lizardbrain

だらだらぼちぼち

僕等は大人になって行く

2010年10月03日 00時14分06秒 | 風景光景
君が遠くへ旅立って、もう7週間。
そんな遠く離れてるわけじゃないから、必要があればいつでも会えるもんだと思ってたけど、どうしてだろうね、5年ほど会っていなかったよね。

4月。
君が自宅で療養してるらしいという噂を聞いて、昔の仲間とお見舞いに行こうやと相談してたんだ。
そしたら、その相談がまるで聞こえたかのように、君の奥さんから、そっと連絡があったんだ。
「会ってあげてほしい」

「できるだけ早い方が良いです」と。

5月。
仲間たちと一緒にお見舞いに行った。
「薬のせいで髪の毛が抜けて抜けて、、、、、」
中学の野球部以来の坊主頭を笑って見せながら、出迎えてくれた。
帰りがけにはエレベーターで下まで降りて、見送ってくれたっけ。

6月。
疲れさせちゃいけないから、あまり行かない方がいいだろうと思ってたけど、君の所へ、今度は一人で行ってしまった。
駅で待ち合わせたら、歩いて来たんでビックリしたよ。
笑顔は元気だけど、大丸でランチしてる間も、時々、大きく肩で息をして、すっかり痩せてしまった姿を見て、
「こいつも、70~80歳くらいの爺さんになったら、こんな風に枯れた良い爺さんになるんだろうな」と思ったんだ。
あの時はごめんな、やはり疲れさせてしまったみたいで。

高校生の時、君の下宿で良くたむろしたもんだ。
下宿に行けば、スズキの安物のギターがあって、陽水やかぐや姫やNSPのLPレコードも何枚か持ってて、良く聞かせてもらったっけ。
弦も交換しないあのギターは、弦高が高くて、とても弾きにくかったんだ。
それに、君はギターは下手くそだったし。

君の下宿は、何よりも、いつも誰かに会える場所だったんだ。
今思えば、政治や経済や世界情勢や将来の夢を熱く語る事はほとんど無くて、激論を交わすのはせいぜいジャイアンツかタイガースの話題くらいだったよな。
長嶋ジャイアンツが最下位になって、その翌年にはリーグ優勝した、あの頃。
あの頃、自分でも気づいてたんだ。
自分の中に小さな闇の部分があった事に。
その小さな闇が大きくならずに、押さえ込むことができたのは、きっと、あの下宿でゴロゴロしながら、顔を会わせると皆で笑いあってたからだろう。

仲間達の内で君が一番自然に恵まれた所で育ってきたんだから、なんとなく自然児のイメージがあった君が病んでしまった事は、皆、ショックだったよ。
君の病状を知って以来、あの頃のたくさんの出来事を、どんどん思い出してきた。
すっかり忘れていた事も、突然、湧き出すように、思い出してしまうんだ。
時間も場所もかまわずに湧き出してくるもんだから、仕事中に破綻をきたさないようにしようと、随分と大変だったんだ。

8月。
仕事の都合がつかなかった。
葬儀の翌日、小さな箱におさまってしまった君の笑顔にお別れを言った。
旅立つ前日に、夢に現れたのは偶然かい?
そういう時は、なんか言い残すもんだろ?
君の家の方角を背中に感じながら、駅までの坂を下りて行くと、青空。
どうしようもなく、青空。
すごく暑かったからとか、そういう事じゃなくて、あの時の青空は、忘れない。



今まで一番悲しい気持ちでシャッターを押した写真。
写真なんて、どうしてこんなに薄っぺらいんだろう。

9月。
こくさいホールでのコンサートに行く前に、時間を合わせて、茨木市に住むあいつを呼んで、奥さんとでランチしたよ。
そしてその夜、達郎が歌っていたバラードの『さよなら夏の日、、、、、、、』という歌詞に、泣きそうになった。
普通のラブソングだと思っていたこの曲の歌詞が、8月の青空を思い出させたからだ。
ついこないだの青空を。
こんな事を言うと、きっと君は笑うだろうけど、ありがとうな。
また会おうや、どっかで。

ほら、ほら、笑っただろ?
今、君のいつもの笑い顔が見えたよ。


2 コメント

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Unknown (nonn)
2010-10-03 12:45:21
自分の心の中が スコーーーンと空っぽになってるような気がする時 ありませんかわけもなく諦めなくちゃならないことってのが世の中にはあるけれど出会いと別離は 対のものらしいから 諦めなくちゃならない理由ははっきりしてるのかもしれません去るひと、 残されるわたしたち、そして わたしたちが残してゆく人々・・・泣いてもどうにもならないのならせめて 笑顔を 生きた証しにしましょうbochiさんの お友だちがそうしたように
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Unknown (ぼち×2)
2010-10-04 17:16:19
奥さんがしっかり前を向いてる明るい人で、周りの人間の方が元気付けられてます、はい。49日を逃すとなかなか機会がなくなりそうなんで、アップさせてもらいました。
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