サントリー地域文化賞」を受賞
9月30日(水)午後5時から、東京都港区赤坂のANAインターコンチネンタルホテル東京で「サントリー文化財団」(鳥井信吾理事長)よる第37回「サントリー地域文化賞」の贈呈式が行われました。今回の受賞は「富岡製糸場世界遺産伝道師協会」をはじめ、全国から5団体の活動が顕彰されました。
富岡製糸場世界遺産伝道師協会の受賞理由は、「富岡製糸場と絹産業遺産群」の文化的価値を伝える活動が世界遺産登録として結実し、地域の活性化にも繋がっている点が高く評価されたこと、また。選考委員の法政大学田中優子総長は選評で、『富岡製糸場世界遺産伝道師協会がサントリー地域文化賞に選ばれたのは、なによりも市民自身が内発的にこの活動をおこない、広めているからである。 世界遺産に向けての活動はどうしても行政主導になりがちで、委員会なども外部の人たちを多く入れて行政のもとで構成される。しかし、その土地の価値をどう伝えるかは、そこに生き、日々の暮らしのなかで地域の自然と文化の価値を深く理解している人々の言葉や表現にかかっている。それは実際に、そこで生活する人々に向けてであっても、外からやって来る人に対してであっても、同じであろう。 その土地の人々は、その場所の価値に無関心でいることが多い。外部からやってくる人は表面しか見ない。ではいったい誰が伝えるのか? 学びつづけ、見つめつづけ、自覚をもった地元の市民である。私は多くの場所で、そういう人々からその地域のさまざまな価値を教えられ、日本について理解を深めていった。それは文献で江戸時代を学んできた私にとって、目の前のことが歴史と不可分であることに気付く衝撃的な体験ばかりであった。 しかし、ほとんどの場合、その語り手たちは孤立し、生涯の趣味あるいはつとめとしてそれを行っているのであって、その気持ちが途絶えることが気になった。伝道師協会は土地の理解者を生涯支え、次の世代を生み出していくための「組織化」である。これは思いつかなかった。と同時に、この仕組みが全国に拡がれば、日本はずいぶん変わるだろうと思う。その活動は言葉での伝達だけでなく、繭や絹にかかわる体験や、催し物や、新しい場所や課題の発見など多岐にわたる。きっかけは世界遺産登録であったが、この活動は世界遺産地が衰微せず常に新しい活気を創り出していくために、今後、各地で必要である。また、世界遺産に限らず、たとえば限界集落や移住誘致をする地域においても有効である。日本各地に無数の誇れる要素がある。必ずどこでもおこなうことができる。このように伝道師協会は普遍的な価値をもっている。』と評しています。
この贈呈式には、近藤会長ご夫妻と役員である13名の伝道師、それに伝道師協会と関係の深い方々として群馬県から笠原企画部長と布施世界遺産課長、さらに松浦県立女子大教授(前世界遺産課長)と田村県文化財保護審議会専門員また、県外の学者研究者で伝道師協会の研修等にご尽力いただいた方々の出席がありました。それに他の受賞関係者、政財界や文化団体の人たちが多数出席されました。
本受賞については、前号の伝道師通信(No115)で、近藤会長は、その受賞決定の喜びを語っておりますが、この日の受賞者スピーチに立った近藤会長は「世界文化遺産登録により、養蚕をはじめとする絹産業の価値を県民に身近な文化であることを気づかせることで、地域に自信と誇りを持てるようになりつつあるし、この受賞を機会に、さらに一層の活動を続けたい」と述べました。また、スピーチ前には、当協会を紹介する映像が流されました。
式典冒頭のあいさつで鳥井理事長は「絹産業遺産の価値を広めたことは、日本の成長戦略は経済のみではなく、このような文化の力、地域の力がなければ達成できない」と伝道師協会の活動に触れられ、称えてくれました。ちなみにサントリー文化財団の目的は『国際化、情報化、高度大衆社会の時代に応えて、それを支える学術研究の育成、文化活動の振興ならびに国際理解の推進に寄与することにあります。この趣旨に基づき、毎年、地域の文化向上に顕著な貢献をした個人・団体に対し、「サントリー地域文化賞」を贈呈する』としています。
式典後は、記念撮影、記念パーティー、懇親会が開催され、午後8時過ぎに終了となりました。
(S.N 記)