大木昌の雑記帳

政治 経済 社会 文化 健康と医療に関する雑記帳

検証「新型コロナウイルス肺炎」(4)―布マスク製造の4社目をひた隠しする政府―

2020-04-25 17:22:21 | 健康・医療
検証「新型コロナウイルス肺炎」(4)
―布マスク製造の4社目をひた隠しする政府―

4月の17日から、安倍首相の肝いりで実際されている、布マスクの配布が進行していますが、
この施策には多くの問題があります。

この深刻な事態の下で、布マスク配布は、全体からみると小さな問題のように見えるかも知れま
せん。しかし、この施策は、安倍政権の性格とコロナ肺炎に対する姿勢を象徴的に、しかも鮮明
に浮き彫りにしている、という意味で、決して小さな問題ではありません。

現在、多くの中小企業、とりわけ飲食業界や観光関連事業者は、倒産の危機に瀕しています。

パートや非正規の人たち、フリーランスのひとたちもこれまでの収入と比べれば激減しています。

経済的問題については、別の機会に検討しますが、非常に多くの人が、今日・明日の生活をどうす
るのか、というギリギリのところに追い込まれています。

それでも、命の方が大事だ、と言われればそのとおりで、自粛を受け入れています。

こうした事情を考えると、巨額の税金をつかって実施されている布マスクの配布には、苦境に立た
されている人びとの感情を逆なでする疑問と疑惑があります。

以下4点に絞って、考えてみましょう。

第一に、安倍首相の肝いりで始めた布マスクの配布です。安倍晋三首相が41日、新型コロナウイ
ルスの感染防止策として、全国の約5000万世帯に対し布マスクを2枚ずつ配ると表明し、17
日から東京都内で配達を開始し、5月中に全国への配達完了を目指しているとのことです(注1)。

しかし、この布マスク配布に背景と実態を知ると、国民の感情を逆なでする問題が幾つもあります。

安倍首相の布マスク配布に対する多くの国民の反応は冷ややかで、これをアベノミクスならぬ「ア
ベノマスク」と嘲笑し、“外国のメディアは、“これはエイプリル・フールではないか“(つまり”冗談“
ではないか)と揶揄しています。

それでは、この「英断」にどれほどの深い洞察や思慮があったのでしょうか?『朝日新聞』(2020年
4月3日)によれば、この策は「経済官庁出身の官邸官僚」が「全国民に布マスクを配れば。不安は
パッと消えます」と発案したのだという。

前文科省事務次官の前川喜平氏は「アベノマスクという愚策」というタイトルのコラム記事で、この
「官邸官僚」が、今井尚哉首相秘書官にちがいないと書いていますが、これは今や公然の秘密です。
どうやら2月27日の突然の「全国一斉休校要請」も彼の発案だったようだ。

前川氏の言う通り、「どうせ国民は愚かだ。いくらでもだませると見くびっているのだ」、「こんな子
供だましでだませるほど国民は愚かだと思いっているのか」と怒りのコメントをしています。まったく
同感です(『東京新聞』2020年4月5日 「本音のコラム」)。

ここには、真剣にマスク不足を解消し、国民の健康を守ろうという政治家としての真摯な配慮は全く見
られません。逆に、なんと思慮の足りない、浅はかな政治家なのか、という印象を与えてしまいます。

井戸まさえ氏は、“全国民が唖然・・・「マスク2枚」で完全に露呈した安倍政権の「闇」 なぜ誰もと
めなかったのだろうか」”のタイトルで、「対策本部の面々の中でひとりだけ顔に比して小さなマスクを
かける安倍総理の姿は、コロナ対策への足らざる対策を象徴するようで、さらに不安を掻き立てる」と、
バッサリ(注2)。

井戸まさえ氏が言うように、“なぜ誰も止めなかったのだろうか”と思ってしまいます。これが、自民党政
権の現実といてば現実なのですが、本当になさけなくなります。

自民党議員でさえ、布マスク2枚配布に賛同している人はいませんし、第一、この布マスクを使っている
自民党議員は安倍首相を除いて誰一人いません。

第二に、1世帯2枚という数という数が何を根拠にしているのか分かりません。もちろん、1世帯当たり
の人数はバラバラで、それらをいちいち考慮したのでは、早い配布には間に合わない、という理屈は成り
立ちます。

しかし、例えば二人世帯だとしても、それぞれの洗い替えを考えれば、4枚は必要です。今のままでは、
1人世帯の人しか有効ではありません。

第三は、この布マスクの配布に関する費用です。菅官房長官は記者会見で、1枚当たり200円ほどで、
予算としては200億円ほどになる、と答えていました。

ところが、フタを開けてみると、配布する経費を466億円と見積もり、2020年度補正予算案でまずは
233億円、20年度当初予算の予備費で233億円を支出する計画だという。

これはあまりにもひどい税金の無駄使いです。しかも、問題はそれだけではありません。

厚労省によると、全戸配布用の布マスクの納入元は計3社で契約金額は興和が約54億8千万円、伊藤忠約
28億5000万円、マツオカコーポレーション約7億6000万円で、合計しても90億9000万円に
しかなりません。

それでは、あとの375億円はどうなったのでしょうか?ここに、大きな疑惑があります。

菅官房長官は、コストを抑える努力をしたために安くあがった、という趣旨の説明をしていますが、あまり
にも金額の差が大きすぎるのです。

厚生労働省は受注企業について「興和、伊藤忠商事、マツオカコーポレーションの3社プラス1社」と説明し、
残る1社については公表していません。残る1社についても公共調達のルール上、公表する義務があり、野党
は公表を強く求めていますが厚労省の担当者はかたくなに拒み、かえって疑念が広がっています(注3)。

政治家や官庁が、ひた隠しに隠しているのには何か知られたらまずい、何か秘密があるにちがいありません。

万が一にでも、この第4社目が、政治家との関連が疑われる企業だとしたら、それは、あまりにも国民を愚
弄しています。

社民党の福島瑞穂議員、厚労省に問い合わせて得た回答では3社分の金額しか示されていません。福島氏は、
地震のツイッターで、厚労省は4社と言っていたのに、3社になったことは疑問だと書いています。

この点はメディアも再三質問しましたが、厚労省も菅官房長官も曖昧にして逃げています。

計算すれば小学生でもわかるように、常識的に考えれば、第4社が375億円分を納入したのか、あるいは、
この税金を他の目的につかうつもりなのか、いずれにしても、国民の税金の使い道は、その使途と明細を明
らかにすることが義務付けられています。

菅官房長官は、記者会見でこの375億円の使い道に関して記者会見で問われても、正面から答えず、会見
場を後にしました。

こういう、誰が見てもおかしいと思う、お金にまつわる疑惑を明らかにしないのは、安倍政権下でこれまで
も何度も見せられてきました。

こうした体質が、今回の布マスク配布にも、はからずも出てしまった感があります。

多くの人が自粛で苦しんでいる、この状況下で、これほど巨額の税金がどのように使われているのかを明らか
にしないということは、政府のコロナ対策に対する信頼性を失わせます。また、日々、倒産や生活破綻の危機
に直面している人たちの感情を逆なでするものです。

第四は、配布された布マスクの品質に関する問題です。

これに関してはすでにテレビその他のメディアで再三取り上げられているように、配布された妊婦向け、一般
向けの布マスクの中に、カビが生えていたり、髪の毛らしい物が入っていたり、ひどいのは虫が袋に入ってい
たようです。

厚労省によれば、 政府が妊婦向けに配布した布マスクに汚れなどが見つかった問題で、加藤厚生労働相は4
月21日の閣議後記者会見で、同日午前までに見つかった不良品の総数が、143市区町村で7870枚に上
ることを明らかにした。そして、全世帯用でも同様の問題が発生しています。

これらのマスクは、日本のメーカー4社が海外の工場で製作した物で、その海外とは中国、ベトナム、ミャン
マーの工場であることが分かっています(『読売新聞』20204月21日)ここでも日本のメーカーは4社であ
ることが明記されています。

この4社は、数さえそろえば問題ないと軽く考え、製造課程での品質管理を全く無視したとしか思えません。
もしそうだとしたら、これらの日本企業の経済倫理感は最低です。

しかも、日本を代表する商社の一つである伊藤忠でさえもこの状態なのです。

思い付きのパフォーマンスで、全国民に2枚の布マスクをあてがっておけば、みんな喜んで、政権への支持が上
がるとでも思ったのでしょうか?

そんな風には思いたくありませんが、どう考えても、それより深い思慮と配慮があるようには感じられません。



(注1)『東京新聞』電子版(2020年4月24日 13時55分)https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2020042490135553.html
(注2)https://gendai.ismedia.jp/articles/-/71569?page=1 (2020.4.3)
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(注3)『毎日新聞』電子版 2020年4月24日 19時44分(最終更新 4月25日 08時28分)  https://mainichi.jp/articles/20200424/k00/00m/010/208000c




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検証「新型コロナウイルス肺炎」(3)―首相と都知事の初動の対応の遅れ―

2020-04-18 20:47:24 | 健康・医療
検証「新型コロナウイルス肺炎」(3)
―首相と都知事の初動の対応の遅れ―

前回の検証記事は、クルーズ船「ダイアモンド・プリンセス」において、日本人乗船客の中に
700人を超える感染者を出してしまったことの経緯を書きました。

しかし、不思議なことに、この感染爆発に関して政府も厚労省も、なぜこのような事態が発生
したのかを検証しようとしません。したがって、誰も責任をとっていません。

クルーズ船以降にも取り上げる問題は幾つもありますが、その前にどうしても気になる二つの
問題を検証してみたいと思います。

一つは、今回のコロナは肺炎の震源地ともいえる中国からの入国制限と全面禁止の遅れです。
これは初期の段階で実施していれば、状況はかなり変わったはずです。

中国の湖北省武漢市を中心として新型コロナ肺炎のまん延がはっきりした今年の1月、日本政
府は同月29日、30日、31日の3回に分けてチャーターで現地の日本人を帰国させました。

また、1月31日には、14日以内に湖北省に滞在したことのなる外国人、湖北省で発行され
た中国旅券の所持者の入国を拒否する決定をし、2月1日から実施しました。言い換えると、
湖北省以外の地域からは入国できることになります(後に浙江省も追加)。

これについては、このブログの2月25日の記事「続「新型コロナウイルス肺炎の波紋」でも
指摘してきました。

ここに最初の大きな落とし穴がありました。今年の中国の「春節」(日本の正月)は1月25
日で、国民は24日から30日までが休暇でした。つまり、武漢を含む湖北省から大勢の中国
人が春節休暇に日本に入国していたのです。

このように考えると、2月1日の入国制限は、実に微妙なタイミングです。

台湾政府は、中国での新型肺炎のまん延をみて2月初旬に中国全土からの入国を禁止しました。

しかし、日本政府は2月末になっても、中国全土からの入国制限や禁止をしていませんでした。

2月末でさえ、たとえば26日には首相補佐官など複数の自民党議員が政治資金パーティーを開
いていたことからも分かるように、政治家の間でもまだ危機感は弱かったのです。

あるメデディアは、安倍首相が中国人の入国を全面禁止できない要因として、①インバウンド、
②4月の周近平国家主席の訪日、③7月の東京オリンピックの3つを上げていますが、私も同感
です(注1)

①のインバウンドとは、年間700万人もの訪日中国人が“爆買い”や宿泊、旅行などで使ってく
れるお金で、日本の観光業にとって大きな収入源です。

政府は、これも考慮して中国人の入国全面禁止になかなか踏み切れなかった可能性がありあます。

②の周主席の訪日は、4月に中国の習近平国家主席を国賓として迎えること、そこで初めての日
中首脳会談を行うことです。

③は、7月に行われる予定だった東京オリンピック・パラリンピックの開催です。

上記のうち、安倍首相は②と③を、後世に残したい「政治的レガシー」として重要視していたよ
うです。「レガシー」とは通常、「遺産」を指しますが、ここでは「後に残る偉業」といったほ
どの意味です。

まず、②の周主席の訪日ですが、3月5日、新型コロナ肺炎まん延の影響で、周主席の来日が延
期となることが中国より日本政府に知らされました。

偶然かどうか分かりませんが、その日の夕方、急遽開かれた「新型ウイルス感染症対策本部」の
会議で、中国と韓国の人に発給済みのビザの効力を停止する、との決定がなされました(施行は
9日から)。ここでは湖北省という限定はなくなり、中国全土を対象にはしていますが、まだ、
2週間の待機期間をどこかで過ごせば入国は可能でした。

考えようによっては、周主席の訪日が延期となるまで、中国側に忖度して、中国全土からの入国
制限を伸ばしていたとも解釈できます。これが、初動の防疫が遅れた第一の問題です。

ちなみに、中国からの名実ともに全面禁止は4月1日まで待たなければなりませんでした。

次に③のオリンピックにと防疫との関係です。新型コロナ肺炎が市中感染の段階に入った3月の
中旬以降、はたして東京オリンピックは今年の7月に開会できるのか、中止になるのか、延期に
なるのかが毎日のように議論になっていました。

というのも、3月13日には世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長が「欧州がパンデミッ
ク(世界的大流行)お中心になった、という「パンデミック宣言」を発しました。

日本側は、ひょっとしたらオリンピックが中止になるのではないかと、とかなりの危機感を持っ
ていました。
3月20日を過ぎたあたりから、安倍、小池両氏にとって、「東京五輪」が重大テーマとなって
いました。

今日の東京都における感染拡大に一つの大きなきっかけとなったのは、3月20からの3連休で、
この3連休で「気が緩んで多くの都民が外出してしまった」ことだと考えられています。

しかし、直前の19日の記者会見で小池氏は、まだ延期の決定前だったオリンピックについて、
「中止も無観客もあり得ない」と強調する程度で、3連休の外出自粛には特に触れませんでした。
これと対照的だったのは大阪府の吉村知事でした。19日に緊急会見を開き、府内の感染者が数
十倍に拡大する可能性を示唆した厚労省の“非公開”試算を提示して、「3連休は(兵庫県との)往
来は控えていただきたい」と強く求めました。

この時の結果は、2週間以上経った4月の初旬に現れました。共に人口規模は1400万人前後の
「東京都」と「大阪府+兵庫県」の感染者を比べると、4月2日~5日まで、連日「東京都」は「
大阪+兵庫県」の2倍以上であった。

ここまで差がついたことについて『日刊ゲンダイ』(2020年4月7日)は、小池知事が「五輪ファ
ースト」だったからだろうと書いていますが、同感です。

実は東京都にも大阪同様、感染者の増加が厚労省からとどいていたのだ。小池知事は、大阪府知事
と同様、連休の前に外出の自粛を強く求めておくべきだったのです。

ところが、小池氏も政府も関係者も、オリンピックは中止だけはなんとしても避け、せめて延期に
持ち込めないか、とIOC(国際オリンピック委員会)に必死の説得を続けていました。

その功もあって、3月24日、バッハIOC会長から、1年程度延期するとの同意を得ました。

これを境に、雰囲気が急転したのが小池百合子東京都知事でした。

それまで、コロナ肺炎にたいしてはほとんど言及がなかったのに、オリンピックが延期と決まった
翌日の3月25日、突如、東京都の感染が「重大局面」にあり、「ロックダウン」(都市封鎖)の
可能性さえある、と言い始めたのです(『東京新聞』2020年4月1日)。

翌26日の朝日新聞は、「ロックダウン」発言後の小池氏は「終始上機嫌だった」と報じた。連日
テレビ行脚し、NHK「日曜討論」では「今が『いざ』という時だ」と危機を煽っていたが、内心
は大はしゃぎだったらしい。

前出『日刊ゲンダイ』の都政記者によれば、小池氏は「『今日は〇〇っていうテレビに出る』『今
度はXXに出演するの』と周囲に語り、やたらとハイテンションです。連日テレビに出られるのがよ
ほどうれしかったのでしょう」、と書いています。

いまでは、小池氏はコロナ肺炎と先頭に立って闘う勇ましリーダーのように振る舞っています。し
かし、どう考えても、3連休の前に、大阪府知事のように、強く自粛を求めなかったことは大きな
失策だったと思います。

オリンピックが延期になったことで、急遽、コロナ肺炎のまん延について話し出したのでは、との
記者の質問に、「貴紙はそのように書いていますが、そんなことはありません」と突っぱねていま
す。この前後の彼女の言動をみると、私にはにわかに信じられません。

ニューヨーク州はカリフォルニア州より、わずか3日遅く外出禁止令をだしたために、4月7日現
在、ニューヨーク州の感染者は16万人、死者が7000人にたいして、カリフォルニア州はそれ
ぞれ2万人と500人にとどまっている。

初期段階での3日間は、非常に大きな影響をもちます、まして、日本の場合、たんなる3日ではなく、
3連休という特別な3日間で、予想通り、多くの人がお花見やレジャーに繰り出しました。

責任ある立場の人は、過ぎたことだから、と曖昧にしないで、責任の所在を明らかにすべきです。

(注1)たとえば『東洋経済 ONLINE』 2020/02/26 7:40 https://toyokeizai.net/articles/-/332702)






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検証「新型コロナ肺炎」(2)―全てはクルーズ船から始まった―

2020-04-13 14:27:36 | 健康・医療
検証「新型コロナ肺炎」(2)
―全てはクルーズ船から始まった―

新型コロナ肺炎の感染者と死者の数は、日を追って増え続けています。4月11日現在、日本全体
で7000人超の感染者が発生し、日々、増加し続けています。

私たちは、なぜ、このような事態にいたったのか、また、この先、一体、どこまでこの感染症が広が
り、いつまで続くのか、とても不安を感じています。

このような時は、ただ恐れたり、不安に思ったりするだけでなく、冷静に、なぜここまで事態が深刻
になってしまったのかの原因を、遡って検証することが是非必要です。

そこで、今回は、日本で最初に集団感染が起こった、クルーズ船ダイアモンド・プリンセス(DP)
における集団感染の実態を時系列を追って検証しましょう。

1月20日 ベトナムや台湾、沖縄を経て2月3日に横浜に戻る予定で横浜港出発
  25日 途中、香港に寄港(香港在住の80才の男性が下船)
2月1日  香港で下船した男性の新型コロナ肺炎感染が判明。
  3日  DP横浜沖停泊 
  4日  乗員・乗客の中から10人の感染者が判明
  5日  検疫検査(PCR)を拡大。 乗客に対して個室待機を要請し、潜伏期間を考えて19
      日までの健康観察を実施することを決定
 10日 この日までに135人の感染が判明
 14日 持病のある高齢者を船外施設へ移動
 17日 全ての乗客の検体採取(PCR検査)を完了
 19日 健康観察期間終了。陰性で健康状態に問題のない乗客449人下船
3月1日 それまで残っていた乗員・乗客全員が下船。これで3711人が下船船したことになる。
     この時までに日本人感染者は710人以上に達していた。

それでは、クルーズ船内でなにが起こっていたのか、そして政府や厚労省はどのように対応していた
のかを乗客の証言も含めてくわしく見てみましょう。

1日深夜には香港政府が、香港で下船した乗客(80)が、新型コロナウイルス肺炎と確認されたと発
表しました。しかし、この事実は乗客には知らされませんでした。

2月3日には横浜港に向けて出航しました。ところが、ある乗客によれば、この日の昼には船内調理室
の見学ツアーがあり、男性も参加した。調理スタッフも使う通路を通り、すぐそばで調理もしていた。
参加者は200人ほどいたが、マスクを着けている人は、ほとんどいなかったという(注1)。

このころの様子を、金沢市の70代の別の男性が『東京新聞』の取材でつぎのように語っています。

この男性は一人でツアーに参加し、1月20日に横浜港を出港し、鹿児島、香港、ベトナム、沖縄な
どを巡り、2月4日に横浜港で下船予定でした。

異変に気付いたのは既に荷造りを終えていた2月3日の夜のことでした。船内放送で4日に下船でき
なないことを知ります。この時、金沢にいる妻からのメッセージで、感染者が出たことを知りました。

ここで注意すべきは、3日には船内感染の可能性があったにもかかわらず、船内調理見学ツアーが行
われていたことです。しかし、まだ全体に危機意識は薄かったようです。

さて、金沢の男性の話に戻しましょう。3日には船は横浜港の埠頭に横付けされました。しかし4日
ははまだ船内での行動は制限されず、朝昼晩と感染リスクの高いバイキング形式で食事していました。
マスクをした乗客は記憶にないそうです。

船内のバイキング形式の食事は、感染リスクが非常に高く、一度自分の皿に盛ったものをまた戻した
りりする人がいるような状況でした。

4日といえば、翌日からの検査と客室待機が始まる前日で、この段階では検疫所も政府もすでに感染
防御に動き始めていた時期です。

客室待機となったのは5日。部屋の前の通路には、外出しないよう見張りがつきました。感染者の数
は日を追うごとに増えていたが、どの階で出たかまでは知らされなかった。
 
食事や飲料は、食堂に行くのではなく、部屋で乗務員から手渡しで受け取るようになり、一日に何度
も別の乗務員が訪れるようになりました。

この男性は、「乗務員から感染が広がるのではないか」と不安になり、繰り返し手を洗いました。

7~10日は2日に1回、11日からは毎日、一時間ほどデッキでの散歩が認められました。不安の
中で、電話で家族や友人から励まされ「自分が陽性のはずがない」と自分に言い聞かせ何とか平常心
を保ちました。

PCR検査を受けたのは14日で、18日の夜、陰性と下船決定を伝える書面が部屋のドアの下から
入れられました。「やっと解放される」と、ほっとしました。19日に下船し、新幹線で金沢に戻り
ました(『東京新聞』2020年3月25日 夕刊)

ここまで、見てきて分かるように、感染が起こった当初(おそらく、80才の男性が香港で下船した
2月1日以前からはじまっていた)には、中国の武漢におけるコロナ肺炎の広がりについては広く知
られていたにも関わらず、4日くらいまでは、船内にはほとんど危機感も緊張感もありませんでした。

陸上の政府・厚労省では、全く別の事態が起こっていました。

ダイヤモンド・プリンセス号が横浜港沖に停泊した2月3日の午後10時すぎ。厚生労働省の会見室は、
報道陣でごった返していました。乗客をいつ、どう下船させるのか。記者たちから矢継ぎ早に質問が
飛びました。

「問題なければ、自宅に帰ってもらいます」。厚労省の担当者は、そう説明しています。当時ある幹
部は「症状のある人を中心に検査する」と話していた。無症状なら、検査もせずに帰宅させる――。
それが政府の方針と受け止められていた、と述べています。

この時点では、厚労省は感染の可能性はあるが、楽観的に構えていました。

しかし、事態は一転する。翌日、そんな楽観を吹き飛ばす「問題」が判明したからです。4日午後10
時ごろ、加藤勝信厚労相から菅官房長官に「これは大変なことになりました。これから対応を協議し
ませんか
」との電話が入りました。

「大変なこと」とは、乗員乗客10人の感染が判明したことを指していた。最初に検査結果が出た31
人の約3分の1が感染していた事実が、政権幹部に内々に伝えられた直後のことでした。

感染拡大を防ぐため、乗員乗客に14日間ほど船内にとどまってもらう「全員の船内隔離」が決まり、
加藤厚労相は5日朝の記者会見で発表した。「残る乗員、乗客の皆さんには、引き続き船内にとどま
っていただきたい」との方針が決定されました。

同時に厚労省は、当初は14日間の健康観察期間が終わった段階で症状がない人は検査を行わずに下船
させる予定でいたが、10人の感染者が出たため、急遽、検査が陰性だった乗客だけを順次下船させ
ていく方針に転換しました。

「船内隔離」を決めてから10日が経った2月15日。中国・武漢からチャーター機で帰国した人のうち、
健康観察期間に症状がなかった人は、期間終了後の検査でも1人を除いて陰性だった、というデータを
判断の根拠に挙げ、厚労省は、下船者に感染の恐れはないとして公共交通機関での帰宅も認めました。

当時は、高齢者が多い乗客を船内にとどめておくことに国内外から批判が高まっており、加藤厚労相
は「ギリギリの判断で決めた」と説明しました。

ところが、陰性だったとして下船した栃木県の女性が、22日、陽性になったことが発覚しました。
船内の感染防止策や、下船者を公共交通機関で帰宅させた対応などに、疑問や批判の声があがった。
結局、厚労省は、下船者に公共交通機関の利用を避けるように求めたりと、ここでも対応の変更を迫
られることになりました(注2)。

しかも、船内の驚くべき実態は、後になって関係者から次つぎに明らかにされてゆきました。

クルーズ船で働いていた日本人乗員が『共同通信』の取材に応じて、政府が乗客に室内待機を求めた
2月5日以降も「乗員は行動を制限されず、ウイルス検査で陽性だった乗客と接触していた。マスク
着用以外の感染防護策は乗員任せだった」ことを明かしました。

また、2月10日に政府の依頼でクルーズ船に乗り込んだ専門家チームの一人(東京慈恵会医大感染
制御科の吉田正樹教授)は、感染しているかも知れない乗員が「手袋をしていたが、手指のアルコー
ル消毒が不十分な様子」で乗船手続きをしている光景に違和感を覚えた、という。

聞き取りを進めると、乗員は二人部屋に泊まり、食堂で食事をしていることが分かりました。「乗員
同士で感染する状況はあった」と振り返っています。

吉田教授に続いて船内に入った岩手医大の桜井滋教授は、感染の可能性がある区域は分けられていた
が、「食事の配膳をする乗員がわれわれが待機するエリアにも入っていた」。

政府は乗客にたいて5日から船室待機を要請しましたが、乗員はその後も業務で動き回っており、感
染が続いたと考えられる。

実際、もし乗員が感染していれば、彼らが食事を運んだり部屋の清掃などの業務のため、多くの乗客
に接し、感染を拡大した可能性は十分ある。

乗員だけでなく、船内で事務作業にあたって厚労省の職員と検疫官も感染してしまった。

専門家チームは、政府が、あえて対応が難しい船内に多くの人を待機させる手法を問題視し、早期に全
員下船させる提案をした。しかし、収容数する場所がない、という理由で提案は受け入れられなかった
(『東京新聞』2020年2月25日、同3月9日)。

2月18日に災害派遣医療チーム(DMAT)の一因としてクルーズ船に乗り込んだ感染症専門医、神
戸大学の岩田健太郎教授が、目撃した実態をユーチューブで明らかにしました。

同氏によれば、感染症の現場では危険ゾーンと安全ゾーンをきちんと分け、危険ゾーンでは防護服を着
用するのが鉄則になっている。ところが、クルーズ船の内部はそうした区分けができていなかった、
    それはもうひどいものでした。エボラやSARSと立ち向かった時、自分が感染する恐怖を感
    じたことはなかったけど、クルーズ船の中はものすごい悲惨な状態で、心の底から怖いと思い
    ました。

岩田氏がさらに驚いたのは、検疫官ですらいつ感染してもおかしくない状態だった。ある時、検疫所の
職員と船内を歩いている時、患者とすれ違った。その際、職員が「あ、今、患者さんとすれ違った」と
笑顔で話したことに岩田氏はショックをうけました。危険ゾーンと安全ゾーンの区別もなく、感染者が
自由に自室と医務官の間を行き来していたのです。

こうした報告に菅官房長官は19日の会見で「乗員はマスクの着用、手洗い、アルコール消毒などの感
染防御を徹底している」と説明し、船内での対応に問題はないことを強調しました。

「確かに『まずい対応であることがバレる』っていうことは恥ずかしいことかもしれないですけれど、
これを隠蔽するともっと恥ずかしいわけです。やはり情報公開は大事です」と、岩田氏は政権の隠蔽体
質を非難しています。

政府に批判的だった岩田氏は1日でクルーズ船を追い出されてしまいました(『日刊ゲンダイ』2020年
2月21日号)。

著名な医学誌「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に、中国・武漢市でのヒトか
らヒトへの感染は昨年12月中旬から始まっていたとする疫学論文が掲載された。感染がかなり前から広
がっていたことを示唆する内容で、研究者の間で話題になっていました。

中国の知見を日本の状況にあてはめると、すでに2月初めには各地で感染が広がっていたことも十分考え
られるのに、船上での隔離の妥当性を左右する重要な情報が、政府内で果たして吟味されたのだろうか。

NPO法人医療ガバナンス研究所の上昌広理事長は「日本政府の対応をみていると、科学的、医学的に正
しい情報がきちんと上にあがっているとはとても思えない」という。

これら厚労省の対応をみても分かるように、厚労省の認識と対応は、事態を楽観的に見過ぎ、対応が後
手後手にまわったり、方針がコロコロ変わったのです

『日経新聞』は編集委員の矢野寿彦氏の「クルーズ船対応『五輪バイアス』の代償大きく」との署名記事
で、政府の対応のちぐはぐさの背景にはオリンピックの開催を見据えて、事態をできるかぎり軽くみよう
とする「バイアス」が働いたからではないか、と疑問をなげかけています(注3)。

実は、次回以降に検討するように、この問題はのちのちまで尾を引いてゆきます。

(注1)((朝日新聞 デジタル 2020年3月30日 9時00分 
 https://www.asahi.com/articles/ASN3T66BDN3TULBJ00J.html?ref=weekly_mail
(注2)『朝日新聞』デジタル 2020年3月28日 11時00分
https://www.asahi.com/articles/ASN3T64KBN3MUTFL008.html?iref=pc_ss_date&iref=pc_extlink
(注3)『日本経済新聞』(電子版 2020年2月28日 11:30) https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56079570W0A220C2I00000/?n_cid=SPTMG053
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三月初めには河津さくらが満開でした。                                 四月にはソメイヨシノ八重桜とつつじに代わっていました
  



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検証「新型コロナウイルス肺炎」(1)―歴史と文明の転換をもたらすか?―

2020-04-02 08:07:25 | 健康・医療
検証「新型コロナウイルス肺炎」(1)
     ―歴史と文明の転換をもたらすか?―

今回の新型コロナウイルス肺炎の流行は、これまで想像できなかった事態を、国内と世界に引き起こ
しています。

実は、このブログでも、今年の2月6日の記事「新型コロナウイルス肺炎の波紋―終わりが見えない
不安が問題―」と、同25日には「続新型コロナウイルス肺炎の波紋―政府の無策と真剣さの欠如で
肺炎のまん延防げず―」いう記事を掲載しています。

これら二つの記事のうち、とりわけ25日の記事で、日本における新型コロナ肺炎に対する政府・
厚労省の対応のまずさが、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」の集団感染を引き起こして
しまったことを検証しています。

当時はまだ、この新型肺炎はパンデミック(世界的大流行)に指定される前で、欧米ではあまり広
がっていませんでした。

しかし、3月11日に、WHO(世界保健機関)は3月11日、この肺炎がパンデミックであるこ
とを宣言したころには、事態がすっかり変わっていました。

まさに、新型コロナ肺炎は、中国から日本、韓国、東南アジア、ヨーロッパ、アメリカへと、燎原
の火のように燃え広がっていたのです。

4月1日現在、世界の感染者は90万人に迫り、死者も2万人を超えました。

当初は、中国から発して、韓国、日本など、東アジアで拡散する一種の風土病的な感染症として考
えられていた新型コロナ肺炎は、ここまで拡大すると、もはや、世界史的「事件」「できごと」と
いう段階に入ったと言えます。

そこで、新型コロナ肺炎の問題を、もう一度丹念に検証し直す必要を感じました。

その検証の第1回目として、今回は、まず、新型コロナ肺炎の世界的大流行となったことは、どん
な意味を持つのかを、歴史的、巨視的な観点から考えてみようと思います。

日本における新型肺炎のまん延の経緯とその具体的問題を、2回目以降に検証してゆきます。

それでは、以下に世界史的「事件」「できごと」という観点から、今回の新型肺炎が投げかけた意
味を文明史的に考えてゆきます。

人類史の中で、感染症の世界的大流行(パンデミック)が歴史と文明を変えてしまった事例はいく
つかあります。

良く知られた事例としては、14世紀にヨーロッパで多数の死者を出したペストの大流行がありま
す。ペストにより、当時の西ヨーロッパの人口の三分の一から国によっては三分の二が死亡したと
言われています

当時のヨーロッパ社会をみると、都市では上流階級の人びとはいうまでもなく、役人や警察官まで
都市から逃げ出し、田舎に逃げ出しました。

これは象徴的な出来事ですが、言い換えると、ペストの流行によって、人々はパニック状態となり、
既存の社会システムが壊れていったのです。

歴史・文明論的にみれば、アジアから持ち込まれたペストの流行は、ヨーロッパの中世的世界とそ
のシステムの殻を打ち破り、近世への扉を開いたと言えます。

この時代の現代的意味を考えるために、「グローバリズム」という視点から見直してみましょう。

上に書いたように、ペストは中国からシルクロード(絹の道)を経由して持ち込まれたと考えら
れています。

シルクローとは、言うまでもなく中国から中央アジアを経てヨーロッパ世界まで、ユーラシア大陸
の東西を結ぶ交通路です。

では、このシルクロードがペストの伝播ルート、「ペスト・ロード」となったのはなぜでしょうか?

14世紀のアジアとヨーロッパ世界を見渡すと、一つの重要な事実に突き当たります。つまり、シ
ルクロードは、モンゴル帝国という単一の政治権力によって支配されていたおり、人と物の往来が
安全にかつ活発に行われたことです。

この意味で、モンゴル帝国とは、当時にあっては複数の世界を含み、つなげる「グローバル世界」
だったのです。

そこを行き来する人と物に付いていたノミやシラミに媒介されてベスト菌が中国からヨーロッパに
もちこまれたと考えられています。

ところで、今回の新型肺炎のパンデミックは、現代世界のグローバル化と無縁ではありません。

すなわち、現代では飛行機や車やインターネットで世界を超短時間で結び付け、人も物も以前とは
比較にならない速さと量の移動を可能にしています。

現代のグローバリズムの進展は、私たちの生活に便利さと、世界中の物が簡単に手に入る、という
恩恵を与えてくれると同時に、感染症もあっという間に国境や大陸を越えて拡散させます。

今回の新型コロナ肺炎のまん延が、かつてのペスト大流行のように今日の世界を根底から変えてし
まうかどうかは分かりません。

文明の転換とまではゆかなくても、少なくても、既存の政治・経済・社会システムの、決して小さ
くない変更を迫るでしょう。

とりわけ、今回の世界的大流行は、間違いなく私たちの価値観の転換を迫ります。

人類は地球上の覇者となり、全ての生物の頂点に立ったという思いあがりが、突如、目に見えない
ウイルスという微生物によって、その足元を揺さぶられています。

あるいは、世界で最強の軍事力を誇るアメリカが、ウイルスという“見えない敵”の前では全く無力
です。ウイルスに対してはロケットも爆撃機もまったく役に立ちません。

現在では、アメリカでの感染者は19万人にせまり、死者も4000人を超えており、今なお増え
続けています。

また、物作りが世界的な規模で分業化されているので、どこかの国で、あるいは工場で部品の生産
ができなくなると、それは直ちに世界中の生産体制をストップさせてしまいます。

さらに、こうした命にかかわる感染症は、国内でも国際社会でも、人びとを二分してしまいます。
国内では、非正規の労働者、シングル・マザーの家庭、零細企業、そして高齢者、病を抱えた人な
ど、いわば、弱者に大きな負担を強います。

国際社会では、貧しく医療資源が乏しい国では、これから非常に大きな犠牲者がでると思われます。

これらは、社会の公正と公平、正義といった、根本的な問題にもう一度問いかけるきっかけとなり
ます。

というのも、この感染症は命をも奪う危険性があるため、自分自身にとって、そして社会にとって、
何が本当に大切なものか、一人ひとりが自分に問いかけるきっかけを与えているからです。

この変化は、今は気が付かなくても、後から振り返ってみて、あの時が転換点だった、と思うとき
が来るかもしれません。

そもそもウイルスは、ヒトよりずっと古く長い歴史をもっています。ヒトは地球上の生物界では新
参者なのです。

そのため、ヒトはさまざまな細菌やウイルスと戦い、時には犠牲を払いつつ、何とか免疫を獲得し
てきました。

しかし、そこに至るまで、ヒトは多くの犠牲を払ってきたはずです。現在、私たちの体内に生存し
ている無数の微生物のうちで、たとえば大腸菌なども、始めは死闘を繰り返し、長い年月をかけて
ヒトは免疫を獲得し、現在では大腸の中でお互いに共存共栄をはかっています。

これは、何ら医学的な対抗策を講ずることなく、自然状態でヒトとウイルスが築いてきた免疫と共
存関係です。

しかし、ヒトは、ただ漫然と自然の経過に任せてきたのではなく、免疫力を強化する食事や健康法
などさまざまな方法でウイルスの侵入を食い止める方法を実践する一方、医学的にワクチンを接種
したり、抗ウイルス薬を投与するなどの方法を講じてきました。

そうしている間に、ヒトは特定のウイルスに対する免疫をつけてきました。その結果、今日では季
節的なありふれた病気となっているカゼやインフルエンザ(これらもコロナウイルスが原因です)
も、そのウイルスとの長い時間をかけた闘いの末にようやく多くの人が免疫を獲得すると、比較的
軽症で済むようになっているのです。これを「集団免疫」といいます。

さて、それでは、今日の新型コロナウイルス肺炎は、どのような経緯をたどるのでしょうか、私た
ちは何とか克服できるのでしょうか?

これは、誰も予測はできませんが、世界中で対抗するワクチンと薬の開発が行われているので、期
待したいところです。しかし、それでも、今日、明日というわけにはゆきません。

しかも、恐らく全ての病について言えますが、私たちの基礎的な免疫力が弱くては、ワクチンも薬
もその効力が弱くなります。

そのためには、農薬などに汚染されていない健康な食物を食べ、適度な運動をし、そしてストレス
の少ない生活をすることが必要です。

しかし、現代社会にあっては、これらの条件を満たすことは簡単ではありません。もし、私たちが、
何が大切かの価値観を変えれば事態は変わるでしょう。

今回の新型コロナ肺炎をきっかけに、生きることの価値観を変えれば、ひょっとしたら文明の転換
が起こるかも知れません。




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