「シルク博in伊勢崎」で伝道活動
12月17日(日)世界遺産「富岡製糸場と絹産業遺産群」の登録3周年を記念した「シルク博in伊勢崎」が、構成資産の一つである田島弥平旧宅のある「旧境島小学校体育館」と「境赤レンガ倉庫」で群馬県、伊勢崎市、上毛新聞社と富岡製糸場世界遺産伝道師協会の主催で開かれました。
当日は寒い一日でしたが、午前9時30分に集合し準備をしました。旧境島小学校体育館では、午前10時の開会式での主催者挨拶で、始めに向田群馬県企画部長は「上武地域は養蚕や製糸の歴史を伝える遺産が多く残るところであり、地域連携の広がりを期待したい」と、そして当協会の近藤会長は「田島弥平旧宅のように養蚕に特化した農家は世界的に大変に珍しいものです。島村勧業会社がミラノまで蚕種を販売に行った実績などを考えれば周辺の養蚕農家群は大切であり、弥平旧宅はその景観と一緒に残すべきだ」と挨拶していました。
この日の伝道師協会としの活動は午前10時からで「旧境島小学校体育館」ではパネル解説、パンフレット配付と繭クラフト体験を「境赤レンガ倉庫」ではパネル解説とパンフレト配付で活動しました。
開会と同時刻に「田島弥平案内所」を発着点にした「シルク博バスハイク」がスタートしました。このバスハイクでの車内解説を井上(雄)理事が担当し、埼玉県の深谷、本庄両市の関連資産を巡るもので各地から22人が参加して、深谷市にある渋沢栄一記念館、渋沢栄一生家と尾高惇忠生家の3か所と本庄市の旧本庄商業銀行レンガ倉庫の4か所を見学し、それぞれについて興味深く聞いていただけました。
午前10時30分からの旧境島小学校体育館ではNPO産業観光学習館専務理事の佐滝剛弘さんが「明治150年・産業の視座から」と題して事例発表が行われ、その中で『①世界文化遺産に登録された富岡製糸場と絹産業遺産群は「うらやましい」と言われている。登録までのプロセスは大変過酷だからだ。みんなで勝ち取った称号であり、その価値を改めて認識し、魅力を磨いていく必要がある。②富岡製糸場と絹産業遺産群の構成する物件を有する群馬県南西部と埼玉県北部の一帯を「上武絹の道」と名付け、上州(群馬)と武州(埼玉)を一体化した地域づくりに取り組んでいる。③島村地域の養蚕技術や文化は全国各地に波及した。田島弥平は自然の通風を重視した養蚕飼育法「清涼育」を完成させた。また、庄内藩士は養蚕によって日本の近代化を進めようと弥平から養蚕技術を学び、鶴岡市に松ケ岡開墾場を造った。④世界遺産の総数は現在1073件あるが、消えゆく直前の産業が登録されたのは富岡製糸場と絹産業遺産群だけだ。大型養蚕農家が密集しているのは-島村地域以外にはない。住民の高齢化に弥平旧宅以外の家屋を残す法的な枠組みはなく、将来失われてしまうかもしれない。官民が一体となって知恵を出していくことが求められている。』と話されました。
続いて午前11時30分からのパネルディスカッションは「上武地域の絹遺産を結ぶ連携・交流でうまれるもの」と題して、藤井浩上毛新聞顧問論説委員をコーディネーターに事例発表した佐滝剛弘さん、埼玉県からは、NPO法人ネットワークひがしこだいら事務局長の根岸久さん、渋沢栄一記念館解説員塚田允さん、片倉シルク記念館管理員垣堺はつえさん、そして群馬県からは、ぐんま島村蚕種の会会長栗原知彦さと富岡製糸場世界遺産伝道師協会理事日下部邦彦が、世界遺産「富岡製糸場と絹産業遺産群」の保存活用に取り組んだり、関連施設で解説を務める群馬県と埼玉県の6人が、互いの絹遺産を生かした連携や地域振興について語り合いました。
その中で、コーディネーターから「富岡製糸場と絹産業遺産群の世界遺産登録から3年半、環境は堂変化したのか」との問いに、日下部理事は「当伝道師協会は県の養成講座の受講者により発足。4資産に張り付くのではなく、県内外どこでも出掛ける。繭クラフトや座繰り体験などを通じて世界遺産や養蚕について伝えているが、世界遺産は富岡製糸場のみと思っている人が多いで四つの資産で構成し産業遺産であることを伝え、日本遺産やぐんま絹遺産も紹介していきたい」と、また、「県境を越えた連携・交流はどうすれば実現できるだろう。日下部さんは県外の人にも価値を伝える活動をしているが工夫していることはあるか」との問い掛けに「富岡製糸場を参考に各地に製糸場が造られるなど、構成4資産は全国や海外とつながりがある。見学者の出身地との関連性を含めて説明するようにしている。」と述べられていました。
そして、旧境島小学校体育館内ではステージでの発表等のほか、いくつものブースが設けられており、当協会を始めとして、地元蚕種の会、高山社関係、荒船風穴関係、NPO産業観光学習館関係と上毛新聞書籍関係や絹製品の展示等で、どこも多くの人で賑わっていました。特に、当協会の「繭クラフト体験」ブースでは、繭クラフト「ぐんまちゃん」作りを楽しんでいる方が多くみられました。参加された方にお聞きすると伊勢崎市、深谷市が中心でしたが、近隣の市町村からの方もおりました。また、田島弥平旧宅には、キャラクター4体が参加し愛嬌を振りまいて盛り上げていました。工女姿の「ぐんまちゃん」、伊勢崎市の「くわまる」や埼玉県本庄市の「はにぽん」、そして上毛新聞社の「ピュルルン」も加わり、多くの子供たちが大喜びをしながら記念撮影をしていました。
一方、「境赤レンガ倉庫」では午前9時より多目的施設に改修されて初めての一般公開を記念してテープカットが行われました。
ここでの活動はパネルの展示・解説とパンフレット配付ですが、当初の活動場所は1階の入り口付近が予定されていたのですが十分なスペースがなく、急きょ2階の広いスペースへ移動をしました。そのためか終日、来場者が絶えない盛況で休憩もままならない状況でしてが、多くの方々に、地元にある世界遺産「田島弥平旧宅」を、じっくりと説明しながら他の構成資産のこと、日本遺産のこと、ぐんま絹遺産のことも話すことができ、充実した一日を過ごすことができました。
この日の参加者は、旧境島小学校が会長、K下部、A木、I上(雄)、I井(規)、T越、S野、O田(三)とS場の9名、境赤レンガ倉庫がI十嵐とN島(進)の2名の計11名でした。
(S場 善文 記)