自然とデザイン

自然と人との関係なくして生命なく、人と人との関係なくして幸福もない。この自然と人為の関係をデザインとして考えたい。

「ごはんジャパン」富士山岡村牛(テレビ朝日系列)の録画

2016-10-31 20:07:54 | 自然と人為

    
 乳牛に和牛を交配してF1(交雑牛)を生産する方法は全国に普及していますが、富士山の裾野の朝霧高原で、そのF1雌牛を放牧してハイブリッド牛を生産している日本で唯一の牧場があります。そこで生産された牛肉が「富士山岡村牛」です。この写真は2009年11月14日、15日に富士山岡村牧場現地研修会で訪問したときのものです。

 本物の食材を探す旅の番組「ごはんジャパン」(テレビ朝日系列)で、「富士山岡村牛」(録画)が紹介されました。また、BSフジでも翌日、10月30日PM2時から「静岡であそぼ」で紹介されています。
 あの料理界の巨匠、熊谷 喜八さん(KIHACHI)に「富士山岡村牛」が魅力ある食材として見出されました。何故、魅力ある食材として「味」と「飼い方」が認められたのか。その放送を録画して紹介させていただきます。なお、放送予告では熊谷 喜八さんの紹介ブログと牛を放牧する意義について解説しています。

    
 放送の冒頭には、朝霧高原が酪農地帯であることを示す乳牛の放牧風景が紹介されています。放牧頭数は土地の条件により0.5~1頭/haが基準とされていますが、富士山岡村牧場(4ha)には4産の牛を最年長とする5頭のF1雌牛が放牧されています。
 アカ毛の牛が1頭いますが、あか毛和牛にしては少し赤が強いと思ったら、和牛(黒毛和種)は被毛の遺伝子がホモになるように改良していますが、乳牛(ホルスタイン種)との交雑でアカ毛が出るのもいるようです。このアカ毛のF1は人懐こくて手をペロペロ舐めるそうです。これらのF1雌牛から「美味しい赤身肉」の子牛が生まれます。

    
 牛を放牧することで、自然分娩で強い子牛が産まれます。子牛は母牛からミルクを飲ませてやりたいのですが、そうすると親子分離したときに親子が呼び合って、返って可愛そうなので、母牛の乳と同じ40℃で人工哺乳しています。
 牛は草食動物ですので、放牧すると牛と共生しているセルロース分解菌が反芻胃内だけでなく、排糞を通して畜舎全体に増えます。また、GMO(Genetically Modified Organism:遺伝子組み換え作物)を与えないことで、牛の消化管内も牧場全体もGMOフリーにしています。

 「赤身肉」の匠の極意は、牛1頭1頭の顔が見える関係で健康管理して育て、「牛が笑っている牧場」を目指している点にあります。
 子牛の時から喜んで腹いっぱい食べてくれる乾草を値段が高くても与えています。安いエサではなく牛が喜んで食べてくれる健康で安全で、環境にも良いエサを第一に考えている。人も牛も笑って生きることは幸せな証拠ですよね。


 「赤身肉」の匠は自分の思いを達成するために「お金」はなかったけど、それを苦労とは思わなかった。家族はデパートに行っても「見るだけよ」と子供自らが言いながら育った。そして取材の日、赤身肉大好きな藤吉久美子さんは「美味しい! お肉記念日!」と最高の褒め言葉。F1雌牛の放牧により生産されたハイブリッド牛にとっては、日本全国普及に向けての門出を後押ししてくれる記念日となった。
 なお、牛乳は62℃~65℃30分で殺菌するパスチャライズ牛乳(低温殺菌牛乳)がタンパク質を破壊せず欧米では普通なことは知っていましたが、赤身肉を美味しく食べる料理法として60度2時間焼く方法があるとは思いつきませんでした。料理の匠、熊谷 喜八さんの柔軟な発想に脱帽です。

F1雌牛の放牧によるハイブリッド牛生産
 世界の最先端を目指すハイブリッド牛生産は、酪農におけるF1生産、F1雌牛の放牧によるハイブリッド子牛の生産、ハイブリッド子牛とF1経産牛の肥育、ハイブリッド牛肉の処理と販売、ハイブリッド牛生産のための種雄牛の能力検定と精液配布の5部門からなる。
 F1雌牛の放牧による子牛生産は広大な土地を必要とし、利益を上げるための経済ではなく、里山を管理して豊かな地域の生活を次の世代に残す「経世済民」のために実施したい。そのために、F1による種雄牛の現場能力検定を目的として立ち上げた「畜産システム研究所」のスタッフを充実させ、農家の生活を守るための「農協」と市民の生活を守るための「生協」、これに法律で住民を守る行政を含めた仕事のシステム化を積極的に研究し、実践していくことが必要です。

 新しい陣容で仕事を始めるために、牛の放牧による里山管理を地域で試験的に始めている「大谷山里山牧場」とハイブリッド牛生産の先端を走っている「富士山岡村牧場」を中心に、牛肉の処理流通業者、精液販売業者、この研究所に参加を希望する方々に新しい体制の発足を呼びかけて、来秋から新しい仕事を持つ研究所が稼働するように準備を開始したい。

参考: 予告!「富士山岡村牛」の食材の魅力 (ごはんジャパン|テレビ朝日で放送)
     録画: 予告! 熊谷喜八&藤吉久美子 静岡「富士山岡村牧場」
     録画: 富士山麓・朝霧高原 「匠が育てる極上の赤身肉」
     録画: 「静岡であそぼ」 究極の静岡食材 岡村牧場(富士宮市)「富士山岡村牛」


初稿 2016.10.31 更新 2016.11.14(録画変更) 画像更新 2019.9.2

予告!  「富士山岡村牛」の食材の魅力  (ごはんジャパン|テレビ朝日で放送)

2016-10-26 23:38:42 | 自然と人為

    
 本物の食材を探す旅の番組「ごはんジャパン(放送予告の動画)」 (テレビ朝日系列)で、「富士山岡村牛」が紹介されます。広島県では広島ホームテレビで紹介され、今週の番組紹介は、「ごはんジャパン」 に「『静岡 富士山岡村牛』 四季折々の魅力に満ち溢れた国、日本。この国には食材の魅力を知り尽くした匠たちがいます。日本を代表するシェフと素敵なゲストが本物を探す旅へ出ます」とあります。

 あの料理界の巨匠、熊谷 喜八さん(KIHACHI)に「富士山岡村牛」が魅力ある食材として見出されたのです。バンザイ!!何故、魅力ある食材として「味」と「飼い方」が認められたのか。私も放送を楽しみにしています。

 ここでは、熊谷喜八さんについてブログを紹介させていただきます。
新マーケットを創造する異才の料理人 熊谷喜八
成功レストランのつくりかた
料理界の巨匠「熊谷喜八」氏のトーク&ライブキッチン
熊谷喜八(レストランKIHACHI総料理長) - J-WAVE
KIHACHI 創業者 熊谷喜八プロフィール - 日本惣菜協会

なぜ、放牧した雌牛は最高の食材になるのか?

 「富士山岡村牧場」は、ブログ「牛は資源を循環し、人をつなぐ」でも触れ、「大谷山里山牧場」が目標にしている「F1雌牛の放牧」を中心にした牧場で、将来的には世界のトップを目指して走っている牧場です。

 「牛=資本」は草で増える。しかも、「牛=庭師」を放牧すると里山が庭園のように美しくなり、人が集まり、人と人をつないでくれる。
 さらに放牧牛では、牛乳も牛肉も草から反芻胃にいる微生物・バクテリアが蛋白質を作ってくれます。牛乳のアレルギーと言われますが、放牧で搾る牛乳と穀類を与えた高泌乳牛の牛乳では、蛋白質が違いますし、混入物の影響も違うと思います。放牧飼育している旭川の斉藤晶牧場に「ここの牛乳はアレルギーは出ない」と、牛乳アレルギーのある少年と一緒に搾りたての牛乳を買いに来られていたお母さんのことが忘れられません。

                    牛の放牧で自然と人、人と人を結ぶ     
    
       共役リノール酸  共役リノール酸(CLA)と抗アレルギー作用

 「牛にとって放牧は一番自然に近い生き方であり、必要な養分を取るために草を十分に食べれば、繊維やミネラルも豊富に摂取でき、第一胃内の微生物やバクテリアは穀物肥育より著しく増加する。夏は涼しい場所を知り、冬は身を寄せ合って温まることもできる。畜舎の外は喚起も必要ないし、人様がお金をかけて建設した畜舎より快適だ」と、ブログ「大谷山里山牧場」でも説明しましたが、牛は反芻胃内の微生物・バクテリアと共生して生きているので、放牧で生きている牛はストレスが少ない。

 牛は放牧で生きていくのが自然であり、高乳量や高肉質を目指して穀類を多給していると、「反芻家畜のルーメン細菌に対する免疫応答」に見られるように、微生物・バクテリアに異常が生じて死んでしまいます。この論文で扇元氏らは、「セルロース分解菌に対する抗体価は放牧牛では100%であるが、肥育牛ではわずか37%であることは興味深い」とし、「ルーメン細菌が安定した抗原性状を保持している」と報告している。ルーメン細菌に対する牛の免疫応答の詳細は今後の研究に期待したいが、放牧牛と肥育牛の抗体価の差は、ルーメン内におけるセルロース分解菌の多さが関係していると思う。草食動物である牛のセルロース分解菌が少なくなるということは、牛にとって危険信号であり、そのような牛の牛乳や牛肉は人間にも良くないはずです。放牧している牛は、牛乳や牛肉で良い食材になるのは当然であり、このことでも、牛が微生物と共生しているのと同様に、人間は自然と共生していることが理解できるでしょう。しかも、乳牛と和牛を交配したハイブリッド牛は、ヘテローシスにより元気で健康です。
 食と環境の未来ネット・中部よつ葉会の皆さんは「美味しい!こんな肉を食べたかった。」と仰っていましたが、私ももう一度、否ずっと食べたいし食べられるように、全国ネットのシステムが出来ないものかと考え続けています。

 参考: ルーメンについて
      牛の健康と栄養
      グラスフェッド肉の多くの利点

      強者の論理よりも自然を愛する感性を!
      「自然と共同体を大切にし、質素に暮らすアーミッシュの人々」と「放牧・・・
      ニッポンの里山 ふるさとの絶景に出会う旅
      アメリカの肉牛産業と日本の肉牛生産
      自然の力とチームの力~地域を豊かにし次の世代に伝える
      発想の転換~砂漠化を防止し、気候変動を抑える反芻動物
      縄文文化と里山文化~斉藤晶牧場に学ぶ
      和牛の伝統と牛のハイブリッド生産
      縄文人の生き方と文明で失われた平和な世界
      自然とデザイン -自然と人、人と人をつなぐ新しい時代の共創-
      どのような畜産のデザインを描くのか(4)


初稿 2016.10.26 更新 2016.11.14(録画変更) 録画更新 2017.5.10

テクノロジーとアートと禅のスティーブ・ジョブズ「Stay Hungry, Stay Foolish.」

2016-10-17 21:02:08 | 自然と人為

 スティーブ・ジョブズが亡くなって5年になる。大型計算機を仕事に使うことが常識だった頃(1976年)、親友のウォズニアックとアップルコンピュータを創業(21歳)し、翌年にはApple IIが爆発的人気で売れ、パソコン時代の幕を開けた。このパーソナルコンピュータの開発に対して、1985年に最初のアメリカ国家技術賞を受賞しているが、受賞のことはどうでもいい程、社会へのインパクトは強烈であった。文字入力でコンピュータを操作するMS-DOSなどのOSが主流だった時代に、グラフィック等のマウスによる操作を標準機能としたマッキントッシュ、通称・略称はMac(マック)の開発・販売に始まり、音楽を聴く世界を変えたiPodの発表が2001年10月、これに電話とネットと画像とマルチタッチの機能を加えて新しい電話の発明とも言える初代iPhone (2)を2007年1月に発表し、「Apple I」から「iPhone」まで、パソコンを日常社会で欠かせない道具に様変わりさせた。そしてiPad(2010年1月発表)では、パソコンの画面の大きさを維持しつつ、究極の小型に変えてしまった。
 参考: iPhone を発表するスティーブ・ジョブス (2007年1月9日)
      スティーブ・ジョブズは「モノづくり」の何を変えたのか


 スティーブ・ジョブズは、秀でた理性と感性を兼ね備え、こだわりと集中力は常人では理解できない程、強烈であった。シリア人を父として生まれ、望まれない子として生後養子に出された彼は、大学の学費に苦労している養父母の姿に耐えられず退学しているが、2005年6月12日、当時50歳のスティーブ・ジョブズは、世界でも優秀とされるスタンフォード大学の卒業式で世に残る講演をしている。
 参考: スティーブ・ジョブズ 感動の名スピーチ 【日本語字幕】(2005年6月12日)
      スティーブ・ジョブス 感動のスピーチ全文 (於:スタンフォード大学卒業式)

 スティーブ・ジョブズ没後 (2011年10月5日、享年56歳) 5年を記念して、NHKはアナザーストーリーズ「知られざるスティーブ・ジョブズ~伝説のスピーチの真実」を放送している。

「Stay Hungry, Stay Foolish.(ハングリーでれ、愚かであれ)」
 私はこれを座右の銘にしてきました。みなさんの門出に、この言葉を贈ります。伝説のスピーチはこう締めくくられている。この言葉を卒業生はどう受け取っただろうか。そして皆さんも。


 知られざるスティーブ・ジョブズ~伝説のスピーチの真実(前)より

1.点と点をつなぐ
 スティーブ・ジョブズは高校生の頃からヒューレット・パッカードでアルバイトをし、ウォズニアックと知り合いアップル社を立ち上げたが、ジョージ・クロウも同社で大型計算機の設計全般を任されていた知る人ぞ知るエリートエンジニアだった。彼は1980年、最初にスティーブ・ジョブズから「俺と一緒にマジですごいコンピューターを作らないか?」と誘われた時にはアップルはオタク向けのおもちゃを作っている会社と思っていた。6カ月後に再びマッキントッシュの原型を持って来た。初期段階のものだが、見ただけでどこまで行くつもりか解った。確かにマジですごいと思った。コンピュータの世界で点と点で能力のすごい人を見つけ、その人を仲間にしてスゴイものを創る。カリグラフィー(西洋書道)のティム・ガービンは美しい多様なフォントを創りだした。こうしてマッキントッシュで点がつながったが、設計図通りに点がつながった訳ではない。スティーブ・ジョブズは一人で夢を実現できるとは考えていない。彼が夢を求めてつないだ点は能力であり、能力がつながって光輝いた結果がマッキントッシュだと彼は言いたいのだろう。
 仏教には「一即一切・重々無尽」、一即はすべての時間、一切はすべての空間で、これが幾重にも重なり合って、畳み込まれて存在しているという教えがある。重々無尽の考え方は、この世の中の結果には、それぞれに数限りない因縁が関わりあっているというもので、人と人も関わりの中で輝くことができるが、スティーブ・ジョブズの夢が人と人の関わりを輝かせたと言えるのだろう。



  スティーブ・ジョブズ~伝説のスピーチの真実(前)

  スティーブ・ジョブズ~伝説のスピーチの真実(後)

2.愛と喪失
 マッキントッシュはマジですごいコンピューターだった。しかし、その先端の機能に人々はついて来なかった。売れなかったことからスティーブ・ジョブズの強引さにアップル社内の反発があり、「ジョブス自身がペプシから引き抜いてきた当時のCEOジョン・スカリーとの権力闘争に敗れ」て取締役会で追放された。自分の創業した会社を追われ、失意の中でシリコンバレーを去ることも考えた彼だが、愛する仕事が彼を前進させた。ジョージ・クロウを含めて5名がアップル社から参加し、大学をターゲットにした高性能ワークステーション「NeXT」を手掛けるためにコンピュータ会社を立ち上げた。これも売れなかったが、1996年12月にアップルのMacのOSとして採用され、スティーブ・ジョブズを会社に復帰させることになる。またテクノロジーとアートを組み合わせて、コンピュータによるCGで映画を作るという夢を実現するために、「ピクサー」の経営も始めた。そして1995年、初の長編コンピュータグラフィックス・アニメーション映画「 トイ・ストーリー 」が完成した。
 参考: スティーブ・ジョブス アップル社解任後の「どん底」から如何にして蘇ったか?




  スティーブ・ジョブズ~伝説のスピーチの真実(前)

3.死の覚悟
 2005年にスタンフォード大学の卒業式で講演をした時、彼は死を覚悟していた。2007年1月、iPhone を発表した際の冒頭で、「2年半この日が来るのを待った。」と言ったのはこの講演から2年半という意味ではなかろうか。彼は自分の愛する仕事に夢中で、「誰のものか分からない人生を生きているヒマなど無」かった。ガンに侵された彼は、死の4か月前に新製品を発表しているが、新製品の発表の度に燃え尽きるように痩せていった。
 「iPhone」はコンピューターを作る道具から使う道具に変えてしまった。コンピューターがないと一日も暮らせない時代になった。私などはBASICでプログラムを作らないとコンピューターが使えない時代にパソコンにハマッたので、EXCELさえも使うのが億劫で、インターネットも見よう見まねでやっと使っている。だが今の時代は使うのが当たり前で、指先を器用に素早く動かす訓練はしても、プログラムを作るという意味を知らない人が殆どではなかろうか。





  スティーブ・ジョブズ~伝説のスピーチの真実(後)

「Stay Hungry, Stay Foolish.(ハングリーでれ、愚かであれ)」
 ティーブ・ジョブズの伝説となったスピーチで残した言葉を、皆さんはどう受け取っていますか? 
 この言葉には禅の影響が見られ、宝鏡三昧 洞山良介禅師に、『愚の如く、魯ろの如く、よく相続するを主中の主と名づく』とあり、これは「愚か者のように、間抜けのように、ひたすら同じ事を続ける者こそ、最高の悟りを得るものである」と番組では説明されている。無私無欲で誰もみていないところで一生懸命やるという説明もある。『よく相続するを主中の主と名づく』は、コツコツと1つのことを続ける人が最も強いという意味で、一瞬一瞬の生を最大限に発揮せよという教え」を述べたものだという説明もある。ニュアンスの違いはあれ、無私無欲で一瞬一瞬の生を精一杯生きろということだろう。
 参考: スティーブ・ジョブズと禅




 写真の上から順に、コンピューター技術の右腕であったジョージ・クロウも、美しい多様なフォントを創りだしたティム・ガービンも、CG映画への夢を共有したアルビー・レイ・スミスも、それぞれが味わいのある意味で「Stay Hungry,Stay Foolish.」を解釈している。私の解釈はガービンに近い。「固定観念」はその人の世界を狭くする。立身出世を目指して付けた自信過剰の知識は、その人だけでなく、その人の周辺の人々まで「固定観念」を常識とさせる。無私無欲で、人を殺し、あらゆるものを破壊する軍事研究に人は夢中になれるだろうか。また、政治における自信過剰は利己的な支配欲を生む。
 
 他者を尊重する平和な社会を、我々はどう構築していけば良いのだろうか。情報伝達手段が著しく発達することは、全ての分散処理を可能にする。大都市に人口が集中することは、大停電サンデーモーニング”風をよむ”2016.10.16 録画)だけでなく大地震の被害も大きくする。人口の地方分散は重要な政治の課題であろう。
 政治はテクノロジーの進歩から取り残され、3代も続いて特権階級化して自信過剰となってしまった。その問題についてはここでは触れないが、利己的な政治支配に利益を求めて従う従来の「固定観念」を脱皮して、政治に参加することが我々に課せられた重要な責任だと思う。
 参考: スティーブ・ジョブス アップル社解任後の「どん底」から如何にして蘇ったか?
      未来を垣間見たカリスマ 〜 スティーブ・ジョブズ 第1部 ー 第10話


初稿 2016.10.17 更新 2016.10.20

大学と基礎研究より軍事を大切にする知性のない危ない政治家

2016-10-11 20:56:01 | 自然と人為

 2016年10月2日のブログで「危険な日本の政治と科学とメディアの動き」について警告したが、2016年10月9日のサンデーモーニング "風をよむ"のテーマも、「基礎研究の危機」(動画)であった。国立33大学で定年退職者の補充を凍結 (コピー)という報道も心配だ。国立大学法人の運営交付金は、2004年度から2015年度の10年間で1470億円減少しているから、1年に147億円の減少になるが、これは2017年の軍学研究助成概算要求の110億円 (コピー)に相当する。
 大学と基礎研究より軍事を大切にする政治家も知性不足で幼稚だが、それに毅然と反対しない学者やメディアが政治家に危ない道を堂々と歩ませて行く。反対すれば自分の身に禍が降りかかってくると政治家の言う通りに従っていれば、幼稚な政治家は自分に力があると錯覚し戦争の足音は益々大きくなる。
 参考: 軍学研究助成「100億円に」 自民提言 当初の30倍以上
      東京新聞 2016年5月18日 (コピー)
      論点 問われる「軍民両用」研究 毎日新聞2016年7月27日 (コピー)
      安全保障技術研究推進制度 - 防衛省・自衛隊
      安保技術研究推進制度(防衛装備庁)
      安全保障技術研究推進制度(競争的資金制度)
      安全保障技術研究推進制度 - 安全保障貿易情報センター


 戦争を体験した方々が亡くなっていく。今の雰囲気は戦争前夜の様だと心配していた反戦ジャーナリスト むのたけじさん(動画 羽鳥慎一モーニングショー)は、今年の夏(8月21日)、101歳で亡くなられた。今年の憲法記念日の集会まで、「戦争を殺せ!」と執念で檄を飛ばしておられたと言う。
 「相手を殺さなければ、こっちが殺される。(自分)が生きたければ、相手を殺さなきゃいかん。これが戦場の心理で、自分のバランスを保って、死なないように生きるように頑張ろうと。その感覚で続くのは3日くらいです。その次はどうなるか。悪いことだけれど、”なるようになりやがれ”本能ですね。本能に戻っちゃう。」

 戦争は絶対悪なのに軍備を充実させるということは、戦争の準備をすること。こんな知性のない安倍首相は、「子ども手当よりも軍事費を増やすべき」とか「核保有を検討すべき」 (コピー)と平気で発言する同類の志を持った稲田明美氏を”郵政選挙”の刺客として出馬要請し、今では防衛大臣にして次期総理総裁候補の一人に育てようとしている。彼女は防衛大臣として初めて戦没者追悼式を欠席しているが、自衛隊活動視察のためジプチに行ったことを理由にしている。靖国神社参拝の常連でもあるので、防衛大臣として参拝させないためのジプチ行きだと思うがTV解説者はこの点の明言を避けている。政治資金パーティーの白紙領収書のように、政治の世界では社会的に非常識なことが「法的に問題ない」とされるが、法的に問題がなくても「李下に冠を正さず」が政治の常識であるはずだ。これらの「稲田問題」(動画 8:36~9:10 [35:50~1:07:30])を羽鳥慎一モーニングショー(2016年10月10日)で取り上げている。

 本日のニュース、安倍首相「戦闘行為ではなく衝突」 ジュバの大規模戦闘 (朝日新聞デジタル 10月11日) (コピー)で、民進党の大野議員の質問(動画)に安倍首相は、「武器をつかって殺傷、あるいはモノを破壊する行為はあった。大野さんの解釈として『戦闘』で捉えられるだろうと思うが、我々はいわば勢力と勢力がぶつかったという表現を使っている」と説明した。自衛隊「駆け付け警護」の任務拡大が想定されている南スーダンの首都ジュバ、戦闘は終わったけれど・・(2016年7月20日)の戦闘を否定し「勢力と勢力の衝突」と説明するなら、「戦争」さえも「衝突」と説明するだろう。その安倍首相の命令で、自衛隊は「殺人と破壊」が行われている「戦争」を覚悟して任地に行かねばならない。こうして国民は「戦争」に組み込まれていく。ここでも社会の常識とは違う政治家の認識によって、国民が犠牲になっていく。

 人間誰しも「ゴミと呼べる人間はいない」(動画)。戦争で腕や足を失った人でも、リハビリや義手や義足により仕事を持てるようになると、人間としての「尊厳」と自信を取り戻すと言う。安倍首相はこのような人間としての「尊厳」を理解しているのか? 何故、戦争を準備し、健康な人間の命や機能を失わせるようなことを国民の税金で研究し、自衛隊を紛争の場に派遣するのだ!
 軍事を大切にする知性のない政治家が、この国を強い国にしたくて危ない国にしようとしている。政治家を選ぶのは国民だ! 国民よ! 戦争を絶対しない、させない政治家を選ぼう!
 参考: 歴史の教訓は厳然~国民は戦争反対、戦争させない

初稿 2016.10.11 更新 2016.10.12

他者とつながる自然と科学と器(歌、小説、映画)

2016-10-09 12:41:00 | 自然と人為

 我々は自然の一員であり、自然から命を頂いているので、自然にとって良い話は理屈なしに他者と認め合うことが出来る。しかし、「脱原発」のように自然にとって良いことでも、利益が伴う話では意見が割れることもある。それは、人工的な世界に生きるほど、お金が我々の価値観に大きく影響してくるからだろう。一方、人工的な世界をつくったり、顕微鏡や望遠鏡のように人工的につくった道具で自然を観察する科学では、価値観で判断することは禁止される。科学の世界でその成果をもっとも高く評価されたと世間で認識されるのはノーベル賞であるが、科学は要素還元主義により発達して来たので、要素を組み合わせるハイブリッド車は受賞の対象にはなるまい。

 要素を見つけ、要素の関係を説明することは大変な論理的作業を必要とするが、すでにある要素から新しい関係をつくることも、固定観念から抜け出る大変な論理的作業を必要とする。しかし、現場の研究であるハイブリッド車は誰にでも見える要素の組み合わせなので、犬馬難鬼魅易、人々はこれを現場の実用化の研究として科学賞の対象にはしないだろう。だが、現場の研究もノーベル賞に相当する基礎研究と同様の固定観念を脱皮した論理的作業が必要である。今年のノーベル賞受章者の大隅良典先生も、「競争ではなく、人がやらないことをやることが科学の本質」(動画)と仰っているが、現場の研究で実用化に至る論理的作業は「科学の本質」と同じだと思うが、現場の研究の成果が社会で認められるまでは、むしろ社会から疎んじられる場合もあることを指摘しておきたい。このブログ(2016年9月17日)、「コストダウンとコストゼロの違い~固定観念が生きる世界を狭くする」で指摘したように、農業の分野でも固定観念を打破すればやることが一杯残されている。それなのに利益の価値観を伴った固定観念による政策や研究が選択的規模拡大を進め、今でも輸出できる農業を目指して地方を創生すると言いながら、農業と地方を破壊し続けている。
 現場の研究には、自然界の汚染防止、省エネや資源に依存した生産システムの構築等を目指し、実用化が必ずしも利益追及型の固定観念による研究ではない場合も多い。実用化の場合は、その研究が何を目指しているか、自然と命を守るためなのか破壊するためなのか、が問われなくてはなるまい。

 一方、科学とは対極にあり、価値観を創造し主張すると思われる分野において、理解しあえない他者との関係で、歌や小説や映画づくりを語り合っているNHK番組「Switchインタビュー 達人達 水野良樹×西川美和」(動画)は、若い人の心の新鮮さを知ることができ、皆様にもお知らせしたいと思って探したら、有り難いことにYoutubeに登録されていた。この対談のきっかけになった水野良樹さんの「長いメールと(西川美和さんの)閻魔帳」も紹介しておく。ついでに言っておくと西川美和さんは広島県出身で大のカープファンで可愛らしいところが好い。恥ずかしながら私はこの番組でお二人のことを知った。「いきものがかり」の意味も知らず、単なる「ひらかなのつながり」程度で意味には興味を持っていなかったが、リーダーの水野良樹さんの小学校時代の金魚にエサをやる「生き物係」に由来しているそうだ。

 まず、西川美和さんが執筆の際に逗留する茅ヶ崎館で対談が行われた。部屋は布団が敷きっぱなしの万年床で、撮影があるのに布団を片付けていないところが正直だ。しかも、仕事の合間に疲れたら15分程度休むと言う。私なら30分や1時間は布団の中でぐずぐずするだろう。仕事に凛として向かい、映画をつくる際には家系図まで想定するなど、隅々まで配慮が行き届き几帳面でもある。映画は1時間半から2時間程度に物語を収めねばならないが、映画に使わなかった材料を小説にしていると言う。
 「他者と結びつく映画と自分だけでやれる小説と、(何故、)どちらもやられているのかな」と問う水野良樹さんに対して、「他の人を入れてやるということは、(自分がイメージしたものとはずれがあるし、)はっきり言って、妥協と落胆の連続ですよ。だけど、それを崩壊ととるか変化と受け取るか、そこだと思う。自分が完璧に支配してつくりあげたOKの箇所よりも、いろんな偶然が重なったり、場所とか天候とか俳優が出してくれた自分の思いつかなかったシーンの方が、あとあとは好きなんですよね。」
 自分の思いだけでつくる小説よりも、他者との共同作業の映画の方が、後になって愛おしいという西川美和さんの監督した映画は是非観たいと思った。歩行が困難で映画館に多くの人を誘っていけないが、映画「セバスチャン・サルガド / 地球へのラブレター」 (2)のように、尾道の映画館での上映運動に取り組む元気が出てきた。

 「わかりあえない他者とつながるために大衆歌を書いている」と言う水野良樹さんは、「その人が日常使う器のように、歌が日常生活の何気ない瞬間にスッと入って行ったりするとき、曲が届いているという実感がある。共感する歌というのは広く届かないといけない。歌の言葉を自分の言葉だと思ってくれたときが、いちばん届くような気がしている。結婚式のとき『ありがとう』が良く流れるのですが、親子関係なんて、いろいろあって反抗期もあったり、その複雑なものを経た上でのありがとうで、その瞬間はその人たちだけの共通理解の「ありがとう」で、そこに曲がポッとあって、器として大事な気持ちをそこに入れたとき、歌が届いているな、誰かの生活に届いているなと思う。「上を向いて歩こう」という歌が、上を向いて歩くことが前向きだと受け取られているように。」
 私のブログは読む人が少ないので水野良樹さんの器の様にはなりえないが、固定観念でもなく、他者とわかり合えない自己主張でもなく、自然と他者を言葉で紡いだ器のようなブログという発想はいただきたいと思った。

 参考: ゴロウ・デラックス 2016年9月22日 西川美和
      いきものがかり・水野良樹単独インタビュー 
      2016年1月3日 いきものがかりの水野良樹ラジオ~もうすぐ10周年
      おかしいことをおかしい、と言う心は ?
      映画が映し出すメディアの変質(マル激トーク・オン・ディマンド 2016年10月1日)


初稿 2016.10.9