組織か個人か? 国家か国民か? 今、世論操作がメディアによって行われ、個人より組織、さらには国家が大切なのは当然とする雰囲気が作られつつある。
「日馬富士の暴行事件」を連日のように大袈裟に取り上げていたフジテレビ(産経新聞)や日テレ(読売新聞)にNHKも個人より組織を大切にしたいのだろう。本来は相撲界のモンゴルのボス「白鳳」を懲罰し、被害を受けた貴ノ岩を救済すべき話を、日馬富士が同郷の「貴ノ岩」に何故暴行したのかを追求することなく、弟子を思う親方の貴乃花の孤独な抗議を相撲協会が処罰するという構造にすり替えた。それが事実だと言うのだろうが、物事には多様な意図がからみ、ある意図をメディアが取り上げれば、情報を与えられた多くの人は、それを事実だと思うようになる。メディアの仮想現実が現実を動かす。
貴乃花親方の相撲道指導で仲間との飲食を禁止されていた貴乃岩は、お世話になった高校の集まりということで参加した場にモンゴルの3横綱が待っていた。事実を知らせるメディアはこの事態が異常だとは思わないのか?この点は以前このブログでつぶやいたことがあるので、その稚拙な意見を改善したり、くどくどとは言わない。
参考:貴乃花と白鵬~相撲道か団結力か?
「横綱は受けて立つ」、双葉山の相撲道
相撲道から武士道へ、そして「人間として生きる価値」を全世界の教育の基本に
ただ、相撲協会危機管理委員会 高野利雄委員長(元名古屋高検検事長)が厳しい口調で警察に届け出た貴乃花を叱責していたことが気になる。警察や検察という社会の正義を受け持つ人が、自分の立ち位置によって見方を変えると言うのは危険だ。これが相撲協会ではなく現役の検事長であったら、危険な時代になると善良な国民を危険分子としてあの小林多喜二のように拷問死させかねないとゾッとする。
今、私たちはそういう危険な時代にいると教えてくれたのは、NHK番組「こころの時代『父に問う 今と未来を知るために』 動画全編(60分)で、「歴史は相似的に反復する」と伝えてくれた辺見庸である。
皆さんも危険な時代を予感しながらメディアの情報に接していただきたい。危険な時代が来ないようにするには、我々一人一人が自覚して社会の妄動を防ぐしかない。何かに依存するのではなく、自分がそう生きるしかない。
論説:中国100年の屈辱 その11 1937 辺見庸,(2),(3)
河野談話(1993)や村山談話(1995)は、日本軍「慰安婦」問題で多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけたと認め、植民地支配と侵略によってアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えたと陳謝した。なお、慰安婦は沖縄にもいたが慰霊碑から削除されている。
しかし、安倍首相の「戦後70年談話」,(2)は、日本の「侵略」と「謝罪」について消極的だ。慰安婦問題は決着済みとし、女性の尊厳を無視して慰安婦少女像の撤去まで求めている。それだけではない。稲田明美元防衛大臣は南京事件はなかったと全面否定している。
NHK番組『こころの時代 辺見庸「父を問う―いまと未来を知るために」』の動画は、ネットで見つけることが出来ない。そこで、政府によって歴史的真実が歪曲されないように、大切なこの番組の一部(1-14分)を公開したが、全編を「石井ノブ」さんが公開されているのを見つけた。ありがたく、ここに紹介させていただき感謝したい。
「歴史は相似的に反復する」
山下清「切り絵」と堀田善衛「時間」が伝える日本人と日本軍10-13分
仮想現実の同心円から真実を求める知性へ 武田泰淳「汝の母を!」
母子丸焼きした軍の行為を思考の無限同心円の中心に置く(33-39分)
戦争に触れない小津安二郎の静謐な日本美(41-42分)
番組の最後の部分で、イスラム7ヵ国からの難民入国を一時停止したトランプ大統領をおぞましいと批判した。中東各国で難民を生み出したのはアメリカではないか! アメリカの民主党は国民を大切にし、共和党は国家を大切にする。トランプの「アメリカ・ファースト」とは、アメリカ国家を第一に考えるとの宣言であり、日本でもそうだが富裕層にとって国民より国家を大切にする方が自分の利益が守られる。皮肉なことに政治を私物化する安倍首相が国を守るとの名目で軍事国家化を進め、国民より国家を大切にする「おぞましい動き」が顕著となってきた。
参考: 映画『すべての政府は嘘をつく』予告編
南京虐殺事件 1937年12月は明治維新から70年、安倍首相の「戦後70年談話」(動画)のように70年もすれば統治機構は腐敗し、国民のためと称して一部の富裕層の富が守られるようだ。
1937年(昭和12年)に日中戦争が始まると、政府は国民に戦争への協力を促うながすため「国民精神総動員運動」,(2)を始め、翌年には「国家総動員法」が発令された。
今も、安倍政権の富裕層を大切にするアベノミクスによって格差が拡大し、年収300万円時代に突入し、安倍首相国会発言で見えた「国家総動員法」の時代の危機が迫っている。
戦争は人間を鬼畜にする。鬼畜日本兵だ。徴兵制となり、兵隊にとられたとき、人は鬼畜にならず静謐な日本人でいられるだろうか。今、安倍政権が危険なだけでなく、安倍政権を支持する若者の中に、戦争を危惧する番組を「反日」で「放送法違反」と批判する一方で、「国粋主義」が正義だと日章旗と旭日旗(大日本帝國海軍の軍旗)を振りデモをする。不安定な時代に自分の考えが正しいと思い込み、強い国を求めるのだろうが、そんな若者が鬼畜日本兵にならないように、どんな状況に追い込まれようと、戦争だけは止めなければならない。
施行70年日本国憲法 サンデーモーニング 2017.5.7
安倍9条改憲は憲法理念を破壊する「壊憲」であり、国を強くすることは百害あって一利なし。初めは集団的自衛権を行使し、世界で戦争をするアメリカの属国として戦い、世論の批判が大きくならないように国民の締め付けが始まるだろう。国家が強く自由になればなるほど、国民は弱く不自由になる。その様な視点が放送から排除されること自体が放送法違反であり、日本を戦争への道に歩かせる。
参考: CIAのスパイだった岸信介!満州アヘンの売人
朝日新聞・高橋純子氏 「安倍政権の気持ち悪さ伝えたい」
初稿 2017.12.30 更新 2019.9.5