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新しい酒(2001年以降のアードベッグ)に期待できるのは嬉しい

 写真のボトル5本は、数日前に私が神保町の”モルトの師匠”のバーで飲んだものです。右から左に向かって飲みました。

(1) 最初のキングスバリーのポート・エレンは1979年蒸留のもので、アタックは強くありませんがバランスの取れた上質のポート・エレンでした。ポート・エレンもやはり、70年代のものの方が1980年代(最後の年は1983年)のものよりも美味しい。

(2) 次のアードベッグの1974もボトラーはキングスバリーですが、同じシリーズの1973よりも骨太でしっかりした感じでした。アードベッグ特有の金属的な刺激に、ピートの煙、皮革のような香り、オレンジ・ピールのようなフルーティーさなどが混じって複雑な味わいです。

(3) 三番目の少し背の高いボトルはアードベッグの2001年蒸留のもので、ボトラーはウィスキー・ソサイエティです。度数が61度強で若いお酒なので、刺激が勝っていますが、クリアで僅かにフルーティーな気配(将来熟成するとフルーティーな面が出るような感じ。フルーツはベリー系か?)があり、もちろんピートのスモークもきいていて、「期待の持てる若者!」という感じでした。
 アードベッグは1970年代のものが美味しいのですが、経営難から1980年代に操業を停止、1990年代前半に稼働するものの以前の味とは異なり(1991年物には美味しいのがありますが、少しヨーグルトっぽい乳酸臭があります)、1997年にグレン・モレンジ傘下になってからもしばらく美味しい物が出ず、特に1998年から2000年くらいのものはエグみが出てダメでした。この日も師匠が1998年のあるボトルを一口味見させてくれましたが、粘土のような椎茸のような臭いがして、口の中が渋くなりました。
 ところが、2001年蒸留物になって、明らかにクリアな味わいで美味しいものが出てきたようです。師匠によると、このウィスキー・ソサイエティのボトルと、ウィスキー評論で有名な山岡秀雄氏(ウィスキー評論家マイケル・ジャクソン氏の著作の翻訳家にして、小学館の漫画雑誌の編集長です。驚いたことに、私の小学校の同級生だったことが判明しました)が選んでボトリングしたボトルの2本が「共に2001年物で、なかなか美味しい」とのことでした。
 別のものも飲んでみなければ分かりませんが、2001年以降のアードベッグは期待できるのではないでしょうか。熟成するとさらに美味しくなりそうです。20年後が楽しみになってきました。

(4) 刺激の強いものを飲んだので、4杯目はスペイサイドのキャパドニックというモルトの34年物を飲みました。ボトラーはダンカン・テイラーです。「軽くて、フルーティーだけれども、味わいのあるもの」というリスクエストに対して師匠が選んでくれたものです。ライチ、洋なし、グレープフルーツいずれを挙げるか悩みますが、敢えて一つに決めるとライチでしょうか。フルーティーな香りが口中に拡がり、優しい味わいですが、決して物足りなくないという素晴らしいボトルでした。アードベッグの間に入れる口直しくらいの気分で頼んだのですが、それにとどまらない佳品でした。

(5) 最後は、キングスバリーの「ハンド・ライティング」シリーズのアードベッグで1972年物です。師匠によると「アードベッグのベストは1972年」だそうで、通常なら真打ちクラスの1974年(あるいは1973年)を更に上回るインパクトとフィニッシュで、特にフィニッシュが素晴らしく、帰りの夜道(徒歩、25分)の間ずっと香りが戻ってくる感じがして、翌朝にも印象が残っていました。

 非常に満足の5本コースでしたが、5杯は飲めないという方は、3、4、5番目を試されるといいと思います。
 モルトでもブレンディッドでもウィスキーは古い蒸留のもの(1970年代以前)が圧倒的に美味しく、最近の物が明らかに負けていることに、傾向として新しもの好きで過去を賛美することが嫌いな私としては少々ガッカリしていたのですが、2001年以降のアードベッグに希望が見えたという意味で、3番目のアードベッグは価値がありました。新しいものに期待が出来るというのは、いい気分です。
 もちろん、今飲むものとしての完成度と感動は4番、5番が素晴らしいと思います。

(※) 東京近辺の方で上記を試してみたい方は、神保町の”師匠”(三輪さんという方です)のお店「Bar.PolkaDots & MOONBEAMS」をお訪ね下さい。モルトの初心者も、好みに合わせて丁寧に指導してくれます。食べ物のメニューは少ないので、軽く食事をして腹ごしらえしてから行くのがお勧めです。

「Bar.PolkaDots & MOONBEAMS」
千代田区神田神保町2-2-12 サンエスビルB1 03-3263-3211 最寄駅:神保町
神保町の交差点の「キムラヤ」の斜め裏にあるビルの地下一階です。
(お店のHP)http://www.ff.iij4u.or.jp/~yukiom/
(食べログ)http://r.tabelog.com/tokyo/A1310/A131003/13011381/
(livedoorグルメ)http://gourmet.livedoor.com/restaurant/307880/
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