大木昌の雑記帳

政治 経済 社会 文化 健康と医療に関する雑記帳

豊洲新市場をめぐる闇の深層(1)―巨額の利権と金銭疑惑―

2016-09-24 20:54:08 | 社会
豊洲新市場をめぐる闇の深層(1)―巨額の利権と金銭疑惑―

豊洲新市場整備をめぐるさまざまな問題と疑惑は日々深まるばかりで、真相も着地点も、一向に見えてきません。

なぜ、真相が見えてこないのか、といえば、都側が本当のことを言わず、疑問が提出されるたびに、その都度違う幼稚な
言い訳で逃げ回っているからです。

そもそも、豊洲新市場の問題が浮上した当初、事態はそれほど深刻には受け取られていませんでした。

当初の計画では、豊洲新市場は今年(2016年)11月7日開業ということになっていましたが、規則では、工事完了後2年
間は、地下水のモニタリング調査が必要で、その最終調査が11月17日に設定されていました。

もし、規定通りに調査をすると、その結果がでるのは早くても年明けの1月になってしまいます。

豊洲移転にまつわる問題は都知事選においても小池氏は争点の一つとして取り上げていましたので、小池氏は知事にな
るとすぐに、この問題に対する方針を示す必要に迫られました。

つまり、誰が見ても、調査結果が出る前に開業することは、物事の順序が違うからです。

このように馬鹿げたスケジュールを、何の疑いもなく、平然として実施しようとしていた都の官僚(東京都庁の上級職員には、
他の地方自治体と異なり「役人」、「職員」ではなく「官僚」という言葉が使われるそうです)の神経が疑われます。

恐らく、この問題に関わった官僚たちは、これまでの調査結果で有害物質は検出されないか、あるいは基準値以下であった
から、最終の調査結果を待たず開業しても、世間が問題にすることはないであろう、と高をくくっていたのでしょう。

しかし、小池知事は、8月31日、理屈から言っても、調査の最終結果が出る前の開業はおかしい、と開業に「待った」をかけ
ました。

この段階では、小池氏も業者も私たちも、開業が来年の2月か3月に延期になるだけだと、思っていました。

しかし、本来なら有害物質が含まれている土を削り、安全な土で4.5メートルの盛り土が敷地全体に施されているはずなの
に、主要建造物(3棟)の下が、空洞になっていることが発覚し、問題はまったく別の方向に波及しました。

これについてはテレビなどのメディアで連日報じられているので、ここでは触れず、今回は移転にともなうお金に関する疑惑
に焦点を当てたいと思います。

日本共産党東京都議会議員団は、「重大な問題点と徹底検証のための提言 2016 年 9 月 12 日」を公表しました(注1)。その
中から、お金に関係した部分だけを示しておきます。

まず、高騰した土壌汚染対策工事費および施設建設工事契約、豊洲新市場の整備費は、当初予定の 4,316億円から5,884
億円に上昇する見込みです。

なかでも、土壌汚染対策費が 586億円から858億円、建設費が 990 億円から 2,747 億円 に高騰し、市場会計に大きな負担
となっています。その要因について徹底究明し、公表 することが必要です。

オリンピック関連予算と同じように、最初、表に出す時にはできるだけ小さい数字を出しておいて、あとで物価や人件費の値上
がりなどの理由をつけて全体の予算を膨らませる、「小さく産んで大きく育てる」、公共事業ではよく使われる、常套手段です。

「詳しく見てゆくと、土地取得にあたって、2001 年 2 月、当時の石原知事が施政方針演説で、築地市場の移転 候補地として
東京ガス豊洲工場跡地を発表し、土地取得の本格交渉を進めました。

しか し、その年の 1 月には、東京ガスが、同跡地には基準値をはるかに超える汚染があることを公表していたのです。このた
め中央区、市場関係者、そして多くの都民が、食の安 全・安心がもっとも重視されるべき市場としてふさわしくないとして、豊洲
への移転に 反対しました。にもかかわらず、石原都政は移転計画を推進し、汚染がない土地と同等の価格で取得したのです。

汚染除去にかかわる費用としての東京ガスの 負担も、わずか 78 億円に過ぎませんでした。実際の汚染対策はきわめて不
十分なものでしたが、それでも 858億円も都は使っています。

この巨額の汚染土壌対策費を払ってまで、豊洲の土地を取得した、合理的な説明が必要ですが、今のところ、誰も説明してい
ません。

しかも、2011年7 月に土壌汚染対策工事契約がされましたが、これには談合疑惑があったにもかかわらず都は、入札参加業者
から通りいっぺんの事情聴取をしただけで済ませ、詳しい内容も公表されませんでした。

とにかく、6000億円という途方もな税金と、消費者の安全がかかっている一大事業ですから、石原元都知事も、高齢であること
を理由に、説明を逃げることは許されません。

談合疑惑はまだあります。つまり、各売場棟の建設工事が予定価格が高騰しただけなく、落札価格が、都の想定した予定価格
(もちろん入札参加業者には知らされませんので知らないはずです)の 99.9%で落札されていることです。

新市場の 3 つの売場棟の建設工事では、2013 年 11 月、最初に行われた入札は不調と なり(予定価格 628 億円)、再入札の
公告はわずか 1 ヶ月後に発表され、予定価格は 407 億円も増加し、1035 億円にふくらみました。これはなぜなのか、説明が必
要です。

とりわけ、管理棟 の建設費の単位面積あたりの予定価格は、当初から、2013 年 11 月の売場棟の予定価 格に比べて 1.8 倍に
もなっており、あまりにも異常な高価格です。(

ここで問題なのは、各工事の入札1グループだったということです。これでは競争入札とはいえず、任意で決定した相手との契約
(随意契約)と同じです。

しかも、平均落札率が 99.9%ということは、予め都の予定価格を知っていなければ、あり得ない話です。

これは、工事請負希望業者同士か、あるいは業者と都側との、何らかの談合があった可能性が極めて高いことを示唆しています。

お金の問題だけでも、まだまだ不明な点がたくさんありそうです。たとえば、今の段階で金銭との関係は取りざたされていませんが、
建物の下の空間に関しても、ひょっとしたらお金の問題が関係しているかもしれません。

というのも、本来なら建物の下には、盛り土されていたはずなのに、空洞になっており、その分の土はどこに行ったのか、という質問
に都は、他の場所に使った、と説明していますが、これも変な話です。

膨大な量の盛り土の代金も予算の中に入っていたはずですから、そのお金がどこに消えたかも分かっていません。

いずれにしても、今回の移転に関しては、不明な点、疑惑があまりにも多すぎます。

次回はもう少し別の面から今回の移転問題を考えていたいと思います。

(注1)
http://www.jcptogidan.gr.jp/wp-content/uploads/2016/09/2cea96d667ae50ef00612a3aedda692e.pdf



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スポーツと戦争―負傷兵士とパラリンピック―

2016-09-17 17:17:25 | 思想・文化
スポーツと戦争―負傷兵士とパラリンピック―

現在、リオでは通常のオリンピックに引き続いて、障がいをもった選手によるパラリンピックが行われています。

パラリンピックの歴史については、「日本パラリンピック委員会」のホームページ(注1)に詳しく書かれているので、そちらを見ていただくこととして、
以下に3点だけ書いておこう。

第一に、障がいのある人々が身体運動を行なっていたという記録は紀元前から(恐らくギリシアで)見られ、医師や体育指導師により「治療体操」
としてスポーツが行われるようになった、という記録があります。

現代風に表現すれば、障がい者のためのリハビリを兼ねた身体運動は、古くからおこなわれていたわけです。

第二に、しかし障がい当事者自身が組織を作り自発的にスポーツ活動をはじめたのは、19世紀以降のことでした。特にイギリスでは第一次世界
大戦後に、障害者による移転者クラブや片上肢ゴルフ協会が創立されるなど、障がいのある人々が自発的にスポーツを楽しむようになりました。

つまり、障がいを持つ人がリハビリのためではなく、健常者がそうしているように、スポーツをそれ自体として楽しむために動き始めたのです。

第三に、自ら楽しむためにスポーツでしたが、次第に障がい者による国際的なのスポーツ大会が行われるようになりました(1924年の第1回国際
ろう者スポーツ競技大会、現デフリンピック)。

第四に、現在のパラリンピックへと発展した原点は、第二次世界大戦(1939〜1945年)後のことで、戦争で負傷した兵士の治療と社会復帰を目的
に、1948年にロンドンオリンピックにあわせて車いす患者(英国退役軍人)によるアーチェリー大会が開催されました。これがパラリンピックの原点
です。

当初は、Paraplegic Olympic(対麻痺者のオリンピック)という言葉が用いられていましたが、1964年の東京大会からParalympic と表現されるように
なりました。

まさらに、パラリンピックの「パラ」は麻痺や障がいという意味合いより、オリンピックと「平行して」行われるという意味合いでも理解されるようになり、
今に至っています。

以上の、簡単な歴史からも分かるように、パラリンピックが大きな転機を迎えた背景には戦争の影が付きまとっていました。

なぜなら、戦争は大量の負傷者を生み出し、そのような人々のリハビリと生きがい、そして社会復帰が彼らにとっても社会にとっても重要な課題と
なるからです。

では、今日では、パラリンピックはもう戦争と関係ないだろうか?

第二次世界大戦以後も、規模は小さくなったかもしれませんが、“戦争”と言える軍事行動は続いています。

主なものだけでも、ベトナム戦争、中南米でのゲリラ戦、アフリカでの内戦や部族間、国家間の武力衝突、最近ではイラク、アフラニスタン、シリア
における戦争など、ほとんど休みなく戦争はつづいています。

これらの戦争に参加した国や兵士たちの中で、負傷した人たちはたくさんいるに違いありません。

これまで、パラリンピックに参加した選手のうち、戦争で負傷して障がい者となった人たちの参加について話題になったことはありませんでした。

実際には、たとえば2010年のバンクーバー冬季パラリンピックでは、アメリカの出場選手に5人が戦争で負傷した元兵士で、当時、次回のパラリン
ピックでは7人に1人がこのような傷病兵になるだろうと、言われていました。(注2)

実際、2014年の冬季ソチ・パラリンピックでは、アメリカの出場選手80名のうち16人、つまり5人に1人が「テロとの戦い」でイラク、アフガニスタン
で負傷した元兵士でした。

同様の傾向は他の国でも起こっており、あるドイツ人は、ドイツにおいても“障がい者スポーツはますます軍事的に組織されるだろ”、と語っていま
す(注3)

そして、2016年9月12日のNHK「クローズアップ現代+“戦場の悪夢”と金メダル―兵士とパラリンピック」でも取り上げていたように、負傷兵士の
パラリンピックへの参加傾向は続いています。

とりわけ、多くの戦争に参加してきたアメリカの選手の場合顕著です。

これには、二つの側面があります

一つは、アフガニスタンとイラク戦争からの復員軍人の精神的身体的問題がアメリカ社会に暗い影を落としており、それを何とか社会復帰、リハビリ
の方向にもってゆきたい、という政府、軍当局の意図です。

これはある意味で、政府や軍がパラリンピックをプロパガンダに利用している、とも言えます。

もう一つは、政府や軍当局の意図とは別に、負傷し障がい者となった復員兵が、自分たちの生きる希望として、パラリンピックへの参加を目指したこ
とです。

復員兵の大きな問題は、戦場の恐怖体験や人を殺した罪悪感から、帰国後も精神的な深い傷を抱えている場合が、多く自殺者が後をたちません。

たとえば、2014年11月以前の2か月の平均で、1日当たり平均22人が自殺していました。

単純計算すると、1年に約8000人が自ら命を絶っていることになります。アフガニスタンとイラク両国で戦死した米兵は過去13年で約6800人なので、
これと比べると、どれほど多くの若者が自殺しているかがわかります(注4)

正確な数字は分かりませんが、こうした自殺者の中には、負傷して将来に絶望した復員軍人も含まれていたことは十分考えられます。

障がい者となった復員兵が、スポーツを通してもう一度生きる希望を取り戻そうとすることはごく自然です。

番組の中で、あるアスリートは、パラリンピック参加者全体のなかで、障がいをもった復員兵の割合は少ないかもしれないが、メダル獲得者の中に占
める、負傷した復員兵の割合は高くなってゆくだろう、と語っています。なぜなら、彼らは強靭な肉体的訓練をしてきているからです。

アメリカ以外でも負傷した復員兵はおり、彼らがパラインピックに参加しています。

例えばロシアのようにチェチェンでの戦闘で負傷した復員兵が実際にパラリンピックに参加しています。

このような事情をみると、パラリンピックの背後に戦争の影がちらついて、複雑な思いです。

ところで、日本の場合、パラリンピックの参加者は、事故や病気で障害を負った人に限られ、復員兵の参加者はいません。

それでも障害をもった人たちの自己実現、リハビリ、社会復帰などの動機は強いとは思いますが、同時に、通常のオリンピックのように日本は何個メダル
を取れるか、と競う傾向がますます強まっています。

ここでも、パラリンピックが国威発揚の場に利用されつつあります。

いよいよ日本の自衛隊も、海外活動で「駆けつけ警護」が実施段階に入りましたが、その過程で発生した負傷「自衛隊員」のパラリンピック参加、といった
事態は何としても起こってはならないと思います。

(注1)  http://www.jsad.or.jp/paralympic/what/history.html
(注2) 『YOMIURI ONLINE』(2010年3月22日)2016年9月13日閲覧。
     http://www.yomiuri.co.jp/olympic/2010/news/paralympics/news/20100322- OYT1T00557.htm 
(注3) Deutsche Well (2014年3月21日)2016年9月13日閲覧。
      http://schwer-metall.hatenablog.com/entry/2014/03/21/184700
(注4) 『日経ビジネス』(電子版)、2014年11月18日。2016年9月13日閲覧。
     http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20141117/273933/?rt=nocnt 

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北朝鮮の核実験と日本の安全保障-原発は大丈夫?-

2016-09-10 06:51:22 | 国際問題
北朝鮮の核実験と日本の安全保障-原発は大丈夫?-

2016年9月9日、北朝鮮は初めて核実験に成功した、と発表しました。

北朝鮮は今年の1月に核爆発の実験を行いましたが、この時は失敗に終わっています。

しかも、どうやら核爆弾の小型化にも成功したようです。

ということは、長距離ミサイルに核弾頭を積み込むことが可能となったことを意味します。

これに対して、日米韓、ヨーロッパ諸国および、これまで北朝鮮に比較的寛容な姿勢をとってきた中国やロシアまで、
今回の核実験には、非難を強めています。

とりわけ中国は、北朝鮮に対してはらわたが煮えくり返るほど激怒したと言われています。

これには背景があったからです。

まず、今年の8月24日、北朝鮮はSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)の発射実験に成功しました。

これにより、発射の準備段階から監視されてしまう地上基地ではなく、どこから発射されるかわからない常に移動する
潜水艦からどこでも攻撃できることが明らかになりました。

北朝鮮はアメリカの心臓部をいつでも攻撃できることを誇示し、米・北朝鮮会談に持ちこもうとしているのです。

これに対してアメリカは強く反発しました。

それと同時に、このような核実験を繰り返す北朝鮮に対して中国は影響力を行使してやめさせるべきだ、という世界の
期待が裏切られたことになります。

さらに9月4~5日には、中国が議長国となって、杭州市でG20(「金融・世界経済に関する首脳会合」)が開かれ、国際
社会における大国中国のリーダーシップをアピールしていました。

その最中の5日、北朝鮮は、射程1000キロの弾道ミサイルを3発、日本の排他的経済水域ぎりぎり、あるいは若干内
側に発射しました。

軍事専門家は、これによって、北朝鮮のミサイル技術が、着地点を正確に制御できること、我々の予想を超えて進歩して
いる、と指摘しています。

アメリカと中国が、2大大国として世界、とりわけ太平洋地域の秩序を確立しようとしていたのに、北朝鮮さえ抑えきれない
ことがはっきりしてしまったのです。

ここでも中国は見事に威信とメンツをつぶされてしまいました。

さらに、9月7日はラオスでアセアン首脳会議が開催され、この会議でも中国は、南シナ海問題を議論から封じ込むことに
成功し、この東南アジアにおける中国の存在感を十二分に示すことができました。

しかし、9日に北朝鮮による核実験によって、またしても中国の東アジアにおけるリーダーシップに疑問符がついてしまい
ました。

北朝鮮は、今回の核実験に際して、核攻撃によってアメリカの首都ワシントンが炎上する映像をテレビで流すなど、明らか
にアメリカをターゲットとした脅しをかけています。

いずれにしても、北朝鮮のミサイルと核兵器の開発は、人々の想定を超えて急速に進んでいることが明かとなり、世界に
新たな脅威を与えたことは確かです。

国連の安保理は日本時間の10日、北朝鮮に対する制裁強化の話し合いをすることになっていますが、今のところ、それ
で北朝鮮の挑発が止むかどうか保証はありません。

ところで、こうした一連の北朝鮮の行動は、日本の安全にどのような影響と意味をもっているでしょうか?

北朝鮮は以前、日本にあるアメリカの基地をもターゲットにしているようなので、一連の動きは日本の安全保障にも重大な
脅威となり、唯一の被爆国である日本としては絶対に許すことはできません。

今回の核実験に対して日本政府が強い調子で非難の声明を出したのは当然です。

もし、日本に核兵器が使用されるようなことあれば、計り知れない人的・物的被害を与えるでしょう。

軍事専門家によれば、北朝鮮は日本に向けたミサイル(ノドン)を200~300基配備しているとみられ、これらのうち複数の
ミサイルが北朝鮮から同時に発射された場合、それらすべてを迎撃・破壊することは、現在の防衛能力では、現実的には不
可能であるとされています。

この問題が深刻なのは、一発でも着弾したら(例えば首都の東京に)、それだけで日本全体を麻痺させてしまう致命的打撃を
与えることができるからです。

しかも、北朝鮮のミサイルが移動式の地下発射サイロや、漁船や商船に偽装した船、さらに最近明らかになったように潜水艦
から発射されたら、ほとんど防御不可能です。

私が非常に懸念しているのは、アメリカに到達するような長距離弾道ミサイルに搭載された核爆弾だけではありません。

日本と北朝鮮は至近距離にあり、それほど高性能でなくとも日本に到達するくらいのミサイル(テポドンやノドン)は数多く持って
いるでしょう。

現在、北朝鮮が何発くらいの核弾頭を保有しているか分かりませんが、たとえ、核弾頭をもたない通常の爆弾を積んだミサイル
でも、十分すぎるほど日本に致命的な打撃を与えることができます。

なぜなら、日本に50基以上ある原発にミサイルが一発でも着弾したら、原爆のように瞬時に直接に人を殺傷することはないにし
ても、福島の原発事故のような状況が発生し、日本列島が放射能に汚染されてしまうからです。

そうなると、電気の供給が減少するだけでなく、放射能を避けるために膨大な数の人々が避難しなければなりません。これは日本
にとって想像したくないほどの悪夢のようなシナリオです。

つまり、日本は原発という格好のターゲット(アキレス腱)を北朝鮮にさらけだしていしまっているのです。この点からも、日本は原
発を見直すべきだと思います。これは日本の安全保障にとって深刻な問題です。

現在、国連を通して北朝鮮に対する制裁を強め、核兵器の開発を止めさせようとしています。

しかし、これまでも何回か決議をし、制裁を実行してきたにもかかわらず、核開発を一向に止める気配はなく、ミサイルの長距離化、
核爆弾の小型化、潜水艦からの発射技術の完成、などなど、むしろ加速化しています。

その大きな原因として、経済制裁には中国ルートという穴があって、中国が北朝鮮から石炭やその他のレアメタルを輸入しているか
らではないか、と考えられています。

したがって、中国が強く圧力をかけて北朝鮮に核開発を思い止まらせることができるかどうかが、この問題を解決する、一つのカギ
となります。

従来、中国は表向き北朝鮮を非難してきましたが、その実、裏で実質的に支援してきました。

しかし、今月の北朝鮮によるミサイル発射実験と核実験は、中国のメンツを大きくつぶし、激怒させたので、今回は中国も真剣に北朝
鮮に対する圧力を強化するのではないか、という期待はあります。

北朝鮮が世界の非難を承知で核開発を進めているのは、北朝鮮も核保有国であることを認めてもらいたい、そして、アメリカが二国間
交渉に応じてほしい、その上で、米朝の平和条約を結びたい、との意図があるからです。

北朝鮮の金・正恩氏は、リビアのカダフィ、イラクのフセインようにアメリカによって殺害され、軍事的に制圧され支配されることを恐れて
いるのです。

今のところアメリカは米朝交渉に乗るつもりは全くなさそうです。そうすると、北朝鮮はさらに挑発を強化し、危険な賭けに出る可能性が
あります。

日本は北朝鮮との間で拉致問題を抱え、しかも北朝鮮のミサイルから至近距離に位置しています。

この点、アメリカは拉致問題もなく、なんといっても遠くに離れているので、北朝鮮のミサイルの脅威は日本よりはずっと弱いでしょう。

日本がアメリカと全く歩調を合わせ、追随して北朝鮮への強硬姿勢を取り続けてゆくのがいいのか、あるいは米朝の間に入り、独自外交
によって、何か、緊張緩和の役割を果たすことができるのか、日本外交の能力が試されています。



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喫煙考―受動喫煙の肺がんリスクは「ほぼ確実」から「確実へ」―

2016-09-03 04:25:46 | 健康・医療
喫煙考―受動喫煙の肺がんリスクは「ほぼ確実」から「確実へ」―

タバコが健康に悪い、ということは以前から分かっていました。国立がん研究センターによると、肺がんによる死亡のうち、
男性は70%、女性は20%で喫煙が原因とされています。

しかも、これは肺がんだけに限った数字で、その他、心臓、脳血管障害、様々な肺疾患、ぜんそくなど、喫煙と深く関わる
病気はたくさんあります。

今回の研究でも、喫煙は全てのがんリスクとの関係が(確実)、肺がん(確実)、肝臓がん(確実)、胃がん(確実)、大腸がん
(可能性あり)、直腸(可能性あり)、乳がん(可能性あり)」となっています。

以上は喫煙者本人の問題なので、ある意味で自己責任、自業自得と言う面があります。

しかし、自分が吸わないのに、周囲の喫煙者の煙で、肺がんになるのは実に、はた迷惑です。

今でこそ、喫煙の害を書きたてる私自身も、20代から40才くらいまで、かなりのヘビー・スモーカーでした。

とりわけ、オーストラリアに留学中、論文の作成のために没頭していた時期には、自分で刻みタバコの葉を、紙で巻いて吸う
方式のタバコを吸っていました。

このタイプのタバコは、全部吸い終わっても、短くなったタバコの紙をほどいて葉を集め、もう一度、紙に巻き直して吸うことが
できます。

これは、当時、お金のない学生の間ではごく普通でした。しかし、短くなったタバコの葉には、肺がんの原因となるニコチンや
タールその他の有害化学物質が濃縮されるので、健康には最悪となります。

実際、こうしてニコチンやタールが濃縮されたタバコは、一服吸っただけで、頭がクラクラッとします。

喫煙に関して、留学中に、いろいろ考えさせられました。

私がいたオーストラリアの首都特別州(ACT)では、1970年代にはもう、マリファナの喫煙は「違法ではない」(「合法」とは言
わず、「違法ではない」と言うところがミソです)状態にありました。

マリファナが違法ではないニューサウスウェールズ州(州都はシドニー)のニンビンでは毎年、マリファナの収穫祭が大々的
に行われており、そこでは幾らでも大麻(マリファナ)が買えますし、もちろん喫煙もできます。(注1)


ファリファナの栽培と売買は違法ですが、喫煙は違法ではない、という矛盾した法律の構成となっています。

それでは、誰がどのようにして生産し、手に入れるのか、は不問に付されています。

留学間もないある朝10頃、学生ホールに行ったところ、2階のビリヤード台などが置いてある娯楽室に足を踏み入れた途端、
マリファナ・タバコの独特の臭いに、むっとしました。

広い部屋は。マリファナの煙で遠くがかすんでしまうほどでした。

そして、ビリヤード台では、ビールを飲みながら、そしてマリファナを吸いながらビリヤードを楽しんいる学生が何人かいました。

これは、少なからずカルチャーショックでした。

当時、主にキリスト教関係者から、マリファナは麻薬の一種なので、法律で禁止すべきだ、という声がずっと発せられていました。

しかし、それに反対する人たちから、マリファナは、パイプなどで吸えば、肺がんなどの健康リスクは、紙巻きたばに比べればほ
とんどない、との論理で反論され、結局、違法にはできませんでした。

というのも、紙巻タバコ(普通に売っている、箱に入ったタバコ)の害のうち、紙が燃えて発生する化学物質が、肺がんその他の
病気と深く関わっていることが知れられているからです。

さらに、紙巻きタバコの喫煙者は、どうにも抑えがたい強烈な衝動に駆られてしまい、なかなか止められません。

これは、紙巻きタバコを吸い続けることによる習慣性、もっとはっきり言えばニコチン中毒というれっきとした病気です。

マリファナにはまず習慣性がありません(つまり中毒ならない)。

以上、肺がんをはじめ紙巻きタバコのもつ健康への害、そして習慣性がない、という2点で、首都特別区ではマリファナを法律的
に禁止することはできないまま今日に至っています。(注1) 

日本では、マリファナは、一時的にせよ幻覚をともなうこと、そして、覚せい剤などの本当の麻薬へ進む第一歩となる、という理由
で、これを法律で禁止しています。

話が、マリファナの問題に移ってしまいましたが、再び受動喫煙に戻ります。

私は、紙巻きたばこの害については十分に知ってはいましたが、まさしくニコチン中毒の域に達していたため、留学後も10年ほど、
タバコを止められませんでした。

留学から帰国してからも、しばらく吸っていましたが、40才過ぎに、健康への影響を考えて、ある時を境にピッタリ禁煙し、それ以後
全く吸っていません。

ずいぶん周囲の人に迷惑をかけてきたと、懺悔の気持ちがあります。

タバコから完全に離れた今では、自分自身の健康と周囲の人に健康に害を与えなくなって、本当に良かったと感じています。

ところで、受動喫煙がどの程度、健康被害、とりわけ肺がんと関わっているかについて、従来は「ほぼ確実」と表現されていました。

しかしこの度、国立がんセンターが、家庭内での影響を調べた1984~2013年公表の9論文を解析した結果、次のようなことが明か
となりました。

これらの論文が対象としたのは約20万人の女性で、受動喫煙している人の肺がんリスク(肺がんに罹る確率)は、受動喫煙してい
ない人に比べて1.3倍高いことが確かめられました。

この数字は、これまでに実施された同様の国際的研究と、ほぼ同じ結果です。

1.3倍というのは一見、たいしたことはないようですが、受動喫煙をしていない人の肺がんリ罹患率100人の時、受動喫煙者の肺
がん罹患率は130人、つまり30人も多いことを意味します。

これは、因果関係としてはかなり高いと言えます。

今回の研究は、複数の研究対象を統合し、かつ、対象数を20万人と大幅に増やしたこと、そしてその結果が国際的な研究結果と
ほぼ同じであったことなどを総合して、受動喫煙の肺がんリスクは、「ほぼ確実」から「確実」と表現されることになりました。

日本は、受動喫煙に関する規制が、世界的にみて非常に緩い状態にあります。せめて、室内での喫煙は禁止し、各家庭では、受動
喫煙の危険性についてもっと啓蒙を推進すべきだと思います(注2)。


(注1)オーストラリアでは州によって、マリファナの喫煙、所持、販売、栽培がどのように規制されているかは異なります。ニンビンの
    マリファナ祭りに関しては、さしあたりhttp://masi-maro.com/det/6582 を参照。
(注2)以上の記述のうち、がん研究センターの発表に関しては、『東京新聞』2016年8月31日から引用した。







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