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イスラエルの歴史学者、ユヴァル・ノア・ハラリ教授は著作『サピエンス全史』で、今から七万年前から三万年前にかけて、人類に言語から物語の想像力が生まれ、フィクションを信じる「認知革命(新しい思考と意思疎通の方法)」が登場したという。人類がフィクションを信じることで、お金や宗教や国を作ることができたが、フィクションに生きることで他者を支配する欲望が正当化もしくは美化されて、権力が生まれ、戦争や大量虐殺もしてきた。物語を生きる我々が幸せに生きる道は「他者を尊重して生きる」しかないと私は思うが、人類は何故、フィクションを生きるようになったのか?
参考:『サピエンス全史』の著者に聞く「人類滅亡」の現実的シナリオ
「人類の台頭はいかにして起こったか?」TED日本語
ブログ「自然とデザイン」:我々は物語を生きている~他者を尊重し、幸せに暮らす。
チョムスキーの言語学によると、世界各国各地で生まれた人々がそれぞれの国や地方の言葉が使えるようになるのは、我々は人類共通の文法を担う大脳の部位を持って生まれ、赤ちゃんからの学習によりその国や土地の言葉が話せ、理解できるとのことだ。その能力が7万年前の遺伝子の突然変異によって ヒトの認知能力(学習、記憶、伝達)に革命(的な変化)を起こした。それは「限られた数の音声 や記号をつなげて、異なる意味を持った文をいくらでも生み出せる(ハラリ(2016)上巻、37 頁)」柔軟な言語だ。10万年前にアフリカを出ようとしたヒトの集団がネアンデルタール人に敗れて引き返した証拠があるらしい。ところが7万年前からアフリカを出、各地で原人類を駆逐し、4万5千年前にはオーストラリアに到達している。これは突然変異による言語体系に基づくコミュニケーションとそれによって集団的協力体制を作ることができたからではないかと考えられている。
参考:チョムスキー言語学とその周辺:入門のまたその入門
脳は文法を知っている
「言語は特別-文法を担う大脳の部位を発見」
酒井優子教授の授業「言語学が世界を一つにする」(チョムスキー理論の入門)
高坂章「私たちはどこから来て、どこへ行くのか -人類史から見た暮らしの変化-」
フィクションを信じることは、人類と他の動物の闘争関係ではなく、人類同士の共同・競争社会によって構築された現代につながるソフトの問題で、これまでの「骨と石の遺跡」からだけでは説明できない。
ロビン・ダンバー「人類進化の謎を解き明かす」,(2),(3),(4)では、『人類進化の鍵は、「社会脳」と「時間収支」が握っていた』としている。「社会脳」とは「自己と他者、そして社会を結ぶ脳の働き」のことで、現代でも重要な研究課題になっている。「時間収支」とは「摂食、移動、強制的休息、社交」の時間の割り振りの問題で、社交は群れ(集団)維持のために必須の行動だった。この人類の社交の歴史が、7万年前からどう変化してきたのか?7万年前というと、7万4千年前のトバ火山の爆発,(2),(3),(4)により、気候の寒冷化を引き起こし、その後の人類の進化に大きな影響を与えたという。衣服を着始めたのもこの時期と言われる。トバ火山の爆発が認知革命にどのような影響を与えたのか、もう少し時間をかけて勉強をしたい。
参考:人類の知能の進化
現代の我々にとっての大きなフィクションは、危険な仮想敵国である。ローマ教皇の来日を控えて、教皇のことを学ぼうとする動きがあるようだが、被爆国日本の広島と長崎を訪問され、「すべての命を守る」核廃絶を訴えるために訪日される。ローマ教皇の強い願望である核兵器禁止条約の締結にむけて全国民が声を高める方がはるかに大切だし、教皇も喜ばれる。日米韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)についても仮想敵国の問題であり、仮想敵国というフィクションは、アメリカを中心にした支配者層にとって都合が良い物語であり、国の主人公である国民の力を分断し、軍事産業等の支配力を高めるだけだ。徴用工問題についても、司法、行政、立法の3権が分立し、国民の声を大切にする韓国の態度が正常であり、国同士の約束を守れと言う姿勢の、独裁国家へ向かいつつある安倍政権は危険だ。「すべての命を守る」ためにも、劣化した日本の政治とマスメディアに惑わされてはいけない。
初稿 2019.11.22
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