日本の食料確保は大丈夫か?―食料自給率の低下が示す危惧―
最近では、日本の食糧自給率がカロリベース(熱量換算で)で40%を割って、30%台に落ちた
ことは何となく頭の隅にあって、理解しているつもりでした。
しかし、その具体的な中身や、このことが意味する問題の深刻さを実感することを十分に理解して
いたかと言われれば、私は自信がありません。
そこで今回は、日本の食料自給の実態を、具体的に見てゆきたいと思います(注1)
農水省発表の一昨年の令和2年度2020年度の実績をみると、カロリーベースの総合自給率は37
%でした。つまり、大雑把に言って自給率は三分の一強ということになります。
もちろん、その中身には食品ごとに自給率は大きく異なります。
たとえば、米に関しては昭和40年(1965年)の95%から令和2年の97%まで、わずかです
が増えています。
しかし、パンや麺類の原料となる小麦に至っては、同期間に28%から2020年には15%へと約
半分になってしまいました。
小麦にいたっては今年に入ってすでに4回も値上げしており、6月からはウクライナ戦争の関係もあ
って、さらに価格は上昇するでしょう。
これは、日本人の食生活に大きな負担となるはずです。
野菜に関しては、1965年には100%自給していましたが、その後緩やかに低下し、2020年
には80%となっています。
日本人は米があれば安心、という感じはしますが、食生活が米からパン食へ移りつつある最近の傾向
をみると、今後は、価格の上昇が避けられないでしょう。
また主食用ではありませんが、「いも類」のサツマイモは同期間に100%から96%へ、ジャガイ
モは100%から68%へ、大きく減少しています。
最近では、フライドポテトの原料の多くはアメリカからの輸入が増えており、アメリカでの不作が直
ちに日本での供給不足となって跳ね返ってきます。
私が危惧しているのは、大豆の自給率の低下で、1965年の25%から2020年のわずか6%へ
激減しています。つまり、もうほとんど、輸入に頼っていることになります。
ご存じのように、欧米では大豆は、基本的に家畜の飼料で、人間が食べる食物とは考えていません。
このため、特にアメリカでは大豆の94%は遺伝子組み換え品種で、しかもそれと組み合わされて除
草剤(たとえばヨーロッパで使用禁止か制限となっている毒性の強いラウンドアップのようなもの)
が大量に使用されています。
日本の食卓にとって、大豆は重要な蛋白原であるだけでなく、豆腐、納豆、みそ、醤油という、いわ
ば日本食の基盤ともいえる重要な食品です。
もし、大豆が日本から消えてしまったら、もう日本食は成り立ちません。
ところで、日本人の食生活に、肉食が普及していますが、その肉の供給にも大きな問題があります。
表面的な数字をみると、1965年の肉類(鯨肉を除く)の自給率は90%でした。この数字をみる
と、当時は肉類はほとんどが国産で自給していたように見えます。
しかし、これはまだ日本人の間で肉食が普及していなかったからで、必ずしも国産の肉類が十分にあ
ったからではありません。
さらに重要なことは、当時にあっても、家畜の飼料は輸入していたので、その分を考慮すると、実質
国産の肉類は42%でした。
ところが、10年後の1975年には、肉の総量の77%は国産でしたが、輸入の飼料を考慮すると、
何と、国産肉は16%に過ぎなかったのです。
そして、2020年には肉の総自給率は53%でしたが、輸入飼料を考慮すると、純粋の国産肉は7
%にすぎません。
問題はそれだけではありません。というのも、日本で生産されている肉類のうち、鶏肉、豚肉、牛肉
も、輸入の大豆、トウモロコシなどの飼料用穀物が基になっているのです。
家畜飼料のうち、大豆の遺伝子組み換えの危険性についてはすでに指摘しましたが、トウモロコシの
場合主な輸入先のアメリカでは遺伝子組み換え率が何と92%にも達しています。
現在、家畜飼料の自給率は25%まで落ちてしまっていますから、これからも純粋に国産の肉は少な
くなってゆきます。
しかも、輸入飼料には遺伝子組み換えと毒性の強い除草剤で栽培した穀家畜飼料で育った家畜の肉を
食べることになるでしょう。
データは少し古くなりますが、この状況を示したもの(2017年)が下の図です。これをみれば、
状況は明らかで説明は要らないでしょう。
(出典 https://www.tohto-coop.or.jp/tokusyu/jikyuritsu/05tikusan.html)
豚肉に関して言えば、飼料も含めて国産はわずかに6%、牛肉は12%です。つまり、純粋に国産の
肉類はほとんどないということです。
この背後にはもう一つ、世界の食料消費の面から見て、日本における肉の消費には大きな問題があり
ます。
以前にも紹介したことがありますが、肉の生産には多量の穀物が使用されます。つまり、1キロの肉
を生産するために、何キロの穀物が必要になるか、という問題です。
鶏卵は3キロ、鶏肉は4キロ、豚肉は7キロ、牛肉は11キロ、牛乳は1キロです。
これらの数字から私たちは、次のような現実を見つめなければなりません。
つまり現在世界各地で深刻な食料不足に見舞われ、そのために飢餓や餓死、暴動さえ起きかねない状
況があります。
そんな時に、直接に穀物を食べるのではなく、1キロの肉を得るためにその8倍から10倍の穀物を
消費することはどうなのだろうか、という道義的な問題があります。
日本はお金があるから、肉を好きなだけ買って食べる権利がある、誰にも文句を言わせない、貧しい
国の食料不足の問題に我々が道義的な責任を負う必要はない、という考えにも一理あります。
しかし、全面的に賛同することもできません。
家畜系の肉で蛋白質を摂らなくても、海に囲まれた日本は幸い、魚で接種してきた。家畜の肉の幾分
かでも魚介類で補い、さらに植物性の蛋白である、大豆をもっと積極的に利用すべきでしょう。
魚介類の自給列は、1963年の100%から2020年の55%へ半減しましたが、それでも、か
なり大量の漁獲量があります。
いずれにしても、飽食の時代は終わり、節度ある食習慣を身につけてゆくことが求められています。
食料の60%を輸入に頼っていながら、毎年、40%の食料を廃棄している日本の現状は、どう考え
ても異常です。
(注1)以下の、1965から2020年までの統計は、農水省発表の自給率表を引用した。https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/attach/pdf/012-17.pdf
最近では、日本の食糧自給率がカロリベース(熱量換算で)で40%を割って、30%台に落ちた
ことは何となく頭の隅にあって、理解しているつもりでした。
しかし、その具体的な中身や、このことが意味する問題の深刻さを実感することを十分に理解して
いたかと言われれば、私は自信がありません。
そこで今回は、日本の食料自給の実態を、具体的に見てゆきたいと思います(注1)
農水省発表の一昨年の令和2年度2020年度の実績をみると、カロリーベースの総合自給率は37
%でした。つまり、大雑把に言って自給率は三分の一強ということになります。
もちろん、その中身には食品ごとに自給率は大きく異なります。
たとえば、米に関しては昭和40年(1965年)の95%から令和2年の97%まで、わずかです
が増えています。
しかし、パンや麺類の原料となる小麦に至っては、同期間に28%から2020年には15%へと約
半分になってしまいました。
小麦にいたっては今年に入ってすでに4回も値上げしており、6月からはウクライナ戦争の関係もあ
って、さらに価格は上昇するでしょう。
これは、日本人の食生活に大きな負担となるはずです。
野菜に関しては、1965年には100%自給していましたが、その後緩やかに低下し、2020年
には80%となっています。
日本人は米があれば安心、という感じはしますが、食生活が米からパン食へ移りつつある最近の傾向
をみると、今後は、価格の上昇が避けられないでしょう。
また主食用ではありませんが、「いも類」のサツマイモは同期間に100%から96%へ、ジャガイ
モは100%から68%へ、大きく減少しています。
最近では、フライドポテトの原料の多くはアメリカからの輸入が増えており、アメリカでの不作が直
ちに日本での供給不足となって跳ね返ってきます。
私が危惧しているのは、大豆の自給率の低下で、1965年の25%から2020年のわずか6%へ
激減しています。つまり、もうほとんど、輸入に頼っていることになります。
ご存じのように、欧米では大豆は、基本的に家畜の飼料で、人間が食べる食物とは考えていません。
このため、特にアメリカでは大豆の94%は遺伝子組み換え品種で、しかもそれと組み合わされて除
草剤(たとえばヨーロッパで使用禁止か制限となっている毒性の強いラウンドアップのようなもの)
が大量に使用されています。
日本の食卓にとって、大豆は重要な蛋白原であるだけでなく、豆腐、納豆、みそ、醤油という、いわ
ば日本食の基盤ともいえる重要な食品です。
もし、大豆が日本から消えてしまったら、もう日本食は成り立ちません。
ところで、日本人の食生活に、肉食が普及していますが、その肉の供給にも大きな問題があります。
表面的な数字をみると、1965年の肉類(鯨肉を除く)の自給率は90%でした。この数字をみる
と、当時は肉類はほとんどが国産で自給していたように見えます。
しかし、これはまだ日本人の間で肉食が普及していなかったからで、必ずしも国産の肉類が十分にあ
ったからではありません。
さらに重要なことは、当時にあっても、家畜の飼料は輸入していたので、その分を考慮すると、実質
国産の肉類は42%でした。
ところが、10年後の1975年には、肉の総量の77%は国産でしたが、輸入の飼料を考慮すると、
何と、国産肉は16%に過ぎなかったのです。
そして、2020年には肉の総自給率は53%でしたが、輸入飼料を考慮すると、純粋の国産肉は7
%にすぎません。
問題はそれだけではありません。というのも、日本で生産されている肉類のうち、鶏肉、豚肉、牛肉
も、輸入の大豆、トウモロコシなどの飼料用穀物が基になっているのです。
家畜飼料のうち、大豆の遺伝子組み換えの危険性についてはすでに指摘しましたが、トウモロコシの
場合主な輸入先のアメリカでは遺伝子組み換え率が何と92%にも達しています。
現在、家畜飼料の自給率は25%まで落ちてしまっていますから、これからも純粋に国産の肉は少な
くなってゆきます。
しかも、輸入飼料には遺伝子組み換えと毒性の強い除草剤で栽培した穀家畜飼料で育った家畜の肉を
食べることになるでしょう。
データは少し古くなりますが、この状況を示したもの(2017年)が下の図です。これをみれば、
状況は明らかで説明は要らないでしょう。
(出典 https://www.tohto-coop.or.jp/tokusyu/jikyuritsu/05tikusan.html)
豚肉に関して言えば、飼料も含めて国産はわずかに6%、牛肉は12%です。つまり、純粋に国産の
肉類はほとんどないということです。
この背後にはもう一つ、世界の食料消費の面から見て、日本における肉の消費には大きな問題があり
ます。
以前にも紹介したことがありますが、肉の生産には多量の穀物が使用されます。つまり、1キロの肉
を生産するために、何キロの穀物が必要になるか、という問題です。
鶏卵は3キロ、鶏肉は4キロ、豚肉は7キロ、牛肉は11キロ、牛乳は1キロです。
これらの数字から私たちは、次のような現実を見つめなければなりません。
つまり現在世界各地で深刻な食料不足に見舞われ、そのために飢餓や餓死、暴動さえ起きかねない状
況があります。
そんな時に、直接に穀物を食べるのではなく、1キロの肉を得るためにその8倍から10倍の穀物を
消費することはどうなのだろうか、という道義的な問題があります。
日本はお金があるから、肉を好きなだけ買って食べる権利がある、誰にも文句を言わせない、貧しい
国の食料不足の問題に我々が道義的な責任を負う必要はない、という考えにも一理あります。
しかし、全面的に賛同することもできません。
家畜系の肉で蛋白質を摂らなくても、海に囲まれた日本は幸い、魚で接種してきた。家畜の肉の幾分
かでも魚介類で補い、さらに植物性の蛋白である、大豆をもっと積極的に利用すべきでしょう。
魚介類の自給列は、1963年の100%から2020年の55%へ半減しましたが、それでも、か
なり大量の漁獲量があります。
いずれにしても、飽食の時代は終わり、節度ある食習慣を身につけてゆくことが求められています。
食料の60%を輸入に頼っていながら、毎年、40%の食料を廃棄している日本の現状は、どう考え
ても異常です。
(注1)以下の、1965から2020年までの統計は、農水省発表の自給率表を引用した。https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/attach/pdf/012-17.pdf