歌の力

2013-01-08 00:00:33 | 音楽&本&映画
「レ・ミゼラブル」を観てきました。
ミュージカルを映画にした作品を見るのは今回が初めて。
出だしから歌で始まって、おっとこれはミュージカルだったと早くも忘れていた事実を思い出しました。
スクリーンに映る映像に普通に映画を観る感覚に陥っていたもので…。

通常の映画やドラマだと、ある場面の心情表現は仕種や表情で表すしかありません。
それでは伝えきれるものではなく、独白したり心情吐露する場面を作って言葉で説明する手間を加えます。
如何に自然にそのシーンを加えるかが脚本家の腕だったりします。
でもミュージカルはその手間がなく、物語の流れを損なう事無く、劇中で心中を歌い表現できるのだという事を知りました。

台詞はほとんど全て歌です。
歌でない台詞は一割に満たないのではないか。
舞台でやるミュージカルでも、もっとただの台詞があるのではないでしょうか?

「音楽」はご存知の通りその場面がどういったシーンなのか分からしめるのに最も有効な手段。
楽しいのか哀しいのか鼓舞するのか寂しいのか。
台詞がこの「音楽」の一種である「歌」であるという事は、さらにダイレクトに感情を伝え得る方法となるのですね。
どんなに名優の演技でも、「歌」による感情表現には敵わないのではと思わせる作りでした。

その「歌」は歌手の歌う歌の様に、歌として完結せねばならぬものではなく、台詞であるが故、小節を歌い切る事無く途切れて終えたり、声高らかに歌い上げたりして、観る者の心を揺さぶります。
演出は通常の映画より大袈裟ですが、隠す事無く心の中を赤裸々に表現するならば、見ていられない位恥ずかしいものであることは自明。
これが正しいのでしょう。

ミュージカルの舞台を観た事はありませんが、想像するに役者の表情は前の方の席でないとハッキリとは見えないのでは。
後方の座席で確認しようとしたら、双眼鏡とか必要なのではないでしょうか。
それが映画ならスクリーンいっぱいに大写しされるので、僅かな表情の違いから歌う最中に移り行く心中の機微まで、座席が何処だろうと読み取れます。

映画の得意分野、舞台装置では到底作ることはできない奥行ある景色や壮大な場面も、特殊撮影(今はCGか)で見せることができます。
音響も重低音とサラウンドが効果抜群。
ミュージカルと映画の良いところを合わせた作品になってました。
なかなかにお薦めですよ。
ストーリーについては触れないでおきます。