災害列島日本―異常気象がもたらす豪雨と灼熱地獄―
今年も、気象の異常が続いています。「今年も」と言ったのは、この文言は、毎年言っているような気が
するからです。
少しばかり畑をやっている私にとっては、雨が降るべき梅雨時の6月~7月にほとんど雨が降らず、日照
が欲しい8月以降は雨ばかりで作物の成長がわるくなりました。
また、梅雨のないはずの北海道で長雨のため、ジャガイモの畑が水浸しになり収穫ができずに、ポテトチ
ップスの製造が中止になる、とい言う事態が発生しました。
今年は、東日本では、本来なら梅雨の真っただ中にあるはずの6月20日ころには梅雨明けとなり、それ
以後猛暑続きです。
それも、ただ暑い、というのではなく、熱中症や熱射病で死者がでるほどの暑さです。
その一方で広島県、岡山県、愛媛県、京都府などでは豪雨鵜続きで河川の氾濫や土砂崩れのため、膨大な
数の家屋が押し流されたり、潰されたり、あるいは床上浸水のため住むことができなくなっています。
さらに深刻なのは、7月21日時点で死者223人(広島県112人、岡山県 61人、愛媛県 26人、
ほか)、その他、行方不明者10人ほどを出す大惨事となりました。犠牲となられた方々のご冥福を祈る
ばかりです。
なぜ、これほどの被害が出たのかの原因としてはさまざまな要因が関係しているので単純ではありません。
もちろん、予想を上回る雨量という自然現象が主原因であることは間違いありませんが、それに加えて人
為的な要因も少なからず関係していると思われます。
たとえば広島の場合のように、住宅が山裾のほうにまで広がれば、当然、土砂崩れ(山津波)の危険性が
増大します。
それを防ぐためには、山の斜面に土止めの工事をするとか、谷筋には堰堤を幾重にも築いて土砂の流出を
防ぐ処置をしたあとで住宅開発をするとか、山の斜面を土砂崩れに強い樹木に変えるとか、それぞれの専
門家が叡知をしぼって宅地開発をする必要があります。
また、岡山県の場合、一級河川の高梁川と小田川との合流点付近で、小田川の堤防が決壊し、倉敷市の方
に大量の水が流れて、大洪水を引き起こしました。
これは、小田川が本流の高梁川と合流する場所で、高梁川の大量の水と強い水勢のため小田川の水が逆流
するかたちであふれ、が洪水の被害が出てしまったからです。
このため、両河川に挟まれた、Y字状の倉敷市の真備地区が水没してしまったのです。
この地区は2016年に作成された「洪水・土砂災害ハザードマップ」にも洪水危険地区にも指定されている
要警戒地区です。というのも、この地区は過去にも同様の原因で洪水被害に襲われているからです。
実は、2007年には前野詩郎教授が、この地点の危険性を避けるための河川の付替え(流路の変更)を
した場合の効果をシュミレーションしています(注1)。行政も本気で取り組んで欲しいと思います。
いずれにしても、やはり想定を超える雨量で川が増水すると、人間の力では防ぎきれない自然の威力を見
せつけられた思いです。
人的被害や家屋などの被害の他にも、岡山は高級なブドウとモモの産地で、これらも泥をかぶり、商品に
はなりません。
愛媛県の宇和島地区は、山が海まで迫る地形で発生した山崩れによる被害が中心でした。
洪水をもたらす大きな河川はありませんが、山の保水能力を超えた雨が降ると、こうした山崩れは避けら
れないのかも知れません。
この地区はミカン栽培が盛んなところですが、ミカン畑が軒並み表土とともに流されてしまいました。
60代と思われるミカン農家の方がテレビのインタビューに、この崩壊後にミカンの苗を植えて実がなる
まで8年かかり、商品として出せるようになるまでには10年かかるので、もう自分の代で再興する気力
はない、と答えていました。
実際、自分がこの農家の方の立場だったら、新たにミカン畑を作り、荷物を運搬するレールを敷くなどの
投資はできないと思います。
そして、土砂は魚の養殖場のある海に流れ出て、魚の鰓にびっしりと付着して酸素を取り込むことができ
なくなって、大量の魚が窒息死してしまいました。
養殖場の所有者は、魚はまた来年から始められるけど、ミカンは年数がかかるから大変だ、と語っていま
した。せめて、来年には何事もなく事業が続けられることを祈るばかりです。
以上のような豪雨による水の被害を受けた地域が、今度は酷暑と、生活に必要な水不足に悩まされる、と
いう二重の困難に直面しています。何とも残酷な自然の仕打ちです。
ところで、豪雨に見舞われることも、河川の氾濫にも会わなかった中部から東の日本列島では、全くの平
穏無事であるか、というとそうでもありません。
6月の末から最高気温が33度~35度という高温が続き、7月に入ると内陸地域では体温より高い38
度から、岐阜県の多治見のように40度まで上昇しています。
この暑さで、熱中症や熱射病で毎日何人もの人が亡くなっています。
ニュースをみていると、熱中症の疑いで亡くなった人の人数も1日で10人の日もあれば5~6人の日も
あります。
いずれにしても、もうこの状況は水害と同様、一種の「酷暑災害」といってもいいのではないでしょうか?
最近の気象情報によれば、沖縄の最高気温は32度前後なのに、九州から関東、一部の東北地方の最高気
温は軒並み34度~37度になっています。
しかも、最近の日本の高温は、ただ暑い、と言うレベルをはるかに超えて、命を脅かす危険な暑さです。
いまや、日本は「温帯気候」から「亜熱帯気候」に入ったのではないか、と思われる最近の気候です。
そういえば、おいしいお米の生産地も、東北地方から北海道にも広がっています。
集中豪雨が頻発することも、年々、気温が高くなっていることも、地球の二酸化炭素濃度の上昇にとも
なう温暖化と無関係ではないようです。
というのも、この暑い夏は日本だけではなく、北半球の各地で起こっているようです。たとえばノルウェ
ーでは7月の平均気温はせいぜい18度くらいですが、今年はすでに32度まで上昇したそうです。
またブドウの名称にもなっているマスカット・オマーン国では、最低気温(最高ではありません)が、
42度を超えるという恐るべき高温を記録したそうです。
こうした気象上の異常さに加えて、近い将来の地震の可能性も指摘されています。
まさに、日本は「災害列島」の感があります。
山の保水能力や河川の排水能力を超えた雨量に対しては、人間ができることには限界がありますが、酷暑
にたいしては、水分と塩分のを補給を心がける、できるだけ暑い日中の外出は避けるなどの対処で、ある
る程度、深刻な熱中症などを防ぐことは可能です。
時々、日中の暑さのなかで、苦行僧のような表情でウォーキングをしたり、はなはだしいのは、ジョギン
グをする人を見かけます。もう、いいかげん命を大切に、と思ってしまいます。
どこに住めば安全なのか、選択に迷う状況にありますが、この地に住む以上、覚悟を決めなければ、と思
います。その上で、せめて、自分でできることは、面倒くさがらずに実行しようと思います。
(注1)前野教授の論文は
https://www.jstage.jst.go.jp/article/prohe1990/51/0/51_0_613/_pdf で読むことができます。
今年も、気象の異常が続いています。「今年も」と言ったのは、この文言は、毎年言っているような気が
するからです。
少しばかり畑をやっている私にとっては、雨が降るべき梅雨時の6月~7月にほとんど雨が降らず、日照
が欲しい8月以降は雨ばかりで作物の成長がわるくなりました。
また、梅雨のないはずの北海道で長雨のため、ジャガイモの畑が水浸しになり収穫ができずに、ポテトチ
ップスの製造が中止になる、とい言う事態が発生しました。
今年は、東日本では、本来なら梅雨の真っただ中にあるはずの6月20日ころには梅雨明けとなり、それ
以後猛暑続きです。
それも、ただ暑い、というのではなく、熱中症や熱射病で死者がでるほどの暑さです。
その一方で広島県、岡山県、愛媛県、京都府などでは豪雨鵜続きで河川の氾濫や土砂崩れのため、膨大な
数の家屋が押し流されたり、潰されたり、あるいは床上浸水のため住むことができなくなっています。
さらに深刻なのは、7月21日時点で死者223人(広島県112人、岡山県 61人、愛媛県 26人、
ほか)、その他、行方不明者10人ほどを出す大惨事となりました。犠牲となられた方々のご冥福を祈る
ばかりです。
なぜ、これほどの被害が出たのかの原因としてはさまざまな要因が関係しているので単純ではありません。
もちろん、予想を上回る雨量という自然現象が主原因であることは間違いありませんが、それに加えて人
為的な要因も少なからず関係していると思われます。
たとえば広島の場合のように、住宅が山裾のほうにまで広がれば、当然、土砂崩れ(山津波)の危険性が
増大します。
それを防ぐためには、山の斜面に土止めの工事をするとか、谷筋には堰堤を幾重にも築いて土砂の流出を
防ぐ処置をしたあとで住宅開発をするとか、山の斜面を土砂崩れに強い樹木に変えるとか、それぞれの専
門家が叡知をしぼって宅地開発をする必要があります。
また、岡山県の場合、一級河川の高梁川と小田川との合流点付近で、小田川の堤防が決壊し、倉敷市の方
に大量の水が流れて、大洪水を引き起こしました。
これは、小田川が本流の高梁川と合流する場所で、高梁川の大量の水と強い水勢のため小田川の水が逆流
するかたちであふれ、が洪水の被害が出てしまったからです。
このため、両河川に挟まれた、Y字状の倉敷市の真備地区が水没してしまったのです。
この地区は2016年に作成された「洪水・土砂災害ハザードマップ」にも洪水危険地区にも指定されている
要警戒地区です。というのも、この地区は過去にも同様の原因で洪水被害に襲われているからです。
実は、2007年には前野詩郎教授が、この地点の危険性を避けるための河川の付替え(流路の変更)を
した場合の効果をシュミレーションしています(注1)。行政も本気で取り組んで欲しいと思います。
いずれにしても、やはり想定を超える雨量で川が増水すると、人間の力では防ぎきれない自然の威力を見
せつけられた思いです。
人的被害や家屋などの被害の他にも、岡山は高級なブドウとモモの産地で、これらも泥をかぶり、商品に
はなりません。
愛媛県の宇和島地区は、山が海まで迫る地形で発生した山崩れによる被害が中心でした。
洪水をもたらす大きな河川はありませんが、山の保水能力を超えた雨が降ると、こうした山崩れは避けら
れないのかも知れません。
この地区はミカン栽培が盛んなところですが、ミカン畑が軒並み表土とともに流されてしまいました。
60代と思われるミカン農家の方がテレビのインタビューに、この崩壊後にミカンの苗を植えて実がなる
まで8年かかり、商品として出せるようになるまでには10年かかるので、もう自分の代で再興する気力
はない、と答えていました。
実際、自分がこの農家の方の立場だったら、新たにミカン畑を作り、荷物を運搬するレールを敷くなどの
投資はできないと思います。
そして、土砂は魚の養殖場のある海に流れ出て、魚の鰓にびっしりと付着して酸素を取り込むことができ
なくなって、大量の魚が窒息死してしまいました。
養殖場の所有者は、魚はまた来年から始められるけど、ミカンは年数がかかるから大変だ、と語っていま
した。せめて、来年には何事もなく事業が続けられることを祈るばかりです。
以上のような豪雨による水の被害を受けた地域が、今度は酷暑と、生活に必要な水不足に悩まされる、と
いう二重の困難に直面しています。何とも残酷な自然の仕打ちです。
ところで、豪雨に見舞われることも、河川の氾濫にも会わなかった中部から東の日本列島では、全くの平
穏無事であるか、というとそうでもありません。
6月の末から最高気温が33度~35度という高温が続き、7月に入ると内陸地域では体温より高い38
度から、岐阜県の多治見のように40度まで上昇しています。
この暑さで、熱中症や熱射病で毎日何人もの人が亡くなっています。
ニュースをみていると、熱中症の疑いで亡くなった人の人数も1日で10人の日もあれば5~6人の日も
あります。
いずれにしても、もうこの状況は水害と同様、一種の「酷暑災害」といってもいいのではないでしょうか?
最近の気象情報によれば、沖縄の最高気温は32度前後なのに、九州から関東、一部の東北地方の最高気
温は軒並み34度~37度になっています。
しかも、最近の日本の高温は、ただ暑い、と言うレベルをはるかに超えて、命を脅かす危険な暑さです。
いまや、日本は「温帯気候」から「亜熱帯気候」に入ったのではないか、と思われる最近の気候です。
そういえば、おいしいお米の生産地も、東北地方から北海道にも広がっています。
集中豪雨が頻発することも、年々、気温が高くなっていることも、地球の二酸化炭素濃度の上昇にとも
なう温暖化と無関係ではないようです。
というのも、この暑い夏は日本だけではなく、北半球の各地で起こっているようです。たとえばノルウェ
ーでは7月の平均気温はせいぜい18度くらいですが、今年はすでに32度まで上昇したそうです。
またブドウの名称にもなっているマスカット・オマーン国では、最低気温(最高ではありません)が、
42度を超えるという恐るべき高温を記録したそうです。
こうした気象上の異常さに加えて、近い将来の地震の可能性も指摘されています。
まさに、日本は「災害列島」の感があります。
山の保水能力や河川の排水能力を超えた雨量に対しては、人間ができることには限界がありますが、酷暑
にたいしては、水分と塩分のを補給を心がける、できるだけ暑い日中の外出は避けるなどの対処で、ある
る程度、深刻な熱中症などを防ぐことは可能です。
時々、日中の暑さのなかで、苦行僧のような表情でウォーキングをしたり、はなはだしいのは、ジョギン
グをする人を見かけます。もう、いいかげん命を大切に、と思ってしまいます。
どこに住めば安全なのか、選択に迷う状況にありますが、この地に住む以上、覚悟を決めなければ、と思
います。その上で、せめて、自分でできることは、面倒くさがらずに実行しようと思います。
(注1)前野教授の論文は
https://www.jstage.jst.go.jp/article/prohe1990/51/0/51_0_613/_pdf で読むことができます。