自然とデザイン

自然と人との関係なくして生命なく、人と人との関係なくして幸福もない。この自然と人為の関係をデザインとして考えたい。

常識とは何だ!~政治も経済も「情報」である⑧

2018-11-18 15:39:35 | 自然と人為
 「歴史」は勝者によって書かれるように、「常識」はその時代の支配者によってつくられる。人によって“生きる価値”の尊さと重みは変わらないし、「お金」や経済も人によってその機能が変わるものでもない。全ての人々が“生きる価値”を全うするために、「お金」と「経済」は本来はある。しかし、人類が生きていく本来の姿から、今の資本主義の「常識」は2つの道を誤っている。

 その一つ、物々交換を補う役目であった貨幣が、今では主人公になってしまった。経済の実態である生産や労働から、経済の主役が仮想物の「お金」に逆転した。お金で何でも買えるし、お金がないと生きて行けない。経済の目的が利益第一主義となり、お金の量=労働と生産物の価値の量」というお金の裏付け(動画)を失い、「お金の量>価値の量」となってしまった。溢れたお金は政府の借金で発行されたものであり、その借金は子供の代まで税金として残される一方で、富裕層は株や不動産で豊かになる。同じ人間なのに貧富の差が拡大し、貧しさは2代、3代と受け継がれる。豊かなはずの『日本の貧困率(15.6%、2015年)の高さは国際的に見ると、米国(16.8%、2015年、資料OECD)に次いでG7中ワースト2位。さらに、ひとり親世帯ではOECD加盟国35カ国中ワースト1位』だ。(7人に1人が生活に苦しむ?経済大国・日本の「貧困」の実態)より引用。この経済の実態の矛盾を誰も気にしない。
 参考:経済について大西先生から学ぶ~政治も経済も情報である②
     国家経営のあり方(前編)(後編)


 もう一つ、現在の資本主義が人類が生きる自然と生態系を無視していることを指摘しているのが、“里山資本主義”だ。人類は自然から離れては生きて行けないのに、自然から離れることが進歩だと錯覚し、宇沢弘文『自動車の社会的費用』が指摘した環境汚染等の長期の経費の負担を、利益を追求する経済は無視している。
 参考:なぜ人類は「お金」という概念を生み出したのか?
     経済について大西先生から学ぶ~政治も経済も情報である②


1.時代遅れの資本主義~自立した個人が自由に生きる社会を求めて
 戦後の貧しい時代は、政治の力は実体経済の回復に向けられた。しかし、年収1億円以上が珍しくない豊かな時代になると、多くの国民には実感はないかも知れないが、政治は富裕層を優遇するようになった。貧富の差が世襲されるように、権力と関係する政治も世襲される。権力を求めるという点で、政治と大企業、富裕層が繋がるのは、何処の国も同じなのかもしれないが、豊かな国のはずの日本で貧困層が多いのは何故だろう。それは政治の世襲により、政治家と大企業や富裕層との繋がりが強くなり、政治家に国民の為の政治という感覚がずれてきているからであろう。国民のために何が必要で、何が大切か、その基準は育った環境で変わってくる。戦後の物のない時代と今の豊かな時代では、資本主義の使命は変わっているが、世襲の人脈ではこの変化に気が付かない。これは戦争から敗戦、そして戦後と続く日本の権力構造は政治の対象が変わっただけで、「政治とは人間の尊厳を尊重すること」という政治の本質を問う意味では変わっていない。
 参考:2018.7.16「資本主義がダメな理由(1)」大西つねきの週刊動画コラムvol.35 (動画)
     2018.7.23「資本主義がダメな理由(2)」大西つねきの週刊動画コラムvol.36 (動画)
     2018.9.24「大西つねきの政治の原点(1)金融編」 (動画)
     2016-10-01 大西つねき講演「目からウロコの財政金融基礎知識」 (動画)
     ”生きる価値”を問う~政治も経済も「情報」である⑥


2.日本の政治の支配者が犯した罪~原爆投下とソ連侵攻
 1945年7月26日、日本に対する無条件降伏を勧告したポツダム宣言を知った『日本政府首脳は・・・鈴木首相が「黙殺する」という声明を発表した。それは連合国側に「拒否」と受け取られ、連合軍に次の軍事ステップである原爆投下に踏み切らせる口実を与えた。』大本営陸軍部は1945年4月20日、「国土決戦教令」(2)を発表していたという。
 原爆を広島に落とす口実を与えたのは日本政府であり、長崎に落とされても本土決戦を主張した陸軍は、的確な国際状況判断より自分たちの妄想を優先させた。国民を大切にしない政治が、戦争の惨禍だけでなく、日本への2つの原爆投下とソ連侵攻を許す結果となった。
 しかし、良心的な番組のはずの「サンデーモーニング:2018.11.18」は、ソ連の北方4島侵攻(動画)について明らかな嘘の報道をしていた。
                参考:ヤルタ秘密協定と北方領土問題の真相
  
 ポツダム宣言受諾後のソ連の戦闘や、ソ連対日宣戦布告の資料があるように、日本政府のポツダム宣言受諾が遅れたことが、ソ連の参戦に口実を与えてしまったと思う。この表現では、アメリカもポツダム宣言受諾後に、原爆を2回も日本に落としたと言うのと同じではないか?
 参考:ポツダム宣言受諾か否か…会議の最中、人類史上2発目の原爆が落とされた
     「国土決戦教令」
     大本営陸軍部「国土決戦教令」の衝撃
     敗戦と新憲法~政治も経済も「情報」である⑤
     戦後(独立後)の政治~政治も経済も「情報」である⑦


3.豊かな時代における経済成長至上主義のアベノミクスの誤り
 2006年(平成18年)9月、「美しい国づくり内閣」と命名し、「戦後レジームからの脱却」を訴えて、世襲だからこそ52歳の若さにして「憲法改正」に熱心な「安倍内閣」が出現した。「美しい言葉」を使って過去を目標とするのが保守かも知れないが、「アメリカに押し付けられた憲法」を改正すると言いながら、「アメリカに押し付けられた基地」で沖縄や国民を苦しめ、アメリカに従属する矛盾した政治で国民ではなく大企業や富裕層を優遇している。それが世襲で首相となった安倍政治の「常識」なのだろう。もっとも基地があることでアメリカを身近に感じる沖縄の若者や、大企業は憧れの就職先であり、富裕層に仲間入りすることを夢としている若者もいるだろう。金融緩和でお金をばら撒けば、株は高騰して富裕層は儲かるだろうが、そのお金は貧困層には廻って来ない。 
 若者の個人的な夢と政治の実態は何時の時代も乖離するが、「自立した個人」とは「他者を尊重できる個人」に成長することだと思う。
 参考:「戦後レジームからの脱却」という大嘘
     安倍晋三の「戦後レジームからの脱却」とは、対米隷属の強化のこと
     日本国内における富裕層、貧困層の格差問題
     所得1億円超の金持ちほど税優遇される現実
     「アベノミクスの功罪(1)」大西つねきの週刊動画コラム(2)(3)
     DVD「目からウロコの経済の話」〜予告編


4.マネー資本主義の誤り
 お金が主役となり、経済をお金だけで考える金融工学(マネー資本主義)が、経済をさらにおかしくしている。2006年 ガウス賞を受賞した伊藤清先生の「伊藤の定理」は、確率論的な動きを積分することで、ランダムな曲線を方程式で表すことを可能にしたが、これが金融工学に利用され、ノーベル経済学賞を受賞したそうだ。ノーベル賞はノーベルの遺言に従って、物理学、化学、医学生理学、文学、平和の5つの賞が設けられたが、経済学賞はスウェーデン国立銀行が創立300周年を記念して1969年から始まったもの。しかも、ノーベル経済学賞受賞者の作った最高のヘッジファンドが多額の損失を抱えて破綻したこともあり、経済学賞の権威は大きく失墜した。お金の裏付けである「お金の量=価値の量」(動画)は守らねばならない。ここでは伊藤清先生の研究を中心にして、金融工学の資料を集めておいた。金融工学はこれから経済学でどのような位置を占めるのであろうか?

関西確率論セミナー(1985年) 講演者 伊藤 清(1915年9月7日-2008年11月10日)
ガウス賞記念講演会 14:00~15:00(プログラム最下段)
伊藤清先生:米国ウォール街で最も著名かつ尊敬される日本人
  佐和 隆光 氏 (京都大学 名誉教授) WindowsMedia版 5:08-35:20(日本語)
伊藤清先生と確率解析-分布系列から標本路へ
  福島 正俊 氏 (大阪大学 名誉教授) WindowsMedia版 0:43-25:45(日本語)

参考:マネー資本主義(動画) 
  第1回“暴走”はなぜ止められなかったのか~
  第2回“超金余り”はなぜ起きたのか?~
  第3回 年金マネーの“熱狂”はなぜ起きたのか~
  第4回 ウォール街の“モンスター”金融工学はなぜ暴走したのか~
  最終回 ~危機を繰り返さないために~
  リーマン・ショックがなぜ起こったか、経済理論で説明できますか?
  金融工学の嘘とホント(第1回)(第2回)
  金融工学という詐欺
  数理ファイナンスが示唆する分散投資のウソ①
  金融工学と数学と物理学の違い ①
  不確実な未来に備える数学の力 —金融の世界に革命を起こした2つの数学理論—

  日本の貨幣の歴史貨幣の誕生貨幣史貨幣誕生のメカニズム
  貨幣誕生の歴史紙幣誕生の経緯を調べてみる


5.欲望の民主主義、欲望の資本主義(資料)
BS1スペシャル「欲望の民主主義~世界の景色が変わる時~」 (前編)(後編) 動画
欲望の民主主義 分断を越える哲学』より「民主主義は情報処理の特定の形なのです。民主主義とは、一つの制度であり、同時に人間の行動を組織化する方法です。」
欲望の時代の哲学「マルクス・ガブリエル 日本を行く~」(動画)
B1スペシャル「欲望の資本主義~闇の力が目覚める時」 (前編)(後編) 動画
B1スペシャル「資本主義の未来」(動画)
(1)~お金が消える!?(2)仕事がなくなる!?(3)借金に潰される!?
マネーワールド「資本主義の未来」(動画)
(1)世界は成長を続けられるのか(2)~国家×超巨大企業」(3)巨大格差 その果てに


欲望の経済史~日本戦後編~(動画)
1 焼け跡に残った戦時体制 終戦~50s
2 奇跡の高度成長の裏で~60s
3 繁栄の光と影が交錯する~70s
4 ジャパン・アズ・ナンバーワンの夢~80s
5 崩壊 失われた羅針盤~90s
最終回「改革の嵐の中で~2000年代

欲望の経済史~ルールが変わるとき~ (全6回)
①時が富を生む魔術~利子の誕生(動画)
②空間をめぐる攻防(動画)
③勤勉という美徳(動画)
④技術が人を動かす(動画)
⑤大衆の夢のあとさき(動画)
特別編(動画)

6.月収1000万円以上分の所得は国庫納付へ
 「所得1億円超の金持ちほど税優遇される現実」がある。所得1億円までは所得税負担率が上昇していくが、1億円を超すと負担率が下がっていく。欲望の時代、自由と欲望の違いを明らかにしなければならない。自由であることが資本主義を成功させてきたが、欲望には際限がない。お金への欲望は日本では卑しいとされたはずだ。労働や仕事で名声を得て、それが収入になることはあっても、収入が目的の仕事は人間を卑しくする。庶民の感覚で言えば、月収1000万円以上のお金は生活に必要ないので、この分は国庫納付しては如何か。土地の国有化の考えもあるが、政治家や官僚の裁量権を大きくすると、彼らも欲望で国民の為の仕事を忘れる。「貧乏だけど仕事で名声を得る」ことが日本人には好きな物語だ。とにかくお金が目的にならない社会を、皆で知恵を出し合い、創って行くことがこれからの時代に必要だ。
 数億円も所得がある人は、新しい事業(高齢化社会対策、労働力不足対策、少子化対策、里山資源管理等)を国に任せるのではなく、これを健全な事業に育てるための名誉ある投資に使うべきであろう。
 参考:語られないアメリカの格差 格差拡大の原因は「富裕層と貧困層の分離」に
  どうする格差大国アメリカ〜なぜ「中間層」はこんなに衰退したのか
  アメリカの貧困と格差の凄まじさがわかる30のデータ
  アメリカで機会格差の拡大が起きた理由
  格差拡大の原因は何か。「グローバル化」より影響大な「偏向型技術進歩」
  格差と貧困
  アメリカ経済を考える「格差問題に関する米国の論点(6)~一般教書では教育に力点」
  これから「格差」の話をしよう。なぜトップ1%の資産が、残り99%より多いのか?
  アメリカの格差と貧困がどれほどのレベルに達したのかがわかる
  国連人権高等弁務官事務所公式レポート



初稿 2018.11.18 更新 2019.1.28 更新(ブログ目次削除) 

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