二日目「シルクカントリーぐんま 絹の国サミット」の報告
10月3日(土)は、10時から富岡製糸場東繭倉庫で開会式が行われ、主催した県、伝道師協会、上毛新聞社のあいさつがありました。司会は伝道師の青木玲子さんが2日間務めました。
主催者の一人としてあいさつした近藤会長は「産業遺産は勉強するほどに奥が深いことがわかる。従ってさらに内容のある観光の場所に発展することを願う」とし、製糸場を見学するだけでなく、座繰りや繭クラフト作りなども体験できる場所も作って欲しいと強調しました。
続いて、登録1周年を記念して募集した絹にまつわる論文、作文、映像の優秀作品の表彰式と作家の絲山秋子さんの講評・講演がありました。
午後1時から「絹の国サミット」事例発表・パネルディスカッションが行われました。
パネルディスカッションに先立ち、4人の出席者は各地での取り組みを発表しました。
事例発表①「六工社と和田英」原田和彦(長野市立博物館 学芸員)
「富岡日記」を執筆した和田英は、富岡製糸場を退場した後、六工社や長野県営製糸場の技術指導者として招かれ活躍。信州の製糸業のソフト面での開拓者であった。幕末から明治にかけての橋渡しを行った人物のひとりである。
事例発表②「庄内藩士の養蚕と田島家」山田鉄哉(松ヶ岡開墾場 理事長)
松が丘開墾場は庄内藩の旧藩士の救済・殖産のため明治5年から約300町歩を開墾した所。現在5棟残っている大型蚕室は田島弥平宅に寄宿して養蚕技術・方法を学んだ人たちが建て、田島家との深い結びつきがある。
事例発表③「養蚕がつなぐ群馬の世界遺産と養父市」谷本進(養父市教育委員会教育部次長)
出石藩の士族の娘25人が富岡製糸場から帰り教婦となる。高山社の養蚕教師が養父市に派遣される。養蚕研究者の上垣守国が伊勢崎市、富岡市などを訪れ養蚕技術交流と発展に努めた。群馬方式で行う養父市の養蚕も世界遺産と言えるのではないだろうか。
事例発表④「蚕種の風穴保存復活の試みから学ぶ」伴野豊(九州大学大学院農学研究院付属遺伝子資源開発研究センター 准教授)
九州大学は暖地を利用した蚕の遺伝・育種研究に貢献。全国に300カ所の風穴を確認。風穴保存の特徴として、低温・高湿度・電力不要・クリ
ーン(風の流れ:カビ発生防除効果)が挙げられる。
15時からパネルディスカッションが行われました。上記4人に富岡製糸場名誉顧問兼総合研究センター所長の今井幹夫さんと大日本蚕糸会顧問
の高木賢さんが加わり、「絹遺産で縁結び~保存活用を共に考える」をテーマに活発な意見を交換しました。
(Y.I記)