賞となったが、卒業設計のテーマを何にしようか考えてこのテーマにした、あるいはこのテーマにふさわしい場所を探してここを設計対象地にした、などのコメントが聞かれるほど、次代を先取りしたテーマでもなく、その土地のもつ場所性、ポテンシャルからテーマが考えられたわけでもない。それだけ学生を取り巻く環境が平穏であり、また彼らに明確な人生像がみえない時代なのかも知れない。中越、インド洋沿岸、玄界島、ジャワ島、能登と身近な災害が続くなか、帰ろう山古志・・や・・緊急時シェルターなど、災害対策、災害復興はもっと追求されてよいテーマであろう。自然復元を意図したココロノ・・、生き物との共生を目指したゆりかごの・・、今回はテーマ化されなかったが農業の持続、高齢社会なども日本が直面してる大きなテーマである。ぜひ、次代を先取りしたテーマに取り組んで欲しいと願っている。

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