甘利経済再生相辞任の本質(1)―語るに落ちた自民党の体質―
2016年1月28日、甘利明経済再生相が記者会見で辞任を発表しました。
事の発端は、21日発売の『週刊文春』で、「甘利明大臣事務所に賄賂1200万円を渡した」と題する記事でした。
この記事の元となったのは、千葉県白井市の建設会社「S社」の総務担当の一色武氏の告発でした。
一色氏は、独立行政法人都市再生機構(UR)との道路建設を巡る補償交渉にあたってきた人物です。
今回の「事件」を、たんに甘利氏の辞任に焦点を当てるのではなく、そもそも、どのような背景のもとで、このような問題が発生
したのかの、「構造」を理解することが大事です。
これこそが、政権を維持してきた自民党という政党がこれまでずっと繰り返してきた体質そのものだからです。
『日刊ゲンダイ』(2016年1月20)によれば、記者会見に至る背景には、
16日に文春に直撃された甘利さんは、17、18日の2日間で記事をもみ消そうと奔走したようです。しかし、手に負
えず、19日に官邸に駆け込んだ。党幹部らが対応策を協議し、『もう閣僚辞任しかないか』という話にもなった。本人
も腹を決めて、大臣を辞任しようとしたが、官邸がそれを押し戻したらしい。官邸は『十分に説明すれば乗り切れる。
甘利さんはダボス会議で間もなく海外出張するので、行ってしまえば何とかなる』と甘く考えていたようです(自民党関係者)
という経緯があったようです。
政治家や政治家や事務所が、このような賄賂に関わるのは多くの場合、トラブルの処理や特別な便宜を図ってもらおうとする個人
や企業の要請に「口利き」をすることから始まります。
今回の甘利氏の事件の場合、トラブルの原因となったのは、千葉ニュータウン(NT)中心部から西2・5キロにある千葉県白井市の
幹線道路予定地です。
建設資材とみられる赤茶けた鋼管が横たわっていたため、約1キロの区間が未完成のままになっていました。UR関係者は「NT事
業で最大の懸案の一つ」と話しています。
NT開発に向けて、千葉県は1970年ごろから、白井市の予定地の買収を始めました。県によると、予定地の隣接地を地主から借
りていた建設会社が92年ごろ、予定地に建設資材を無断で置き始めました。資材の撤去を求めたが聞き入れられなかったという。
元々の地主が産業廃棄物を現場に捨てていたこともあり、道路工事は遅れていた。予定地を地主から買い取った県は2007年、資
材撤去と立ち退きを求め、12年には、県と事業を進めてきたURが隣接する別の道路予定地約1千平方メートル(300坪)を、今回
告発した建設会社から買い足しました。
この予定地にも資材を置いていた、建設会社が反発したため、URは先行して移転補償料約1600万円を支払いました。
しかし、その後の交渉の結果、13年にさらに約2億2千万円を支払うことで合意しました。
URは工事を始めたが、建設会社側は再び「工事で事務所が傾いた」などと新たな補償を求めてきたといい、交渉は今も続いている
という。以上が、今回の事件の背景となったトラブルです(注1)。
さて、ここで誰しも疑問に思うのは、当初URが妥当な補償料と算出した、1600万円が、なぜ、その138倍の2億2000万円に、
突如跳ね上がったのか、ということです。
ここにこそ、政治家や秘書たちの出番があるのです。この建設会社は、今を時めく経済再生大臣、甘利氏の事務所の秘書たちに
口利きを依頼しました。
その際、建設会社の一色氏は、秘書たちを飲食やフィリピンパブなどでの接待漬けにし、URとの交渉に掛け合ってもらい、とんで
もない金額をURから出させているのです。
URは国土交通省が管轄し、市街地域の整備や住宅の供給をすることを目的とする独立法人で、税金がつぎ込まれた公的機関
です。ここは国土交通省からの天下り先としてもよく知られています。
こうした、URの性格上、秘書たちの圧力に抵抗できずに、常軌を逸した額を支払ったのです。
そのお礼として、秘書には500万円、甘利大臣には50万円を2回、渡し、そのほか秘書たちを頻繁に接待をしています。
今回問題となっているのは、まず、秘書に渡った500万円のうち、200万円は政治資金収支報告書に政治献金として記載されて
いるが、残り300万円は、秘書たちが私的に使い込んでいることです。これに関しては、秘書たちも認めています。
次に、秘書たちが、URと掛け合う際にただの仲介人としてではなく、「甘利大臣」の秘書として圧力をかけて、補償料を引上げさせ、
それに対する謝礼を受け取っていることです。これは立派な贈収賄行為です。
甘利大臣に関しては、1回は大臣室で、建設会社の社長が、とらやの羊羹と、のし袋に入った封筒に入った50万円を「お礼です」と
言って渡し、2回目は神奈川県大和の甘利事務所で渡した。
さて、28日の記者会見では、この2回とも秘書に、適正に処理しておくように指示してあり、事実、収支報告書には記載されている
ので、法的には何ら問題はない、と語っています。
しかし、ここにはいくつかの問題があります。一つは、甘利大臣が、直接の管轄下にある事案ではないとはいえ、大臣室(つまり公
務の場)に業者を入れ、現金を受け取っていたことです(胸ポケットに入れたかどうか、どうでもよいことです。)
法律的にはどうあれ、このようなことをするのは国会議員、まして大臣としての資質が問われます。
また、公設秘書の清島氏がURの総務部長を甘利事務所に呼び出し、大臣の名前をちらつかせて、「駄目なら駄目なりに、何で値
段上げられないのかね」って言ったら(UR総務部長が)「そうですよね」と言った、と一色氏は述べています「(『週刊文春』2016年2
月4日号)。
甘利大臣が、このような経緯をどれほど知っていたかは分かりませんが、現金を大臣室で差し出されたとき、通常は警戒して、何の
金かを問いただします。
それをしないで受け取り、秘書に「適性に処理するように」と言ったのは、このような現金授受が、日常化していたと思われても仕方
ありません。さらに言えば、どんなお金でも、「秘書には適正に処理しておくように」と言えば、法的には問題ないことになってしまい
ます。
一色氏が秘書に現金を渡す場面の写真、一色と甘利大臣が一緒に映っている写真、さらには交わした会話などを記録したテープ、
メモ、領収書などが、『週間文春』側にも提供されています。
次に、甘利氏は、秘書の行為を後で知ってびっくりしたと述べていますが、そのような秘書を雇い任せきりにしていた監督責任は免
れません。
ところで、一色氏は、なぜこの一連の出来事を告発したのでしょうか?ひょっとして、一色氏は恐喝しているのではないか、とさえ言
う人もいます。
これに対して一色氏は
逆に私が大臣や秘書に多額の金を渡しているのです。実名で告発することは不利益こそあれ、私にメリットなどありません。
もちろん、URとの補償交渉を有利に進めるために口利きを依頼しているのですから、ほめられたことをしているわけではあ
りません。ただ、甘利氏を「嵌める」ために三年にわたる補償交渉や多額の金銭授受を行うなんて、とても金と労力に見合い
ません。
と述べ、付け加えて、
口利きを依頼し金を渡すことには大きなリスクがあるのです。依頼する相手は
権力者ですから、いつ私のような者が、切り捨てられるか分かりません。そうし
た警戒心から詳細なメモや記録を残しておいたのです。そもそも、これだけの証拠がなければ、今回の私の告発を誰が信じ
てくれたでしょうか?万一、自分の身に何かが起きたり、相手が私だけに罪をかぶせてきても、証拠を残しておけば自分の
身を守ることができる、そしてその考えは間違っていませんでした
とも語っています(『週刊文春』2月4日号より)。
高村正彦副総裁が「録音されていたり写真を撮られていたり、わなを仕掛けられたという感がある」と述べていますが、法律家として
あるまじき発言です。本質は、罠にはめられたかどうかではなく、現職の大臣が大臣室でお金を受け取ったかどうかが問題なのです。
さらに、甘利氏の会見(正確には政権側の弁護士の作文)は立派だった、これで全て説明できたとする自民党議員や、メディアのコメ
ンテータは、どんな神経をしているのか疑いたくなります。
それどころか、一色氏は「その筋の人」だ、という噂を立てたり、バッシングが起こっています。もちろん、一色には、「その筋の人」
ではないと否定しています。
ところで、今回の甘利氏の70分以上に及ぶ記者会見は、第三者(実態は官邸側の弁護士)が書類と聞き取り調査をした結果に基づ
く、と断っていますが、ジャーナリストの田中龍作氏は、
現金授受は認めながらも口利きは否定。しかも自分は被害者であるかのような内容だ。ヤメ検(現役を退いた検事)の弁護士
が書いたと分かる原稿の朗読が終わると質疑応答に移った。司会進行は内閣府の役人だ。
と述べた後、
記者クラブは6名、インディペンデント・メディアが1名指名された。・・読売は2人続けて示された。」(記者クラブの記者には)「はい
○○さん「はい◇◇さん」と指名してゆく。(中略) 記者クラブからの質問に追及らしきものはなかった。酷いのになると甘利氏に弁明
の機会をわざわざ与えた。(中略)長年記者をやっているが、これほどまでに権力者に寄り添う会見は初めてだ(注2)。
これが、現在の日本のメディアの現状です。
今回の甘利氏の記者会見で、私が最も注目したのは、会見も一応終わり、ほっとした感じで飛びした“ぶっちゃけ話”です。
「政治家の事務所は、いい人とだけ付き合っていたら選挙に落ちる。来る者は拒まずでないと」強調した後、「残念ながら当選しない。・・・
その中で、ぎりぎり、どう選別してゆくか」と指摘しました(『東京新聞』2016年1月29日)。
これこそが自民党の抜きがたい体質で、まさに「語るに落ちる」(聞かれても答えないのに、自分から秘密や本音をうっかり喋ってしまう
こと)とはこのことです。
かつてTPP交渉での活動が脚光を浴び、アベノミクスの旗振り役として縦横無尽の活躍をし、マイナンバー・カードの普及のため、失礼ながら
ちょっと調子をはずした「ゲスの極み乙女」の替え歌までうたって一世を風靡した大臣の最後のコメントかと思うと、少し悲しく哀れに思えました。
しかも、これまた皮肉にも、自らの脇の甘さと、「ゲスの極み」の贈収賄事件に絡んで辞任に追い込まれたことは、飛ぶ鳥を落とす勢いの絶頂
期にあった甘利氏にとって「痛恨の極み」だったのではないでしょうか。「好事魔多し」。自戒を込めて。
、
今回の件が安倍政権にとってボディーブローのように効いてくる可能性は十分にあります。
またまだ未解明の部分がたくさんありますが、それらについては今後の国会審議その他で事実が明らかになった時点で、続きを書くことにします。
(注1)『朝日新聞デジタル』2016年1月29日(同日参照)
http://digital.asahi.com/articles/ASJ1X5CQKJ1XUTIL027.html?rm=368
(注2)http://tanakaryusaku.jp/2016/01/00012868(2016年1月29日参照)
2016年1月28日、甘利明経済再生相が記者会見で辞任を発表しました。
事の発端は、21日発売の『週刊文春』で、「甘利明大臣事務所に賄賂1200万円を渡した」と題する記事でした。
この記事の元となったのは、千葉県白井市の建設会社「S社」の総務担当の一色武氏の告発でした。
一色氏は、独立行政法人都市再生機構(UR)との道路建設を巡る補償交渉にあたってきた人物です。
今回の「事件」を、たんに甘利氏の辞任に焦点を当てるのではなく、そもそも、どのような背景のもとで、このような問題が発生
したのかの、「構造」を理解することが大事です。
これこそが、政権を維持してきた自民党という政党がこれまでずっと繰り返してきた体質そのものだからです。
『日刊ゲンダイ』(2016年1月20)によれば、記者会見に至る背景には、
16日に文春に直撃された甘利さんは、17、18日の2日間で記事をもみ消そうと奔走したようです。しかし、手に負
えず、19日に官邸に駆け込んだ。党幹部らが対応策を協議し、『もう閣僚辞任しかないか』という話にもなった。本人
も腹を決めて、大臣を辞任しようとしたが、官邸がそれを押し戻したらしい。官邸は『十分に説明すれば乗り切れる。
甘利さんはダボス会議で間もなく海外出張するので、行ってしまえば何とかなる』と甘く考えていたようです(自民党関係者)
という経緯があったようです。
政治家や政治家や事務所が、このような賄賂に関わるのは多くの場合、トラブルの処理や特別な便宜を図ってもらおうとする個人
や企業の要請に「口利き」をすることから始まります。
今回の甘利氏の事件の場合、トラブルの原因となったのは、千葉ニュータウン(NT)中心部から西2・5キロにある千葉県白井市の
幹線道路予定地です。
建設資材とみられる赤茶けた鋼管が横たわっていたため、約1キロの区間が未完成のままになっていました。UR関係者は「NT事
業で最大の懸案の一つ」と話しています。
NT開発に向けて、千葉県は1970年ごろから、白井市の予定地の買収を始めました。県によると、予定地の隣接地を地主から借
りていた建設会社が92年ごろ、予定地に建設資材を無断で置き始めました。資材の撤去を求めたが聞き入れられなかったという。
元々の地主が産業廃棄物を現場に捨てていたこともあり、道路工事は遅れていた。予定地を地主から買い取った県は2007年、資
材撤去と立ち退きを求め、12年には、県と事業を進めてきたURが隣接する別の道路予定地約1千平方メートル(300坪)を、今回
告発した建設会社から買い足しました。
この予定地にも資材を置いていた、建設会社が反発したため、URは先行して移転補償料約1600万円を支払いました。
しかし、その後の交渉の結果、13年にさらに約2億2千万円を支払うことで合意しました。
URは工事を始めたが、建設会社側は再び「工事で事務所が傾いた」などと新たな補償を求めてきたといい、交渉は今も続いている
という。以上が、今回の事件の背景となったトラブルです(注1)。
さて、ここで誰しも疑問に思うのは、当初URが妥当な補償料と算出した、1600万円が、なぜ、その138倍の2億2000万円に、
突如跳ね上がったのか、ということです。
ここにこそ、政治家や秘書たちの出番があるのです。この建設会社は、今を時めく経済再生大臣、甘利氏の事務所の秘書たちに
口利きを依頼しました。
その際、建設会社の一色氏は、秘書たちを飲食やフィリピンパブなどでの接待漬けにし、URとの交渉に掛け合ってもらい、とんで
もない金額をURから出させているのです。
URは国土交通省が管轄し、市街地域の整備や住宅の供給をすることを目的とする独立法人で、税金がつぎ込まれた公的機関
です。ここは国土交通省からの天下り先としてもよく知られています。
こうした、URの性格上、秘書たちの圧力に抵抗できずに、常軌を逸した額を支払ったのです。
そのお礼として、秘書には500万円、甘利大臣には50万円を2回、渡し、そのほか秘書たちを頻繁に接待をしています。
今回問題となっているのは、まず、秘書に渡った500万円のうち、200万円は政治資金収支報告書に政治献金として記載されて
いるが、残り300万円は、秘書たちが私的に使い込んでいることです。これに関しては、秘書たちも認めています。
次に、秘書たちが、URと掛け合う際にただの仲介人としてではなく、「甘利大臣」の秘書として圧力をかけて、補償料を引上げさせ、
それに対する謝礼を受け取っていることです。これは立派な贈収賄行為です。
甘利大臣に関しては、1回は大臣室で、建設会社の社長が、とらやの羊羹と、のし袋に入った封筒に入った50万円を「お礼です」と
言って渡し、2回目は神奈川県大和の甘利事務所で渡した。
さて、28日の記者会見では、この2回とも秘書に、適正に処理しておくように指示してあり、事実、収支報告書には記載されている
ので、法的には何ら問題はない、と語っています。
しかし、ここにはいくつかの問題があります。一つは、甘利大臣が、直接の管轄下にある事案ではないとはいえ、大臣室(つまり公
務の場)に業者を入れ、現金を受け取っていたことです(胸ポケットに入れたかどうか、どうでもよいことです。)
法律的にはどうあれ、このようなことをするのは国会議員、まして大臣としての資質が問われます。
また、公設秘書の清島氏がURの総務部長を甘利事務所に呼び出し、大臣の名前をちらつかせて、「駄目なら駄目なりに、何で値
段上げられないのかね」って言ったら(UR総務部長が)「そうですよね」と言った、と一色氏は述べています「(『週刊文春』2016年2
月4日号)。
甘利大臣が、このような経緯をどれほど知っていたかは分かりませんが、現金を大臣室で差し出されたとき、通常は警戒して、何の
金かを問いただします。
それをしないで受け取り、秘書に「適性に処理するように」と言ったのは、このような現金授受が、日常化していたと思われても仕方
ありません。さらに言えば、どんなお金でも、「秘書には適正に処理しておくように」と言えば、法的には問題ないことになってしまい
ます。
一色氏が秘書に現金を渡す場面の写真、一色と甘利大臣が一緒に映っている写真、さらには交わした会話などを記録したテープ、
メモ、領収書などが、『週間文春』側にも提供されています。
次に、甘利氏は、秘書の行為を後で知ってびっくりしたと述べていますが、そのような秘書を雇い任せきりにしていた監督責任は免
れません。
ところで、一色氏は、なぜこの一連の出来事を告発したのでしょうか?ひょっとして、一色氏は恐喝しているのではないか、とさえ言
う人もいます。
これに対して一色氏は
逆に私が大臣や秘書に多額の金を渡しているのです。実名で告発することは不利益こそあれ、私にメリットなどありません。
もちろん、URとの補償交渉を有利に進めるために口利きを依頼しているのですから、ほめられたことをしているわけではあ
りません。ただ、甘利氏を「嵌める」ために三年にわたる補償交渉や多額の金銭授受を行うなんて、とても金と労力に見合い
ません。
と述べ、付け加えて、
口利きを依頼し金を渡すことには大きなリスクがあるのです。依頼する相手は
権力者ですから、いつ私のような者が、切り捨てられるか分かりません。そうし
た警戒心から詳細なメモや記録を残しておいたのです。そもそも、これだけの証拠がなければ、今回の私の告発を誰が信じ
てくれたでしょうか?万一、自分の身に何かが起きたり、相手が私だけに罪をかぶせてきても、証拠を残しておけば自分の
身を守ることができる、そしてその考えは間違っていませんでした
とも語っています(『週刊文春』2月4日号より)。
高村正彦副総裁が「録音されていたり写真を撮られていたり、わなを仕掛けられたという感がある」と述べていますが、法律家として
あるまじき発言です。本質は、罠にはめられたかどうかではなく、現職の大臣が大臣室でお金を受け取ったかどうかが問題なのです。
さらに、甘利氏の会見(正確には政権側の弁護士の作文)は立派だった、これで全て説明できたとする自民党議員や、メディアのコメ
ンテータは、どんな神経をしているのか疑いたくなります。
それどころか、一色氏は「その筋の人」だ、という噂を立てたり、バッシングが起こっています。もちろん、一色には、「その筋の人」
ではないと否定しています。
ところで、今回の甘利氏の70分以上に及ぶ記者会見は、第三者(実態は官邸側の弁護士)が書類と聞き取り調査をした結果に基づ
く、と断っていますが、ジャーナリストの田中龍作氏は、
現金授受は認めながらも口利きは否定。しかも自分は被害者であるかのような内容だ。ヤメ検(現役を退いた検事)の弁護士
が書いたと分かる原稿の朗読が終わると質疑応答に移った。司会進行は内閣府の役人だ。
と述べた後、
記者クラブは6名、インディペンデント・メディアが1名指名された。・・読売は2人続けて示された。」(記者クラブの記者には)「はい
○○さん「はい◇◇さん」と指名してゆく。(中略) 記者クラブからの質問に追及らしきものはなかった。酷いのになると甘利氏に弁明
の機会をわざわざ与えた。(中略)長年記者をやっているが、これほどまでに権力者に寄り添う会見は初めてだ(注2)。
これが、現在の日本のメディアの現状です。
今回の甘利氏の記者会見で、私が最も注目したのは、会見も一応終わり、ほっとした感じで飛びした“ぶっちゃけ話”です。
「政治家の事務所は、いい人とだけ付き合っていたら選挙に落ちる。来る者は拒まずでないと」強調した後、「残念ながら当選しない。・・・
その中で、ぎりぎり、どう選別してゆくか」と指摘しました(『東京新聞』2016年1月29日)。
これこそが自民党の抜きがたい体質で、まさに「語るに落ちる」(聞かれても答えないのに、自分から秘密や本音をうっかり喋ってしまう
こと)とはこのことです。
かつてTPP交渉での活動が脚光を浴び、アベノミクスの旗振り役として縦横無尽の活躍をし、マイナンバー・カードの普及のため、失礼ながら
ちょっと調子をはずした「ゲスの極み乙女」の替え歌までうたって一世を風靡した大臣の最後のコメントかと思うと、少し悲しく哀れに思えました。
しかも、これまた皮肉にも、自らの脇の甘さと、「ゲスの極み」の贈収賄事件に絡んで辞任に追い込まれたことは、飛ぶ鳥を落とす勢いの絶頂
期にあった甘利氏にとって「痛恨の極み」だったのではないでしょうか。「好事魔多し」。自戒を込めて。
、
今回の件が安倍政権にとってボディーブローのように効いてくる可能性は十分にあります。
またまだ未解明の部分がたくさんありますが、それらについては今後の国会審議その他で事実が明らかになった時点で、続きを書くことにします。
(注1)『朝日新聞デジタル』2016年1月29日(同日参照)
http://digital.asahi.com/articles/ASJ1X5CQKJ1XUTIL027.html?rm=368
(注2)http://tanakaryusaku.jp/2016/01/00012868(2016年1月29日参照)