lizardbrain

だらだらぼちぼち

牛乳 サランラップ のり

2006年03月01日 00時30分55秒 | 音楽
あれは、2月中旬の事だった。

朝のワイドショーで、50代のサラリーマンおじさん2人組のバンド(ユニット)が特集されていた。
どうやら最近、都内のライヴハウスでウケているらしい。
ライヴハウスといっても、TV映像で見た限り、例えばブルーノートやSTB139みたいにオシャレな所ではなく、ただパイプ椅子を並べただけの客席が映されていて、食事するためのテーブルも見当たらなかったのだが、そのパイプ椅子を並べた客席は、確かに満席のようだった。
このバンド(ユニット)名は、藤岡藤巻
二人の苗字をくっつけたらしい。
ワイドショーで放映されていた藤岡藤巻のオリジナル曲は、この年代のサラリーマン達、あるいはその奥方達から大いに支持されているようだ。

TVで一部分だけ流されてた曲の中で、秀逸だったのが
牛乳 サランラップ のり
というタイトルの曲だった。

歌い出しの部分のメロディーは、かつてロス・インディオス&シルビアでヒットした『分かれても好きな人』に少しばかり似ていて、
アニメ『巨人の星』のテーマ曲のようなリズムで、
マイナーキーで、
サビの部分では、一人前にもコーラスが入っていた。

歌詞の内容は、


会社帰りのケータイに、妻からのメールが入っていた
読んでみると、そこには
『牛乳 サランラップ のり』
と、書かれていた

ちょっと前までは
妻は
『会社の帰りに、牛乳、サランラップ、のりを買ってきて下さい。』
とメールしてきたのに
今では
『牛乳 サランラップ のり』
とだけメールしてくる

もっと前には
絵文字や顔文字も入っていたのに
今では
『牛乳 サランラップ のり』
とだけメールしてくる、、、、、、、、


おおよそ、こういうストーリーの歌だった。

何やら、妻との仲がすっかり冷え切った家庭の様子を描写しているように読める。
聴いている客達にとっても、我と我が身に覚えがある風景のようで、その心の中に冷たい汗と冷たい風の存在を感じているようにも見えた。


いや、絶望という言葉と友達になるのにはまだ早い
そう、皆さんは、この曲について大いなる誤解をしているのではないだろうか?
ワタクシなりに、この曲について、ホノボノと暖かく、明るい未来につながる解釈をしてみよう。

この曲のバックグランドを紐解くキーワードとしては、『牛乳 サランラップ のり』というタイトルに提示されている。
この曲のタイトルの最後の言葉、『のり』は『海苔』ではなく、『』の事なのだという事に気づきさえすれば、仕事を終えて家路に着く夫の足取りも軽やかになるはずだ。

夫が、『牛乳 サランラップ のり』というメールを受け取ったこの日は、金曜日だったのだ。
そして、その翌々日の日曜日は、夫自身もすっかり忘れていたが、誰あろう夫の誕生日だった。

日常の忙しさにかまけているうちに、
「ここしばらくは、夫の誕生日のお祝いをしていなかったわねぇ、、、、、」
夫の誕生日を忘れてはいなかった妻は、そう思ったのだ。
そして、
「久しぶりにバースデーケーキを作ってみましょうか」
妻は、こうも思ったのだ。

思えば、結婚する以前から、夫の誕生日には、何かしら手作りのケーキや料理でお祝いしていたのだ。
が、
結婚して、
子育てや、
30年の住宅ローンの支払いのために残業続きの仕事に頑張っている夫の疲れた表情や、
妻もまた仕事と家事に忙しく立ち働いているために、なかなか夫と世間話をする暇も無く、1日24時間が過ぎる事がとても早く感じられる事や、
そのうえ、妻は、どうしても夫の両親としっくりいかないという事や、
どうせ、日曜日になっても、夫は、上司や友達との付き合いだか得意先の接待だかなんだか知れないけれど、私とは目も合わさずにゴルフに出かけてしまう事や、
ゴルフの帰りには、これまた上司や友達との付き合いだか接待だかなんだか知れないけれど、必ずどっかでお酒を飲んで、酔っ払って帰って来る事や、
そういう時には、きっと何か後ろめたい事があるのだろう、夫は絶対に私と目を合わそうとしない事や、
そのほか、とてもここでは描写するのもはばかられるような、あと16通りくらいの事が原因なのだろう、
夫の誕生日だからといって、何もお祝いできない年月が続いてしまった。

妻は、変わらぬ愛情を夫に伝えるべく、夫には内緒で、久しぶりにバースデーケーキを手作りする事にしたのだ。

バースデーケーキと言ってもケーキ屋さんのショーウィンドウを飾るようなバカでかい物は必要無い。
気持ちさえこもっていれば、小さいケーキで良いのだ

夕方5時に仕事を終えた妻は、帰宅途中にケーキ作りに必要な材料を買い揃えてきた。
だが、家に帰ってから、いくつか買い忘れた材料がある事に気づいた。

そこで、夫に足りない材料の買出しを頼む事にした。
グンニャリ、グッタリと疲れて家路にむかう夫に対して買い物を頼むという事に、妻は、本当に心苦しかったのだ。
夫に買い物などをさせて、本当に申し訳無いという気持ちで一杯だったのだが、バースデーケーキの件は、夫には内緒にしておかなければならない。
でなければ、サプライズにならない。
それに、買い物する品物を見たところで、夫は、その使い道について興味を示すことなど絶対に無い。

だから、あえて、愛想無く
牛乳 サランラップ のり
と、用件だけをメールに記したのだ。
できれば、
『お仕事お疲れ様でした』
などと一言書き添えたかったのだが、、、、、

このメールを読んだ時の夫の生気の無い表情を想像しながら、夫に申し訳ない気持ちで一杯になり、目にはうっすらと涙をためながら、妻はメールを送信したのだ

牛乳 サランラップ 糊
と。

もちろん、『牛乳』はケーキの材料に使う。
サランラップ』は、、、、、、、、?
え~~~~~~~~~、、、、、、っと?
ケーキを作るなんらかの段階で、使う物なのだ、きっと。

最後に残った『』だが、まさかこんな物をケーキに入れたりはしない。

妻は、夫あてに手紙を書いたのだ。
夫と出逢った頃は、お互いによく手紙を書いたものだった。
あの頃を想い出して、妻は夫あてに手紙を書いたのだ。
頬を赤らめながら、書いたのだ。
そして、
「いい歳をして」
と言われそうで、少し恥ずかしかったのだが、隅っこに小さくミッフィーが描かれた便箋に夫への変わらぬ愛情の言葉をしたためて、できるだけ可愛く見えるように折りたたんで、隅っこに小さくミッフィーが描かれた封筒に入れた。
で、封をしようととしたら、いつも家で使っているスティック糊がどっかに行ってしまって行方不明になっていることに気付いたのだ。
どこを探してもスティック糊は見つからない。
その上、ミッフィーの封筒の封の部分には糊づけも両面テープも付けられていない。
やはり、この便箋と封筒を買う時に、いろいろ迷った末に安物の封筒を買ったのがいけなかったのか、、、、、
「どうせ、夫あての手紙なのだから」
しかし、封筒を買う時にまさか自宅のスティック糊が無くなっているだろうとは予想していなかった、、、、、、
まさか、セロテープやホッチキスを使うのは事務的過ぎる、、、、、、

そういう過程を経て、できるだけ冷淡に仕上げた夫へのお買い物依頼メールに

が追加されたのだ。

こうして、ともかく、日曜日を迎えた。

その日は早朝から激しい雨が降っていたため、恒例のゴルフが早々と中止となってしまった夫は、家でゴロゴロするしかなかった。
子供達は、この激しい雨の中、塾に出かけていた。
出かけていってもらわなければ、話は盛り上がらない。
そして、妻の久々の手作りのケーキを目にした夫は、驚いた。
驚きながらも、喜んだ。
そして、二人とも、その日一日中ニコヤカに過ごした。

翌日、月曜日の朝。
遠距離通勤のため、妻よりも一足先に家を出ようとする夫に、妻は
「これ、お昼休みに読んで下さい」
と、隅っこに小さくミッフィーが描かれた封筒を夫の上着のポケットに押し込んだ。

そして、昼休み。
社員食堂で560円のB定食を食した後、夫は、今朝、妻が上着のポケットに押し込んだ封筒を取り出した。
隅っこに小さくミッフィーが描かれた封筒が何やら気恥ずかしく、机の下に隠すように妻からの手紙を読み上げた。

そこには、

○○スーパー特売 玉子2パック お一人様1パック限り 2回レジに並ぶ事

と、書かれていたのだ




4 コメント

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Unknown (ふーゆ。)
2006-03-01 20:28:38
段階、いや、団塊世代への熱きメッセージとか言ってましたよね・・・確か。
メールがあるだけ、まだマシかも。うちは〝念〟ですから。怨念がおんねん・・・地球温暖化に一石(寒)
出産直前にダンナのメアドをゲットした嫁なのでした。5回ぐらいメール送ったけど、返信は一度も来ませんでした。やるぅ、ダンナ。

『牛乳 サランラップ のり』でココまでのドラマが・・・うぅ、脳内に響き渡るマイナーコード。なんだか逆目線のきみまろみたいな勢いを感じました。
ケーキを作ったあと冷蔵庫で保管するときにラップは必要かも・・・。でも、生クリームがべっとりひっついてしまうのでした。しょぼん。

なんだかエンケンさんのカレーライスの歌とか、それのアンサーソングの山本正之さんの哀愁のカレーライスとか、そういう昭和の臭いを感じました。やっぱり段階だからかなぁ。
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Unknown (ぼち×2)
2006-03-01 22:19:27
あれを見てたんですか~?
ふ~ゆさんって、ヒマなんですね~?(笑)

ふ~ゆさんちの夫婦関係まで想定していなかったのです。
まさか、こんな事で傷ついたりするような方ではないでしょうから、安心です。
「ダンナのメアドをゲットした」と表現する嫁は、世の中にそうたくさんいるものではありません。
普通は、教えあうもんでしょ?お互いに?

返信しない勇気を持ち合わせたダンナって、ある意味、大物かも?

続編と言うか、藤岡藤巻の追加情報を下書き中ですので、しばしお待ちを
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Unknown (「藤岡藤巻」のメンバーの藤岡です。)
2006-03-04 02:44:23
全然そこまで考えてませんでした。
すごい深読みで、感動です。

もうちょっと真剣に曲作らなきゃと思いました。

今後とも見守っていただければ幸いです。

いつまでやれるか分かりませんが。
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Unknown (ぼち×2)
2006-03-04 20:39:48

あの藤岡さんなんですか?
まさか、ご本人に見つかってしまうとは、マジで想定外です、、、(汗)

そうですか?
深読みし過ぎたのですね?
では、妻が作ったのは、バースデーケーキじゃなかったわけですね?
つまり、ホットケーキだったという事でしょ?

お願いですから、真剣に曲を作らないで下さい~
見守らせていただきたいので、是非とも関西ツアーやって下さい。

いつまでもやって下さい。
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