検証「新型コロナウイルス肺炎」(4)
―布マスク製造の4社目をひた隠しする政府―
4月の17日から、安倍首相の肝いりで実際されている、布マスクの配布が進行していますが、
この施策には多くの問題があります。
この深刻な事態の下で、布マスク配布は、全体からみると小さな問題のように見えるかも知れま
せん。しかし、この施策は、安倍政権の性格とコロナ肺炎に対する姿勢を象徴的に、しかも鮮明
に浮き彫りにしている、という意味で、決して小さな問題ではありません。
現在、多くの中小企業、とりわけ飲食業界や観光関連事業者は、倒産の危機に瀕しています。
パートや非正規の人たち、フリーランスのひとたちもこれまでの収入と比べれば激減しています。
経済的問題については、別の機会に検討しますが、非常に多くの人が、今日・明日の生活をどうす
るのか、というギリギリのところに追い込まれています。
それでも、命の方が大事だ、と言われればそのとおりで、自粛を受け入れています。
こうした事情を考えると、巨額の税金をつかって実施されている布マスクの配布には、苦境に立た
されている人びとの感情を逆なでする疑問と疑惑があります。
以下4点に絞って、考えてみましょう。
第一に、安倍首相の肝いりで始めた布マスクの配布です。安倍晋三首相が41日、新型コロナウイ
ルスの感染防止策として、全国の約5000万世帯に対し布マスクを2枚ずつ配ると表明し、17
日から東京都内で配達を開始し、5月中に全国への配達完了を目指しているとのことです(注1)。
しかし、この布マスク配布に背景と実態を知ると、国民の感情を逆なでする問題が幾つもあります。
安倍首相の布マスク配布に対する多くの国民の反応は冷ややかで、これをアベノミクスならぬ「ア
ベノマスク」と嘲笑し、“外国のメディアは、“これはエイプリル・フールではないか“(つまり”冗談“
ではないか)と揶揄しています。
それでは、この「英断」にどれほどの深い洞察や思慮があったのでしょうか?『朝日新聞』(2020年
4月3日)によれば、この策は「経済官庁出身の官邸官僚」が「全国民に布マスクを配れば。不安は
パッと消えます」と発案したのだという。
前文科省事務次官の前川喜平氏は「アベノマスクという愚策」というタイトルのコラム記事で、この
「官邸官僚」が、今井尚哉首相秘書官にちがいないと書いていますが、これは今や公然の秘密です。
どうやら2月27日の突然の「全国一斉休校要請」も彼の発案だったようだ。
前川氏の言う通り、「どうせ国民は愚かだ。いくらでもだませると見くびっているのだ」、「こんな子
供だましでだませるほど国民は愚かだと思いっているのか」と怒りのコメントをしています。まったく
同感です(『東京新聞』2020年4月5日 「本音のコラム」)。
ここには、真剣にマスク不足を解消し、国民の健康を守ろうという政治家としての真摯な配慮は全く見
られません。逆に、なんと思慮の足りない、浅はかな政治家なのか、という印象を与えてしまいます。
井戸まさえ氏は、“全国民が唖然・・・「マスク2枚」で完全に露呈した安倍政権の「闇」 なぜ誰もと
めなかったのだろうか」”のタイトルで、「対策本部の面々の中でひとりだけ顔に比して小さなマスクを
かける安倍総理の姿は、コロナ対策への足らざる対策を象徴するようで、さらに不安を掻き立てる」と、
バッサリ(注2)。
井戸まさえ氏が言うように、“なぜ誰も止めなかったのだろうか”と思ってしまいます。これが、自民党政
権の現実といてば現実なのですが、本当になさけなくなります。
自民党議員でさえ、布マスク2枚配布に賛同している人はいませんし、第一、この布マスクを使っている
自民党議員は安倍首相を除いて誰一人いません。
第二に、1世帯2枚という数という数が何を根拠にしているのか分かりません。もちろん、1世帯当たり
の人数はバラバラで、それらをいちいち考慮したのでは、早い配布には間に合わない、という理屈は成り
立ちます。
しかし、例えば二人世帯だとしても、それぞれの洗い替えを考えれば、4枚は必要です。今のままでは、
1人世帯の人しか有効ではありません。
第三は、この布マスクの配布に関する費用です。菅官房長官は記者会見で、1枚当たり200円ほどで、
予算としては200億円ほどになる、と答えていました。
ところが、フタを開けてみると、配布する経費を466億円と見積もり、2020年度補正予算案でまずは
233億円、20年度当初予算の予備費で233億円を支出する計画だという。
これはあまりにもひどい税金の無駄使いです。しかも、問題はそれだけではありません。
厚労省によると、全戸配布用の布マスクの納入元は計3社で契約金額は興和が約54億8千万円、伊藤忠約
28億5000万円、マツオカコーポレーション約7億6000万円で、合計しても90億9000万円に
しかなりません。
それでは、あとの375億円はどうなったのでしょうか?ここに、大きな疑惑があります。
菅官房長官は、コストを抑える努力をしたために安くあがった、という趣旨の説明をしていますが、あまり
にも金額の差が大きすぎるのです。
厚生労働省は受注企業について「興和、伊藤忠商事、マツオカコーポレーションの3社プラス1社」と説明し、
残る1社については公表していません。残る1社についても公共調達のルール上、公表する義務があり、野党
は公表を強く求めていますが厚労省の担当者はかたくなに拒み、かえって疑念が広がっています(注3)。
政治家や官庁が、ひた隠しに隠しているのには何か知られたらまずい、何か秘密があるにちがいありません。
万が一にでも、この第4社目が、政治家との関連が疑われる企業だとしたら、それは、あまりにも国民を愚
弄しています。
社民党の福島瑞穂議員、厚労省に問い合わせて得た回答では3社分の金額しか示されていません。福島氏は、
地震のツイッターで、厚労省は4社と言っていたのに、3社になったことは疑問だと書いています。
この点はメディアも再三質問しましたが、厚労省も菅官房長官も曖昧にして逃げています。
計算すれば小学生でもわかるように、常識的に考えれば、第4社が375億円分を納入したのか、あるいは、
この税金を他の目的につかうつもりなのか、いずれにしても、国民の税金の使い道は、その使途と明細を明
らかにすることが義務付けられています。
菅官房長官は、記者会見でこの375億円の使い道に関して記者会見で問われても、正面から答えず、会見
場を後にしました。
こういう、誰が見てもおかしいと思う、お金にまつわる疑惑を明らかにしないのは、安倍政権下でこれまで
も何度も見せられてきました。
こうした体質が、今回の布マスク配布にも、はからずも出てしまった感があります。
多くの人が自粛で苦しんでいる、この状況下で、これほど巨額の税金がどのように使われているのかを明らか
にしないということは、政府のコロナ対策に対する信頼性を失わせます。また、日々、倒産や生活破綻の危機
に直面している人たちの感情を逆なでするものです。
第四は、配布された布マスクの品質に関する問題です。
これに関してはすでにテレビその他のメディアで再三取り上げられているように、配布された妊婦向け、一般
向けの布マスクの中に、カビが生えていたり、髪の毛らしい物が入っていたり、ひどいのは虫が袋に入ってい
たようです。
厚労省によれば、 政府が妊婦向けに配布した布マスクに汚れなどが見つかった問題で、加藤厚生労働相は4
月21日の閣議後記者会見で、同日午前までに見つかった不良品の総数が、143市区町村で7870枚に上
ることを明らかにした。そして、全世帯用でも同様の問題が発生しています。
これらのマスクは、日本のメーカー4社が海外の工場で製作した物で、その海外とは中国、ベトナム、ミャン
マーの工場であることが分かっています(『読売新聞』20204月21日)ここでも日本のメーカーは4社であ
ることが明記されています。
この4社は、数さえそろえば問題ないと軽く考え、製造課程での品質管理を全く無視したとしか思えません。
もしそうだとしたら、これらの日本企業の経済倫理感は最低です。
しかも、日本を代表する商社の一つである伊藤忠でさえもこの状態なのです。
思い付きのパフォーマンスで、全国民に2枚の布マスクをあてがっておけば、みんな喜んで、政権への支持が上
がるとでも思ったのでしょうか?
そんな風には思いたくありませんが、どう考えても、それより深い思慮と配慮があるようには感じられません。
(注1)『東京新聞』電子版(2020年4月24日 13時55分)https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2020042490135553.html
(注2)https://gendai.ismedia.jp/articles/-/71569?page=1 (2020.4.3)
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(注3)『毎日新聞』電子版 2020年4月24日 19時44分(最終更新 4月25日 08時28分) https://mainichi.jp/articles/20200424/k00/00m/010/208000c
―布マスク製造の4社目をひた隠しする政府―
4月の17日から、安倍首相の肝いりで実際されている、布マスクの配布が進行していますが、
この施策には多くの問題があります。
この深刻な事態の下で、布マスク配布は、全体からみると小さな問題のように見えるかも知れま
せん。しかし、この施策は、安倍政権の性格とコロナ肺炎に対する姿勢を象徴的に、しかも鮮明
に浮き彫りにしている、という意味で、決して小さな問題ではありません。
現在、多くの中小企業、とりわけ飲食業界や観光関連事業者は、倒産の危機に瀕しています。
パートや非正規の人たち、フリーランスのひとたちもこれまでの収入と比べれば激減しています。
経済的問題については、別の機会に検討しますが、非常に多くの人が、今日・明日の生活をどうす
るのか、というギリギリのところに追い込まれています。
それでも、命の方が大事だ、と言われればそのとおりで、自粛を受け入れています。
こうした事情を考えると、巨額の税金をつかって実施されている布マスクの配布には、苦境に立た
されている人びとの感情を逆なでする疑問と疑惑があります。
以下4点に絞って、考えてみましょう。
第一に、安倍首相の肝いりで始めた布マスクの配布です。安倍晋三首相が41日、新型コロナウイ
ルスの感染防止策として、全国の約5000万世帯に対し布マスクを2枚ずつ配ると表明し、17
日から東京都内で配達を開始し、5月中に全国への配達完了を目指しているとのことです(注1)。
しかし、この布マスク配布に背景と実態を知ると、国民の感情を逆なでする問題が幾つもあります。
安倍首相の布マスク配布に対する多くの国民の反応は冷ややかで、これをアベノミクスならぬ「ア
ベノマスク」と嘲笑し、“外国のメディアは、“これはエイプリル・フールではないか“(つまり”冗談“
ではないか)と揶揄しています。
それでは、この「英断」にどれほどの深い洞察や思慮があったのでしょうか?『朝日新聞』(2020年
4月3日)によれば、この策は「経済官庁出身の官邸官僚」が「全国民に布マスクを配れば。不安は
パッと消えます」と発案したのだという。
前文科省事務次官の前川喜平氏は「アベノマスクという愚策」というタイトルのコラム記事で、この
「官邸官僚」が、今井尚哉首相秘書官にちがいないと書いていますが、これは今や公然の秘密です。
どうやら2月27日の突然の「全国一斉休校要請」も彼の発案だったようだ。
前川氏の言う通り、「どうせ国民は愚かだ。いくらでもだませると見くびっているのだ」、「こんな子
供だましでだませるほど国民は愚かだと思いっているのか」と怒りのコメントをしています。まったく
同感です(『東京新聞』2020年4月5日 「本音のコラム」)。
ここには、真剣にマスク不足を解消し、国民の健康を守ろうという政治家としての真摯な配慮は全く見
られません。逆に、なんと思慮の足りない、浅はかな政治家なのか、という印象を与えてしまいます。
井戸まさえ氏は、“全国民が唖然・・・「マスク2枚」で完全に露呈した安倍政権の「闇」 なぜ誰もと
めなかったのだろうか」”のタイトルで、「対策本部の面々の中でひとりだけ顔に比して小さなマスクを
かける安倍総理の姿は、コロナ対策への足らざる対策を象徴するようで、さらに不安を掻き立てる」と、
バッサリ(注2)。
井戸まさえ氏が言うように、“なぜ誰も止めなかったのだろうか”と思ってしまいます。これが、自民党政
権の現実といてば現実なのですが、本当になさけなくなります。
自民党議員でさえ、布マスク2枚配布に賛同している人はいませんし、第一、この布マスクを使っている
自民党議員は安倍首相を除いて誰一人いません。
第二に、1世帯2枚という数という数が何を根拠にしているのか分かりません。もちろん、1世帯当たり
の人数はバラバラで、それらをいちいち考慮したのでは、早い配布には間に合わない、という理屈は成り
立ちます。
しかし、例えば二人世帯だとしても、それぞれの洗い替えを考えれば、4枚は必要です。今のままでは、
1人世帯の人しか有効ではありません。
第三は、この布マスクの配布に関する費用です。菅官房長官は記者会見で、1枚当たり200円ほどで、
予算としては200億円ほどになる、と答えていました。
ところが、フタを開けてみると、配布する経費を466億円と見積もり、2020年度補正予算案でまずは
233億円、20年度当初予算の予備費で233億円を支出する計画だという。
これはあまりにもひどい税金の無駄使いです。しかも、問題はそれだけではありません。
厚労省によると、全戸配布用の布マスクの納入元は計3社で契約金額は興和が約54億8千万円、伊藤忠約
28億5000万円、マツオカコーポレーション約7億6000万円で、合計しても90億9000万円に
しかなりません。
それでは、あとの375億円はどうなったのでしょうか?ここに、大きな疑惑があります。
菅官房長官は、コストを抑える努力をしたために安くあがった、という趣旨の説明をしていますが、あまり
にも金額の差が大きすぎるのです。
厚生労働省は受注企業について「興和、伊藤忠商事、マツオカコーポレーションの3社プラス1社」と説明し、
残る1社については公表していません。残る1社についても公共調達のルール上、公表する義務があり、野党
は公表を強く求めていますが厚労省の担当者はかたくなに拒み、かえって疑念が広がっています(注3)。
政治家や官庁が、ひた隠しに隠しているのには何か知られたらまずい、何か秘密があるにちがいありません。
万が一にでも、この第4社目が、政治家との関連が疑われる企業だとしたら、それは、あまりにも国民を愚
弄しています。
社民党の福島瑞穂議員、厚労省に問い合わせて得た回答では3社分の金額しか示されていません。福島氏は、
地震のツイッターで、厚労省は4社と言っていたのに、3社になったことは疑問だと書いています。
この点はメディアも再三質問しましたが、厚労省も菅官房長官も曖昧にして逃げています。
計算すれば小学生でもわかるように、常識的に考えれば、第4社が375億円分を納入したのか、あるいは、
この税金を他の目的につかうつもりなのか、いずれにしても、国民の税金の使い道は、その使途と明細を明
らかにすることが義務付けられています。
菅官房長官は、記者会見でこの375億円の使い道に関して記者会見で問われても、正面から答えず、会見
場を後にしました。
こういう、誰が見てもおかしいと思う、お金にまつわる疑惑を明らかにしないのは、安倍政権下でこれまで
も何度も見せられてきました。
こうした体質が、今回の布マスク配布にも、はからずも出てしまった感があります。
多くの人が自粛で苦しんでいる、この状況下で、これほど巨額の税金がどのように使われているのかを明らか
にしないということは、政府のコロナ対策に対する信頼性を失わせます。また、日々、倒産や生活破綻の危機
に直面している人たちの感情を逆なでするものです。
第四は、配布された布マスクの品質に関する問題です。
これに関してはすでにテレビその他のメディアで再三取り上げられているように、配布された妊婦向け、一般
向けの布マスクの中に、カビが生えていたり、髪の毛らしい物が入っていたり、ひどいのは虫が袋に入ってい
たようです。
厚労省によれば、 政府が妊婦向けに配布した布マスクに汚れなどが見つかった問題で、加藤厚生労働相は4
月21日の閣議後記者会見で、同日午前までに見つかった不良品の総数が、143市区町村で7870枚に上
ることを明らかにした。そして、全世帯用でも同様の問題が発生しています。
これらのマスクは、日本のメーカー4社が海外の工場で製作した物で、その海外とは中国、ベトナム、ミャン
マーの工場であることが分かっています(『読売新聞』20204月21日)ここでも日本のメーカーは4社であ
ることが明記されています。
この4社は、数さえそろえば問題ないと軽く考え、製造課程での品質管理を全く無視したとしか思えません。
もしそうだとしたら、これらの日本企業の経済倫理感は最低です。
しかも、日本を代表する商社の一つである伊藤忠でさえもこの状態なのです。
思い付きのパフォーマンスで、全国民に2枚の布マスクをあてがっておけば、みんな喜んで、政権への支持が上
がるとでも思ったのでしょうか?
そんな風には思いたくありませんが、どう考えても、それより深い思慮と配慮があるようには感じられません。
(注1)『東京新聞』電子版(2020年4月24日 13時55分)https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2020042490135553.html
(注2)https://gendai.ismedia.jp/articles/-/71569?page=1 (2020.4.3)
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(注3)『毎日新聞』電子版 2020年4月24日 19時44分(最終更新 4月25日 08時28分) https://mainichi.jp/articles/20200424/k00/00m/010/208000c