大木昌の雑記帳

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パンドラの箱を開けた安倍氏襲撃(3) ―ますます深まる自民党の闇―

2022-08-22 15:13:36 | 政治
パンドラの箱を開けた安倍氏襲撃(3)
―ますます深まる自民党の闇―

安倍氏襲撃事件の直後、一部のメディアは、これは大物政治家を暗殺する“政治テロだ”、
さらには“民主主義の危機だ”と書きたてました。

ところが警察からのリークで、容疑者は山上徹也という男性で、旧統一教会(以下、統一
教会と略す)に恨みを抱く一人の男性である、との事実が明らかにされると、事件の意味
合いが突然、思わぬ方向に向かいました。

容疑者の母親が統一教会の信者で、家族のお金1億円以上を献金したため、容疑者を含む
家族の生活が破壊されてしまったことが主要動機だったことが明かされました。

この時から、今回の襲撃は「政治テロ」から統一教会にたいする個人的な“私怨”へと論調が
変わりました。

さらに、山上容疑者は犯行の直前に知人に宛てた手紙で「安倍は本来の敵ではない」と書い
ている。本当の敵は、統一教会の最高幹部だったのです。

実際、2019年10月には愛知県内であった団体の集会で来日した最高幹部、韓鶴子(ハンハク
チャ)総裁を火炎瓶で襲撃しようとしたとも説明している。この時は会場に団体関係者しか
入場できず、計画を断念したと語っています(注1)。

標的が安倍元首相に変わったのは、安倍氏が統一教会の集会に向けて送ったビデオ・メッセ
ージ動画を見て、安倍氏が統一教会と繋がりがあることを知ったからだ、と語っている。

ここまでが安倍元首相襲撃の第一幕で、そこでの中心は容疑者と襲撃の動機でした。ところ
が、この後事態は第二幕へと、図らずも自民党の深い闇を暴く方向へと進んでいます。

安倍元首相が殺害された事件をきっかけに、統一教会と自民党との関係が俄然、注目される
ようになったのです。

関係の濃淡はありますが、現在名前が分かっているだけでも50人以上、無回答の議員も含
めると少なくとも100人ほどの自民党の国会議員が統一教会と何らかの関係をもっている
と考えられます。

ここで注目されるのは、統一教会との接点を持つ議員の中でも、とりわけ右派の安倍派が多
かったことです。

これには、統一教会の日本における普及に、自民党の最右翼の安倍晋三元首相の祖父に当た
る岸信介氏が関係していた、という事情が関係していたのです。

ただし、自民党の政界だけでなく、それを支える日本最大の右派改憲団体である「日本会議」
(1997年設立)なども、統一教会と「蜜月」関係を築いていました。

しかし、日本の右派と統一教会とは戦前の日本のアジア侵略を巡る歴史認識において全く相容
れない立場でした。

統一教会は、戦前の日本アジア侵略に対して「日本は罪深い国家で悔い改めなければならない」
と信者に教えています(『東京新聞』2022年8月10日、18日)。

また、前回も引用しましたが、文鮮明氏は、日本が文氏の入国を認めなかったころ、「日本は今
私を入国させないようにしていますね。いいでしょう。天皇がやってきて ひざまずいてひれ伏
して慟哭するのを見るまでは私は(日本に)行ってなんかあげませんよ」と、天皇が文氏に「ひ
ざまずいて」、「ひれ伏して」、(許しを請うために)「慟哭する」まで日本にいってあげない」、
とまで言っています。

ところで、反日的・日本を侮辱する文氏の統一教会と、天皇を中心とした”伝統的日本“の再興を思
想の核とした日本の右派が結びついたのは、「反共」というただ一点でした。

それが具体的な形で現れたのは、1967年に文鮮明氏と、日本側からは右翼の実力者、笹川良一
氏、白井為雄氏(児玉誉士夫氏の代理)、畑時夫氏らと本栖湖畔で会合を開いたことでした。

翌68年1月には文鮮明氏は統一教会の政治団体として「国際勝共連合」を設立し、日本でも同年
4月にその支部が設立されました。

当時は東西冷戦の真っ只中で、日本の一部に共産主義にたいする対抗意識が強かったものと思われ
ます。

しかし、1991年にソヴィエト連邦が崩壊し、旧ソ連が民主化の道を歩み始めると、本来の「反
共」という旗印の意味は失われました(注2)。

それでも、統一教会―国際勝共連合―自民党(特に右派)―「日本会議」などの超保守団体とのつ
ながりが形成され、現在まで続いています。

元統一教会信者で、現金沢大学の仲正昌教授によると、韓国側は日本の保守的な政治家や団体に合
わせてやってきた、というのが実情のようです(『東京新聞』2022年8月10日)。

こうして「反共」「天皇中心」「日の丸掲揚」を旗印とする日本の右派勢力と、その根っこに反日
的思想を持つ統一教会との間に奇妙な連携が成立しています。

これまで統一教会とその「友好団体」と関係をもってきた政治家には、関係の濃淡のほかに二つの
動機がありました。

一つは、統一教会の会員が、選挙の時に無償で働いてくれる“選挙マシーン”を提供してくれたこと
でした。政治家はおそらくそれを利用する、という意識で受け入れるのだと思われます。(まとも
な政治家なら、無償の応援の申し出があれば、その背景を調べます)

しかし、一旦、統一教会への“借り”ができてしまうと、その後、教会員からさまざまな要求が議員
にもちこまれます。

代表的な要求は、統一教会のイベントや集会に電報その他の祝辞やメッセージを送る、集会に参加
する、講演をするなどです。

政治家からのメッセージは「世間は理解してくれないが、立派な政治家が認めてくれた」という自
信になる。それは教団のさまざまな活動の活発化につながる。これだけでも利害関係で結ばれてい
るといえる。祝電だけでも教団には大きなメリットがあるのです。講演を行ったりすれば、さらに
大きな自信を信者に与えます(注3)。

たとえば、神奈川県内のある市会議員が1990年代に初出馬した時、当選ラインは2500票だ
と言われていました。

この時、統一教会は500票まとめたから、と持ち掛けられました。投票結果は3000票で教会
の500票が無くても当選していました。

選挙後、彼は教会側から、支援した皆にお礼のあいさつに行こうと言われたが統一教会にたいする
不信から拒否しました。

すると、「お前何やってんだ。生意気だな。当選したらいきなり天狗になったのか。ばか野郎みな
たいな・・」と、すごまれたと言います。

テレビ局のインタビューで、彼はもし統一教会のおかげで当選したら、「統一教会の意向を配慮せ
ざるを得ないでしょうね」「統一教会の言いなりだったかもしれない」、と正直に述べています。

統一教会は、将来自分たちに有利に働いてくれそうな地方議員を取り込み、それらの議員が国会議
員になることを期待して、“先行投資”として地方議員を応援する、とも語っています(TBS『報
道特集』2022年8月20日)。

つまり、政治家は統一教会を利用しているつもりが、気がついてみると逆に利用され、その時には
もう抜けることができなくなっている危険性が常にあります。

これは市会議員の例ですが、これは県会議員や国会議員においても同様の構造が見られるでしょう。

二つは、設立の経緯から分かるように統一教会は「反共産主義」、性や結婚の多様性(LGPTや
同性婚)に反対する復古的・保守的なイデオロギーをもっており、それに共感して統一教会との接
点をもつ場合です。

ある元信者はテレビ局のインタビューに答えて、あの人は「勝共議員」だから応援しなくては、と
いう気持ちで応援した答えていました。ここには、はっきりと反共イデオロオギーが末端の会員に
まで浸透していることが分かります。

また、現在の教会の正式名称に「家族」がついていますが、教会は異性間の伝統的家庭を復活させ
るための運動を展開しています。これはれ「家庭強化国民運動」と呼ばれ、統一教会は接点を持つ
議員を使って条例化を推進しています。

こうした運動に統一教会と接点を持つ議員が協力し、現在までに15を超える市町村で実際に条例
化されています。

地方自治体だけでなく、国政においても、自民党の改憲案のたたき台案は、その前年に勝共連合が
公開した改憲案と内容がほぼ一致しています。これは、自民党と勝共連合―統一教会とが非常に密
接に結びついていることを示唆しています。

ちなみに、政治家(特に自民党)とのつながりを口外することは絶対タブーとなっているそうです。
こうした事情もあって、中には自分から言わない限り、統一教会との関係を隠蔽することができる
と高をくくっている議員もいます。

宗教団体が政治活動をすることは何の法的問題はありません。しかし、かつて人をマインドコント
ロールして「霊感商法」で高額な品を買わせたこと(これは、今でも部分的に続いています)、個
人の「家庭」を崩壊させるほどの巨額献金を要求してお金を巻き上げている団体が、そもそも優遇
と保護の対象となる「宗教法人」なのか、見当する必要があります。

統一教会は、地方から中央政界まで深く静かに浸透しており、これまでの霊感商法にしても高額献
金の問題にしても、本来は政治が介入して被害を防止する義務がありますが、自民党政権は、全く
そのような動きがありません。

それどころか、本来このような事案を摘発すべき警察・公安当局の二之湯智国家公安委員長自信が
統一教会との深い関係をもっていることが判明しています。

もし、このことが統一教会に対する監視や規制に手心を加えて守るようなことがあれば、これは信
教の自由とは全く別の問題で、政治が統一教会によって歪められることになります。

これこそ、自民党が抱える深い闇で、本当に民主主義の危機です。

(注1)『毎日新聞』(2022年7/20 12:00(最終更新 7/20 21:40)https://mainichi.jp/articles/20220720/k00/00m/040/099000c
(注2)『毎日新聞』デジタル(2022/8/2 11:30 最終更新 8/4 21:17)
     https://mainichi.jp/articles/20220730/k00/00m/040/074000c
(注3)『毎日新聞』プレミア (デジタル版 2022年8月22日)
     https://mainichi.jp/premier/politics/articles/20220819/pol/00m/010/017000c?cx_fm=mailasa&cx_ml=article&cx_mdate=20220823
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
         これら2枚の風刺漫画は説明が要らないでしょう
                                                   

(『東京新聞』2022年8月10日)                                      (『東京新聞』2022年8月17日)


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パンドラの箱を開けた安倍氏襲撃(2)―「反共」で繋がった旧統一教会と自民党―

2022-08-12 09:41:10 | 政治
パンドラの箱を開けた安倍氏襲撃(2)
―「反共」で繋がった旧統一教会と自民党―


今回の旧統一教会(以下、単に統一教会と表記)と自民党、とりわけ保守色
の強い安倍派(清和会)との関係に関する問題が注目されています。

例えば、今回の事件を契機に問題視された、統一教会と関係をもった国会議
員は、その関係の濃淡に違いがあるものの、直近の調査では131人の国会
議員が関係をもっていること、その大部分が自民党であったことが分かりま
した(TBSのアンケート調査の結果 2022年8月12日)。

それでは、なぜこれほど多くの自民党(一部、他党の議員も)の議員が統一
教会との関係をもつに至ったのでしょうか?

これについては、多くのメディアが伝えている通り、一つは、この団体の会
員が選挙の際には無料で選挙運動を手伝ってくれる、という具体的なメリッ
トです。

議員候補にとって、何よりも大切なことは選挙で当選することで、そのため
には投票だけでなく、ビラ貼りから電話での声掛けなど雑用を引き受けてく
れる教会の信者は、非常に助かります。

とりわけ、選挙区にしっかりした支持母体がない候補者にとっては、願って
もない助っ人です。

しかし、こうして助けてもらった見返りとして、さまざまな要求を統一教会
側がしてくるようです。

例えば、日本臨床衛生検査技師会長の自民の宮島喜文元参議院議員は、統一
教会の全面的な支持を受けて6年前に比例区で約12万票を取り初当選しまし
た。

今回の参議院選の比例においても統一教会の支援対象は自民の宮島喜文元参
院議員になるはずでした。

ところが、宮島氏は今回は党公認を受けながら出馬を辞退したため、統一教
会の票はほかの候補に切り替えられました。

辞退の理由を宮島さんは「高齢(70歳)に加え、本業のPCR検査に専念した
いから」と語っています。

しかし、内情を知る党関係者によると、初回の選挙で旧統一教会の支援を受
けたため、当選後に教会側からさまざまな要求があり、もうこれ以上付き合
えないと判断したのが真相だという(注1)。

これは、1候補者の場合ですが、こうした関係はほかにもたすうあるのでは
ないか、と考えられます。

今回、個別に取り上げられてはいませんが、祝電を送った、イベントに参加
した、統一教会系の雑誌に投稿した、会費を払った、などの関係をもった国
会議員は、おそらく何らかのサポートをしてもらった見返りに、このような
関係を持つに至ったと考えられます。

今回の第二次岸田内閣の閣僚だけでも7人、さらに党の重要ポストの議員を
入れると統一教会との関係を明らかにしています。

このことからも分かるように、この団体との関係を持たない議員だけでは組
閣できないほど、統一教会は政界に食い込んでいます。

そして、怖いのは、最初は無自覚に、ただただ選挙運動の応援をありがたが
って「利用して」いただけの議員も、徐々に深みにはまり、さまざまな要求
を突き付けられ、関係を絶てなくなってしまうことです。

次に、統一教会と政治との関係という意味では、この団体との関係をもつ議
員の内、自民党の安倍派(清和会)が大きな部分を占めているという点が
注目されます。

いうまでもなく、安倍派は自民党の中でもとりわけ保守的政治思想をもった
派閥です。

安倍元首相が統一教会と深い関係は、ビデオメッセージを送ったり、参議院
の比例区で統一教会員の票を差配していることからも分かります。

ここには、安倍一族と統一教会との歴史的な経緯があります。

統一教会が、密接な友好団体を足場に組織と個人に食い込むのは1960年代に
入り日本での普及活動を始めた時からでした。

その“尖兵”が、共産主義に打ち勝つ「勝共」を団体名にした「国際勝共連合」
です。1964年、統一教会が日本で宗教法人として認証され、68年には政治団
体国際勝共連合が創設されました。

「反共」を全面に押し出しているため、右翼界の大物・笹川良一氏が名誉会
長となり、60年安保闘争を通じて左翼から総攻撃を受けた岸信介元首相が支
援しました。

その「反共」の姿勢が、自民党および保守政治家に統一教会を受け入れさせ
るきっかけとなりました。

「反社会的カルト集団」として統一教会が批判されても、自民党や日本維新
の会などの保守派に食い込むことができたのは、「反共」を柱に「憲法改正」
「防衛力強化」「正しい結婚観・家庭観の追求」など、保守派と合致する姿
勢を示すと同時に、政治家をカネと選挙で手厚く支援したからでした(注2)。

自民党は、一般に保守党と表現されますが、そのかなでもとりわけ「保守の
コア」と言われる「右派勢力」が安倍派なのです。

統一教会の創始者の文鮮明氏が、どのような経緯で反共産主義思想を抱くよ
うになったのかは分かりません。

いずれにしても、文氏は日本に拠点を築くに際して、反共勢力を取り込むこ
とが最も容易だと判断したのでしょう。

日本の右翼勢力は一般に「親米右翼」と「民族派右翼」に分けられます。岸
・安倍ラインは、「親米右翼」でアメリカの庇護と協調関係を日本統治の軸
に置こうとするを勢力です。

これに対して、同じ「反共産主義」でも、日本固有の文化(特に天皇制)や
伝統を核とする社会を作ろうとする勢力は「民族派右翼」と呼ばれます。

その代表的組織の一つが「一水会」で、私は、その木村三浩代表が統一教会
の活動をどのように見ているかに興味がありました。

というのも、文氏は日本および日本人をかなり露骨な言葉で侮蔑しているか
らです。たとえば、文鮮明『お言葉集』(韓国語版)には以下のような言葉
があります。

    私が日本をエバ国家に定めてあげなかったならば 日本はすでにぺ
    しゃんこになっていたのです。
    雑多な神様を信じる民族、いわしの頭も信じる日本ではないですか。
    日本の経済を投入して南北を統一しなければ日本は滅びるのです。
    エバ国家の使命を果たすことができなければ跡形もなく消えるとい
    うのです。(それゆえに(中略)一家を捨ててでも一族が滅びても
    南北統一のために奮発しなければならなりません。

また、1992年に金丸信自民党副総裁(当時)の超法規的措置で日本へ入
国したことについて文氏は信者に対して次のように語ったという。
   金丸さんはメシアの私(文鮮明氏)を受け入れてくれたのだ。本当は
   日本に入れなかったら日本はエバ国をはく奪されるところだったんだ。
   
さらに『お言葉集』(韓国語版)では、
   日本は今 私を入国させないようにしていますね。いいでしょう。
   天皇がやってきて ひざまずいてひれ伏して慟哭するのを見るまでは 
   私は(日本に)行ってなんかあげませんよ(注4)。

これらの「お言葉」に見られるように、文氏の思想の根っこには、「侮日」
とも言えるには反日感情、朝鮮民族主義があります。

これにはさらに、日本による朝鮮の植民地支配に対する怨念があります。文
氏は信者に対して「日本は罪深い国家」と語っていますが、そこにはこうし
た歴史的経験も大きな影響を与えているのかも知れません。(『東京新聞』
2022年)。
8月10日)

統一教会を貫く文氏の反日的、侮蔑的な言動に対して「民族派右翼」の木村
さんは、旧統一教会の教理解説書に目を通したが、「日本はサタン側の国な
どと記されていました。これは民族派として受け入れられるものではなかっ
た」と振り返る。

その頃から、一水会は「勝共連合は民族主義運動の敵だ」などと雑誌などで
批判していくようになり。その後は、統一教会からも勝共連合からも引いて
いったそうです。

現在、統一教会とのつながりを維持している自民党の政治家は、こうした側
面には目をつぶって、「反共」という一点を共有し、さらに選挙に際しては
無償の運動をやってくれるメリットを得ています。

しかし「政治家の側から選挙への協力をお願いするようになってしまったら、
それこそ政治の『堕落』です。岸元首相の代から関係が続いてきて、孫の安
倍氏が関連団体にメッセージを送ってしまうというのが、その最たる例では
ないでしょうか」と、問題点を指摘しています(注5)。これについては、
次回に検討します。


               注
(注1)『毎日新聞』デジタル版 2022/7/27 東京朝刊)
https://mainichi.jp/articles/20220727/ddm/002/070/135000c?cx_fm=mailhiru&cx_ml=article&cx_mdate=20220727
(注2)Yahoo News (2022年8月11日:6:02配信)
https://news.yahoo.co.jp/articles/00a01b98cd8bbc84c19bc9011d880421c9698a79;
『毎日新聞』(2022年8月9日 05:00、最終更新 /905:00);
https://mainichi.jp/articles/20220806/k00/00m/010/163000c;
DIAMOND ONLINE (2022.7.28 4:30)  https://diamond.jp/articles/-/307025
(注3)『毎日新聞』(デジタル版 2022/8/4 05:15、最終更新 8/4 13:16)
https://mainichi.jp/articles/20220803/k00/00m/040/196000c?cx_fm=mailyu&cx_ml=article&cx_mdate=20220804
(注4)BS-TBS『報道1730』(2022年8月11日)より引用。
(注5)『毎日新聞』(電子版 2022/8/4 05:15、最終更新 8/4 13:16)
https://mainichi.jp/articles/20220803/k00/00m/040/196000c?cx_fm=mailyu&cx_ml=article&cx_mdate=20220804

追記 今回の記事とは関係ありませんが、8月5日、日本を代表するファッション・
デザイナー、三宅一生(本名かずなる)さんが亡くなりました。ご冥福を祈ります。
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夏を代表する花のひとつ サルスベリ(百日紅)庭木として人気があります                  まるで紙で作った花のようなフヨウ(芙蓉)
   


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パンドラの箱を開けた安倍氏銃撃(1)―初期報道の異様さと違和感(その2)―

2022-08-04 09:02:44 | 政治
パンドラの箱を開けた安倍氏銃撃(1)―初期報道の異様さと違和感(その2)―

前回の記事では、安倍元首相銃撃に関する報道が、同じ映像とコメントの繰り返しと、
安倍氏の礼賛という内容になっていった、という点までを書きました。

これは、ある意味で当然であったかもしれません。容疑者は白昼、衆人環視の中で、
抵抗もせず逮捕され、同期もはっきり語っているわけですから、謎もないわけです。

そこで時間を埋めるためには繰り返し色々な人のインタビューを流さざるを得なく
なる。そうすると当然のこととして「安倍元首相を賞賛し、死を悼む声」ばかりが
集まることとなる。

なぜならいくら日頃対立関係にあろうと、安倍元首相のことが本音では嫌いであろ
うと、凶弾に倒れた直後にカメラに向かって彼を批判するコメントを語る人はいな
いからです。

すると意図しなくても、結果的に「安倍元首相を褒め称える」側面ばかりを強調す
ることになってしまいます。

このタイミングを考えると、参院選投票日の直前の選挙期間中であるから、こうし
た特性の政党の首相の死に関して「偏った意見ばかりを放送する」ことに、テレビ
局は一番気をつけなければならない時期のはずです。

さらに、「これまでの安倍元首相の足跡をまとめたVTR」にしても、編集に時間は
かけられず、慌てて編集したものだからどうしても内容は表面的な浅いものになっ
てしまいます。

この際、有識者などに分析してもらうようなインタビューをとることも十分にはで
きませんでした。

しかも、自身が元ニュースデスクであった鎮目氏によれば、こういう特番で振り返
りVTRを長時間放送することには「ライブ感がない」ということで、プロデューサ
ーなどにも抵抗感があるから、どうしてもVTRは短めになってしまうという。

その結果、「安倍元首相を誉めている内容」ばかりが目立つ数時間となってしまう。
これであれば、いっそ夕方のニュースや夜のニュースなどで、きちんと更新情報を
伝え、その間は通常編成の番組を放送したほうが良かったのではないかと鎮目氏は
思ったそうです。

安倍元首相の死は大ニュースだから、改めてきちんと後日特番を放送すれば良かっ
たのではないかという鎮目氏のコメントに筆者も同感です。

(4)各局揃って「喪服」はやり過ぎでは

そして最後に気になったポイントは、各局揃ってキャスターたちが「喪服」を着て
いたことです。

といういのも、安倍昭恵夫人ですらまだ喪服を着ていない8日の時点で、「各局横
並びでキャスターが喪服」だったことに、鎮目氏は若干の違和感をもったそうです。

鎮目氏の経験では、ニュース番組のスタイリストはどの番組でもほぼ必ず「色目が
地味なコーディネイト」と「喪服」を必ず用意している。

いつどんなニュースが発生するか分からないから、「派手な色味を避けるべきニュ
ース」が発生したら地味な衣装を、そして「喪服を着るべきニュース」が発生した
ら喪服をいつでも着られるように準備しているのです。

では、8日のニュースの場合はどう考えるべきか。果たして安倍元首相が殺害され
たというニュースが「派手な色味を避けるべきニュース」だったのか「喪服を着る
ニュース」だったのかという判断の問題になる。

一般論で言うと、通常、有名人が亡くなったからと言って「喪服」を着ることはニ
ュース番組ではまずない。では、多数の人が亡くなった場合などはどうか?例えば
最近で言えば「知床の遊覧船事故」の際にキャスターは喪服を着ていただろうか?
私の記憶では、多分着ていなかったと思う。

ニュース番組のプロデューサー経験者として鎮目氏は、喪服を着るのは例えば「追
悼番組」のような場合に限られるのではないか、あまり通常「ニュース番組でキャ
スターに喪服を着させる」という判断はしにくいのではないかと思う、と感想を述
べています。

8日のニュース番組の場合、どのような判断があって各局ほぼ「喪服」ということ
になったのか。なぜ「知床の事故では喪服ではなかったのに、安倍元首相は喪服だ
ったのか」を放送局関係者はどう説明するのだろうか。

そこで鎮目氏は、「みなさんの目には「横並びの喪服」はどのように映っただろう」
かと、問いかけます。

さて、テレビニュースの関係者として鎮目氏は「、「安倍元首相殺害事件報道」に関
する「気になったポイント」を提示しましたが、これらの4点に関して私たちはどの
ように受け止めたでしょうか?

田部康喜氏(コラムニスト)は、事件当日から3日経った7月11日のNHK番組「
クローズアップ現代」(7月11日)は、冷静かつ、安易な断定に踏み込まずに、事
件の背景に迫った、その後の報道の方向性の先駆となった優れた報道だと言える、と
高く評価している。

この段階になると、警察からの発表だけでなく、NHK独自の調査結果も加えて事件
の背景がさらに詳しくなる。

山上容疑者は「特定の宗教団体」に恨みがあり、安倍元首相がこの団体と近しい関係
にあると思い狙った、というところまでは直後の報道でも伝えられましたが、それ以
上のくわしい背景は分かりませんでした。

ところがNHKは、「特定の宗教団体」が旧統一教会(世界平和統一家庭連合)であ
ること、母親が統一教会にのめり込み、多額の寄付をするなどして家庭生活がめちゃ
くちゃになったことを報じました。

そして取材班は、山上容疑者の父親は建設会社を経営していた。そのあとを継いだ、
母親が世界平和統一家庭連合に入信、2002年に破産したことから、母親の教団に対す
る巨額の寄付が破綻の原因ではないかと推察しています。

メディアの事件報道は、短時間の取材の瞬発力と、日ごろからの準備ともいえる取材
活動にあります。

取材班は、教団の元信者と、山上容疑者の母親が通う「奈良教会」の信者の証言を得
ました。そこで「侍義生活ハンドブック」という、教団の信者向けの文書を入手し、
収入の10分の1を献金するようにうながす記述をまず明らかにします。

そして、取材班は「山上容疑者の母親の名前はときどき出てくる」という、同じ教会
に通う男性信者からつぎのような言葉を引き出しました。

「わたしも両親も多額の献金といえば、家を1軒売るぐらいの献金をしてきた。田ん
ぼとか家、屋敷、みんな抵当に入ったりして。二束三文になるわけですよ。それでも
やっぱり教会のことだから、2000万、3000万は出していたんじゃないですか」。

また、元信者の女性は、両親が信者であるという。彼女自身が、6年間で献金と印鑑
の購入などで約500万円を教団のために費やしたという。

「わたしたちの家庭は平和になれるからと親が本気で信じていて、自分の生活費とか
学費とか、そういうところも全部献金につぎ込んでしまう」

「親と信じるものが違うって、こんなにつらいんだって、自分じゃどうしようもない
ことと思う」
 
さらに、この元信者は、山上容疑者の母親が信者であることと、自分の境遇が似かよ
ったものであることから、いわれなき誹謗、中傷にこれからさらされるのではないか、
とおびえています。
 
「犯人(山上容疑者)の供述がまるで、自分の周囲で起きていたこと、周りの人たち
が経験してきたこととまるで同じことを言っていて。それがとんでもなく苦痛です」、
 「山上(容疑者)がやった暴力は絶対断固として認めない。

どんな立場であろうが。非難という言葉じゃ、表せないほどの強い憤りを犯人に感じ
ています。これはわたしだけではなくて、こうやって苦しんでいるわたしたちのよう
な境遇の人たちにも共通する意見です」と、元信者の苦悩をも伝えています)。

興味深いのは、山上容疑者が凶行に及んだひとつのきっかとなった、「安倍元首相の
ビデオメッセージ」と報道している。やはり、実物を見せることも映像報道の神髄で
です(注3)。

作家の平野啓一郎氏は、メディアには事件直後から安倍氏を礼賛する報道があふれる。
本来ならさまざまなことを切り分けて考えていくべきなのに、全てがないまぜになっ
ている、と懸念しています。

「容疑者がなぜ事件を起こしたのかを冷静に見ることが大事です。その過程で、なぜ
この団体が日本で拡大したのか、そこに政治の関わりがあるなら検証することを避け
て通ってはいけない。しかし、徹底した真相究明が必要という声はとりわけ与党の政
治家からは上がっておらず、論点のすり替えが起きているのが実情です」、と今回の
事件の政治的背景があいまいにされそうなことに、危惧を提出しました(注4)。

平野氏が抱いた危惧こそが、安倍元首襲撃が開けてしまったパンドラの箱の中身、つ
まり政治と宗教との関係で、これがこの事件の第二幕となります。

                      注
(注1)NHKWeb ニュース 2022年7月9日
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220709/k10013709001000.html
(注2)『現代ビジネス 電子版』(2022.07.09 )
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/97303?imp=0
(注3)『MAG2 ニュース』(2022.07.29)https://www.mag2.com/p/news/546917
    新恭のコメント
(注3)WEDGE ONLINE 2022年7月21日 https://wedge.ismedia.jp/articles/-/27337
(注4) 『毎日新聞』デジタル( 2022/7/24 16:00 最終更新 7/24 16:00)https://mainichi.jp/articles/20220724/k00/00m/040/027000c?cx_fm=mailasa&cx_ml=article&cx_mdate=20220725





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