自然とデザイン

自然と人との関係なくして生命なく、人と人との関係なくして幸福もない。この自然と人為の関係をデザインとして考えたい。

競争は差別と支配を生み、共創は非暴力と平和を生む

2016-01-31 18:10:00 | 憲法を考える

 憲法改正は国民の権利より国家主義、さらにはドイツのような独裁主義への道を開く危険性があり、これを指摘してきた岸井成格氏は『NEWS23』キャスターを降板する。古舘伊知郎氏も「報道ステーション」を降板する。憲法を守る義務がある政治家が解釈改憲や憲法改正をしようとし、これに批判的で健全なメディアの発言が排除されるのは、いずれ国民の自由も奪われマイナンバーで監視される危険な予兆だ。

 誤魔化された政治や報道によって先が見えなくなった国民は考えるよりも強き者に従い、その一方でモヤモヤした鬱積がヘイトスピーチやネトウヨを生み、日本会議(2)(3)のように国家主義で自分が強くなるかのような錯誤した不穏な動きもある。米ソ冷戦時代からの日米関係は、今もロシアや中国の台頭を抑える砦としての日本の支配構造を維持しようとしている。

 社会主義は組織で国民の自由を奪い、資本主義はお金で国民を支配する。どちらも克服すべき課題があるが、日米支配者構造は米国の戦争に日本を加担させようとしている。「平和ボケ」とは「憲法を無視」することなのに、「平和ボケ」だから憲法を変えようと言う。「失われて気づく日常」、国民主権の日本の憲法こそ我々を守ってくれているというのに、憲法のありがたさも3猿のように見えなくしている。
 
 受験戦争は現実だ!これに勝たねば若者の将来がないと言う。受験戦争の現実は日本だけでなく、中国、韓国にも及んでいる。しかし、悲しいことに現実を大切に考えることが、さらに厳しい現実を生む。正解のある答えを早く正確に見出す能力は、与えられた問題を解く能力には優れていても、利己的欲求を強め「利他の心の叫び」(1)(2)は抑圧するので支配者には都合が良いシステムなのだろう。しかも2代、3代と続いて家業となった政治家が支配者の利権にしがみついている。

 天皇陛下は28日の園遊会の席上、東京都教育委員を務める棋士の米長邦雄さん(61)から「日本中の学校で国旗を掲げ、国歌を斉唱させることが私の仕事でございます」と話しかけられた際、「やはり、強制になるということではないことが望ましい」と述べた。 この天皇陛下の言動が自然で感動したと言う古舘氏に対して、「国歌、君が代を小学校で教えるのは公務員たる先生の義務」だとする石原慎太郎都知事との激論の記録が残されている。この石原都知事は学校教育の現場から自由を奪い、無人島の尖閣諸島を都で購入する無謀な動きから日中関係を悪化させ、それが国のためになると考える危険で幼稚な国家主義者だ。国旗国歌法が法律で決められたとしても、それは国民に強制されるものではない。学校の先生が公務員だからそれを教えるのが義務だとすれば、憲法を守るのは公務員である政治家の義務であることこそを声を大にして言わねばならない。

 憲法学者の小林節教授は「軍隊という仕組みは今の日本国憲法ではありえない」(動画)と言う。だから軍隊を持つには憲法を変えねばならない。私は軍隊を持つ国は過去の国、持たない国こそ未来を目指す国だと確信している。強者は競争を目指し、競争に勝つことで支配者を目指すが、競争こそ過去の目標にしなければならない。 

 我々は今、アマゾンの先住民の言葉に耳を傾けなければならない。
「人間はちっとも偉くない 森や川、空や大地の声に耳を傾けよ
 たくさんの事を教えてくれて、それに従う
 人間の都合だけで判断することは間違っている
 お前たちの社会は目先のことしか考えず
 目に見えるものしか信じない」
そして現代の偉大な縄文人、斉藤晶さんも同じことを言う

 一方、人種差別や平和を「非暴力・不服従」で闘うことは何故か重い重い問題だ。人類の願いに思い重圧がかかることは、支配者が目指す世界が如何に歪んでいるかの証であろう。「悪を見るな、悪を聞くな、悪を言うな」の3猿はマハトマ・ガンジーの教えだそうだが、日本の国民にとっては触れてはならない真実が3猿の「黙」となり、支配者にとっては「悪」が美徳なのだろう。

 ガンジーは英国の帝国主義、植民地支配という人種差別から同胞を解放するために、「我々人間は、どこへ行こうとも人々の心に平和と非暴力の種を蒔き続けることに、命を捧げなければならない」と「非暴力・不服従」で闘った。「イギリス人が敵なのではなく考え方が敵なのだ」と国民一人一人に「非暴力・不服従」への理解を求め、宗教間の戦いに対しては「私はヒンズー教であり、イスラム教であり、キリスト教徒であり、ユダヤ教徒です。枝は違っても皆、同じ一つの木なのです。」と宗教の原点には人間尊重があることを説き続けた。しかし、「イスラム教に寛大すぎる」とヒンズー教至上主義者ナトゥラム・ゴドセに暗殺され、その命を運動に奉げる結果になったが、ガンジーの志は世界の人々の心に「平和と非暴力の種」を蒔き続けている。
クリックで拡大! 「ガンジーの言葉
参考: 21世紀への伝言1/5【非暴力・不服従】ガンジーとキング牧師 (動画)
    21世紀への伝言2/5【非暴力・不服従】ガンジーとキング牧師 (動画)
    21世紀への伝言3/5【非暴力・不服従】ガンジーとキング牧師 (動画)
    21世紀への伝言4/5【非暴力・不服従】ガンジーとキング牧師 (動画)
    21世紀への伝言5/5【非暴力・不服従】ガンジーとキング牧師 (動画)

 アメリカのキング牧師は国内の人種差別から同胞を解放するために、ガンジーに学び「非暴力・不服従」で闘い暗殺されている。虐げられた人々を守るにはキリストが殉死したように、ガンジーとキングも殉死しかなかったのがと思うと辛くて重すぎる。
参考:ザ・プロファイラー「栄光の行進の先に見た”悪夢” キング牧師」
 プロローグ キング牧師「私には夢がある」(動画)
 若きリーダーの夢と非暴力(動画)
 格差と暴力(動画)
 暴力は差別を生む~憎しみが暴力を生む矛盾(動画)
 夢から悪夢へ:支配者にとって平等は共産主義?(動画)

 ガンジーもキング牧師も非暴力で同胞を救おうとして暗殺された。日本にも平和のためには暴力(武力)を持つことが正義だとする支配者や同調者がいる。非暴力の戦争放棄の憲法を持ちながら、これを変えようとしている憲法違反の犯罪グループが堂々と政権を握ってる。犯罪者の自覚がないのは国民主権の立憲主義を理解していないことで恐ろしいことだ。NHKは憲法改正については3猿のように黙して語らずだ。一人の国民としてはいろいろな考え方も許されるだろう。しかし、それも憲法があるから許されている。

 憲法を守ることの主張は政治的問題ではない。聖徳太子の時代は憲法十七条が国を治める人たちの規範であったが、現代では憲法を守ることは政治家、官僚等の公務員の義務だ。徳川時代は脱藩して勤王の志士となったが、憲法を変えたいなら公務員を辞職して運動すべきだ。そうでなければ独裁者ヒットラーと同じことを許し、その現実を拒否しないことで、やがて独裁者に自由を奪われ、暗い監視社会を迎えることになろう。平和と国民主権を守るには、国民が一人一人の責任に目覚め、分断されて暴力を生まないように団結して憲法を守るしかない。

 世界に誇れる憲法を守り、憲法の理想を実現、充実させていく社会を共創しよう!

初稿 2016.1.31 更新 2018.5.16

新・映像の世紀~米ソ冷戦時代から日米関係を考える

2016-01-28 12:45:32 | 自然と人為

 映像資料で過去から現在を考えることは、映像解説にもよるが強烈な影響を与えてくれる。先日(2016年1月24日)、放送された新・映像の世紀「第4集 冷戦~世界は秘密と嘘(うそ)に覆われた」は、是非皆さんにお知らせしたい番組だと思った。
 私は古稀も過ぎ、独りではどこにも行けない歩行困難な身となったことが悔しいが、次の世代のために自然を大切にし、憲法を守りたいという立場からこのブログを書いている。

 新・映像の世紀「冷戦~世界は秘密と嘘(うそ)に覆われた」(動画)は、「資本主義のアメリカ、社会主義のソビエト。冷戦時代、両陣営は激しいスパイ合戦を繰り広げ、両陣営の権力者は異常な監視社会を生みだし、人々の自由を奪った。米ソは直接戦うことを避け、アジア、南米、アフリカなど世界各地で代理戦争を繰り返した。CIAは秘密工作によって外国の反米政権を次々に転覆させた。」等を公開された映像を基に解説している。
 本格的な米ソ冷戦は日本への原爆投下から始まったと私は思っているが、米ソ冷戦が日米関係に及ぼした影響について、この番組が私の視野を拡大し考え方を深めてくれた強烈な印象について紹介しておきたい。

1.ナチスをスパイに採用したCIAと赤狩り(動画)
 米ソ共にドイツ敗戦後にお互いの懐疑心から、兵器開発とスパイ活動を強化するためにナチスの科学者やスパイを大規模に採用したことは知らなかった。迫害されたユダヤの国、イスラエルの建国を支持する一方で「ホロコースト」のナチスの犯罪を許して、お互いに仮想敵国への対応策を最優先にした。ここでは米ソ冷戦が日米関係に及ぼした影響を見るために、アメリカの情報機関、CIAとFBIに焦点を合わせて動画を紹介している。

 日本の東条内閣の商工大臣としてA級戦犯とされた岸信介が東条英樹死刑の翌日に釈放されたこと、多くの戦争犯罪者が公職追放を解除されたことは、この米ソ冷戦と共産党支配の中国がからむ朝鮮戦争を契機に日本をソ連、中国の反共の砦に利用したものと思われる。

 NHKの「戦後70年 ニッポンの肖像」は、-世界の中で-第1回 信頼回復への道 2015年06月19日(動画)では、サブリミナル効果を狙ったのではないかと思える岸信介の写真をしつこく使い、アジアとの戦後賠償に岸信介が大きく貢献したかのごとく編集している。戦争を肯定し反省していない岸信介がアジアに誠実に戦後賠償をしたのではなく、利権で動かした不誠実なツケがその国の政情不安をもたらし、今も慰安婦問題等で残っているのではないか。第2回 冷戦 日本の選択 2015年6月20日(動画)に於いても、冷戦を経済成長した日本の沖縄変換問題として解説するなど冷戦構造の理解をゆがめる意図的な編集がなされている。
 また、-政治の模索-第1回 保守2大潮流の系譜 2015年07月18日(動画)においても、日本をアメリカのソ連、中国の反共の砦とするために釈放された岸信介がCIAの支援をバックに政権復帰したことには触れられていない。

 「戦後70年 ニッポンの肖像」はメディアの支配に熱心な安倍政権下の今つくられたが、戦後80年にはどのような番組が編集されるのであろうか。憲法が改悪され国家主権となって東ドイツ時代の監視社会(動画)の様に市民生活の自由が奪われ、もっとゆがめられた番組になるのであろうか。それとも国民が憲法を守り続けて、国民主権の番組に改善されるであろうか。岸信介と安倍晋三の関係を問題にした下記のブログを知ったのは、この番組に啓発されて調べてからである。
戦後70年特別企画 安倍首相の祖父“A級戦犯”岸信介の正体
安倍首相が心酔するおじいちゃん・岸信介の戦争犯罪!
A級戦犯の岸信介が処刑を免れたのは何故か?
昭和天皇が嫌っていた松岡洋右と安倍晋三は親戚だった!そして岸信介がA級戦犯不起訴になった本当の理由。

2.CIAの秘密工作と反米政権の転覆~イラン(動画)
 パーレビ国王と王妃のことは知っていても主権国家として英国の支配下にあった石油産業の国有化と、政治体制を民主化したモサデグ政権のことは知らなかった。メディアの報じる一面的側面で世界を理解したつもりになっていることが多いが、この番組はそのことに目覚めさせてくれた。この映像を知って調べたら下記のブログもあった。
イラン石油国有化後のCIAの策謀
イランとアメリカに怨念の歴史
アラブ世界で起こっていること  その2 イランについて

3.核戦争の危機(動画)
 お互いに相手を信用せず疑心暗鬼に陥ることがスパイ体制を生むが、スパイから得た情報判断によって核戦争を回避できた例もある。その世界を破滅から救った人類の恩人であるスパイ、ペンコフスキーはソ連で処刑され、核の先制攻撃を主張したルメイ将軍は勲一等旭日大綬章を入間基地で航空幕僚長から授与された。その時の政権は、佐藤栄作総理大臣、防衛庁長官は小泉純也(小泉純一郎のオヤジ)。ルメイ将軍に対する叙勲はおかしいと思っていたが核の先制攻撃を主張していたことまでは知らなかった。愚かな支配者が得られた情報からとんでもない判断をすることを考えるとゾッとする。情報を国益の名の下に隠ぺいすることは恐ろしいことだ。それにしても日本の支配者は信じられないほど米軍に媚びへつらい、小泉純一郎とブッシュとの関係もその延長にあるのだろう。
ルメイの勲章
日本焦土化作戦の立案者 カーチス・ルメイに対する海外の反応
恥を忘れた日本人:小泉首相の遠足外交に全米が仰天

コイズミ「求愛劇場」の終幕
小泉元首相を回想するブッシュ夫人

4.ケネディ大統領暗殺、そしてキング牧師暗殺とベトナム戦争(動画)
 アメリカは大統領が暗殺される恐ろしい銃社会だ。しかも、その真相が闇の中にあるのは、坂本龍馬暗殺者を闇の中とした明治政府と似ている。ケネディの暗殺によって大統領に就任したジョンソン政権に隠ぺいの疑いが残る。ジョンソン政権時代にはベトナム戦争に反対したキング牧師もFBIから脅迫され、何者かによって暗殺された。

 アメリカの映画組合でCIAのスパイとして赤狩りに積極的に働いたレーガンは大統領となり、ソ連を「悪の帝国」と非難し、西ヨーロッパにアメリカ製中距離核ミサイルを配備しただけでなく、スターウォーズ計画と皮肉られた宇宙空間からソ連のミサイルを打ち落とすというSDI(戦略防衛構想)に着手した。一方、日本では憲法改悪に熱心な岸信介の流れをくむ中曽根は訪米時に日本列島をアメリカの不沈空母にすると発言し、「ロンヤス関係」と呼ばれるほど関係を深めた。
 また、読売新聞と日本テレビもCIAの末端組織と言われるほど関係が深く、日本の政治経済、メディアから裁判所は、アメリカのCIAを通しての支配下にある。なお、原発問題についてはドイツ国営テレビ放送ZDFがどう報じているかをを含めて別の機会に紹介したい。

 ベトナム戦争も原爆投下も、アジア、南米、アフリカなど世界各地で代理戦争を繰り返したのも、その背景にはキング牧師暗殺に象徴されるようにアメリカの開拓時代からの根強い人種差別があると思う。
 人間は組織と国がある限り、どこに行っても差別と支配の欲望から抜け出せないようだ。集団と個人の問題を克服し、人類の理想(動画)を貫くには、自然を大切にし、世界に誇れる日本の憲法を守り、他者との競争を熱きエネルギー源とするのではなく、他者との共創を正義とする教育と社会を根気強く、静かに築いていくしか道はない。この番組から私はそう確信した。

参考:新・映像の世紀
NO.1 百年の悲劇はここから始まった(動画)
 中東問題を生んだイギリスの三枚舌「百年の悲劇はここから始まった」43分~より(動画)
NO.2 グレートファミリー 新たな支配者(動画)
NO.3 時代は独裁者を求めた 2015.12.20(動画)
NO.4 冷戦~世界は秘密と嘘(うそ)に覆われた(動画)

初稿 2016.1.28 動画修正 2016.12.2


100年インタビュー 稲盛和夫

2016-01-24 12:55:47 | 自然と人為

 長淵剛の「心の叫び」を紹介していて、稲盛和夫の100年インタビュー(2013年2月9日)を思い出した。動画での紹介を探してみたが見つからないので、15分以内の制約はあるが、ここに紹介しておきたい。

 長淵剛は表現者として生きることへの心の底からの思い、悩み、怒りを音楽として吐き出していた。若い頃はそれは自己と社会との闘い、他者への配慮を捨ててまでの自己主張であったが、その思いが他者に伝わり、他者がその思いを共有してくれることで、自己を大きくしてくれ他者を幸せにできた。生きることに誠実であることが表現者を大きくし、他者と喜びを共有できた。

 稲盛和夫を思い出したのは、生きることに誠実な利他主義が会社を大きくしたのと共通していると思ったからだ。稲盛和夫の思いを皆さんに伝えたい。 
稲盛和夫 100年インタビュー NO.1
 NO.2 JAL再生 意識改革=考え方、生き方を変える
 NO.3 若き頃の挫折と出会い
 NO.4 京セラ創業 技術者から経営者へ
 NO.5 稲盛経営哲学~アメーバ組織、考え方で人生が変わる、自力から他力
 NO.6 KDDI発足
 NO.7 経営者を育てる「盛和塾」
 NO.8 100年後へのメッセージ

 「考え方で人生が変わる」、「頭の良い人は”思い”に疑問を持つことが多い。”思い”に疑問を持つと、そのとき”思い”は終わる。」
 ”思い”とは心の叫びだ。頭の中であれこれ考えることではない。そして「考え方」とは「生き方」だ。

 正解のある問題で優劣を争い、大会社や官僚をめざして勝者となることは、いつまでも勝者を目指して生きていることではないか。研究者や技術者も現場の問題を追及することに生きる意味があり、レポートの数や英文かどうかの業績の問題ではない。経済も「経世済民」を問わないで、利益追求が大義となっている今日だが、大義とは生きる正義のことだ。誠実に生きる意味を問わないと組織に依存し、組織の支配者となることが目的となる。そして2代目、3代目と家業となった政治家や試験をパスした官僚は国民の支配者の気持ちになっていく。
 どうかもうこれ以上、会社の経営者も政治家も官僚も、利己的な欲望のために我々の住む地球を破壊し、略奪して廃墟にしないでくれ。

参考:
稲盛和夫経営学 中国企業から熱烈歓迎 NHK クローズアップ
稲盛和夫 日本航空 会長 日本記者クラブ 2011.2.8
名誉会長、NHK BSプレミアム「100年インタビュー」出演 | 京セラ
100年インタビュー 「経営者 稲盛和夫」 (NHK BSプレミアム)
「経営の神様」の儲け方・貯め方・使い方 -稲盛和夫 独占インタビュー
考え方ひとつで人生は変わる-思いは実現する (100年インタビュ−)

初稿 2016.1.24

長淵剛~闘争から共創へ

2016-01-21 22:06:41 | 憲法を考える

 100年インタビュー「音楽家 長渕剛」(1)(2)(3)は教えられるところが多く、彼の叫びをYoutubeでいろいろ聞いている。彼の歌は「乾杯」しか知らなかったが、純粋で真っ直ぐなところは忌野清志郎と似ている。彼らの歌とは”魂の叫び”がリズムとなって吹き出ること。叫びは若さの象徴。年齢と共にその叫びは自分との闘争から他者との共創に変わっていき、喜びも生きることより生かすことへと変わっていく。

 長渕のファンには、10代や20代の若者が増えているそうだ。新成人に向け長渕は、「成人式、おめでとう! 長渕剛です。あんな大人になんかなりたかねえ。僕は二十歳のころ、心に誓った言葉を思い出します。そっくりそのまま皆にもそう思ってほしい。常に反逆の思想、正しいことと間違ってること、10代から連綿とつながっている君たちの心の中にある正しさとか、間違ってることの怒り、こういったものを絶対に忘れないで。生涯信念を持って、10代の魂のまま20代をドーンと蹴散らして、思う存分に暴れまくってもらいたい」と呼び掛けている。そう、若いと自分が何をしたいか、しているか分からないけど、必死で自分の居場所を探して闘いもがいている。その純粋さには汚れちまった大人にはない気高さがある。

 また、戦争の危険性が近づいたとか、抑止力が必要だとか戦争に行かない我々が論争するのは論点が違うとも言う。どんな時代でも何故戦争するのかという問題があり、しかも戦争に行くのは若い人。戦争に行かない僕らが語るべきことは、絶対に戦争をしないために僕らが何ができるかということだ。(ワイドナショー 2015年7月19日>)とも言う。我々には闘争本能があり、リスクがあると言われれば闘うという気になる。しかし、闘争心が自分で責任を取る自尊心になるのは許されるが、国が震災で我々を助けてくれた自衛隊を戦争に行かせることは許されない。汚れちまった国の支配者に誘導されて、抑止力だとかに同調するテレビタレントが多くいるのは、支配者に従う日本の世間の鏡でもあろうが、これももおかしい。闘争心とは若さだ。若さの心の中にある正しさとか、間違ってることへの怒りだ。そして、いつまでも若くいたいと思うのも闘争心の持続を求め続けたいからこそではないか。
参考: 安保法案について 松本人志「このままでは当て逃げされる」、長渕剛「戦争に行くのは子供だ」
   : 長渕剛「日本」について語りあう。最終回

 動物に備わる闘争本能とは何ものか。カンガルーの決闘は種の保存で説明されるが、動物園人間とも闘うのを見ていると、そんな単純なものではなさそうだ。自然界におけるオスの闘争行動にはルールというかケジメがあり、敗北のサインで闘争は止まる。しかもメスに支配され、地球温暖化で砂漠化が進むと大きなオスは生き残れず、メスからオスを求めるように繁殖行動も変化しているようだ。
参考: ダーウィンが来た!生きもの新伝説 第89回 疾走!熱闘!カンガルー

 人間ならなおさらのこと、社会的状況や年齢等の生物学的状況により、オスの闘争の行動様式は変わると考えるのが普通であろう。しかも、人間の闘争本能は支配欲のためではない。
 アメリカ初代大統領ワシントンは君主制の王位ではなく連合国の象徴としての大統領に就任し、2期8年で辞任し大統領任期制の先例となった。日本の天皇制も歴史的に民族統合の象徴、権威ではあるが支配者ではなかった。いつの時代も支配者が天皇制を利用したし、今もその危険性がある。今の日本で「人類の理想」である憲法を無視して独裁的な支配者を目指すのは人間失格、政治家失格である。長淵剛は言う。「愛国の魂とは国旗や国歌ではない。どれかだけ父ちゃんが好きか。どれだけ母ちゃんが好きか。子どもたちが大切か。」それに私からも追加させていただくと、生まれ育った故郷をどれだけ好きかということだ。

 長淵剛は「創」についても語っている。「若さは無謀だ。無謀が若さの宝物。だから絶対に思いを抑えたらダメ。僕のメンタリティは生涯情熱、生涯青春、生涯10代であり続ける魂。肉体を練磨して10代の高質な魂に嘘つかないでいたい。若い皆さんに言いたいことは『抑制するな』。表現の場所ではもうこれ以上生きていけないという120%、150%、160%の熱量でやったら、その中で見えてくるものがある。熱ですよ、熱。高熱で生きて行く。放射して生きて行く。ゴジラと一緒。歌を歌うということは火を吐くこと。30までは自分の我欲の追及をどんどんやってもらいたい。予定調和であの人のこと、この人のことを考えなくていい。節度もいりません。表現を追求するためには傍若無人に見えようがあくまで自分を追求していく。誰のことにも耳を傾けない。感謝もいらない。どんなに人に傷つけられても傷つけても良い。その代り責任を取るのは自分だから。それを表現に書いときなさい。生きた証だから。」
 表現に一番大事なことは経験、経験が表現の肥やしになる。
 「ただし、35の扉が待っている。誰のために表現するのか。必ず向こうからやってくる。表現の受け手が教えてくれる。自分が表現することで、人が喜んでくれる、幸せになる。そのことが自分の才能をさらに上げてくれる。自分のため、自分のためと思っていたことの意識の変革が起きる。自分が表現することで会場がすごい空気に包まれて、とんでもない、とてつもない感動をせしめた。そういう反応が返ってくる。すなわち、人を幸せにすることができた。自分が今ここで生きていることが君を幸せにするんだと意識が変わる。」
 
 「叫びは若さの象徴。年齢と共にその叫びは自分との闘争から他者との共創に変わっていき、喜びも生きることより生かすことへと変わっていく」と、長淵剛は教えてくれる。これだけ生きた言葉が連射砲のように出てくるのは確かにすばらしい表現者であり、闘争能力により磨かれた才能だ!

参考: 長渕剛30歳 徹子の部屋
   : ようこそ先輩 長淵剛 心から叫べ

初稿 2016.1.21 動画追加更新 2016.2.27




発想の転換~砂漠化を防止し、気候変動を抑える反芻動物

2016-01-12 20:39:34 | 自然と人為

 これまでこのブログでは、講演資料の「競争から共創へ」、「部分から全体へ」「自然とデザイン -自然と人、人と人をつなぐ新しい時代の共創-」のポイントを図で示していたが、あまり説明をして来なかった。デッサン程度は描けても、システムの当事者としてデザインを具体的に提案できる状態にはなかったし、今も現場を離れているので明確なデザインを描けないもどかしさがある。

 現代の縄文人、斉藤晶さんは、戦後引き上げた満蒙開拓団(動画)の北海道開拓の一員として19歳で参加し、戦後残されていた山の開拓に挑戦した。しかし平野での農業技術は野生動物の棲家の山では成功せず、どん底の生活に行き詰った。そのとき経験豊富な大人の意見ではなく、自然の野鳥や動物から学び、『自然に立ち向かうのではなく、自然に溶け込んで生きていこう!』と牛の放牧を始めた。今では蹄耕法と呼ばれるこの方法が、斉藤晶さんが独自に辿り着いたホリスティック管理だと後で知る。

 私は斉藤晶牧場と出会い、ホリスティック管理のアラン・セイボリーの理論アメリカで実践している牧場を見学する機会も得て、これらの紹介をしていた。不思議な出会いが続いたものであるが、現場から学び現場のために仕事をしたいとの思いが、私にこの道を拓いてくれたのだろう。しかし、2013年にアラン・セイボリーがTEDで「砂漠を緑地化させ気候変動を逆転させる方法」の講演をしているのには気がつかなかった。この歳にして彼の理論をもっと勉強したいと思っている。

 牛に草地をつくらせるまでは現地で見て紹介もし、日本の里山管理に牛の放牧が有効であるので経営の問題だけでなく地域の問題として取り組むべきことを主張してきた。しかし、これまでの人類1万年の歩みで反芻動物や野生動物との自然な関係を壊したことが草原を砂漠化させたという考えは持たなかった。この砂漠を緑地化するために自然の一員としての人間の生き方と反芻動物の取り扱い方が重要で、気候変動の防止にまで彼の理論が応用されることは思いも及もばなかった。

 アメリカやオーストラリアの肉牛生産の繁殖は砂漠に隣接した荒れ地で実施されている。砂漠に隣接した荒れ地で可能なら、それを砂漠に拡大していけば良い。しかし、「砂漠」と「隣接した荒れ地」の境に無意識の壁があった。砂漠に近い荒れ地を反芻動物の放牧で草地化できるのだから、その放牧頭数を増やしながら砂漠に拡げて行けば良いだけなのに、考え方に壁を作ってしまっていた。それに温暖で降雨量に恵まれた日本では、自然を放置すると雑草が茂り山に還るので砂漠化の実感がなかった。ましてや一般の工場的家畜管理をしている人々は生産性の部分しか見ていないので、反芻動物はメタンガスを排出し、過放牧は砂漠化の原因と考えている。部分ではなく、もっと全体的なホリスティック管理に反芻動物を使えば気候変動さえ防止できる自然に戻るなんてことは信じられない話であろう。

 公害防止の問題に取り組み21年間の東大助手を務めた後に琉球大学教授に就任し、2003年に退職され名誉教授になられ、2006年にご逝去された宇井 純さんが、助手時代に公害と環境問題を全国で講演されているのを聴く機会があったが、「あなたはここまで新幹線で来ていますね。それはどう考えればいいのですか?」と質問した優秀とされる学者がいた。専門家としてかなり優秀でも技術の進歩を過信していると部分しか見えないということだろう。まさに科学が発達してホリティックな神は死んだのだ。同じように原発もリニア新幹線も技術への過信と想像力の欠如を感じる。

 私が斉藤晶牧場を絶賛すると盲目的信奉者のように批判する人もいた。お金を掛けない施設が衛生的でないと言うのだ。しかし牛乳アレルギーの子供さんと牛舎まで牛乳を買いに来ているお母さんは、この牧場の牛乳は安全だと知っている。牛の反芻胃だけでなく農場全体の膨大な微生物が有害菌を抑えていることも考えられる。一方、清潔な加工処理ラインだと信じられていた工場で、雪印乳業食中毒事件が起きている。口蹄疫や鳥インフルエンザも屋外飼育における野生動物や野鳥が感染源として危険視しされているが、屋外飼育のような自然に近い状態で増殖したウイルスが家畜から家畜へ伝染を引き起こすことは考えにくい。ウイルスが増殖するのは畜舎内である。
 「銀行だって きれいに見えるけど、あんなにバイ菌だらけのお札に触れるのは私なら嫌だ。 どこに、きれい、汚いの価値観を置くかが問題。ある視点をかえると、みんなひっくり 返っていくの。」
 自然よりは人工的なものや仕事を優れていると考える人が多いが、自然の力は時に脅威にもなるが、自然の一員と考える私たちには基本的には優しい。

 今、混沌として先が見えない時代とされている。それは今まで進歩だと思っていた考え方に限界が来たということだと思う。高度経済成長期のように「アメリカに追いつけ追い越せ」の目標があるときは競争もありうるが、今は混沌とした目標のない時代だ。それは過去からは解放されている若い人にはチャンスであり、成功事例を含めて過去の何かにとらわれた大人の支配する時代ではない。他国との優劣にこだわる時代でもない。

 試験で点数を競うことは正解があることが前提となり、正解を求めて競争することになる。そして有名校に進学することが目標になり、そこに届かないものに劣等感を抱かせる仕組みになる。しかし、世の中には正解はない。正解は過去の歴史から考え方を含めて設定されるものだが、我々は未来に向かって生きている。これからは競争の時代ではなく、共創の時代だ。競争も最前線を生きる人にとっては皆と同じ目標に向かって競い合うことではなく、自己に克つこと。組織や国においても、それぞれの個人の強みを見つけて集団で強みを引き出すこと

 一億総活躍とか1億総動員と言う言葉がこの国の政治家は好きだ。1億総動員は戦争中につくられた国家支配体制であり、「1940年」から抜け出せぬ日本経済 (コピー)と批判する学者もある。情報化の時代に地方分散ではなく、あらゆる組織や会社の本部が東京一極集中となるのは、この国家支配体制によるもの。主権在民の憲法の目的を充実させるのではなく、憲法改正をしてまで国家支配を強くしようとしていることに、国民が強くなるような錯覚を持たないで欲しいNHKスペシャル「日本国憲法誕生 全編」を紹介している提供者が何故か「自滅した日本」と名乗り、憲法制定までのいきさつを詳細に記録したこの番組を評価しない人もいる。

 今の時代は競争と自己責任が当然のように言われている。その一方で、あまりに平等を第一に考えて、小学校の運動会ではあらゆる競争が避けられていた時代も知っている。個人の資質を生かすことと、全てを平等に考えることは違う。しかも今はイジメの問題がある。どうもこの国は個人の多様な能力を伸ばすことや他者を尊重することを本気で考えず、個人と集団の関係を取り扱うのが苦手のようだ。

 心の問題は「脳内ネットワーク」の活動の問題であり、人それぞれにとって神様も仏様もこのネットワークにある。死ぬことは脳がすべての活動を休止することなので、納得のいく生き方をし、他者の心に残ることを期待するしかない。家族はお墓で忍んでくれようが、これからは孫の代までお墓を大切にしてくれるかどうか分からない時代だ。せめて他者に迷惑をかけたり嫌われるような思い出だけは残したくない。

 今回はホリスティック管理のアラン・セイボリーのTEDでの講演を中心に考えた。「新しい年こそ、共創と協走を常識とする時代のスタートの年に!」と、「戦争と自然~右と左の中心は自然だ!」をいつも考えながら、さらに共創と協走の問題を掘り下げていきたい。

参考:
 イノベーションを生み出す「共創」の仕組み
 競争から共創へ―場所主義経済の設計
 競争から共創へ
 システム設計における共創という姿勢
 コミュニティ活動における「共創」の類型化の試み
 政策研究としての地域共創アプローチ
"競争"から"協走"へ~スン・ヒョンチャン(ハンズ・コーポレーション)

初稿 2016.1.12 更新 2016.1.15