自然とデザイン

自然と人との関係なくして生命なく、人と人との関係なくして幸福もない。この自然と人為の関係をデザインとして考えたい。

家畜伝染病予防法改正よりも、口蹄疫に関する防疫指針の見直しを!

2011-03-22 16:03:27 | 牛豚と鬼

 家畜伝染病予防法(家伝法と略す)の改正案が閣議決定され、今国会(第177回通常国会、会期は平成23年1月24日~6月22日)に提出されています。この法律案要綱では、特定家畜伝染病防疫指針(防疫指針と略す)および緊急防疫指針を作成し、公表するとしています。しかし、すでに家伝法第3条の2に基づき、口蹄疫に関する防疫指針は平成16年12月1日に公表されています。また、緊急防疫指針は必要なく、防疫指針等に示されたプロトコル(手順)やデシジョン・ツリー(決定木)に基づく緊急措置で対応すべきです。

 現在の口蹄疫に関する防疫指針は、最新の科学的知見及び国際的動向を踏まえていないにもかかわらず、「少なくとも5年ごとに再検討を加えるとともに、必要があると認めるときは随時見直しを行うこととする」という前文に示された見直しさえ守られていません。

 平成13年の英国における口蹄疫の大惨事を契機に、世界の防疫政策は生かすためのワクチン接種を中心に大幅に見直され、過去10年間の技術革新は、濃縮・精製したワクチンの製造、ワクチンバンクの利用、ワクチンと自然感染の抗体を識別できるNSP抗体検査法の実用化、ウイルスの簡易遺伝子検査(PCR検査)の開発等目覚ましいものがあります。

 日本のワクチンを使わない防疫政策は間違いだと海外からも指摘されながら、このことを無視し、第三者委員会と称した口蹄疫対策検証委員会も行政側の専門家で固めて、防疫方針の問題点を批判することはなく、非科学的な説明でワクチン接種と口蹄疫ウイルスを早く見つけるための簡易PCR検査の開発・導入を否定しています。

 この最新の科学的知見及び国際的動向を踏まえていない防疫指針によって、早期に家畜を生かすためのワクチン接種をしなかっただけではなく、本来は生かすためのワクチン接種であるリングワクチンと称して、健康な家畜を含めた予防的殺処分を前提にしたワクチン接種を実施し、被害を拡大してしまいました。口蹄疫は症状でも抗体検査でも確認できたときは、ウイルスを最も排泄しているときであり、発症後24時間以内の殺処分が感染拡大を阻止するために必要とされています。宮崎口蹄疫においても埋却地を探している間に感染が拡大しないように、まずはワクチン接種を急ぐべきでした。

 予防的殺処分は、英国や韓国の大災害の原因となり、口蹄疫の被害はウイルスが原因ではなく、国の防疫政策によるものと非難されています。しかし、現在の防疫指針の問題点は問われることはなく、むしろ予防的殺処分が感染を阻止したかのごとく家伝法改正により正当化して、これに法的根拠を与えようとしています。

 予防的殺処分は補償のために財政危機にある県や国に莫大な損害を与え、しかも家畜の補償金では農家等の失った遺伝資源や生活は報われません。さらに大量殺処分は地域の生活や環境も破壊しています。口蹄疫は、生産、流通、地域社会と国および環境に多大な影響を与えますので、家伝法改正の前に、口蹄疫の防疫指針を見直すべきです。また、見直しにあたっては、生産、流通、消費だけでなく、地域や環境問題、倫理を含む幅広い論議を経て理解を共有する必要があり、このために「口蹄疫対策を考える会(仮称)」の設立を呼びかけます。この会は4月20日までにシンポジウムを開催し、口蹄疫対策の見直しのための具体的な提言や活動をしていきます。多くの皆さまのご参加をお願いします。

2011.3.22  開始   2011.3.23  更新中


緊急提言! 家畜伝染病予防法改正に反対を

2011-03-07 15:42:40 | 牛豚と鬼

政府は3月4日、家畜伝染病予防法改正案を閣議決定し、今国会に提出した。 感染していない畜産農家の家畜の予防的な殺処分と、感染の通報が遅れた農家への罰則を新設したのが柱。野党も賛成しており、成立する見通しだ。

以上の報道は農水省の報道発表資料には公表されていませんが、法令、告示・通知等 で改正案を確認できました。この家畜伝染病予防法改正案の問題点の詳細については別に論じたいと思いますが、健康な家畜を守るために健康な家畜を防火帯的に殺処分する予防的殺処分に法的根拠を与えている点は大きな問題です。この予防的殺処分は、英国や韓国の大災害の原因となり、口蹄疫の被害はウイルスが原因ではなく、国の防疫政策によるものと非難されています。

英国では予防的殺処分に対する法的根拠を求められ法を改正しましたが、その実行の前にワクチン接種を必要とし、ワクチンを使わない場合はその理由を説明する義務が課せられました。韓国は感染拡大阻止のために、家畜を生かすためのワクチン接種に踏み切りました。しかし、日本では家畜を生かすための方法であるリングワクチンと称して、予防的殺処分を伴うワクチン接種を実施しました。しかも、この10年間に著しく進歩した海外の防疫対策を隠蔽し、ワクチンに対する正しい情報を提供していません。

EUでは家畜を生かすためのワクチン接種を中心に防疫政策を大幅に変更し、口蹄疫発生を確認したら5日以内にワクチンを準備することになっています。

日本のワクチンを使わない防疫政策は間違いだと海外からも指摘されながら、このことを無視し、第三者委員会と称した口蹄疫対策検証委員会も行政側の専門家で固めて、防疫方針の問題点を批判することはなく、非科学的な説明でワクチン接種と口蹄疫ウイルスを早く見つけるための簡易遺伝子検査(PCR検査)の導入を否定しています。

国の家畜衛生行政に関係する獣医学専門家は、科学的でない防疫政策をなぜ強引に推進するのでしょうか。家畜衛生行政の権威と権限を守るために、多くは自然治癒する口蹄疫の感染拡大を阻止するという名目で、健康な家畜の大量虐殺を正当化する暴挙は許されません。

また、昨年末12月8日の衆議院農林水産委員会において、口蹄疫対策検証委員会座長は参考人として意見陳述し、報告書は検証委員の分担執筆であることを明言しました。報告書は口蹄疫の防疫方針に基づいて行政側によって書かれていることは内容から明白であり、分担執筆であるなら、それぞれの分担を明らかにすべきです。さらに、口蹄疫発生の感染源についても、隠蔽と捏造した非科学的な「疫学調査中間とりまとめ」を報告しており、「口蹄疫対策検証委員会報告書」とともに公文書偽造の罪に問われるのではないでしょうか。

宮崎県は、牛を飼育していた大規模農場が家畜保健衛生所への通報が遅れたとして、文書による厳重注意の行政指導にしたそうです。(NHKローカル等) しかし、1000億円以上の被害と遺伝資源を喪失させた罪が厳重注意だけで済むのでしょうか。しかも、県から国への通報を遅らし、感染源を国と共に曖昧にした行政の責任は問われないのでしょうか。

国は伝染病の被害を最小にする責任があります。それにはワクチンを早い段階で使用することが必要です。口蹄疫は症状でも抗体検査でも確認できたときは、ウイルスを最も排泄しているときです。宮崎口蹄疫においても埋却地を探すより、ワクチン接種を急ぐべきでした。そして、ワクチン接種と簡易PCR検査を組み合わせることによって、感染畜のみを殺処分する防疫対策に変更すべきです。

殺処分の補償のために国に莫大な損害を与え、しかも補償金では農家の失った遺伝資源や生活は報われません。さらに大量殺処分が地域の生活や環境を破壊していることは一顧だにしていないワクチンを使わない予防的殺処分に断固反対します。家畜伝染病予防法の改正案と口蹄疫の防疫方針について科学的な説明を求めるために、市民や生産者に開かれたリスクコミュニケーションの開催を求めます。

2010.3.7 開始 2010.3.9 更新1 2010.3.10 更新中