高村光太郎

2021-08-22 08:00:17 | 日記

 なにかね 詩を読みたくなって

本棚を探したよ 色々手にとって

ぱらぱらとその時の

こちらの気分にあうものは ないかと

高村光太郎、敗戦後の智恵子抄が有名だけど

その以前のものだろう

 

  当然事

あたりまへな事だから

あたりまへな事をするのだ。

空を見るとせいせいするから

崖を出て空を見るのだ。

太陽を見るとうれしくなるから

盥のやうなまっかな日輪を林中に見るのだ。

山へ行くと清潔になるから

山や谷の木魂と口をきくのだ。

海へ出ると永遠をまのあたり見るから

船の上では巨大な星座に驚くのだ。

河のながれは悠悠としているから

岸辺に立つていつまでも見ているのだ。

雷は途方もない脅迫だから

雷が鳴ると小さくなるのだ。

嵐がはれるといい匂だから

雫を浴びて青葉の下を逍遥するのだ。

鳥が鳴くのはおのれ以上のおのれ声のやうだから

桜の枝の頬白の高鳴きにきき惚れるのだ。

死んだ母が恋しいから

母のまぼろしを真昼の街にもよろこぶのだ。

女は花よりもうるはしく温暖だから

どんな女にも心を開いて傾倒するのだ

人間のからだはさんぜんとして魂を奪ふから

裸という裸をむさぼって惑溺するのだ。

人をあやめるのがいやだから

人殺しに手をかさないのだ。

わたくし事はけちくさいから

一生を棒にふって道に向かふのだ。

みんなと合図したいから

手をあげるのだ。

五臓六腑のどさくさとあこがれとが訴へたいから

中身だけつまんで出せる詩を書くのだ。

詩が生きた言葉を求めるから

文ある借衣を敬遠するのだ。

愛はじみな熱情だから

ただ空気のやうに身に満てよと思ふのだ。

正しさ、美しさに引かれるから

磁石の針に化身するのだ。

あたりまへな事だから

平気でやる事をやろうとするのだ。

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なにを探しているか

2021-08-19 20:25:41 | 日記

 新聞を開いている

アフガニスタン 小さな国はいつも大きな国に振り回されて

コロナ 何人かかった 何人死んだ

パラリンピック 選手たちはすごいよ

でもなんだかね この国やiocの対応は

自分たちの権益を守ることに必死で

かつて抱いていたものが すっかり薄汚れてしまった

豪雨、長雨この時期にこんな天気なんて

作物をつくるものにとっては脅威だよ

もう後には戻れないところまで

人類は踏み込んでしまったのか

 

しかしこんなことを知りたいわけじゃない

何を探しているんだ いったい

やっぱり今ここを生きていることの

よろこびをうれしさを示してくれるもの

が欲しいんだ

日々の身体のどこかで触れている

さみしさ たのしさ かなしさ ふくよかさ

などをもっと深く このわたしというそんざいの

奥底に届くことばを待っているんだ

水や空気 食べ物もちろんこれがないとだめだ

けんど人であるということは、その水より食べ物より

必要なものがある

それが人としてここにあるということなんだ

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楽よ

2021-08-07 20:51:40 | 日記

   楽よ

ぼくもこういう時が

あったことをすっかり忘れていたよ

やがて君も なんで自分はこうなんだ

なんでぼくは・・・などと

悩み迷うときがくるよ

その悩みは悩みで

そのままやるしかないが

自分ということのありようの大きさは

そんな責め立てている自分ぐるみ

大きなものに支えられ

そして何よりも ぼくがぼく自身で関知することも

あたわないが このぼくって言っているこれが

こんなに大きなものとして

あるということだけは 知っておいた方がいい

二ヶ月になろうとする君は

ただ泣き方 ぐずりかた一つで

母親のおっぱいに吸いつき

しっこを出し うんこをひねっては

一日に何回もおむつを変えてもらい

母さんは24時間ほとんど君にかかりっきりだ

君は一心に眠り

ひたすらに微笑んでおり

じぶんでは寝返りをうつこともできず

言葉を発することもせず

ただ泣き叫んで

ここにでんといる

このなんにもない

ただこのままでいることの

やわらかさ あたたかさ

愚直さ さとさの

あらゆるものを示して

ここにこのままでんといる

この存在の大きさ

この生きていることの不可思議さを

そのまま具現している 楽よ

この存在の大きさ 深さを

君自身は知るべくもないが

これからどんなに悩み迷うても

このままここにわたしと言えるものとして

置かれていることに

驚くがいい

 

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