豊洲新市場をめぐる闇の深層(1)―巨額の利権と金銭疑惑―
豊洲新市場整備をめぐるさまざまな問題と疑惑は日々深まるばかりで、真相も着地点も、一向に見えてきません。
なぜ、真相が見えてこないのか、といえば、都側が本当のことを言わず、疑問が提出されるたびに、その都度違う幼稚な
言い訳で逃げ回っているからです。
そもそも、豊洲新市場の問題が浮上した当初、事態はそれほど深刻には受け取られていませんでした。
当初の計画では、豊洲新市場は今年(2016年)11月7日開業ということになっていましたが、規則では、工事完了後2年
間は、地下水のモニタリング調査が必要で、その最終調査が11月17日に設定されていました。
もし、規定通りに調査をすると、その結果がでるのは早くても年明けの1月になってしまいます。
豊洲移転にまつわる問題は都知事選においても小池氏は争点の一つとして取り上げていましたので、小池氏は知事にな
るとすぐに、この問題に対する方針を示す必要に迫られました。
つまり、誰が見ても、調査結果が出る前に開業することは、物事の順序が違うからです。
このように馬鹿げたスケジュールを、何の疑いもなく、平然として実施しようとしていた都の官僚(東京都庁の上級職員には、
他の地方自治体と異なり「役人」、「職員」ではなく「官僚」という言葉が使われるそうです)の神経が疑われます。
恐らく、この問題に関わった官僚たちは、これまでの調査結果で有害物質は検出されないか、あるいは基準値以下であった
から、最終の調査結果を待たず開業しても、世間が問題にすることはないであろう、と高をくくっていたのでしょう。
しかし、小池知事は、8月31日、理屈から言っても、調査の最終結果が出る前の開業はおかしい、と開業に「待った」をかけ
ました。
この段階では、小池氏も業者も私たちも、開業が来年の2月か3月に延期になるだけだと、思っていました。
しかし、本来なら有害物質が含まれている土を削り、安全な土で4.5メートルの盛り土が敷地全体に施されているはずなの
に、主要建造物(3棟)の下が、空洞になっていることが発覚し、問題はまったく別の方向に波及しました。
これについてはテレビなどのメディアで連日報じられているので、ここでは触れず、今回は移転にともなうお金に関する疑惑
に焦点を当てたいと思います。
日本共産党東京都議会議員団は、「重大な問題点と徹底検証のための提言 2016 年 9 月 12 日」を公表しました(注1)。その
中から、お金に関係した部分だけを示しておきます。
まず、高騰した土壌汚染対策工事費および施設建設工事契約、豊洲新市場の整備費は、当初予定の 4,316億円から5,884
億円に上昇する見込みです。
なかでも、土壌汚染対策費が 586億円から858億円、建設費が 990 億円から 2,747 億円 に高騰し、市場会計に大きな負担
となっています。その要因について徹底究明し、公表 することが必要です。
オリンピック関連予算と同じように、最初、表に出す時にはできるだけ小さい数字を出しておいて、あとで物価や人件費の値上
がりなどの理由をつけて全体の予算を膨らませる、「小さく産んで大きく育てる」、公共事業ではよく使われる、常套手段です。
「詳しく見てゆくと、土地取得にあたって、2001 年 2 月、当時の石原知事が施政方針演説で、築地市場の移転 候補地として
東京ガス豊洲工場跡地を発表し、土地取得の本格交渉を進めました。
しか し、その年の 1 月には、東京ガスが、同跡地には基準値をはるかに超える汚染があることを公表していたのです。このた
め中央区、市場関係者、そして多くの都民が、食の安 全・安心がもっとも重視されるべき市場としてふさわしくないとして、豊洲
への移転に 反対しました。にもかかわらず、石原都政は移転計画を推進し、汚染がない土地と同等の価格で取得したのです。
汚染除去にかかわる費用としての東京ガスの 負担も、わずか 78 億円に過ぎませんでした。実際の汚染対策はきわめて不
十分なものでしたが、それでも 858億円も都は使っています。
この巨額の汚染土壌対策費を払ってまで、豊洲の土地を取得した、合理的な説明が必要ですが、今のところ、誰も説明してい
ません。
しかも、2011年7 月に土壌汚染対策工事契約がされましたが、これには談合疑惑があったにもかかわらず都は、入札参加業者
から通りいっぺんの事情聴取をしただけで済ませ、詳しい内容も公表されませんでした。
とにかく、6000億円という途方もな税金と、消費者の安全がかかっている一大事業ですから、石原元都知事も、高齢であること
を理由に、説明を逃げることは許されません。
談合疑惑はまだあります。つまり、各売場棟の建設工事が予定価格が高騰しただけなく、落札価格が、都の想定した予定価格
(もちろん入札参加業者には知らされませんので知らないはずです)の 99.9%で落札されていることです。
新市場の 3 つの売場棟の建設工事では、2013 年 11 月、最初に行われた入札は不調と なり(予定価格 628 億円)、再入札の
公告はわずか 1 ヶ月後に発表され、予定価格は 407 億円も増加し、1035 億円にふくらみました。これはなぜなのか、説明が必
要です。
とりわけ、管理棟 の建設費の単位面積あたりの予定価格は、当初から、2013 年 11 月の売場棟の予定価 格に比べて 1.8 倍に
もなっており、あまりにも異常な高価格です。(
ここで問題なのは、各工事の入札1グループだったということです。これでは競争入札とはいえず、任意で決定した相手との契約
(随意契約)と同じです。
しかも、平均落札率が 99.9%ということは、予め都の予定価格を知っていなければ、あり得ない話です。
これは、工事請負希望業者同士か、あるいは業者と都側との、何らかの談合があった可能性が極めて高いことを示唆しています。
お金の問題だけでも、まだまだ不明な点がたくさんありそうです。たとえば、今の段階で金銭との関係は取りざたされていませんが、
建物の下の空間に関しても、ひょっとしたらお金の問題が関係しているかもしれません。
というのも、本来なら建物の下には、盛り土されていたはずなのに、空洞になっており、その分の土はどこに行ったのか、という質問
に都は、他の場所に使った、と説明していますが、これも変な話です。
膨大な量の盛り土の代金も予算の中に入っていたはずですから、そのお金がどこに消えたかも分かっていません。
いずれにしても、今回の移転に関しては、不明な点、疑惑があまりにも多すぎます。
次回はもう少し別の面から今回の移転問題を考えていたいと思います。
(注1)
http://www.jcptogidan.gr.jp/wp-content/uploads/2016/09/2cea96d667ae50ef00612a3aedda692e.pdf
豊洲新市場整備をめぐるさまざまな問題と疑惑は日々深まるばかりで、真相も着地点も、一向に見えてきません。
なぜ、真相が見えてこないのか、といえば、都側が本当のことを言わず、疑問が提出されるたびに、その都度違う幼稚な
言い訳で逃げ回っているからです。
そもそも、豊洲新市場の問題が浮上した当初、事態はそれほど深刻には受け取られていませんでした。
当初の計画では、豊洲新市場は今年(2016年)11月7日開業ということになっていましたが、規則では、工事完了後2年
間は、地下水のモニタリング調査が必要で、その最終調査が11月17日に設定されていました。
もし、規定通りに調査をすると、その結果がでるのは早くても年明けの1月になってしまいます。
豊洲移転にまつわる問題は都知事選においても小池氏は争点の一つとして取り上げていましたので、小池氏は知事にな
るとすぐに、この問題に対する方針を示す必要に迫られました。
つまり、誰が見ても、調査結果が出る前に開業することは、物事の順序が違うからです。
このように馬鹿げたスケジュールを、何の疑いもなく、平然として実施しようとしていた都の官僚(東京都庁の上級職員には、
他の地方自治体と異なり「役人」、「職員」ではなく「官僚」という言葉が使われるそうです)の神経が疑われます。
恐らく、この問題に関わった官僚たちは、これまでの調査結果で有害物質は検出されないか、あるいは基準値以下であった
から、最終の調査結果を待たず開業しても、世間が問題にすることはないであろう、と高をくくっていたのでしょう。
しかし、小池知事は、8月31日、理屈から言っても、調査の最終結果が出る前の開業はおかしい、と開業に「待った」をかけ
ました。
この段階では、小池氏も業者も私たちも、開業が来年の2月か3月に延期になるだけだと、思っていました。
しかし、本来なら有害物質が含まれている土を削り、安全な土で4.5メートルの盛り土が敷地全体に施されているはずなの
に、主要建造物(3棟)の下が、空洞になっていることが発覚し、問題はまったく別の方向に波及しました。
これについてはテレビなどのメディアで連日報じられているので、ここでは触れず、今回は移転にともなうお金に関する疑惑
に焦点を当てたいと思います。
日本共産党東京都議会議員団は、「重大な問題点と徹底検証のための提言 2016 年 9 月 12 日」を公表しました(注1)。その
中から、お金に関係した部分だけを示しておきます。
まず、高騰した土壌汚染対策工事費および施設建設工事契約、豊洲新市場の整備費は、当初予定の 4,316億円から5,884
億円に上昇する見込みです。
なかでも、土壌汚染対策費が 586億円から858億円、建設費が 990 億円から 2,747 億円 に高騰し、市場会計に大きな負担
となっています。その要因について徹底究明し、公表 することが必要です。
オリンピック関連予算と同じように、最初、表に出す時にはできるだけ小さい数字を出しておいて、あとで物価や人件費の値上
がりなどの理由をつけて全体の予算を膨らませる、「小さく産んで大きく育てる」、公共事業ではよく使われる、常套手段です。
「詳しく見てゆくと、土地取得にあたって、2001 年 2 月、当時の石原知事が施政方針演説で、築地市場の移転 候補地として
東京ガス豊洲工場跡地を発表し、土地取得の本格交渉を進めました。
しか し、その年の 1 月には、東京ガスが、同跡地には基準値をはるかに超える汚染があることを公表していたのです。このた
め中央区、市場関係者、そして多くの都民が、食の安 全・安心がもっとも重視されるべき市場としてふさわしくないとして、豊洲
への移転に 反対しました。にもかかわらず、石原都政は移転計画を推進し、汚染がない土地と同等の価格で取得したのです。
汚染除去にかかわる費用としての東京ガスの 負担も、わずか 78 億円に過ぎませんでした。実際の汚染対策はきわめて不
十分なものでしたが、それでも 858億円も都は使っています。
この巨額の汚染土壌対策費を払ってまで、豊洲の土地を取得した、合理的な説明が必要ですが、今のところ、誰も説明してい
ません。
しかも、2011年7 月に土壌汚染対策工事契約がされましたが、これには談合疑惑があったにもかかわらず都は、入札参加業者
から通りいっぺんの事情聴取をしただけで済ませ、詳しい内容も公表されませんでした。
とにかく、6000億円という途方もな税金と、消費者の安全がかかっている一大事業ですから、石原元都知事も、高齢であること
を理由に、説明を逃げることは許されません。
談合疑惑はまだあります。つまり、各売場棟の建設工事が予定価格が高騰しただけなく、落札価格が、都の想定した予定価格
(もちろん入札参加業者には知らされませんので知らないはずです)の 99.9%で落札されていることです。
新市場の 3 つの売場棟の建設工事では、2013 年 11 月、最初に行われた入札は不調と なり(予定価格 628 億円)、再入札の
公告はわずか 1 ヶ月後に発表され、予定価格は 407 億円も増加し、1035 億円にふくらみました。これはなぜなのか、説明が必
要です。
とりわけ、管理棟 の建設費の単位面積あたりの予定価格は、当初から、2013 年 11 月の売場棟の予定価 格に比べて 1.8 倍に
もなっており、あまりにも異常な高価格です。(
ここで問題なのは、各工事の入札1グループだったということです。これでは競争入札とはいえず、任意で決定した相手との契約
(随意契約)と同じです。
しかも、平均落札率が 99.9%ということは、予め都の予定価格を知っていなければ、あり得ない話です。
これは、工事請負希望業者同士か、あるいは業者と都側との、何らかの談合があった可能性が極めて高いことを示唆しています。
お金の問題だけでも、まだまだ不明な点がたくさんありそうです。たとえば、今の段階で金銭との関係は取りざたされていませんが、
建物の下の空間に関しても、ひょっとしたらお金の問題が関係しているかもしれません。
というのも、本来なら建物の下には、盛り土されていたはずなのに、空洞になっており、その分の土はどこに行ったのか、という質問
に都は、他の場所に使った、と説明していますが、これも変な話です。
膨大な量の盛り土の代金も予算の中に入っていたはずですから、そのお金がどこに消えたかも分かっていません。
いずれにしても、今回の移転に関しては、不明な点、疑惑があまりにも多すぎます。
次回はもう少し別の面から今回の移転問題を考えていたいと思います。
(注1)
http://www.jcptogidan.gr.jp/wp-content/uploads/2016/09/2cea96d667ae50ef00612a3aedda692e.pdf