12月24日、前橋市上佐鳥町にある春日神社の境内に御神木として桑の苗3本が植えられました。この桑の植栽は、春日神社の例祭日に行われる太々神楽の中で「蚕の舞」が演じられていることから、桑を御神木として植え自前の桑を舞いの中で使いたいとの意向から植えられたものです
桑は養蚕用の品種「一ノ瀬」2本を県蚕糸技術センターが寄贈し、観賞用の「しだれ桑」1本はM.M伝道師が一昨年「桑の接木講習会」で接ぎ木して育てていたものを寄贈したものです。当日は神楽保存会の役員達によって日当たりの良い境内の西側に植えられました。
この桑の植栽は、地元の中沢伝道師が神社の氏子になっていることから神楽保存会に呼びかけて実現したものです。ここ春日神社は、毎年5月3日(祭日)の祭礼日に太々神楽24座が上演されています。その中でも9番目に上演される「蚕の舞」は興舞(愛嬌舞)とも言われ、神様を喜ばせるための舞いで明るくユーモアに富み、おどけた仕草で観客を笑わせながら演じることで知られています。
「蚕の舞」は、農家の夫婦と下男(若者)2人がひょっとこ面をかぶり、養蚕の掃き立てから繭を収穫するまでの一連の作業を踊りながら表現するもので、昭和49年に前橋市無形文化財に指定されています。本協会でも,本年6月にイオンモール高崎で開催された「シルクカントリーぐんまキャンペーン」の開会式の際に上演していただきました。
この神楽の始まりは、明治時代の中頃、渋川市下南室にある赤城神社で始まったものが前橋市下大屋町の産泰神社を経て春日神社に伝わったと言われています。産みの親とも言える渋川市の赤城神社では現在も「養蚕の舞」が演じられていますが、養蚕を演目とした太々神楽は全国でも渋川の赤城神社と前橋の春日神社の二か所のみとなってしまいました。養蚕を題材とした太々神楽は両保存会の人達によって伝承されており、養蚕が盛んだった群馬ならではの生活文化を取り入れた優れた伝統芸能の一つとなっています。
このたびの御神木としての桑の植栽により、「蚕の舞」の神楽が後世に伝承されていく一助となればと思っています。(M.M記)