午前中はまだ晴れていた。それで、外仕事を先にと思ってやっていた。昼から家のなか、ふだんはそこまで手が届かない。娘が窓もせっせと拭いているから少し手伝いをしながら、ようやく自分の部屋にかかる。廊下の拭き掃除は毎朝やるんだけれど、まっこと自分の部屋はしないんだよな。１年間溜まった雑誌のたぐい、本なども整理しだすと部屋のなかがすっきりとして気持ちいい空間に変わるのだ。そうこうしているうちにみるみるまに雪が振り出し、積もって行く。今夜の除夜の鐘にふさわしいようなお天気か。ともあれ今年も無事に過ごしたようである。これもひとえにまわりの、そして色んな方々のご厄介になってここに生かされていることをあらためて思います。ありがとうございました。
みなさまどうぞ、新しき年をお元気でさわやかにお暮らしのこと、念じ上げます。 わじゅ拝。
お茶の間の障子を張り替えようと娘が言う。やるきだねぇ、とおもいつつ、はいである。前にも書いたように思うが、この障子張り替えは寺に育ったものとして、忘れられない。お寺の障子はそれこそ何十枚とあるから、新しく張ることよりも古いものを破って桟にのりなどがついているのをきれいにすることが、手間なのである。寒いし、今のように風呂の残り湯をつかうなんていうこともなかったし、中学生ではちょっと辛いものがあるよ。その時はそんなものだと思ってやってはいたものの。ところが兄ちゃんがいると大違いで、てきぱきと弟たちを指図して、どこまでも愉快に楽しげに、なんなくそういうことをこなしていく兄ちゃんがひたすらまぶしかったし、頼もしかった。何かね、そんなことを急に思い出す仕事だよね。終ってみれば、部屋のなかが、明るく変わったよね。
ともあれ、１２月に入ってからはまるで駆け足状態。これで新年を迎えるのかとおもいつつ、カレンダーはめくられる。てなわけで、大掃除なのだ。本堂や開山堂のお位牌などをきれいに。村田家の内仏、厨子に入った観音様が二体おられる。今度写真を撮っておこう。そういうこと、つい忘れるんだ。ひとつの観音様はかなり古そうである。一度専門家なる人に見てもらうと、正式な名前や、つくられた時代がはっきりするように思いつつ、ふだんはそういうことをとんと忘れてしまっている。そんなところに娘が雑巾バケツをかかえて通り過ぎようとするから、これは家の観音様でお顔がとってもいいんだ。と言えばわたし初めて見るのかななどと、興味深そうに、さては懐中電灯を持ち出して。そうこうしていると山内の面々も押し寄せて、長い間いたけれど初めて見たと。そうか、おれが勝手に独り占めしていたことになるのか、と思った次第。この観音様、はい、ほんと天平の時代でないのかと思うような顔つき、ふっくらしてやさしいのである。もう一つのものも厨子に入っているから、ふだんは見ることができない。こちらは千手観音である。いやはやここまで言うと写真を撮らねばなるまいて。こちらの方はそんな古いものではなさそうである。それでも江戸時代には違いないから、うん、そんなことを思うと時間の感覚というのもなんだか、遠いのか近いのか解らなくなるね。
お祭りである。そうやからして若者もおのずと集まる。なんだかね、朝からわいわいと賑やかである。今日初めてきた人も、そうでない人も知らぬまにわいわいとやっている、これってお祭りだよね。うん、はれの日なんだ。
朝から竃にはりついている。味噌造りである。４連の竃。蒸篭は２４ある。そこに大豆を入れて蒸し上げる。蒸し上げた大豆を臼へ、杵でつぶしてから、先日できたばかりの糀に塩をまぶして、塩きり糀にしてそれを大豆のつぶしたものを手で混ぜる。最盛期は１２斗造っていた。今では４斗である。夜ひさしぶりにここのみんなと晩ご飯を食べて。明日はもちつきである。
