かぜかなしけり

2012-11-02 21:51:44 | 日記
 今朝はグンと冷えた。ぼくは寒がりだ。毎朝、坐禅や朝課、
掃除とやっているとからだもほぐれるし、ぬくくなってくる
のだ。それが今朝は一向にそうはならず、まだ足下のほうから
冷えが去らないのだ。それで、もう一気に冬支度の格好に
変わった。昨日はほんの少しなれど霰がいよいよ降った。
そのせいであろう、こんなに冷えたのは。まだまだ外の仕事は
沢山あるのだけれど、こんな薄ら寒い日に、外に出る気がなくて
事務的なことをやろうと、その前に部屋の掃除。そんなことを
やっていると積んでおくままになっている「水上勉 自選仏教
文学全集」1巻(仏教とは何か)この夏ふとしたご縁で、水上勉
の長野のアトリエを訪ねそこで頂いたものなのだ。もうかなり
まえに彼の「一休」や「良寛」を読んだことがあり、そのときの
印象はこういう作家の書くものはどこまでもねばりつよいと
いうか、自らに引きつけるように書いていることそのものに
学ばせてもらったのだ。
 
 それでつい手に取ってページをぱらぱらめくっている。
良寛詩を読んでいて、この季節にぴったりものをみつけた。

 きょうはひねもす村々を
 あちらこちらに乞食して歩いた
 日が暮れてから山路が遠く
 風が身を切るばかりだった
 破れた衣はけぶり同然だが
 木鉢にますますさびが出てきた
 飢えも寒さもなんのその
 先輩はみなこの試練を嘗めたのだ

 あおぞらに かりなきわたり
 やまやまに このはまいとぶ
 むらみちに ひはくれかかり
 わがはちに こめつぶなし

 きそのひる ちまたにいでて
 にしひがし こつじきつづけ
 やせかたに ふくろは重く
 ひとえぎは つめたかりけり
 ふるきとも いずこにゆき
 あたらしも あわずなりけり
 むかしわれ あそびしあたり
 まつにふく かぜかなしけり

 原文は漢詩である。この東郷豊治さんの訳がいい。
最後の松に吹く風かなしという表現になにかいいしれぬ
こちらに迫るものがある。 
コメント
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