第14回 伝道師養成講座を開催
群馬県企画部世界遺産課と富岡製糸場世界遺産伝道師協会の主催で「富岡製糸場と絹産業遺産群」が世界遺産に登録後、初の「第14回富岡製糸場世界遺産伝道師養成講座」が2月19日(木)~21日(土)の3日間、県内外から16名の受講生を対象に開催されました。
養成講座1日目(2月19日)は、群馬県庁29階294会議室で午前9時30分からの受付でしたが、受講生の皆さんは早めに受付を済ませて開講待ちとなりました。
午前9時45分からの開講式は、世界遺産課井上係長の進行で富岡製糸場世界遺産伝道師協会近藤会長と群馬県世界遺産課松浦課長からの挨拶に始まり、世界遺産課市川主任によるオリエンテーションで開講式を終え10分間の休憩の後1日目の講義が始まりました。
講義1:「世界遺産の基礎知識と日本の世界遺産」と題して世界遺産課世界遺産係石橋係長から「世界遺産条約と世界遺産リスト」「世界遺産の義務とメリット」「世界遺産の登録プロセス」「世界遺産の登録基準」「世界遺産としての産業遺産」「日本の世界遺産」と世界遺産全体についての講義が行われました。
講義2:「文化財保護法の概要と近代化遺産」と題して世界遺産課世界遺産課係亀井主幹から「文化財保護法と文化財保護制度の概要」と題して「文化財保護法の概要」「近代化遺産」についての講義が行われ、午前の講義を終了しました。
昼食休憩後、午後のスタートは受講生が1分間の持ち時間で自己をアピールする「自己紹介」で始まり、それぞれが前向きで意欲的な紹介がありました。
講義3:『「富岡製糸と絹産業遺産群』の価値と概要」と題して世界遺産課松浦課長から、世界遺産の登録基準(OUV)に触れながら、「鉄」に始まった西欧に見る産業革命の歴史や、その代表的な遺産であるイギリスの「アイアンブリッジ」を例に話された後、絹のたどってきた歴史から群馬の生糸が果たした役割に触れられ「富岡製糸場と絹産業遺産群」の価値について、19世紀中頃から20世紀における養蚕・製糸の分野における技術革新と世界との技術の交流を示すもので、富岡製糸場を中心に「高山社跡」「田島弥平旧宅」「荒船風穴」は技術の集合体であると、解りやすく丁寧な講義が行われました。
講義4:「絹産業の基礎知識」と題して富岡製糸場世界遺産伝道師協会町田企画部長から「蚕糸業のあらましーシルク産業の姿―」「製糸工程のあらましー生糸を作るにはー」「わが国の蚕糸絹業の概要」についての講義が行われました。
講義5:「ぐんま絹遺産ネットワークについて」と題して世界遺産課地域連携係井上係長から「ぐんま絹遺産とは」「ぐんま絹遺産の特徴」「ぐんま絹遺産ネットワークの趣旨」「登録の現状」などの講義が行われました。
本日の締めくくりは、講義6:「伝道師の心得について」と題して富岡製糸場世界遺産伝道師協会近藤功会長から「富岡製糸場と絹産業遺産群」が世界遺産へ登録されたことと、今後はより多くの人に理解を深めてもらうためと保存のため「一人ひとりに理解をしてもらう」ことを基本に活動をしてもらいたい。また、そのために一番の行動は「ビラ配り」であることを話され、伝道師としての心得を話されました。
午後5時近くの終了でしたが、受講生の皆様には、疲れも見せずに最後まで熱心に受講されていました。
養成講座2日目(2月20日)は現地研修です。
受講生16名と伝道師7名、県職員1名の24名が参加して、午前8時に高崎駅東口を中型バスで出発し、車内で、まず近藤会長の挨拶と本日の概要説明を、そして道すがら中嶋副会長が各構成資産についての基本的なことを事前に説明を行いました。
最初の現地研修地の伊勢崎市境島村は「田島弥平旧宅」へ向かい、午前9時に「田島弥平旧宅案内所」に到着しました。ここで伊勢崎市の解説指導員が出迎えてくれ挨拶をした後、「案内所」で、養蚕農家群や島村の沿革などのビデオで説明を受けてから、「田島弥平旧宅」に向かい約30分間の解説を聞きましたが、受講生の皆さんは、これまでにあまり見たことのない総櫓の建物の光景に見とれておりました。
次に、藤岡市高山の「高山社跡」に向かいました。予定どおりの午前11時には新設された駐車場に到着です。駐車場から約300mの遊歩道を歩き「高山社跡」に着きました。 これまでの「高山社を考える会」が世界遺産登録を機に発展的な解消し「高山社顕彰会」と名を改めた解説員が待ち受けており、早速、長屋門前で全体的な説明を聞くことになりました。
長屋門前での説明後、母屋の中に入りますが、ここでは2班に分かれて1階組と2階組の2班に分かれ、蚕室では高山長五郎の養蚕飼育法「清温育」など約30分間の丁寧な説明を受けましたが、始めての蚕室に受講生の皆さんは興味深げに見ておりました。ここで群馬テレビの取材を受け、午後6時と午後8時からニュースで放映紹介をされました。
続いての見学地は、「荒船風穴」ですが、その前に昼食を下仁田駅前の常磐館でおいしく摂りましたが昼食後、折角ですので上信電鉄下仁田駅のすぐ傍にあるレンガ造りの{下仁田倉庫}を見学しました。
「荒船風穴」は、冬期の閉鎖となっており現地に入ることができないため、荒船風穴の模型や資料等を展示している「下仁田町ふるさとセンター」へと向かい、下仁田町文化財保護課の職員によるビデオで「荒船風穴」について約40分にわたって、分かりやすい解説をいただきました。
本日の最終の見学地は「富岡製糸場」です。場内での解説は解説員指導員の境野さんの案内で一巡しました。通常では見るこのできない「鉄水槽」も見学することができ受講生の皆さんは満足した様子でした。
帰途のバス車内では、関連するDVDを放映し、これまでの見学地を再確認するなで充実した研修を終えて午後5時45分無事、高崎駅に到着し、二日目の現地研修を終えることができました。
養成講座3日目(2月21日)は、県庁2階ビジターセンターを主会場として行われ、この日も16名の受講生全員が参加する中、午前9時30分から日下部中北毛支部長の司会で、講義7として、まず、中島広報部長から「伝道師協会のあらまし」を、資料に基づき伝道師として伝道活動を行うのにあたっての種々の決め事など細かい説明を行いました。
続いて会場を151会議室に移動して「伝道活動について」と題して、成田東毛支部長が「パネル解説」の方法について、引き続き伝道活動の中で行う「上州座繰り」と「繭クラフト(ぐんまちゃん)作り」の体験を2班に分かれて受講生の皆さんに行ってもらいました。
休憩後、会場を再びビジターセンターに移して行われましたが、ここからは伝道師協会の会員も参加できる「講演会」と位置づけての開催となり、約40名の伝道師が加わりました。
講義8:「富岡製糸場の歴史と文化について」と題して富岡製糸場総合研究センター今井幹夫所長より①安政の開港と蚕糸類の輸出、②明治政府が取った基本的な政策、③洋式器械製糸場の製糸場設立の経過、④外国人の雇い入れと製糸器械の発注、⑤建築諸資材の調達、
⑥創業までの諸経費などについ、丁寧な講義を受けました。
昼食休憩後、養成講座としての最後となる講義9:「日本の近代化と絹産業」と題して、東京大学大学院人文社会系研究科教授鈴木淳氏(元世界遺産学術委員会委員)による講義が行われました。落ち着いた口調で言葉巧みに話され、時には受講生から笑いがこぼれるほどの楽しい講義でもありました。
養成講座の全てが終了しましたが、この研修を締めくくる「テスト」を行いました。
選択問題30問で30点、与えられた課題に自己の考えを述べる記述問題で70点の合計100点です。その結果は閉講式の前となります。
テストの後は「養成講座を受講して感じたこと」をテーマに受講生は2分間の持ち時間の中で発表を行いました。
「受講前と今とでは世界遺産「富岡製糸場と絹産業遺産群」の知識を含め、考え方が違ったことを実感したし、伝道師協会に入会し「伝道活動に参加してみたい」などの心強い発表がそれぞれありました。
テストの結果、すべての受講者が高成績であったことの報告があり、修了証書が近藤会長から受講生一人ひとりに渡されました。
閉講式では、近藤会長から全体の感想を含めての挨拶が述べられ講習会の全日程を無事終えることができました。
(中島 進 記)