エピローグ、町中喫茶でナポリタン

2023-06-16 06:23:45 |  熊本の旅、多彩
万田坑からの帰り道は下り坂であることもあり、行きほど時間はかからず荒尾駅の手前まで戻ってきた。
荒尾駅の周りには食事できるところが無さそうだったので、万田坑への行きがけ、途中にお店がないか探しつつ歩いていた。
帰り道、見つけた三軒のお店のどこで食べるか連れと相談し、一番駅に近い喫茶店を選択。
そこは駅前というには少し遠い場所にある、昔ながらの喫茶店だ。
店頭に代表メニューを模型でディスプレイしてる。
コーヒー豆も量り売りしているよう。
入ってみると、老夫婦らしき二人がやっていた。
そんな店だから注文するのもそれっぽく、ナポリタンにした。
出てきたのは思ったよりしっかり炒められたナポリタン。
スパゲッティに水分少なめに絡まったソースが初めての食感だった。
おいしくいただいた。

万田坑で予定の観光地巡りはすべて終了だ。
荒尾駅から電車に乗り、久留米駅へ。
帰りはさっくり新幹線。
新大阪行きの「さくら」に乗り換え、帰ってきた。
お昼で切り上げたので、大阪には夕刻に到着でき、夜は自宅でゆっくりできた。
今回の旅は、阿蘇を見たいなという大雑把な行き先選択から、その周辺観光地を結んだのだが、意図した訳ではないのに目先がコロコロ変わる結果になって毎日新鮮だった。
なかなか贅沢な旅になってしまったが、とても充実した思い出が作れたな。

旅行から帰ってきたら、「ああ、GWも終わったなあ。また仕事かあ。」と悲嘆に暮れるのかと思っていたが、意外にも普通に日常生活に復帰できた。
いや、復帰していなかったのかもしれない。
家に帰って見返す大量に撮った写真のチェックが面白く、見ればその旅先にいつでも戻れた。
まだ旅してる気分で過ごしてきた気がする。
その旅もこの記事で終わり。
でも良いのだ。
また新たな旅に出かけよう。




世界遺産、三池炭鉱万田坑

2023-06-14 06:28:33 |  熊本の旅、多彩
翌日は旅の最終日。
この日の訪問先はひとつだけ。
世界遺産「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼,造船,石炭産業」の構成資産のひとつ「三池炭鉱万田坑」である。
熊本と福岡の県境にある。
熊本駅から電車で鹿児島本線を北上し、最寄りの荒尾駅で降りて徒歩で向かった。



ここも歩いて行くところではなくて、なかなか遠く、しかも上り坂。
まだかなーと40分くらい歩く。
しかし道路の左手に煉瓦の建物と鉄骨のタワーが見えると、ここまでの退屈は雲散霧消。
入口までの道の途中にも気になる被写体が現れ、急に足が遅くなる。



ようやく入口に到着すると、その日は何故か見学無料の日だった。
どうぞーと門で言われてパンフを手に取る。
修復工事中の建物もあり、工事現場に入るような気分。



ここは鉱山跡ではあるが、どこかの金山銀山跡のように、坑道内を見学できる訳ではない。
稼働していた当時の建物がいくつか残っていて、それらを見学させてくれる。
建物は内部に入れるところと入れないところがあった。



建物の前にはどういった用途で使われていたか書かれた説明書があり、当時に思いを馳せる。
江戸時代からあるような金山銀山の鉱山跡はいくつも行ったことがあるが、炭鉱はたぶん初めてだ。
炭鉱って金山銀山と比べると、坑道が崩れやすそうで怖い。
閉所恐怖症だから落盤なんて事態を想像すると、・・ああいやだ。



昔、大脱走という映画があった。
第二次大戦中、ドイツの捕虜収容所から地下に穴を掘って逃げる物語で、穴を掘っている時に土が崩れて生き埋めになったのを助け出すシーンがある。
見ていて自分がそうなることを想像し、怖気を振るったことを思い出した。



鋼鉄の櫓下には坑道があって、縦穴で下に降りていく場所があった。
上から覗けるところまでは柵があって近づけなかったが、暗い穴は不気味だ。
そんなところで働く機会がなくて良かった。
今後もありませんように。



心の奥底でそんな事を無意識に考えつつ、でも目の前の遺構には興味津々。
歴史を刻んだ存在に、放置されていた時間が蝕む風化という化学反応の結果は、私の心を惹きつけてやまない。
一朝一夕にはできるものではない佇まいを次々と見せてくれる。



ひとつ残念だったことがあった。
鉱山で使われていた電気機関車を展示する準備が進められているようで、この7月から公開予定と書かれていた。
車庫と思われる建物の横にブルーシートで覆われたそれらしき車両が見え、訪問時期が合わなかったなあと嘆息。



最後に見学したのは巻揚げ機のある建物。
ぶっとい鋼鉄の綱がでっかいボビンに巻き取られていた。
この綱で吊り下げられて、地下深くに運ばれていったのね。



見学を終え、敷地から出ようとしたら係員のおじさんに呼び止められた。
ガイドさんについて周るのが一般的なのか、我々はガイドなしで見学してたのを見ていたようで、「説明を聞いていないようだからひとつだけ覚えて帰って」と言われて教えてくれた。
地下足袋(じかたび)とは炭鉱で働く人の足元の安全のために作られたものだそう。
読みは「じか」だが炭鉱地下で働く人のためだから「地下」の足袋と名付けられたんだって。
地下足袋ができるまでは草鞋を履いてたそうだ。




KYUSHU RAILWAY part4「A列車で行こう」

2023-06-12 06:25:53 |  熊本の旅、多彩
三角港に戻ってくる頃には雨は小降りになっていた。
とても高い所に天井のついた歩道を駅の方へ歩く。
三角駅の窓口でネット予約していた帰りの切符を手に入れ、改札を抜けた。
帰りはここ三角線を走る観光列車「A列車で行こう」に乗るのだ。
観光列車はこの旅二つ目。
観光列車天国の九州に来たからには旅程に合う場所と時間に走る奴はみんな乗ってやるのだ。



三角駅は終着始発駅である。
どんな風にやってくるのか、列車のやってくる熊本駅方面を観察していたが、ふと反対側の引き込み線に目をやると、だいぶ離れた場所にもうやってきていて待機していた。
観察方向を変更。
やってくるのを待つ時間も楽しい。



三角線はローカル線なのに、ホームから見える駅の待合室は待ち人でいっぱいだ。
みんなA列車に乗るのかな。
出発時刻が近づき、A列車が入線してきた。
二両編成だ。
駅の場内放送でA列車は全席指定で指定席券がないと乗れないよ、しかも満席だよと案内していた。
はいはい、指定席券持ってます。



乗り込んだ車内には音楽がかかっていた。
A列車で行こう、だ。
おー、内装洒落てるぞー。
荷物も置かずに写真撮影を始めてしまった。
列車は逃げないぞと思いつつ、ハッと目を止めたその時に撮った方がいい写真になるという過去の経験から、目写りが新鮮な内に撮る。



そうこうしている内に出発。
ひとしきり撮影してようやく荷物を置き、座席に座った。
しかし、A列車に乗ったらデコポンハイボールを飲まねばならない。
落ち着く間もなく席を立つ。



かっこいいバーカウンターでメニューを確認。
やっぱりデコポンハイボールだな。
連れは日向夏サイダーを注文していた。
座席に戻って早速味を見る。
さっぱりした柑橘の甘味と酸味の後ろにウイスキーの苦味があって、これはなかなかいけるでないか。
ちびちびと味わう。



列車は有明海に沿って走っており、朝に行った長部田海床路の横にきた。
観光客らしき人影が何人か沖の方まで歩いていたので、干潮で道路は露出しているよう。
有明海は干満差が激しいところで有名。
潮が引いて砂浜に独特の模様を描いて見えるところもあった。
その日は雨だったが、夕焼けてたらきれいなんだろうな。



ちびちび飲んでたハイボールが無くなり、再び車内の写真撮影に出向く。
空いてるソファ席なんかにちょっと座ってみたり。
満足して自席に戻ると、車窓の景色はもう街中のものだった。
熊本駅が近い。
乗車時間は「かわせみ やませみ」より短いたった40分だった。
観光列車なんだから、もっとゆっくり走って時間をかけてもらってもいいのにな。




雨の海、イルカウォッチング

2023-06-10 17:40:12 |  熊本の旅、多彩
長部田海床路往復はなかなか忙しく、気の急く観光だったが、この後の予定はのんびりしたものである。
三角駅から三角港まではぶらぶら歩いてすぐ。
ここから船で天草諸島の中にある小島、松島へと向かう。
松島から出る船に乗ってイルカウォッチングをするのだ。



港の浮桟橋前でボーっと船を待つ。
今にも雨が降り出しそうな曇り空の下、それらしい船がやってきた。
浮桟橋上で乗船手続きをして船に乗り込む。
船の前部は室内に座席があり、後部は屋根だけある外部デッキだった。
一応壁代わりに透明なビニールシートで幕をおろしてあった。
こうした船に乗る時、寒くなければ風に当たって航行を楽しみたい派である。
最後部の座席を確保。



他のお客さんも乗って、ほぼ満席状態で出航。
松島まで20分のクルーズ。
最初ゆっくり走っていたが、桟橋から充分離れるとスピードアップした。
なかなかの高速船で、背後の海にはスクリューの押し出した海水が山の様に盛り上がり波となって拡散していく。
エンジン音がやかましいが風は気持ちいい。



大きな橋をくぐり、島々が左右を後ろに流れていく。
20分ってなかなか頃合いの乗船時間だ。
短く感じることもなく、退屈に思うこともなく松島港に到着。
到着したところにはレストランやカフェ、ショップの入った商業施設があり、イルカウォッチングの船が出るまでに昼食を食べておくことにする。



お土産屋さんの中にあるフードカウンターでパンにチキン(前夜食べた天草大王)を挟んだ奴とレモンビールを、連れはハンバーガーとジュースを購入し、芝生の庭のパラソルの下、のんびりと食した。
空は曇ってるが、なんだかリゾート気分だ。
目の前には天草五橋のひとつが架かっていて、走ってる車はノロノロと進み渋滞してるよう。
祝日になってどこもかしこも人出が多くなってるみたい。



さてイルカウォッチングの出発時刻となった。
桟橋に行くとその時間は二隻出るようで、なかなかの人気だ。
少し大きめの船が先発し、我々の乗る船は後発。
乗ったのはこの島まで乗ってきたのと同じ船だった。
席に座って待ってると雨が降り出した。
まあ、屋根があるから大丈夫。
また白波を蹴立てて走り出した。



行き先はよく分からないが、イルカがよく出没するエリアがいくつかあるらしい。
どうやって探すのかは教えてくれなかったが、90%を超える確率で出会えるそう。
海域に着くまでに松島に来るのに乗った時は配られなかった救命胴衣が配られ、装着。
その差は後で分かったのだが、イルカウォッチングはただ座ってるだけでなく、舷側から体を乗り出してイルカを探したりする人がいるので、誤って落水した時用であるらしい。
対象海域までは少し距離があるようで、何十分もただただ全速で航行。
島から離れたところを行くので何も見るものはなく、退屈である。
と、急にエンジン音が下がったと思ったら周りにたくさん船がいた。



到着したようだ。
その辺りには6~7隻くらいだろうか、先発した船以外にも別の港からやってきたのだろう見覚えのない船がいた。
どの船も救命胴衣を着た見物客が舷側に鈴なりになってる。
大人気だな。
すると「いるいるー。」という声が聞こえ、みんな海に注目。



おー、ほんとだ。
船のすぐ近くに海面から背びれを出しては潜るイルカが見えた。
一頭二頭とかではなく、十頭とか二十頭くらいの数いるように見える。
遠く近くに現れ、船はイルカのいるところいるところに舳先を突っ込んでいくようだ。
たくさんの船が入り乱れていてぶつからないか気になったが、業者間できちんと調整されているのだろう、近づき過ぎて危ないと思う事は無かった。



さて肝心の写真撮影だが、これがうまくいかない。
イルカが海面に出てくるタイミングでシャッターを押すのだが、その時はすでに潜り込んでいて尾びれしか写っていない写真が山とできた。
潜ったあと次に顔を出すだろう場所を予測して待ち構えるのだが、そこに現れてはくれず、海面しか写っていない写真も山とできた。
これは動画でないと綺麗に姿を捉えるのは無理だな。
海面に背中を見せるだけでなく、ジャンプしてるのを二度ほど見たが、あんなのが撮れたらいいなあと夢想することしか出来ない。



みんな大喜びであそこにいるここにいるとスマホで撮影していた。
雨もお構いなしに屋根の外に出て見ていたのか、小さな女の子はびしょ濡れになっていた。
30分くらいそうしてイルカと戯れていただろうか。
帰る時間となり船は海域を離れだした。
島に戻る船の中、みんな再び着席し、撮れた写真や動画のチェックに楽しそうだ。



松島港に戻り、まずはコーヒーを飲んで一休み。
ほとんど座っていただけだが、それでも疲れたな。
雨が降ってるのでみんな外にいられず、商業施設の屋根の下は混み混みだ。
お昼を買ったショップが少し人が少なかったので、三角港へ帰る船の時刻までお土産を物色して時間を過ごした。


最短観光、長部田海床路

2023-06-08 07:06:18 |  熊本の旅、多彩
三角線の住吉駅で降りて、道草した先のお話。
道草と書いたが、道端で小石を蹴ってぼんやりしていたわけでなく、とても忙しく行き来した。
行き先は長部田海床路(ながべたかいしょうろ)という所。
漁業者のため有明海に向かって長い道路が設けられているのだが、堤防のように高さがあるものでないので、干潮時は姿を現し、満潮時は海に没する道なのだ。
道には電灯が等間隔で立っているので、満潮時は海に電灯の柱が並ぶ不思議な景色を見せてくれるという。

車やバスで行くところのようだが、バスは便数が少ない。
しかし三角線が近くを走っている。
後の予定に間に合うよう、最寄りの住吉駅から歩いて行って帰ってくることができないか、地図を見て計算。
片道にかかる時間は15分とみた。
住吉駅着が9:28で9:30出発とし、次の列車の住吉駅発が10:23だから、10:20までに戻るとして50分ある。
だから、長部田海床路では20分見学に使える計算だ。
でもその後、念のため長部田海床路をネットで調べると、徒歩22分とあった。
うーむ、そんなにかかるのか?
その日の満潮時刻は7:58。
満潮の二時間前後が見頃らしいから、ちょうどいい時間帯に当たっている。
これは行くしかないだろう。
とにかく歩いてみて、時間がかかるようなら途中で引き返せばいいと行程に組み込んだ。

で、住吉駅で下車。
時間が無いのに住吉駅の列車交換を撮影してしまったので出発は9:34、歩き出した。
いつもより早歩きで渋滞気味の国道を進む。
10分も歩けば身体が暑くなり上着を脱ぐ。
途中から道路のすぐ右は海になる。
むむ?、頃合いの時刻、電信柱らしき柱が水に沈む場所がやってきた。
これか?
でもガイドブックの写真と雰囲気が違う。
スマホで現在地を調べると、まだもう少し先だった。
さらに早足で歩く。
むむ?、人が海沿いにいるのが見える。
あそこか。
果たしてそこが目的地、長部田海床路だった。

<こんなところ>


到着時間は9:54だった。
うーむ、あんなに早歩きしたのに20分もかかった。
ネット情報の方が正しかったようだ。
てことは10時には帰途につかねばならず、見学時間は僅か5分。
サクサクっと撮影して、帰途に着いた。
帰りは行きがけに到着したかと間違えた場所でほんの少し写真撮影し、あとは歩く歩く。
予定通り10:20に駅前に到着したが、駅へは交通量の多い国道を横断せねばならない。
もう少し行けば押しボタン式の横断歩道があるのだが、少し距離がある。
うまく車の途切れる時があるのではと左右を見続けるがその時はなかなか訪れない。
あ、向こうから乗る列車が時間通りやってきた。
ぬあー、間に合うのか。
と、うまく左からも右からも車が途切れる瞬間がとうとうやってきた。
すかさず横断。
住吉駅はホームのみある無人駅だ。
入線した列車の後ろの構内踏切を横断し、向こうのホームへ。
無事間に合ったのだった。


KYUSHU RAILWAY part3「キハ147」

2023-06-06 06:23:04 |  熊本の旅、多彩
熊本市に泊まった次の日の遊び先は天草の方である。
JRで三角(みすみ)駅まで行き、三角港から船に乗るのだ。
三角駅までは三角線というローカル路線を利用。



熊本駅の三角行きホームに行くと、これまた古くて素敵な気動車が待っていた。
「キハ147」と書いてある。
JR九州の普通列車の塗装は赤色のイメージがあるが、この気動車は白と青だったから昔の塗装色なのだろうか。



バリアノンフリーな乗降部。
座席がなくやたら広い運転席後部エリア。
座席は固定のセミクロスシートで、ドア横のロングシート部に座った。
窓ガラスは長年の勤務に疲れて真っ白である。



天井には金網で包まれた扇風機があり、その下の壁には赤と白のボタンがあった。
ブリキの扇風機に付いてるような丸い飛び出しボタンである。
飛び出ている方(赤だったと思う)を押したら回り出しそうだ。
押してみたかったが他にお客さんがいたのでその勇気はでず。



目の前にあるドアの開閉は同時に開かず、右側が開くのも閉じるのも一拍遅れる。
私もこんな味のあるじいさんになりたいものだ。
エンジン音はグノォーって感じか。
線路は平坦なところを走っているので、エンジン音が高くなることはなし。



途中の住吉駅で道草するため一度下車。
住吉駅は列車交換可能な駅で、上り列車が前からやってきた。
やってきた列車はこれまでの旅行中によく見た赤い気動車だった。
三角線の普通列車は乗ってきた古いタイプのものばかりかと思っていたが、そうでもないようだ。
うまいこと古いのに乗れたな。



道草の後、住吉駅に戻り、再び乗った気動車も同じタイプの奴だった。
同じ席に座ると、見覚えのある車内広告が同じ場所にあったので、さっきと同じ奴が行って戻ってまたやって来たのかと思ったが、そんな時間はなかったはず。
天井の扇風機をよく見るとこちらの方が微妙に新しい。
先に撮った写真と同じ場所を比較すると備品が違っていて、兄弟車だと分かった。



二度もうまく古いのに乗れるとはラッキーだ。
列車は有明海を右に見て海岸線を走ったあと内陸に入り、再び左側に海が見えると三角駅に到着である。
三角駅は終着駅。
ホームでアイドリングしている列車に名残を惜しんで改札を出た。




熊本の夜、熊本市電

2023-06-04 12:34:56 |  熊本の旅、多彩
熊本市にも路面電車が走っていた。
いろんな町に旅しているが、結構各地に路面電車というのは残っているのだなあと気付かされる。
その日と翌日の宿は熊本駅から路面電車で何駅か乗った先の、花畑町にあるビジネスホテルに連泊である。
駅前から最初に乗った電車は欧風の2両連結のものだった。
驚いたことに車掌さんが乗っていた。
車掌さんがいたのはその電車だけだったので、時間帯によるのか、2両連結タイプだからなのかは不明。
普通は後ろ乗り前降りなのだが、車掌さんが後ろの車両に乗っているので後ろからも降りられ、混んでたので助かった。



宿に荷物を置いて夕食に街へ出た。
これまでの3泊は夕食付きだったが、この熊本市での2泊は自分で夕食を食べる場所を探さねばならない。
花畑町は繁華街で飲み屋は選び放題と思っていたが、GWの祝日で行く店行く店予約で満席。
我々以外にも夕食難民が何組も熊本の街を彷徨っているようだった。
6軒目くらいでようやく空席のあるお店に出会えた。



店内の雰囲気は洋風なのだが、メニューは魚メインの居酒屋。
魚メインなのに、辛子蓮根や一文字ぐるぐるなんていう食べたことのない熊本の郷土料理を頼んでしまった。
辛子蓮根はもっと辛いのかと思ったが、カラシは多分味噌と合わされていて程よい辛さ。
一文字ぐるぐるはどんなものか知らずに注文した。
出てきたのは茹でた青い菜葉を固く巻きつけて酢味噌を乗せたものだった。



食べるとパリポリと歯応えよく、酢味噌がよく合って美味しい。
菜葉はワケギだそうだ。
あと食べたのは天草大王。
流石にこれはなんだと聞いてみたら、熊本の地鶏だそう。
旨味たっぷりで美味しかった。



翌日も祝日。
夕方、遊び先から市内に帰ってきて、宿に一度戻るかどうか検討。
昨日と同じ状況になるのは目に見えていたので、熊本駅内にあるお店で早い時間に食べることにした。
そこは焼酎の「白岳しろ」を扱う炉端焼のお店で、しろのキープボトルが壁にいっぱい並んでいた。
しろは全国区の焼酎なので何度も買ったことがあるが、球磨焼酎の一つで熊本のお酒ということまでは覚えていなかった。
銀しろ、金しろなんて種類があった。
金しろのロックを注文したのだが、とても口当たり良く、水割りではないのかと聞き直したくらいだった。



食べ終えて市電で宿へと帰る。
滞在中合計四度乗ったが、市電の運転手、車掌さんはどの方も皆親切だった。
車内が混雑していると、後から乗る人が入れるよう奥に進んでくれるよう放送し、カーブが近づくとどちらに曲がるか教えてくれ、停車場では降り損ねている人がいないか確認してくれる。
これは一例で、その他料金支払い時の注意点などお客さんが困らないよう、きめ細やかに情報を与えてくれる。



三度目の乗車時、経験したことの無い、驚き感心した出来事があった。
雨の路面が素敵で、運転席のすぐ後ろで前方の写真を撮っていた。
するとバックミラーに映っていたのだろう、信号で停車中に運転手さんが「ドアの前のスペースに入って撮影しても大丈夫ですよ」と声をかけてくれたのだ。
いやいや、そこまで気を遣っていただかなくてもと恐縮してしまった。
熊本市電、安心して乗れる素晴らしい交通機関である。




KYUSHU RAILWAY part2「かわせみ やませみ」

2023-06-02 06:28:09 |  熊本の旅、多彩
阿蘇観光を終え、阿蘇駅すぐ近くのトヨタレンタカーに車を返す。
ここからは再び公共交通機関での移動となる。
阿蘇駅のすぐ前には道の駅があり、列車の時間までお土産や地元の物産を見て回った。
駅前に道の駅って珍しい。
GWということもあるのだろうけど、結構な賑わいだった。



さて阿蘇駅からはその日の宿泊地である熊本市へ豊肥本線で向かう。
この路線には「かわせみ やませみ」という観光列車が走っていて、これに乗るのだ。
これまで観光列車に乗ったことがなく、いつか乗りたいと思っていた。
九州に旅することに決めて調べてみると、九州には観光列車がいっぱい走っていることを知る。
どれかに乗れないかと時間をうまく合わせて旅程を組んだのだ。



早めに改札を通り、ホームで今か今かと列車を待つ。
やってきた。
渋い深緑色の車体だ。



ホームにいる人みんなの視線を浴びて、バシバシ写真を撮られ、なんだか誇らしげに入線してくるように見えるのは気のせいか。
二両編成で後ろの車両は紺色だ。
ドアが開きいよいよ車内へ。



座席に着くと出発した。
座席は豪華で厚みのあるファブリックが使われ、心地よく座っていられる。
連れが道の駅で買っていたプリン(また?)を食べ、人心地。



車両は気動車。
観光列車なのでスピードを上げて走行することはなく、エンジン音はおとなしかった。
アテンダントの方が乗っており、乗車記念のパネルを持って席を周り、写真撮影してくれたりする。



さて、車内の撮影へと向かおう。
二両連結の列車は車両によりデザインが違う。
カウンターがあったり、子供用の小さな座席があったり、車内の装飾がとても楽しい。



窓を向いた席やソファ席にも座席番号がついているが、誰も座っていない。
コロナのせいだと思うが、ネットで指定席の予約を取る時、その座席は指定することが出来なかった。
通常時は予約できるのだろうか。



なんにせよ、ありがたい事態。
お客さんが座ってたらこんな風に撮れなかったからな。
他のお客さんは大人しくて、こんな風にあちこち写真を撮ってるのは自分くらいだった。



撮り歩いていると車内放送がかかり、この先にスイッチバックがあると言う。
そうなんだ、豊肥本線にもあるとは知らなかった。
阿蘇の外輪山を越えるのに、急な斜面を上り下りする必要があり設置されたそう。



立野駅手前で運転手が車両内を歩いて前後入れ替わるのだと言っていた。
いよいよ近づいてきて、撮影途中の近くのソファに座り窓外を見ていたが、自分の知っているスイッチバックの規模ではなく、行ったり来たりの距離が異常に長かった。
見たことあるのは駅を挟んで両端が見えるくらいの距離のもので、ここと比べれば圧倒的に小規模だ。
それだけ標高差があるってことだな。



さて、ひと通り撮り終えたので次のお楽しみ。
飲み物食べ物記念品を売っているカウンターに行き、焼酎のロックと辛子蓮根のスナック菓子を購入した。
熊本駅までの残りの時間、自席で飲んで食べて過ごした。



乗車時間は1時間15分ほど。
いや楽しかった。
もう少し長く乗ってても良かったな。




パトランプ ブルー、中岳第一火口

2023-05-31 06:26:50 |  熊本の旅、多彩
砂千里から駐車場に一度戻り、そこから道路沿いの遊歩道で第一火口があると思われる方へと歩く。
初め見た第四火口を上から覗けそうな位置にも遊歩道があるが、今は通行禁止になっていた。
上から見ても面白いだろうに、残念。



第一火口の方の駐車場の方が広かったようだ。
火口へ向かう道の途中には火山ガスの流出状況を知らせるパトランプが回っていた。
その日は青色で、今のところ安全のよう。



火口の手前は広場になっていて、物々しいシェルターが幾つも建てられていた。
急な噴火があったとき、降ってくる火山弾などの岩を避けるために入る待避壕である。
どれくらいの大きさの岩まで守ってくれるのだろう。
屋根や壁はすごい分厚さだった。



緩やかな斜面を登り、火口とようやくご対面。
火口内は吹き出した噴気で白く煙っていた。
水蒸気がほとんどだと思うが、白いガスが
火口内に充満してる感じで、底の方が見通せない。



風向きがいいのかあまり匂いはせず。
深いところは見えないので、とりあえず火口の上の方の岩を観察。
少しづつ移動しながら上辺を撮影していたら、火口内が晴れてきた。



おー、見えるようになったぞ。
結構な深さだ。
ここの火口壁も場所によって色も形状も異なりいろんな表情を見せている。



ガスを吹き出してる様子も観察できガスには白いのと、白いのは白いが青っぽいガスも出てたりするんだと気付いた。
うーむ、一瞬にしてこんな穴を作ってしまうんだから、マグマってのはすごいエネルギーを持ってるんだなあ。
地震とかもそうだけど、普段は気付かない地面の下には巨大なエネルギーが潜んでいるんだと教えてくれる。



見学を終え、中岳を後にした。
車で阿蘇駅へと向かう。
前日とは逆方向に阿蘇パノラマラインを走っていると、また草千里ヶ浜の手前で渋滞に会う。
そんなに長いものではなくて助かったのだが、その後がびっくり。
草千里を過ぎると今度は反対側の車線が渋滞していた。



行っても行っても車が現れる。
パノラマラインの赤水線を左に分けて坊中線に入っても渋滞は続いていた。
3kmくらいだっただろうか、ようやく車列が途切れた。
毎度そうなのかどうか分からないが、阿蘇山上を目指すなら阿蘇駅から上る坊中線を使わずに、南側の吉田線を使う方が良さそうである。


広大な砂場、砂千里

2023-05-29 06:24:44 |  熊本の旅、多彩
神気に触れた後は、白川水源を少し見学し、再び阿蘇パノラマラインへ。
次の目的地は中岳火口である。
徐々に標高を上げ、阿蘇五岳の懐へと入っていく。
昨日狐と出会った牧場を過ぎ、草千里ヶ浜への道を分けるT字路を右に曲がる辺りから周りの景色は茶色くなり生命の気配が薄くなっていく。



広い駐車場に車を止めて、阿蘇山上ターミナルと書かれた建物へ情報収集へと向かう。
そこから火口へはシャトルバスも出ているが、自分の車でも行けるようだ。(徒歩も可。)
帰りの時間が自由にできるので、自分の車で向かう事にした。
そこからは通行料がかかるので、入口でパンフレットを渡してくれた人にお金を渡そうとすると、その人はこれ以上先は火山ガスが漂っている可能性があるため、呼吸器の弱い人はここで引き返すようお知らせする係の人だった。



危険なところだという認識を持ち、気を引き締めて向かう。
料金所はその先にあり、普通車800円を支払い通過。
数百mも走れば一つ目の駐車場だった。
駐車待ちで並ばねばならないかもと心配があったが、幸い空きをすぐに見つけて駐車できた。
どこに何があるか分からず、まずは駐車場から近い方の遊歩道の伸びる先へと向かうことにした。



木製の遊歩道はあるが、外れて大地の上を歩いてもいいようなので、立ち入り禁止のロープが張ってあるところまで近づく。
そこは第四火口で、横に開いた裂け目から中を覗けるところだった。
すごい迫力だ。
横に歩くに連れ見える範囲が変わり、一つの火口内でも岩の表情が全然違うことを知る。



その向こうは赤茶けた灰黒色の大地が広がっていた。
とっても広い。
砂千里ヶ浜と名付けられた所だった。
草千里ヶ浜は知っていたが、砂千里なんてのもあるんだ。
歩いているとなにやらふわふわした踏み応え。
地熱で温かいような感じがしたのだが、それは気のせいだろう。



不毛の大地のように見えるが、ところどころに盛り上がりがあり、何やら生えている。
こうした場所にまず侵入してくるのはイタドリやコイワカンスゲだそう。
葉っぱが赤っぽいのだが、イタドリってこんな色だったっけ?
土壌成分の何かが影響してるのかもね。



広大な砂場の向こうに低い丘があり、登れるようなので行ってみた。
丘は細長く、もっと先の方まで行けて多分下に降りれるのだろう。
向こうの方から砂千里を歩いてこちらに戻ってくる人達が結構いる。
行ってみたかったが、やってきた駐車場の方向に見える噴煙が気になる。
この先どれだけ時間がかかるか分からないので、こちらはここで切り上げて、向こうの火口に行くことにした。