曲がり角にきた日本社会-変容する国の基本構造-
私は、2025年という年は、戦後の日本にとって大きな曲がり角に差しかかった年、一つの
転換点という漠然とした印象をもっています。
その曲がり角とは、戦後80年という歴史の区切りという面もありますが、むしろ日本という
国のあり方に関して、それまで日本人が暗黙のうちに受け容れてきた前提が急速に不透明化し、
将来が見通せなくなってきたことを指します。
ここで、「国のあり方」とは、日本という国が「何で飯を食い」、どんな政治体制で国政が運営
され、世界の中で日本がどんな地位を維持し、そのためにどんな外交関係を結んでゆくのか、
といった大雑把な枠組みを意味します。
私には、これらの点で今の日本はこれまでの前提がどうやら前提となりえない状況になってい
る、と感じられます。個別にみてゆきましょう。
まず「何で飯を食い」という点ですが、これは日本経済の基本構造のことです。具体的には良
いものを大量生産して安く販売・輸出し、その利益で食料とエネルギー、その他の必要物資を
輸入して確保する、という仕組みです。
しかし、今年になって突如登場したトランプ関税により、この仕組に暗雲が覆うようになって
きました。
日本の輸出収入の28%は自動車とその部品が占めており、日本経済は「自動車の一本足打法」
といわれるほどこの分野に依存しています。
しかも自動車と部品の輸出先の3~4割はアメリカです。トランプ関税が適用された4月以前
には2.5%で、トランプ関税はそれに上乗せして25%の関税(つまり27.5%)を課してきました。
日本も必死の交渉を通じてEUと韓国並みの15%に引き下げることで合意しました。ただし、
EUや韓国に関しては、大統領令でこの点が明示され署名されているのに、日本の場合は今のと
ころ口約束だけです。
万が一、直ちに15%関税が提供されたとしても、これまでの2.5%と比べれば6倍になっている
のです。
このような場合の日本の企業の対応は、関税に相当する分を価格に上乗せ(転嫁)するのではな
く、逆にその分を負担して(つまり利益を削って)、価格を下げて販売台数を維持しようとします。
あるメーカーはこのために、1日2億円の損失が出ていると公表しています。
ところで、自動車産業は非常にすそ野が広い分野で、部品を製造している下請け企業(サプライ
チェーン企業)も含めると、日本人の550万人の雇用がかかわっています。
もし、トヨタ、ホンダなどの完成車を製造・販売している親会社が、関税負担の一部でも下請け
企業に負わせるとすれば、下請け企業の利益が削れられ、そこで働く人々の賃金を押し下げる可
能性があります。これは日本経済にとって大きなダメージになります。
こうした不利益を避ける方法の一つは、アメリカへの依存を下げること、二つは、関税分を販
売価格に上乗せしても十分競争に勝てるくらいの魅力的で質の高い車を提供することです。
そのためには、これまで価格を下げること(安売りすること)で市場を確保してきた日本の企
業の体質を変える必要があります。
そして、利益を内部留保金としてため込むのではなく、優秀な人材確保と訓練のための投資、
イノベーションや新規事業への投資など積極的な経営に転換しなくてはなりません。
実際、アップルのiPhoneは、いくら価格が上がっても売れるし、自動車でいえばベンツは競争
に勝つため安売りはしません。
もし、これからも安売りで世界経済の中で生き延びようとすれば、新興国との厳しい価格競争
の中で利益の薄い経済運営を覚悟しなければなりません。日本は、今後、どのような方向で行
くのかの選択を迫られています。
ここまで自動車に着目して、日本の輸出産業が陥った困難について書きましたが、同じとこは
米国へ輸出されるすべての製品について言えます。
トランプ関税の影響は、今後じわじわと日本経済を圧迫するようになるでしょう。図らずも、
今年のトランプ関税は、日本経済に大きな変化を迫るきっかけとなりました。
経済分野で注目すべき問題は、昨年から今年にかけて国民的関心を呼んだ、コメ不足と米価の
高騰です。
日本の食料自給率は40%を切っていますが、コメさえ十分にあれば何とかなる、と安心しき
っていました。
ところが、今年明らかになったのは、実はコメの生産が需要に追いついていなかった事実を初
めて政府(農水省)が認めたことです。
コメは日本人の主食の中核をなす食料であるばかりでなく、象徴的な存在で、実はそれが必ず
しも需要量を十分に満していなかったことは、国民に不安と少なからずショックを与えました。
もちろん、昨年からの高温によるコメの収量不足という特殊事情がその原因であることが一つ
の要因であったことは確かです。しかし、気候変動による農作物の不作という事態は、これか
らも起こりえます。
しかし、より根本的には、これまで自民党政権がずっと進めてきた「減反」政策により、作付
面積が減少し、意欲を失った生産農家数が一貫して減少してきたことが原因です。
それが、ちょっとした気候の変化やインバウンドによる需要の増加によってたちまちコメ不足
と価格の高騰を引き起こしてしまったのです。
今年に発生したコメ問題は私たちに、生きてゆくための大前提である食料を日本はこれからどの
ようにして安定的に確保してゆくのか、農業従事者が減少していく状況の中で農業を日本経済全
体の中でどのように位置づけるのか、を個々の農家の選択に任せるのではなく、国を挙げて真剣
に考えさせてくれました。
私の個人的な見解は、日本は農業を基幹産業の一つとして位置づけ、欧米各国が行っているよう
農家の所得補償をおこないつつ、国民にとって最も重要な食料の安全保障を確保すべき段階にき
た、というものです。
さて、以上は経済面における曲がり角、転換点でしたが、政治の世界においても大きな変化が起
きました。
まず昨年の衆議院選挙において与党の自公政権が過半数を割ってしまったこと、そして今年の衆
議院選挙においても過半数を割ってしまいました。
これにより、現石破政権は衆議院と参議院の双方で過半数に満たない少数与党になってしまいま
した。
戦後の日本において少数与党内閣は存在しました(1953年の第5次吉田内閣、1994年に発足した
羽田内閣)が、衆参ともはっきりと過半数を割った少数内閣はありませんでした。
石破政権は、これからの政治運営において、どこかの野党の協力を得なければ予算をはじめとす
る法案を通すことができません。
この状況は、国会における与野党間の“熟議”が不可欠で、ある意味で理想的ではあります。
ところで、自公が昨年の衆議院選でと過半数を割ってしまったのは、自民党議員の“裏金”問題(政
治と金の問題)、自民党の旧統一教会との密着が大きく影響したと言われています。
しかし、今年の参議院選では、これまでとは大きく異なる状況が生まれました。
自民党が「政治と金」の問題を根本的に是正する姿勢を見せなかったことは、相変わらず人々の
支持を失わせました。
また政権与党を構成する自民党と公明党は、従来の支持者の高齢化という問題をかかえており、
新たに若い世代の支持者を獲得できませんでした。
そんな中で国民民主党は衆議院選の勢いをそのままに議席を伸ばしました。そして、参政党が前
回の1議席から14議席へ激増したこと、保守党が新たに2議席獲得したことが注目されます。
いずれにしても、日本の政治は多党化の時代に入り、時の政権を握った政党(ほとんどは自民党
主導)が数の力で政策を押し通すという、戦後ずっと見せられてきた政治の在り方は変わらざる
を得ません。
この意味で、今年は日本の政治が大きな曲がり角にさしかかった年といえます。
ただ、ここで注意しなければならないのは、日本の政界がたんに多党化しただけではなかったと
いうことです。
とりわけ参政党が選挙運動で訴えた「日本人ファースト」というキャッチ・コピーが、かなり広
範囲の人々に訴えたということです。
参政党に投票した100人に、その理由を尋ねたところ、参政党が参院選で掲げた「日本人ファ
ースト」と答えた人が最多で54人だった。その内容は、
「日本人のための国をつくろうと当たり前のことを言っている」(50代男性、江東区、会社員)
「日本がどんどん貧しくなっている。日本のアイデンティティを大切にしたい」(40代女性、会
社員、世田谷区)
「日本人ファーストを言ってくれるのは参政党だけ」(30代男性、調布市、会社員)
というものでした。これらは、かなり代表的な本音だと思われます(注2)。
言い換えると、一生懸命働いても生活は楽にならないという不満が充満し、くすぶっている状況
に、不満のはけ口として参政党は「外国人ではなく「日本人ファースト」という「火種」を投げ
入れたために、一気に燃え広がったといえます。
ただし、参政党の主張には事実誤認や歪曲したものも少なくありません。とりわけ過去の
戦争に関する事実誤認や、在日外国人に関する事実と反する主張がいくつもあります(注1)
これからは国会の場で、根拠のない主張は社会的に厳しい批判を浴びることになるでしょう。
私が懸念しているのは、参政党の「右寄り」というより極右に近い政治姿勢です。「日本人ファ
ースト」の陰には外国人の排斥や差別につながる危険性があります。
また、参政党の「憲法案」には現行憲法で保障されていた「思想の自由」「人権の保障」「戦争
の放棄」がありません。また天皇を元首にとか、国家主義的主張が強く出ています。
参院選東京選挙区に立候補した参政党のさや氏(43 本名塩入清香)が7月3日配信のネット
番組で、「核武装が最も安上がりであり、最も安全を強化する策の一つだ」として日本の核保有
を公然と主張しています。
ノンフィクション作家の保坂正康氏は、こうした考えは「ウラの言論」としては存在していたが、
参政党の登場によって「オモテの言論」として公然と語られる風潮に強い危機感を覚えると語っ
ていますが(注3)、私も全く同感です。
もっと大きな視点でいえば、こうした状況を生んだ理由のひとつとして考えられるのが、日本社
会における前向きな国家論の空白です。夢や希望を語る明るい国家論に対する渇望感が参政党躍
進の背景にはあると思います(注4)
これについては次回以降に詳しく書いてみたいと思います。
(注1)『毎日新聞』電子版 2025/8/2 16:00 8.5日閲覧
https://mainichi.jp/articles/20250802/k00/00m/040/055000c?utm_source=article&utm_medium=email&utm_
campaign=mailasa&utm_content=20250803
(注2)『東京新聞』電子版 2025年7月21日 15時16分 7.24日閲覧
https://www.tokyo-np.co.jp/article/422556
(注3)BSTBS『報道1930』2025年8月15日放送。
(注4)PRESIDENT Online 2025/07/18 17:00 7.19 閲覧
https://president.jp/articles/-/98559?cx_referrertype=mail&utm_source=presidentnews&utm_medium=email&utm_
campaign=dailymail
私は、2025年という年は、戦後の日本にとって大きな曲がり角に差しかかった年、一つの
転換点という漠然とした印象をもっています。
その曲がり角とは、戦後80年という歴史の区切りという面もありますが、むしろ日本という
国のあり方に関して、それまで日本人が暗黙のうちに受け容れてきた前提が急速に不透明化し、
将来が見通せなくなってきたことを指します。
ここで、「国のあり方」とは、日本という国が「何で飯を食い」、どんな政治体制で国政が運営
され、世界の中で日本がどんな地位を維持し、そのためにどんな外交関係を結んでゆくのか、
といった大雑把な枠組みを意味します。
私には、これらの点で今の日本はこれまでの前提がどうやら前提となりえない状況になってい
る、と感じられます。個別にみてゆきましょう。
まず「何で飯を食い」という点ですが、これは日本経済の基本構造のことです。具体的には良
いものを大量生産して安く販売・輸出し、その利益で食料とエネルギー、その他の必要物資を
輸入して確保する、という仕組みです。
しかし、今年になって突如登場したトランプ関税により、この仕組に暗雲が覆うようになって
きました。
日本の輸出収入の28%は自動車とその部品が占めており、日本経済は「自動車の一本足打法」
といわれるほどこの分野に依存しています。
しかも自動車と部品の輸出先の3~4割はアメリカです。トランプ関税が適用された4月以前
には2.5%で、トランプ関税はそれに上乗せして25%の関税(つまり27.5%)を課してきました。
日本も必死の交渉を通じてEUと韓国並みの15%に引き下げることで合意しました。ただし、
EUや韓国に関しては、大統領令でこの点が明示され署名されているのに、日本の場合は今のと
ころ口約束だけです。
万が一、直ちに15%関税が提供されたとしても、これまでの2.5%と比べれば6倍になっている
のです。
このような場合の日本の企業の対応は、関税に相当する分を価格に上乗せ(転嫁)するのではな
く、逆にその分を負担して(つまり利益を削って)、価格を下げて販売台数を維持しようとします。
あるメーカーはこのために、1日2億円の損失が出ていると公表しています。
ところで、自動車産業は非常にすそ野が広い分野で、部品を製造している下請け企業(サプライ
チェーン企業)も含めると、日本人の550万人の雇用がかかわっています。
もし、トヨタ、ホンダなどの完成車を製造・販売している親会社が、関税負担の一部でも下請け
企業に負わせるとすれば、下請け企業の利益が削れられ、そこで働く人々の賃金を押し下げる可
能性があります。これは日本経済にとって大きなダメージになります。
こうした不利益を避ける方法の一つは、アメリカへの依存を下げること、二つは、関税分を販
売価格に上乗せしても十分競争に勝てるくらいの魅力的で質の高い車を提供することです。
そのためには、これまで価格を下げること(安売りすること)で市場を確保してきた日本の企
業の体質を変える必要があります。
そして、利益を内部留保金としてため込むのではなく、優秀な人材確保と訓練のための投資、
イノベーションや新規事業への投資など積極的な経営に転換しなくてはなりません。
実際、アップルのiPhoneは、いくら価格が上がっても売れるし、自動車でいえばベンツは競争
に勝つため安売りはしません。
もし、これからも安売りで世界経済の中で生き延びようとすれば、新興国との厳しい価格競争
の中で利益の薄い経済運営を覚悟しなければなりません。日本は、今後、どのような方向で行
くのかの選択を迫られています。
ここまで自動車に着目して、日本の輸出産業が陥った困難について書きましたが、同じとこは
米国へ輸出されるすべての製品について言えます。
トランプ関税の影響は、今後じわじわと日本経済を圧迫するようになるでしょう。図らずも、
今年のトランプ関税は、日本経済に大きな変化を迫るきっかけとなりました。
経済分野で注目すべき問題は、昨年から今年にかけて国民的関心を呼んだ、コメ不足と米価の
高騰です。
日本の食料自給率は40%を切っていますが、コメさえ十分にあれば何とかなる、と安心しき
っていました。
ところが、今年明らかになったのは、実はコメの生産が需要に追いついていなかった事実を初
めて政府(農水省)が認めたことです。
コメは日本人の主食の中核をなす食料であるばかりでなく、象徴的な存在で、実はそれが必ず
しも需要量を十分に満していなかったことは、国民に不安と少なからずショックを与えました。
もちろん、昨年からの高温によるコメの収量不足という特殊事情がその原因であることが一つ
の要因であったことは確かです。しかし、気候変動による農作物の不作という事態は、これか
らも起こりえます。
しかし、より根本的には、これまで自民党政権がずっと進めてきた「減反」政策により、作付
面積が減少し、意欲を失った生産農家数が一貫して減少してきたことが原因です。
それが、ちょっとした気候の変化やインバウンドによる需要の増加によってたちまちコメ不足
と価格の高騰を引き起こしてしまったのです。
今年に発生したコメ問題は私たちに、生きてゆくための大前提である食料を日本はこれからどの
ようにして安定的に確保してゆくのか、農業従事者が減少していく状況の中で農業を日本経済全
体の中でどのように位置づけるのか、を個々の農家の選択に任せるのではなく、国を挙げて真剣
に考えさせてくれました。
私の個人的な見解は、日本は農業を基幹産業の一つとして位置づけ、欧米各国が行っているよう
農家の所得補償をおこないつつ、国民にとって最も重要な食料の安全保障を確保すべき段階にき
た、というものです。
さて、以上は経済面における曲がり角、転換点でしたが、政治の世界においても大きな変化が起
きました。
まず昨年の衆議院選挙において与党の自公政権が過半数を割ってしまったこと、そして今年の衆
議院選挙においても過半数を割ってしまいました。
これにより、現石破政権は衆議院と参議院の双方で過半数に満たない少数与党になってしまいま
した。
戦後の日本において少数与党内閣は存在しました(1953年の第5次吉田内閣、1994年に発足した
羽田内閣)が、衆参ともはっきりと過半数を割った少数内閣はありませんでした。
石破政権は、これからの政治運営において、どこかの野党の協力を得なければ予算をはじめとす
る法案を通すことができません。
この状況は、国会における与野党間の“熟議”が不可欠で、ある意味で理想的ではあります。
ところで、自公が昨年の衆議院選でと過半数を割ってしまったのは、自民党議員の“裏金”問題(政
治と金の問題)、自民党の旧統一教会との密着が大きく影響したと言われています。
しかし、今年の参議院選では、これまでとは大きく異なる状況が生まれました。
自民党が「政治と金」の問題を根本的に是正する姿勢を見せなかったことは、相変わらず人々の
支持を失わせました。
また政権与党を構成する自民党と公明党は、従来の支持者の高齢化という問題をかかえており、
新たに若い世代の支持者を獲得できませんでした。
そんな中で国民民主党は衆議院選の勢いをそのままに議席を伸ばしました。そして、参政党が前
回の1議席から14議席へ激増したこと、保守党が新たに2議席獲得したことが注目されます。
いずれにしても、日本の政治は多党化の時代に入り、時の政権を握った政党(ほとんどは自民党
主導)が数の力で政策を押し通すという、戦後ずっと見せられてきた政治の在り方は変わらざる
を得ません。
この意味で、今年は日本の政治が大きな曲がり角にさしかかった年といえます。
ただ、ここで注意しなければならないのは、日本の政界がたんに多党化しただけではなかったと
いうことです。
とりわけ参政党が選挙運動で訴えた「日本人ファースト」というキャッチ・コピーが、かなり広
範囲の人々に訴えたということです。
参政党に投票した100人に、その理由を尋ねたところ、参政党が参院選で掲げた「日本人ファ
ースト」と答えた人が最多で54人だった。その内容は、
「日本人のための国をつくろうと当たり前のことを言っている」(50代男性、江東区、会社員)
「日本がどんどん貧しくなっている。日本のアイデンティティを大切にしたい」(40代女性、会
社員、世田谷区)
「日本人ファーストを言ってくれるのは参政党だけ」(30代男性、調布市、会社員)
というものでした。これらは、かなり代表的な本音だと思われます(注2)。
言い換えると、一生懸命働いても生活は楽にならないという不満が充満し、くすぶっている状況
に、不満のはけ口として参政党は「外国人ではなく「日本人ファースト」という「火種」を投げ
入れたために、一気に燃え広がったといえます。
ただし、参政党の主張には事実誤認や歪曲したものも少なくありません。とりわけ過去の
戦争に関する事実誤認や、在日外国人に関する事実と反する主張がいくつもあります(注1)
これからは国会の場で、根拠のない主張は社会的に厳しい批判を浴びることになるでしょう。
私が懸念しているのは、参政党の「右寄り」というより極右に近い政治姿勢です。「日本人ファ
ースト」の陰には外国人の排斥や差別につながる危険性があります。
また、参政党の「憲法案」には現行憲法で保障されていた「思想の自由」「人権の保障」「戦争
の放棄」がありません。また天皇を元首にとか、国家主義的主張が強く出ています。
参院選東京選挙区に立候補した参政党のさや氏(43 本名塩入清香)が7月3日配信のネット
番組で、「核武装が最も安上がりであり、最も安全を強化する策の一つだ」として日本の核保有
を公然と主張しています。
ノンフィクション作家の保坂正康氏は、こうした考えは「ウラの言論」としては存在していたが、
参政党の登場によって「オモテの言論」として公然と語られる風潮に強い危機感を覚えると語っ
ていますが(注3)、私も全く同感です。
もっと大きな視点でいえば、こうした状況を生んだ理由のひとつとして考えられるのが、日本社
会における前向きな国家論の空白です。夢や希望を語る明るい国家論に対する渇望感が参政党躍
進の背景にはあると思います(注4)
これについては次回以降に詳しく書いてみたいと思います。
(注1)『毎日新聞』電子版 2025/8/2 16:00 8.5日閲覧
https://mainichi.jp/articles/20250802/k00/00m/040/055000c?utm_source=article&utm_medium=email&utm_
campaign=mailasa&utm_content=20250803
(注2)『東京新聞』電子版 2025年7月21日 15時16分 7.24日閲覧
https://www.tokyo-np.co.jp/article/422556
(注3)BSTBS『報道1930』2025年8月15日放送。
(注4)PRESIDENT Online 2025/07/18 17:00 7.19 閲覧
https://president.jp/articles/-/98559?cx_referrertype=mail&utm_source=presidentnews&utm_medium=email&utm_
campaign=dailymail