落差

2017-08-17 00:22:27 |  常念山脈縦走
山行き六日目の続き、最終話。
上高地バスターミナルで新島々行きのバスを待つ間、リンゴのソフトクリームを食べた。
なんかこぼれ落ちそうなくらい大盛りにしてくれた。
こんなもんなのかな。
サッパリしたお味で美味しかった。
お昼を食べるタイミングが松本駅以降にしかなく、正午をずいぶん過ぎた中途半端な時間になるのだが、これで少しはお腹も持つだろう。



新島々までの道は乗鞍に遊びに来たその昔良く走ったもので、その景色が久しぶりに見られると喜んだが、出発してしばらくするとそれが難しい事が分かった。
バスの不規則な揺れがゆるやかに眠気を呼び寄せ、これは眠ってしまうなと思ったら、その通り国道に出る前にはもうグッスリ眠ってしまっていた。
時々目を開きはするものの心地良い眠気は、目覚めて景色を眺めたい欲求より魅力的で、またすぐ夢の中へ。
あっという間に新島々バスターミナルに着いてしまった。



行きがけは電車の接続がよろしすぎて撮影する機会が得られなかったが、帰りは時間がある。
新島々から松本までは松本電鉄上高地線だ。
ホームに止まってたアルピコカラーの電車と、やってきたオレンジ色の電車を撮影。
オレンジ色の車両はどうも昔走っていた車両の塗装を復活させたもののようだ。
うまいこと行き合わせたな。
折り返し運転するみたいなので乗り込んだ。



上高地からバスに乗ってきた乗客はたぶん全員が乗り込んだはず。
2両連結してるため座席は空き空き。
松本に近づくに連れ乗客は増え、松本に着く頃には座席は埋まり、座れない人も。
それくらいの乗車率だった。
バスで眠ったからか電車内で眠気はやってこず、ローカルな乗り心地と車窓の景色を味わう事ができた。



松本駅でホームに出ると気温が上がってるのを感じた。
街に降りて来たんだなあ。
それでもまだ涼しい方だ。
帰りも特急しなの号で名古屋まで。
電車がやってくるまでだいぶ時間があるが、重い荷物を持ってウロウロする気にならず、駅弁を買いホームでぼーっと待つ。
一つ向こうの線にあずさ号が止まっていた。
こちらは新宿行き。
乗ったことはない。
ようやくしなの号が入線してきた。



車窓を後ろに飛んでいく景色もおかずにしてお弁当を食べた。
もうすぐ旅は終わり。
名古屋、大阪と梅雨時の蒸し暑い空気が迎えてくれた。
新幹線の改札内は大きな荷物を持つ人が多く旅気分が残るが、在来線に乗り換えると周りは日々通常の生活をしている人ばかりである。
でかい荷物を持ってる私がとっても目立つ。
また忙しい毎日に戻らねばならないのね…。
夕方の通勤ラッシュが始まる前に電車を降りれてよかった。


三回目にしてしっかり味わった

2017-08-14 22:54:52 |  常念山脈縦走
山行き六日目は金曜日。
朝、寝ている時に暑くて開けた窓から小鳥の声がよく聞こえ目が覚めた。
起床時間までまだ時間があるのでその度眠ったのだが、目覚ましが鳴って外を見たら日差しがあった。
あれー?
窓から顔を出し空を見ると青空だ。
あれあれー?、曇り雨の予報だったのに。
快晴だ。



それなら早起きしてその辺を散策したのになあ。
もったいない。
なんで天気は悪くなるとしか思わなかったんだろう。
もしお天気良い場合という選択肢を翌日の計画に必ず含めておくべきだ。
俄然観光にやる気を出し、大正池へのバスは8:25のに絶対乗るべく、荷造りを終えてから朝食に向かった。



食後7:50にフロントに行ったら係りのお兄さんが不思議そうにチェックアウトの手続きをしてくれた。
みんなもっとゆっくりするのが常なのだろう。
外に出ると空は真っ青、燕山荘の朝と同じくらいスッキリと晴れ渡っていた。
河童橋に行くと穂高連峰が遮るものなく目の前にあった。
こりゃいい。
今日これから穂高方面に向かうのか、大きなザックを背負ったパーティのメンバーが嬉しそうにカメラを向けていた。



昨日見えなかった焼岳もスッキリ。
河童橋を手前に入れたお約束の構図の写真を撮り、バスターミナルへ。
松本までの切符と新島々までのバスの整理券を手に入れ、大正池に向かうべく予定通り8:25の沢渡行きのバスに乗った。
上高地には過去二回来たことがある。
一回目は小学生の頃だったろうか、上高地の景色の記憶がもうない。
沢渡の駐車場へシャトルバスに乗って移動した時、やたら冷たい風が窓から吹き込んできて寒かった記憶があるだけだ。



大正池に着く頃には早や白く薄い雲が空の半分を覆っていた。
予報が晴れに変わったけど、ずっと晴れていてくれるわけではないようだ。
大正池の立ち枯れの木はほとんどなくなっていて、ずいぶん印象が変わっていた。
少し記憶の残る二回目の訪問は社会人になってすぐの頃。
乗鞍話しで書いたユースホステルに泊まった翌日にグループで一緒に訪れた。
その時は枯れ木がもっといっぱい立ってたと思う。
その時の記憶も数場面しか残っていない。
新しいホテルでも建ててたのか、杭を打ち込む音がずっと響き渡りやかましかった。



バスターミナルに向けて遊歩道を歩く。
昨日の徳沢、明神からの道と同じく広く平らな歩きやすい道だ。
中学校の修学旅行だろうか、上高地の自然を説明してくれるガイドさんが引き連れた班分けされたグループといくつもすれ違った。
上高地を歩いた記憶をキチンと残すべく、昨日今日としっかり歩き回って、ほぼ全ての見どころを抑えられたのでは。



上高地といえば大正池と穂高連峰の眺めだろう。
そちらが有名なので湿原があるとは知らなかった。
田代池という名で、小さなものだが浅い池というか川というか、澄んだ水の流れの向こうに鮮やかな緑の絨毯が覗く。
遠くから窺い観賞するところ。
近づけないが故に手の届かない楽園を覗き見るような眺めだった。



田代橋までやってきた。
バスターミナルまであと15分ほどだ。
予約したバスの時刻までまだ間があるので、上高地観光を完全なモノにするべくウェストン碑を見学に行った。
こうして日本アルプスを登山で楽しめるようになったのもウェストンさんのおかげである。
南無南無。




荘→山荘→小屋→ヒュッテ→ホテル

2017-08-13 19:37:49 |  常念山脈縦走
山行き五日目の続き。
明神から河童橋への最後の行程がなかなかきつかった。
平たい道だが距離がある。
いや、行動時間がこれまでになく長くなったからだな。
背中の荷物がどんどん重くなる。
途中で2度も休憩してしまった。



ようやく河童橋に到着。
もう少し歩いた先にある上高地アルペンホテルが今夜の宿。
料金後払いのホテルである。
こんなとこに登山の格好をした汗臭い客がうろついてもいいのか?
まあ、ハイカーズルームなんて設けてるんだからいいのだろう。
教えられた部屋番号のハイカーズルームには4つベッドがあった。
山小屋の2段ベッドと同じような造りだが、一つのベッドに二人が割り当てられることはなさそうだ。
各ベッドには浴衣が一つ置いてあった。



使用するベッドは早いもの勝ちだとフロントの人が言っていたが、もう17時だというのに先客はいなかった。
Webで予約した時は残数わずかだったはずだが、キャンセルでも入ったのだろうか、結局後から到着した人はおらず、私が部屋を独占することに。
やっぱりシーズン前の平日はいいなあ。
注意書きが何も無いので、フロントに浴衣とスリッパで館内を歩いていいか聞いてしまった。
歩いていいって。
よかった。
お風呂に入って、サッパリとした浴衣だけで夜を過ごせた。



翌日の予定を決めるのに、館内の貼り紙情報が役にたった。
上高地の宿の宿泊者限定で大正池までのバス代を200円にしてくれるらしい。
歩いて往復しなくてよくなった。
さらに新島々行きのバスに乗るには整理券がいるとの情報をゲット。
危ない危ない、そうなのか。
事前にどの日のどの時間のバスのが欲しいといえば発券してくれるらしい。
なのでバスターミナルで整理券を取得した上で大正池へのバスに乗ることにした。



幸運続きのお天気も、明日は曇り雨の予報がフロントに表示してあった。
傘で歩けるくらいの雨でありますように。


上高地の奥地から

2017-08-12 20:55:36 |  常念山脈縦走

山行き五日目の続き。
徳沢に降りると芝生の広場があって、Tシャツのお兄ちゃんと白いワンピースのお嬢さんがベンチに座っていた。
下界に降りてきたんだなあ。
広場の横にある徳澤園の食堂でお昼を食べることにした。
メニューを見ると生ビールがあるではないか。
これは飲むしかない。
明るいテラス席を確保して、無事の下山祝いとひとり乾杯した。



食事は手作りカレーをいただいた。
ゴロリと入った肉片を噛みしだき、ビールをやる。
それなりに汗をかいたので、喉の渇きを潤す感が素晴らしい。
食後にはホットコーヒーを飲んで、しばしゆっくりとくつろぐ。
これを山中でやりたかったのだが、いろんな条件が揃わないと難しいんだと分かった。
まあここもまだ山中といえば山中だ。
こんな心地良い時を得られたのだから、贅沢は言うまい。



周りを歩いてる人はほとんどが登山者だ。
みんなどこに登ったのかな。
さて河童橋まではまだ距離がある。
汗の乾いた背中にザックを負い直し、再出発した。
平たく歩きやすくなった道の側を流れる川の水がきれいだ。
上高地色である。



梓川に出、治山工事をしている川原の横から後ろを振り返ると、谷間の向こう遠くに大天井岳が見えた。
あそこから歩いて来たのね。
歩いてきた山が見えたのはここが最後。
明神までの道は車の通れる広さの未舗装道が、平たく明るい樹林帯の中を延々貫いている。
さすがにこの道を歩く人は山中より多く、前から時々歩いてくる。
みんなどこに登りに行くのだろう。



明神に着いて明神館のベンチでザックを降ろし肩を休めていると、後ろからも次々と下山者がやって来て追い抜いていく。
蝶ヶ岳から降りて来る人はほとんどいないはずなので、槍沢や涸沢からだろう。
穂高側は夏山シーズン前でもそれなりに入山者がいるようだ。
明神池の方へ入って行くと登山者は数を減らし、観光客がほとんどになった。
登山者は梓川の左岸を黙々と歩くようだ。
私はザックを背負った観光客だから右岸を歩くのだ。



外国人の方が結構な割合でいてちょっとびっくりした。
日本にやって来る外国人観光客はすごい勢いで増加してるそうだから、こんな山奥にも遊びに来るんだね。
しばらく行くと緑に囲まれた鳥居が現れた。
山中に大きな鳥居があると変な感じだ。
まず穂高神社奥宮にお詣り。
穂高神社?
そういえば山行き初日、穂高駅での時間待ちで穂高神社にお詣りしたのを思い出した。
無事に帰ってこれたお礼をしておいた。



明神池の見学には300円が必要。
澄んだ水を湛えた池で、背後の緑の映り込みや流れ出す川の流れが意外と絵になる、というか面白い写真になった。
池の辺りはそうでもないが、奥に入っていくと足元が悪く、ほぼ登山道である。
観光で来た人は難渋しそうだ。
撮影に予定より時間を使ってしまった。










「ながかべやま」を下る

2017-08-11 11:05:19 |  常念山脈縦走
山行き五日目は木曜日。
未明に降っていた雨は起きる頃には止んだようで、窓からは青空が見えた。
朝食時、TVのデータ放送で天気予報を確認すると、曇り晴れマークに変わっていた。
山中を歩くのは今日が最後。
山に入る前、縦走中の天気予報は雨がちだったが、毎日翌日の予報は良い方に書き換わり、トータルすれば晴れがちなお天気のもと歩くことができた。
雨を覚悟して旅に出た方がお天気良い日が多いような気がする。
なんにせよ幸運である。



外に出ると槍は雲の中だが穂高は北、奥、前と頂きが見えた。
稜線は相変わらず風が強い。
しかし長塀山の樹林帯に入ると風はなくなった。
草木で囲まれているのに昨日まで顔にまとわり付いてうるさかった羽虫がいない。
まったくいないわけではないがとても少ない。
これまでの道と何が違うのだろう。



今日の行程は上高地まで下るのみ。
汗をしたたらせて歩く必要はなさそうだ。
青空が覗き、風はなくても涼しい樹間を時々ガスが通り抜け、爽やかだ。
小さな池が現れたり、今朝の雨を含んだ瑞々しい花がたくさん多種類咲いていて、脚が進まない。
今日こそはゆっくりと撮影してやるぞ。
しかし虫がいないだけでこの爽快感。
困った羽虫たちだった。





















下るに連れ植生が少しづつ変わり、見られる花も移っていく。
そんな楽しかった長塀山の道も終盤、傾斜が増すと笹が林床を覆い出す。
すると花は見られなくなり、もうサクサク歩くしかなくなる。
今日は下から登ってくる人とたくさんすれ違った。
この週末にかけて歩くのだろう。
徳沢まで1kmの看板が見える頃、下からショベルカーかなにかが工事している音が聞こえてきた。
文明世界へおかえりなさい。




Hütte(ドイツ語)

2017-08-08 23:55:11 |  常念山脈縦走
山行き四日目の続き。
樹林帯を歩いている時、今いる場所が分からず焦って歩いたからか、14時前に蝶ヶ岳ヒュッテに到着してしまった。
小屋前にベンチがあるので、また生ビールを飲みたい欲求が湧き起こってきたが、ちょっと風が強すぎるな。
雨は降っていないが、雲行きと強風が外でゆっくりしたいと思わせない雰囲気を作っていた。
受付で宿泊申し込みしたが、まだ部屋の掃除が終わっていないらしく、案内をしばし待たされた。
生ビールは売ってなさそうだ。
飲むか飲むまいか悩む必要がなくなり良かった。
待ち時間を利用してヒュッテのすぐ隣にある蝶ヶ岳山頂へ行った。
とてもなだらかな頂上だった。



ここの寝床は二段ベッド形式。
やはり宿泊者は少ないようで、二畳分のスペースを割れ当てられた。
定員は4名だ。
そんな時に泊まりたくない。
カーテンを閉めて身体を拭いた。
身体の拭き方についてこれが一番という方法を覚えた。



初日、燕山荘ではコンビニで手に入れたアルコールを含んだサラサラシートで清拭。
アルコールが蒸発するヒンヤリ感は気持ち良かったが、かいた汗をほんとに落とせたかというとその感触はイマイチ。
寝巻き用に持ってきたスウェットがベタベタと脚に貼り付き気持ち悪かった。
二日目常念小屋ではこれまでと同じくタオルに水を含ませ固く絞り身体を拭いた。
やはり寝るときにスウェットが貼り付く感があった。
今回は水で湿らせたタオルでまず拭き、そのあとアルコール入りサラサラシートで拭いてみた。
ふむ、だいぶ貼り付き感が小さい。
方法はなんであってもたくさん汗を拭き取る行為を行うほどさっぱりできるようだ。
まあ、当たり前の結果か。



外の風は収まらず。
小屋の周りの花を撮影しようかと思ったが、この風では花が揺れて思うように撮れまいとあきらめた。
そうするともうやることはない。
夕食まで寝床で昼寝?夕寝?した。
山小屋泊りはここが最後。
外でお昼寝するというのは条件が揃わないと難しいんだなあ。
思い返すに蝶槍がただ一つのお昼寝ポイントだった気がする。
横にはなれないが平たい岩に背をもたせれば、さぞ気持ち良く眠れたことだろう。



ヒュッテの宿泊者は前日よりさらに減って7名。
内5名が夕食を頼んだようで一つのテーブルを囲んだ。
お話好きらしいご婦人二人組みがいらして、同卓の他3名に出身やら登山ルートをあれこれと聞き出し、賑やかな食卓となった。
二日目三日目と歩く日が続くと疲れも溜まり、隣に人がいないことも気にならなくて、夕寝したにもかかわらず夜はまずまず眠ることができた。




雨後の草花

2017-08-07 21:45:06 |  常念山脈縦走
山行き四日目の続き。
だいぶ標高が下がったのか樹林帯に入った。
また小さな虫が顔の周りをプイプイと飛び、まとわりつくようになった。
この山域は本当に虫が多い。
これだけ標高が高いところで虫に悩まされたことはこれまでないのだが。
雨も鬱陶しいがこの虫たちよりまだマシだ。
雨上がりだからかこれまでで一番鬱陶しい。



今日はお弁当を買わずに小屋を出てきた。
縦走も後半、持ってきた行動食非常食もまるまる残っている。
日帰り登山だと朝はパン食で腹持ち悪く、お昼までにお腹が空きだし行動食にいくばくか手をつけるのだが、山小屋に泊まると腹持ちのいいご飯を朝からたっぷり食べるので行動食を食べたことが無い。
まるまる残して帰るのも業腹だ。
明日は上高地に下るだけだし、これらを昼食代わりに食べることにした。



樹林帯は所々切れて草原になっていた。
草原と言うかゼンマイみたいな葉を広げる前のシダ植物の森だ。
花もたくさん咲いていていい所。
まとわりつく羽虫さえいなければ。
花咲く草原で写真を撮りつつカントリーマアムとナッツをつまんだ。
少量食べただけで満足した。
しんどくはあるもののさして歩いてないってことか。
毎食これだと厳しいだろうが荷を軽くゴミを少なくできる。
次回の縦走時も参考にしよう。



特徴のない道が続き、地図を見ても今どこまで来ているのか分からない。
予定より遅れているのか早いのか。
お昼を食べるのにザックを降ろした小さな草原の外れに2592ピークの標識があった。
ようやく現在位置判明。
下り坂の斜面にポチポチとニッコウキスゲが咲いている。
山肌の緑を見て高山では新緑の季節なんだと思い出した。
小さな池の畔を通過し歩いて行くと蝶槍と思われるトンガリが見えた。



蝶槍は風の吹き抜ける気持ち良いピークだった。
再び森林限界の上に出て、見晴らしも良し。
風があるからか鬱陶しかった羽虫は少なく、ザックを降ろしてしばし落ち着いて涼む事ができた。
後で後悔したのだが、もっとここでゆっくりしたら良かったと思える、この日一番の居心地良さであった。



お天気は雲は流れるもののすっかり回復。
しかし樹林帯を抜けた稜線は風がどんどん強くなり、遮るもののなくなった登山道は右から左へと常に風に晒されていた。
蝶ヶ岳へはなだらかな二重稜線を行く。
褐灰白色の砂礫とハイマツの緑が視界を占める。
縞模様のコントラストが面白い。




雨中を行く

2017-08-06 20:40:39 |  常念山脈縦走
山行き四日目は水曜日。
山小屋での朝食時、TVのデータ放送で天気予報を確認すると、曇り雨。
今日こそは雨に降られるだろうとスパッツをあらかじめ装着し玄関を出た。
するとチリチリと雨粒が顔にあたった。
あれれ、まだ雨は降っていないと思っていたのに。
カッパを着るまでもない霧雨なのでそのまま歩き出した。
ら、雨脚が強まった。
こりゃいかんとザックを降ろす。
カッパを着て再出発。



さて、今回からレンズを防滴仕様のズームレンズに変えた。
雨に濡れても大丈夫と謳われている。
夏休みは縦走と決めた後、購入を決意。
これまでカメラは防滴仕様だったが、レンズがそうでなかったため、山で雨に降られるとポーチに仕舞われほとんど出番がなかった。
しかも単焦点レンズばかりなので、雨中のレンズ交換はさらに気を使う。
この山行きは雨に濡れても大丈夫なズームレンズ一本で歩くことにした。



これによりカメラは常に首から下げ、交換レンズを入れるポーチを腰に巻く必要もなく、荷は軽くなりかさばらなくなった。
カッパを着てもカメラはカッパの外にぶら下げ、いつでも撮れる態勢で歩くのだ。
思い切って雨に当てつつ歩いた。
さ、濡れても壊れてくれるなよ。



さっそく小屋の上を吹きすぎるガスや、お天気良さそうな下界安曇野の写真を撮った。
困ったのはファインダーの内側が曇ること。
撮像素子は大丈夫なんだろうか。
同じように曇っていたらボヤけた写真になってしまう。
仕方なく背面液晶で画像確認。
雨で周りは暗く、晴れた日の液晶画面の見難さはなく、これなら液晶でも撮れる。
これまでならわざわざカメラを取り出してまで撮影する気にならない眺めも撮ることができ威力発揮した。



雨は小雨のまま降ったり止んだり。
風は強くなく危険は感じない。
それでも汗で濡れ風で冷えないよう、汗をかかないようゆっくり目に上り、時々撮影して息を整える。
歩いている位置から見えていたてっぺんは当然頂上ではなく、次々とその先に新たなてっぺんが現れる。
これまでもニセ××なんて名の手前の小ピークに騙されてきたからな。
いくつかてっぺんらしき盛り上がりを越えて、ようやく常念岳山頂に到着。



山頂の少し手前から大きな岩の橋が見え、ええっこんなところにこんな奇岩が?、とびっくりしたが、よくよく見ると橋の下の空間と思われれた場所は白い雪渓だった。
上空のガスった白い空と入り混じって空に見えていたのだった。
あーびっくりした。
山頂も雨で何も見えず。
祠にお詣りして早々に下山開始。
下山道はさっき見誤った岩の橋の上を通るルートで、結構な幅はあるが、下があるかないかで随分と怖さが違う。
近づくと両側に斜面があるのが見えて、なんでもない岩稜だった。



こちら側の道は大きな岩がゴロゴロとある足元の不安な道で、バランス感覚が鈍ってきたこともあり、手をつきながらでないと降りれない場所が多数。
スピードが上がらない。
同じように写真撮影しながらだったが、上りと下りでコースタイムと比較して、上りは少しオーバーしただけなのに、下りは倍の時間がかかっていた。
苦手な道であるようだ。



ある程度下ると雨が止んでガスも晴れて来た。
谷が見えるようになり、そのうち対岸の穂高の山も見えるようになったが、山頂部はある高さから上はスパッと切られたように雲に隠れたままだ。
もうしばらくは雨が降りそうになかったので、小休止した時カッパの上だけ脱ぐことにした。




山小屋の屋根はなぜ紅い

2017-08-01 23:38:00 |  常念山脈縦走
山行き三日目の続き。
大天井岳を越えるとさらに人と合わなくなった。
単独行のお兄ちゃん一人と2人組の3人だけ。
なので歩いている間中一人の世界だった。
でも「アルプス縦走路を独り占め!」って気分ではなく、暗い雲が穂高の上にかかり、ペースアップが響いて足は疲れ、気分は先を急ぐしで、背負うザックみたいに重い時間が続く。
眺めはずっと素晴らしいのに、楽しい気分で歩き続けるのは難しい。



その2人組とすれ違って少し行くと、長い下り坂となり、鞍部に山小屋の赤い屋根が見えた。
ようやく常念小屋に到着。
と思いきや、見えてからが遠かった。
赤い屋根は徐々に近づいてくるのだが、その速度は微々たるもの。
この小屋には生ビールはあるだろうか。
あったら飲んじまうなあ。
などと考えつつようやく入口前の広場に着いた時は疲れ切って、しばしベンチで休んでしまった。



常念小屋も大きな山小屋だ。
寝床は二段ベッド形状ではなく、小部屋に分かれ床に布団を敷くタイプだった。
宿泊者は少ないようで、12人部屋(つまり6畳の部屋)を一室割り当てられた。
ありがたい。
タオルを水で湿らせてきて、他の人の目を気にせず身体を拭いた。
顔と首がヒリヒリと痛い。
高山の紫外線は下界の数倍と聞く。
日差しがあったのは午前中の短い時間だったが、しっかり日焼けしたようだ。



汗をかいた服を着替え、濡れたタオルと一緒に乾燥室へ干しに行った。
売店を覗いたが、缶ビールはあるが生ビールは無さそう。
ならやめとこう。
部屋に戻り横になったら疲れから眠ってしまった。
この小屋は食事の準備ができると館内放送が流れる。
放送に起こされて食堂へ。



宿泊者は前日より少なく10名くらい。
それぞれグループ毎に部屋が割り当てられたのだろう。
食後少し元気になったので、疲れた足を引きずって小屋前の広場に出てみた。
夕焼けは望めず。
黒っぽい塔が気になっていたので見に行ってみた。
アンテナが下界を指差していた。
衛星放送以外の何かを受信してるようだ。




起伏

2017-07-30 21:27:33 |  常念山脈縦走
山行き三日目の続き。
1時間ほど歩いて小休止。
眺めの良い岩場に腰を降ろし、地図を広げた。
この先のコース確認をしようとしたのだが、あれ?なんかコースタイムが長くないか?
ポイント間の時間をさっくり足してみると、今日の目的地まで予定時間の5時間をあっさり超えてしまった。
ややや?
きちんと足し算してみた。
すると7時間に達する行程ではないか。
どの日も6時間を超える日はないからこの行程にしたのに。



確認のため昨日の燕岳への行程と、明日の蝶ヶ岳への行程、さらには最終日上高地への行程も足し算してみたが、こちらは予定どおりの5時間強の標準タイム。
事前にコースタイム確認したあのガイドブックは、この区間だけ健脚向けに設定されてたのか?
なんにせよ、ゆっくりしている訳にはいかなくなった。
7時間かかるなら7時に出発したから休憩無しで14時着だ。
予定は15時着。
この1時間で結構ゆっくり歩いたし、お昼も食べなければいけない。



仕方ない、ペースを上げよう。
稜線漫歩は最初の1時間で終わり、道草は最小限に、しっかり歩かねばならなくなった。
あーあ、ゆっくり山行きの予定だったのに。
重いザックを背負い直して出発した。
すぐに大下りの頭という場所に到着。
大下りとはよく名付けたものだ。
見晴らし良く下り坂と谷向こうの上りの登山道がよく見える。
とほほ、あんなに降りるのか。



下りは良かったが、ペースを上げた足には上りがキツイ。
重い足を一歩一歩引き上げて上る。
息が切れ汗が滴る。
最初のあの幸せな稜線歩きはどこへ行ったのだ。
気分に合わせるように山にも雲がかかり出した。



大天井岳への道は昨日の合戦尾根に比べ明らかにすれ違う人が少ない。
やって来る人は大天井岳から縦走してきているのだと思っていたが、なんか見覚えのある人がほとんどだ。
前泊地の燕山荘に泊まってなかったか?
どうやら大天井岳をピストンしているよう。
私の出発が一番遅く、撮影しながら歩いてるにしてももう頂上まで行って戻ってきてるなんて健脚だなあ。
この時刻なら燕山荘に到着してもまだ昼前だろうから、今日中に中房温泉まで下るのだろう。
あの合戦尾根を大天井岳ピストン後下るなんて、やっぱりすごい。
それが普通なのかな。



大天荘に着いて、だいぶ遅れを取り戻せたことが分かり、急いた気分も少し落ち着く。
小屋前のベンチにザックをデポし、カメラと水と地図だけ持って大天井岳山頂まで往復する。
この日の目的の山を征服した。
だいぶ南に下ったので、槍ヶ岳の向こうに小さかった穂高連峰が迫って見えるようになった。
あの稜線を歩くのが危険なんだな。
たぶん今後も歩くことはあるまい。
遠くから眺めておくだけにしておこう。



大天荘を出発してしばらくするとお腹が鳴りだした。
コース途中に大天荘があり、山小屋でお昼を食べるという新たな方式を知ったというのに、考えなく前泊地でお弁当を頼んでしまっていた。
まあ、お腹が空いた時に食べれるからいいか。
登山道脇にちょいと座れる場所を見つけ、すっかり曇りが覆った空の下、槍や穂高を見ながらお昼にした。
お弁当は馬鹿ほど大盛りな奴でなく、普通の分量で助かった。
それでもお腹いっぱいになり、午後の行程へ。



午前中は気にならなかった重いザックが、時間が経つに従い肩にめり込むようになる。
昨日と同じく常念山脈の東側からガスが上り、稜線を越えることなく峰の東側だけ白く埋めていく。
高くまで湧き上がったちょっと嫌な雲も見えたりして、天気は崩れるのかなと不安に思い出した。
カミナリさんには会わずに済みますように。