自然とデザイン

自然と人との関係なくして生命なく、人と人との関係なくして幸福もない。この自然と人為の関係をデザインとして考えたい。

経世済民~政治も経済も「情報」である①

2018-09-27 22:50:20 | 自然と人為
 人間は動物であり五感の反応により生きているが、「人類は、その誕生の時点から社会的であり、”個人”であったことなどない」。道具を使い、他者へ意思を伝える「話す」、「書く」ことで人間となった。この「話す」、「書く」を他者と繋がる「情報」とすると、人間は動物+道具(機械)ではなく、動物+道具(機械)+情報=人間なのである。
 道具は物理的に実在するが、情報はそれぞれのモノの見方であり想像で成立する。複雑な言葉と言葉の通じない他民族との出会いが、想像力を大きく育てたのだろう。人間は想像することが出来るから、論理的(数学的)、物理的、生物学的に実存する科学を発達させてきたが、もう一方では「人間の尊厳」を土台としなければ、政治も経済にも真実に対する根拠がなく、競争により人間関係の権力争いに陥っていく。

 道具を使い、他者と繋がることで人間となったが、そのエネルギーは、道具や他者への好奇心と想像力と欲望ではなかったか?
 ゲームに夢中になると人が変わる例があるが、これはゲームで遊んでいるつもりが、ゲーム(機械)に遊ばれて脳の回路がおかしくなることである。天才数学者・ペレルマン「ポアンカレ予想」(2)の解(動画1)(動画2)を得たいと夢中になって、世間に興味を失ってしまった。しかし、論理的数学的に実在する問題なので、彼の仕事は「フィールズ賞」の価値があると世界的な評価を得た。彼が世間に興味を持ち辞退している「フィールズ賞」を受賞して、世間的に幸せな余生を送ってもらいたいと思う。

 経世済民(2)という言葉は「世を經(おさ)め、民を濟(すく)う」の意味であり、「政治」と「経済」は分離されていない。集団が大きくなるとこれを治める力が必要であり、権力は武力から生まれたのではなかろうか。「政治」にあたる西欧語は、「ポリス(都市国家)に由来したところから、政治をポリスの業務、すなわち国家の仕事として考える見方が広まる」が、世界の見え方は個人で異なるので、政治は集団生活のルールを決める情報処理の一つと考えられよう。 「経済」の語源となった経世済民は、東晋葛洪の著書「「抱朴子」にある「經世濟俗」に由来しているそうだ。「抱朴子」の「内篇は仙人になるための修行方法について記し、外篇はそれ以外の雑多な事柄を記し」ている様だが、「經世濟俗」がどこの文章にあるのか、私には分からない。いずれにしても、政治と経済は私たちの見える世界での集団としての振舞い方であり、世界という全体はなく、世界の集団の見方は、多くの個人の見方が重なり合うだけだ(動画)。したがって、政治と経済には真実というものはなく、競争で自分達の立場を有利にしているだけだ。競争して人間として破滅しない為には、政治も経済も「人間の尊厳」を土台に置くしかない。これは理想ではなく宿命として重く受け取る必要があろう。

 自分の造ったものと他者のものを交換する物々交換から物品貨幣へと自分から離れて道具となる「お金」を使いだした。今では「お金」もコンピュータネットワーク上の情報となっている。これも好奇心と想像力と欲望が「お金」を生んで、成長させていると言えよう。

 経済は欲望により貨幣を循環することで繁栄する。欲望は経済のエネルギーであるが、「人間の尊厳」を土台にしなければ破綻する。NHK番組「エンデの遺言 ~根源からお金を問う~」は、お金の原点について教えてくれて素晴らしい。
 参考:エンデの遺言 ~根源からお金を問う~ (動画) 記録
    実のお金と虚のマネー 内橋克人
    NHK番組続エンデの遺言 坂本龍一 銀行の"未来"動画
    ミヒャエル・エンデ「モモ」名言集~時間とは--心で感じるもの(動画)
    エンデの遺言 松岡正剛


 この番組はドイツ人実業家・経済学者で自由貨幣の概念を提唱したシルビオ・ゲゼルの主著『自然的経済秩序』を基に、今の経済の矛盾を語る。シルビオ・ゲゼルは「あらゆるものが減価するのに通貨だけが減価しないために金利が正当化され、ある程度以上の資産家が金利生活者としてのらりくらり生きている現状を問題視し、これを解決するために自由貨幣、具体的には「スタンプ貨幣」という仕組みを提案した」。お金は貯めることではなく、使うことで経済を活性化する。「スタンプ貨幣」は使わないと価値が減額する。この理論を取り入れて「地域通貨」を実践し、大成功した町、ヴェルグル(2)を次に紹介している。また、アメリカのニューヨーク州イサカでは、サービスと物、サービスとサービスの交換が可能な地域通貨「イサカアワー」が流通している。

 『マルクスは資本主義の問題点を民間の企業から国家の企業(国家資本主義)に変えることで解決出来ると考えた。マルクスの最大の誤りは資本主義を変えようとしなかったことであり、マルクスの業績は経済批判を可能にする概念を提供したことにある』(番組より)。しかし、国家の情報処理システムである「政治」まで国家主導にしてしまった。
 1990年に東西ドイツが再統一され、旧東ドイツのハレで発生した地域通貨「デイマーク(交換リング)」(2)について、次に紹介している。国家独占の資本主義と政治の社会で生きてきた人たちは、民間資本主義で自由を謳歌しているかと思っていたが、疲れている様に見えた。「交換リング」とは、お金ではなく、お互いの了解で労働やモノの交換の価格を決める制度で、人の繋がりを作ることが出来る。「交換リング」で誰かに支払う(マイナス)ことは、他者と繋がり何か(労働)で返すことだという。これまでの貨幣が物と物との交換であったが、人の交流にまで変わってきている。さらに、「スイス国内の中小企業をネットワークすることで、安定した長期的な販路を確保し、中小企業間での貨幣の循環を確保する」ために、ヴィア銀行が発行するヴィアについて(2)紹介している。そして最後に、日本のメディアでは報道されないが、オーストリアの美しく、国際会議開催が世界一のアルプバッハで、「未来のお金のシステム」を考えようという国際会議が開かれたことを知らせてくれた。確かにお金の流通システムは、これから大きく変わる。世界の経済システムは確実に変化していくだろう。
 参考; ブーム再燃か? 使えば使うほど「地元愛が芽生える」
     ―不思議なお金『地域通貨』の話
     地域通貨とは何か?
     ドイツにおける地域通貨
     30分で判る 経済の仕組み Ray Dalio
     【銀行と金融の仕組み】は何をコントロールしているのか?
     アメリカ、スイスの例から見る「地域通貨の可能性」
     イサカアワーには理念があった。「政府紙幣」は果たして!?

 当然のことだが、私には特に「自然界に生かされている人間」への確信があり、このブログも自然を大切にするつもりで書いている。数学も物理も嫌いで、政治や経済にもあまり関心はなかった。ただ、家業が鶏の孵化業で、幼少より「ヒヨコ」とはよく遊んだ。家業を継ぐために農学部に進んだが、卒業した時には養鶏も大型化し、外国雛は売れるが国産雛は売れなくなっていた。1年間働きながら考えたが、養鶏の規模拡大に興味はなく、廃業することにした。今では北海道の酪農は規模拡大のメガファームが出現し、作業も人の力よりロボット化が進んでいるそうだ。やはり農業の規模拡大はどこかがおかしい。幸いなことに大学が採用してくれて、学者の道が開き、今日まで現場のテーマで仕事をすることが出来た。今も、荒れる里山を牛の放牧で管理するシステムを行政、生産者、消費者をつないでできるはずだと思っているが、2足歩行が困難な歳となり、現場の仕事は引退した。そろそろこのブログも幕を閉じる時期が来たなと、「生きるということ」を生物の視点で考えていたら、世界が広く見えてきた。もう一度、この視点でこれまでのブログを読み直してみたい。また、「政治」も「経済」も「情報」だと考えれば、今までよりもっと興味が湧いて理解できるかも知れないと思うようになった。

 このブログを書くために、いろいろ情報をネットで検索していたら、外国語大学を卒業後、モルガン銀行に入行され、アメリカでも現場の仕事をされてきた大西つねきさんのブログと出会った。消費税お金の発行のしくみ日銀と国債の役割お金のあるべき姿国家経営のあり方(現在の問題点)国家経営のあり方(未来の国家)集団的自衛権について(動画)を拝見させていただくと、「政治と経済は情報だ」という考えに至った私の考えと同じ気がする。大西さんの資料を、政治も経済も情報だする私の視点から勉強させていただきたい。
 多くの人は現場の第一線で仕事をしながら、現場の常識で出世していくのが目標となり、立身出世が讃えられる。しかし、大西さんは現場の常識を超えた大きな世界を見つめていた。しかも、誰も思いつかなかった世界を実現するために、政治家を目指すという。現場の政治と経済は一体で動いている。その世界を変えたいという。凄いことだ。

 農学は生物学に根拠を持つ現場の科学だが、現場の研究とは、現場の常識に疑問を持つことで生まれる。政治学も経済学も現場の問題なのに、机上の学問として限定した問題を求めて詰めてゆくと、現場から離れて益々理解できなくなる。農学も政治学も経済学も、もっと現場から学び、現場に疑問を持つことから始める必要があろう。

 「大西つねき」さんは、国民の為の経済にするには政治改革が必要だと政治家を志している。これまでにない新しい時代の政治家だ!応援したい。頑張ってください。
 参考: 大西つねきの政治の原点(1)金融編(2)震災編
      フェアな経済、社会とは(2)(3)
      我々は何を間違え続けて来たか?(2)(3)



初稿 2018.9.27 広島カープがセリーグ優勝! 日本一を目指してガンバレ!
更新 2019.1.31 更新 2020.2.23(ブログ目次削除)

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