自然とデザイン

自然と人との関係なくして生命なく、人と人との関係なくして幸福もない。この自然と人為の関係をデザインとして考えたい。

「アベノミクス」の嘘と非知性的で不誠実な政治

2016-06-21 22:44:22 | 自然と人為

 ビジネスの世界を選んだのなら、ビジネスに専念してもらいたい。政治の世界を選んだのなら、誠実に民のために働いて欲しい。
 「経世済民」の経済なら政治と経済は重なるけれど、グローバル化した経済と政治が繋がり、大企業のための政治しか知らない政治家を家業として育った超利己主義の安倍首相は、「新しい判断」で「アベノミクスのエンジン」をさらにふかす」と「アベノミクス」は「格差拡大」政策にも係らず、トリクルダウンのおこぼれがそのうち滴のように民にも落ちてくると平気で嘘を言う。ひょっとしたら内閣も公明党も、「アベノミクス」が「格差拡大」政策であることを理解していないのかも知れない。

 「スティグリッツ氏の消費増税反対発言」はNHKを含めてメディアが大きく取り上げたが、これは政府がメディアを操作して、多分、消費税増税について質問して答えた部分だけを放送した「政府とメディアの茶番劇」であることが明らかにされている。スティグリッツ教授は日本の消費税について発言したのではなく世界経済について答えたもので、その会議の講演内容には消費税のことは触れていない。
 参考: スティグリッツ教授は消費増税の延期など提案していなかった(動画)

 スティグリッツ氏はトリクルダウンのことを「貧困層から富裕層へと富みは吸い上げられ、富裕層は貧困層に比べお金を使わない。これが全体の需要を押し下げ成長にブレーキをかケている。」 欲望の資本主義~ルールが変わる時(1) (4分52秒~5分5秒) と指摘している。「アベノミクス」こそ日本経済を停滞させているのだ。
 「スティグリッツ教授は消費税問題には触れず、『(アベノミクスの間違いを認めて)アベノミクスを停止し、経済政策を180度転換することによって、次のG7サミットで主導権を取るべきである』と安倍首相と官邸の側近たちに強く進言したのです。」 ブログ「伊勢志摩サミットが、一足飛びに安倍政権に晩秋をもたらす」より引用

 安倍首相はスティグリッツ教授の進言に従うことはなく、サミットの場をアベノミクス正当化の場に利用した。主要国のメディアは揃って、これを批判したが、「奇妙なのは日本のメディアで、この大失態を理由に安倍に退陣を迫る論調は湧き起こることはなかった。」

 ここで、G7サミット後の世耕弘成 官房副長官 記者会見(動画 49秒~1分49秒)【2016年5月31日】で、「野党側の内閣不信任の理由は、アベノミクスの失敗、格差拡大などを掲げているが、有効求人倍率が1.34倍、就業者数は安倍政権発足以降110万人近く増加、企業収益は昨年度過去最高でアベノミクスは失敗していない。野党側の不信任の理由は当たらない。」としていることを検証して見よう。

 2015年のG7経済成長率は0.457%でG7の最下位と停滞しており、有効求人倍率が高いのも、少子高齢化を原因とした人手不足を示している。雇用者数総計が106万人増加しているが、正規雇用者は32万人減少し、非正規雇用者が137万人増加している。企業収益は高くても、賃上げや設備投資へのトリクルダウンは見られず、景気の回復の兆しは見えていない。しかも、格差拡大の批判につては無視している。どうも「スティグリッツ氏の消費増税反対発言」放送も、G7サミットでの「リーマンショックの資料作成」も、今回の「アベノミクスの成功理由」も、官僚が作成したのではなく官邸の世耕ー電通ラインで仕組んだのではないかと思われるぐらい、大衆には分かり易いが非知性的でお粗末である。
 参考: 有効求人倍率は雇用の実態を反映していない ~安倍首相の自画自賛(その1)
  就業者数が100万人増えたというけれど ~安倍首相の自画自賛(その2)
  日本企業「最高益」の裏側、四半世紀伸びない売上高
  特集:景気回復のウソ エコノミスト 2015年11月17日号 企業収益 昨年度過去最高


 安倍政権は平成26年11月21日、消費増税延期・衆議院解散(アベノミクス解散)をした。そして今度は”新しい判断”で消費増税再延期動画 サンデーモーニング 2016.6.5)について参院選で国民の信を問うと言う。この安倍首相の「不誠実な幼児的凶暴性」動画「時事放談」2016.6.12)、舛添都知事の「不適切だが違法性はない」、東京電力の「炉心溶融と言わなかったのは官邸の指示」等の問題は、戦後政治が権力とメディアや法曹界が癒着して支配者と組織がともに公私混同し、倫理が麻痺してしまっていることを示している。

 政治を私物化しているのは舛添だけではない。戦後70年近くもこの国を支配してきた「自民党」に関係する議員は政治献金する業界と癒着し、単なる「政治とカネ」、(動画 サンデーモーニング 2016.6.5)の問題だけでなく、権力はメディアや法曹界とも癒着している。東京地検特捜部の元検事の弁護士が舛添に「不適切だが違法性がない」と第3者として弁護したのも、同じ弁護士が第3者委員会として東京電力が「炉心溶融と言わなかったのは官邸の指示」(2)と弁護したのも、そしてこのことを大きく報道して問題の本質を曖昧にしているのも、権力とメディアや法曹界の癒着の例と思う。

 今ではメディアも国会議員も当然のことのように「衆議院の解散権」を「首相の専権事項」としているが、これはGHQの支配下にあった吉田内閣において最初から意図的に「天皇の国事行為」を利用して実施されたものであり、反共の砦として日本を利用するためにGHQが戦争責任者の公職追放を解除したことで憲法に馴染まない政治家が増えたことも関係していると思われるが、吉田内閣が憲法7条を利用した抜き打ち解散が悪しき「首相の解散専権事項」の習慣となっている。吉田内閣が憲法第69条を形式的に使用した「馴れ合い解散」で衆議院を解散して以来、日本の政治は最初から憲法に書かれた趣旨からではなく、都合の良い解釈で憲法の運用を始めているのである。

 自民党から民主党に政権が移った時、人々は政治が変わると期待したが、長い自民党政権で出来上がった司法、立法、行政における組織と人間関係で根付いた政治が裏で現実を動かしていた。民主党政権下で東日本大震災の原発事故に見舞われたが、それを実質的に裏で対応していたのも、この癒着した古い人脈であったと思われる。東日本震災時、史上最悪の野党だった自民党という情報もあり、今になっての「東日本震災対応 民主政権を批判…自民が報告書(毎日新聞)」も参院選を前にしての情報戦、一種のプロパガンダであろう。同じ民主党政権下で発生した口蹄疫事件(2)に際しても、私はそのことを目撃した。

 現実の政治に近づけば近づくほど、制度は仮の棲家で組織と人間関係の癒着が裏で政治を動かしている。安倍首相はその古巣に帰った快適さを、さらに強固なものにしようと強引な幼児的凶暴性で謙虚さと誠実さを見失ってしまっている。「さあ、舛添の次は『安倍晋三』を国民主権の選挙で吊るし上げる番だ! 」、参院選に当たって「アベノミクスや舛添・甘利問題に誤魔化されるな国民」動画 サンデーモーニング 2016.6.12)。サンデーモーニング "風をよむ"は6月に入り参院選をテーマに次の通り放送されている。
 この国の分かれ道”参院選”2016/6/5
 参院選の”争点”2016/6/12
 7月10日 参院選投票日2016/6/19
 6月19日は何故かNHKの常連の岡本行夫氏が出演し、「日本だけは1回も変えていない世界最古の成文憲法」と発言している。「憲法のどこが問題でどう改正すべきかを言わない」ことが「不誠実な安倍首相」の問題なのに、「憲法は変えるべきで変えないことが問題」だと言う岡本氏も不誠実な人だと思った。「報道ステーション」は大丈夫なのか? 4月24日の岡本行夫氏出演めぐる意味というブログもあるが、「サンデーモーニング」も危なくなっているのかと心配にもなった。原発の問題については、「小出裕章参考人の全身全霊をかけた凄まじい原発批判」,(同文字おこし)がある。これこそ仕事や人生に誠実に生きる人の姿であろう。

 参考: 山本太郎氏 舛添知事騒動に陰謀説 政権与党がスピンコントロール
 【正論】山本太郎議員「舛添さんがこれだけ叩かれてるのに、どうして甘利さんは出てくるんですか?
 3.12に「炉心溶融」隠蔽したNHKの重大問題
 東電「第3者委」も依頼者の言い分で報告書 再び登場した「舛添の弁護士」
 安倍首相の独裁願望と衆院予算委員会会議録改竄
 原発メルトダウン 危機の88時間
 「炉心溶融ということば使うな」 当時の社長が指示 NHK 6月16日 18時21分


初稿 2016.6.21

政治家と企業家と個人~プーチン大統領から学ぶ

2016-06-16 18:15:36 | 自然と人為

 世に知られた政治家のことも企業家のことも、私たちは映像を通してしか知らない。また、政治家や企業家として有名になった人も、生まれた時には政治のことも、経済のことも何も知らない。何かの縁でそれぞれの道に入ったときに、人々は何を感じ何を考えているのだろう。
 官僚の道を歩んでいて、エリツイン大統領の指名で政治の道を歩むことになったプーチン大統領が、個人として政治家としてどう生きてきたのかを教えてくれる映像がある。我々はその人を知る前にその人のことを勝手に想像することが多いが、この映像は政治家と企業家と個人の関係を教えてくれる。個人が政治と経済の様々な関係の中で、何を大切にし何をしようとしたかを、政治や経済を知らない私にも教えてくれる。

 「柔道は武器を持たない格闘技である。この『ジュードー』という言葉は『柔らかい道』と訳すことができ、この武術における哲学的な意味が込められている。柔道は単に技術的な鍛錬だけを目指すものではなく、モラル的な精神性をも高めるものである。私は子供の頃に柔道と出会い、素晴らしき勇気、誠意、高潔を学んだ。柔道を学ぶ価値は、単に技術的な強さを得られることではなく、人間性をも高めることができることだ。」 これは柔道を愛するプーチン(動画)の言葉である。

 2000年(平成12年)7月21日から23日まで沖縄で開催されたG8に大統領に選出されたばかりのプーチンが出席した。沖縄を開催地にしたのは小渕首相であったが、開催前倒れて議長国として出席したのは森首相であった。会議終了翌日に、プーチン大統領は中学生と柔道(動画)をした。プーチン大統領のスポーツに対する理解と熱意と他者への尊敬と誠実さは、熱中症が心配される真夏の日本でお金で汚れたオリンピックを開催しようと準備を進めている「神の国」の元森首相より、はるかに立派だと思う。私はオリンピックは返上すべきであり、実施する場合は秋の開催に変更すべきだと考えている。
参考: プーチン大統領、宙に舞う/志喜屋君が一本背負い/具志川で柔道交流
     プーチンと柔道
     プーチン大統領の柔道の師匠の葬儀に参列、思い出の道をひとり孤独に歩く


 「プーチンの野望 」第1回 新大統領 誕生 | BS世界のドキュメンタリー は、プーチンが大統領になって最初の仕事をした当時の様子を映像で伝えてくれる。なぜ、「プーチンの野望」なのか? 「ロシアを欧米諸国の“価値ある協力国”から、“信用できない敵”へと変えた」原因は何なのか? 政治家や公務員は税金で仕事をし、生活をしているので、東京都知事や日本の政治家のように金銭的な公私混同をするのは論外であり、公のために誠実に仕事をすることが第一に求められる。公の権限を巡って対立も生まれるだろうが、ここでは政治と経済の関係について、政治家としての初期のプーチンの対応から学んで見たい。


プーチンの野望 第1回 新大統領 誕生(動画)
広告~4分30分 チェチェン紛争~プーチン大統領「テロとの戦い」
  ~ 7分16秒 プーチン大統領初仕事~ロシア新興財閥との闘い
  ~ 9分56秒 ロシア財政の改革~新興財閥との円卓会議
  ~15分50秒 アメリカ・ブッシュ政権との関係 
  ~17分50秒 土地法改正と財政の健全化

「第1回は、プーチンが大統領就任直後に取り組んだ税制改革や土地の自由化、そしてチェチェン紛争を振り返る。さらに、2001年6月、ブッシュ大統領が「プーチンの魂に触れた」と述べた初会談。当時 大統領補佐官だったコンドリーザ・ライスが、そこでパキスタンとアフガニスタン、タリバンについて述べたプーチンの予言的な警告を語る。その3か月後、アメリカで同時多発テロが起きた。」 NHK解説より

 プーチンは映画や小説からスパイに憧れを抱き、柔道を熱心に練習し、ソ連国家保安委員会(KGB)に就職した。その後、母校のレニングラード大学に学長補佐官として勤務することになり、レニングラード市ソビエト議長だった大学時代の恩師アナトリー・サプチャークと懇意となり、そ仕事を手伝うために1990年、KGBに辞表を提出し、サプチャークの国際関係担当顧問となった。

 1991年6月にサプチャークがレニングラード(同年11月にサンクトペテルブルクに名称を変更)市長に当選すると、対外関係委員会議長に就任する。この時期、「ゴルバチョフのペレストロイカ路線に反発する保守派は1991年8月にクーデターを起こしたが失敗した。この時、鎮圧に当たったロシア共和国大統領ボリス・エリツィンの影響力が拡大し、保守派に監禁されたゴルバチョフは政治的影響力を失った。11月、エリツィンは共産党解散を指示する大統領令を発令。12月、党は正式に解党してその歴史に幕を引いた。」 「ソビエト連邦共産党」より引用。

 1996年にサプチャークがサンクトペテルブルク市長選挙でウラジーミル・ヤコブレフに敗れて退陣すると、プーチンはそれに伴い第一副市長を辞職する。その後、ロシア大統領府総務局次長としてモスクワに異動した。1998年5月にはロシア大統領府第一副長官に就任し、同年7月にはKGBの後身であるロシア連邦保安庁の長官に就任。この時、エリツィン大統領(当時)追い落としクーデターを未然に防いだ功績により、エリツィンの信頼を得るようになり、エリツィンによって1999年8月9日に第一副首相に任命された。(同日セルゲイ・ステパーシンが首相を解任されたためそのまま首相代行に任命)。この時、エリツィンはプーチンを自身の後継者とすることを表明していた。

 こうしてプーチンは官僚の道から政治の路を歩むようになる。2000年3月26日に大統領に選出されると、初期の仕事で、エリツィンの負の遺産であるロシアの新興財閥の利権に対して、国益を優先する毅然とした抑制策をとった。このロシア財政の改革~新興財閥との円卓会議(7分16秒~ 9分56秒)は、次のように印象の残る場面である。
ロシア財政の改革~新興財閥との円卓会議(動画)
プーチン「以前から計画していた円卓会議に出席していただき感謝します。時々このように顔を合わせるのはいいことだと思います。」
ゲルマン・グレフ ロシア経済発展相の解説「長年、こういう新興財閥が政治を思いのままに支配していました。大統領は彼らに言いました。ビジネスの世界を選んだのなら、ビジネスに専念してもらいたい、と。」
プーチン「あなたたち全員がこの政府を作ったのです。あなたたちは政治プロセスを支配してきた。もし不満があるのなら、それは”身からでた錆”です。」
ゲルマン・グレフ ロシア経済発展相の解説「プーチン大統領は、彼らの事業を国有化するつもりもないし、財産を没収するつもりもないと強調しました。そしてこう続けました。我々は妥協する用意がある。減税を行うから、あなたたちも支払うべきものを支払って欲しい、とね。」
ニコス社長・ホドルコフスキー「あの会議のおかげで、国が我々に何を求めているのか分かりました。それに応えるように行動すればいいのです。やっとゲームのルールが理解できました。」
 プーチンは政治と経済の明確な役割分担を実現させて、国の財政を健全化させ「前進しているという希望を国民に与えることができた」と私も思う。政治家は国民のために誠実に働き、企業家は「経世済民」のために政治に口を挟まないで誠実に働く。この原則から日本の政治、経済は遠く離れたところにいる。この場面を多くの方に知って欲しいため、少し時間がかかったがここにまとめておいた。

 次に、チェチェン紛争とは何か? という独立の問題は、独立したいと思う人々の心を考えると複雑だ。しかし、独立は他者の廃除の裏面もあり、独立の側の論理と統一側の論理の対立がある。アメリカのトランプ旋風やEUにおける難民廃除に見られるように、他者に排他的になるのは危険の前兆だ。もう一つ、英国のEUからの離脱を巡る問題もある。EUは一つであることに意味がある。世界が他者を尊重しながら平和に生きていく具体的な方法はないものか。

 「ロシアを欧米諸国の“価値ある協力国”から、“信用できない敵”へと変えた」原因の一つにアメリカ・ブッシュ大統領の出現があると、私は思う。一般に我々が知る情報はアメリカからのもので、ロシアの考え方を知る機会がほとんどない。ブッシュ大統領はABM(弾道弾迎撃ミサイル制限)条約を一方的に破棄したが、プーチンは軍縮や核不拡散の取り組みを台無しにする動きだと警告した。ここではこれ以上は触れないが、「アメリカが悪化させた対ロシア関係、プーチン氏の「過剰反応」要因に」は当然考えられると思う。
 欧米諸国に対し柔軟な姿勢を見せていたプーチンと欧米が平和的な関係を構築できないでいることは不幸なことだ。それは政治と経済を明瞭に区分していたプーチンと政治と経済の区分が不明瞭な欧米の関係に始まり、やがてプーチンが国内で力をつけることで、プーチン自身も政治と経済の区分が不明瞭になっていったことも考えられる。政治に景気の回復を求めるのが当然となっているように、政治と経済が癒着してゆくことに誰も疑問を持たなくなるのは、日本だけではないのかも知れない。

初稿 2016.6.16 更新 2016.6.17(動画追加、ブロックされているかも?)

せこい!舛添、世耕そして安倍首相とアベノミクス

2016-06-04 16:46:14 | 自然と人為

 政治家は税金で仕事と生活をしているので、国民に対する責任と義務がある。利己的な言動は許されず、利他的に仕事をすることは当然のことだ。しかし、舛添都知事や安倍首相をはじめ内閣の言動は、「権力を持つことは責任と義務から自由になること」を示しているようだ。
 戦後の政治には国民を思う政治家が育たず、利己的で不誠実な政治屋が権力を持つ時代になってしまった。どうすれば政治の暴走を止められるのだろう。日本の政治に「他者への愛」「論理的思考」と「誠実な言葉」が育つことを切望している。
参考: 舛添問題、消費増税先送(動画)
     舛添都知事ら大物政治家ほど「せこい」事件を起こす理由(上)(下)
     安倍晋三の生い立ちから見るその本質
     大学恩師・安倍の無知と恥を叱る!~歴史を知らず、姑息な政治手法に怒る


 都知事として権力を握った「せこい」舛添都知事は、豪華外遊や公私混同の権化のように批判されているが、国の権力を握った「せこい」安倍首相の暴走はそれ以上にひどい。国のお金の使い方も、安倍首相外遊88億円(コピー)、600億円のG7伊勢志摩サミットの費用伊勢志摩サミットのメディアセンター(約29億円)【サミット後取り壊し】(2)等で、国費の無駄使いが荒すぎる。G7費用についてはブログ「G7伊勢志摩サミットの費用/効果」、「日本国民よ、これでも政府とマスコミを信じるつもりか?」でも批判されている。

 国費の無駄遣いだけではない。G7の議長国としての立場を利用し、政教分離に違反する伊勢神宮参拝を伊勢志摩に会場を設定することで強引に行わせ、重要課題を「世界経済」に設定して「アベノミクス」宣伝の場として利用した。また、法律で決めた「消費税増税」の延長を「衆議院解散」を匂わせながらG7まで利用して実施した。国際会議の私物化はG7の名誉を傷つけるだけでなく、「消費税増税」の再延長は日本の立法府の権限を無視しており、法治国家ではなく首相独裁国家を平気で始めている。しかも、そのシナリオはサミットの根回しをする外務省も知らないところで、首相の傍にいつもいてメディアを支配する「電通」とつながった世耕官房副長官が描いたことが露見した。
参考: G7「リーマン危機前に似ている」は世耕弘成の姦計だった
     安倍首相の「リーマン前に似ている」,世耕官房副長官 記者会見(動画)
     【言い訳】世耕弘成議員が安倍首相のリーマン前を完全否定!世耕氏が原因?
     【アベ官邸】世界の恥さらし サミット文書の奇奇怪怪


 (伊勢志摩サミット閉会記者会見(2016年5月27日):「世界経済とアベノミクス」(動画)で、安倍首相はG7サミット議長国として次の通り記者会見をしている。
 「今日の平和と繁栄を私たちの子や孫の世代へとしっかりと引き渡していく。」(動画:2分22秒~2分33秒)
 「新興国経済がこの1年ほどで急速に減速している。・・・商品価格が1年余りで5割以上下落しました。これはリーマンショック時の下落幅に匹敵し」と「リーマンショック」を多用(6回)」(動画:4分20秒~7分25秒)
 「G7で協調して、金融政策、財政政策そして構造政策の3本の矢を放っていく。そのことを合意しました。アベノミクスを世界に展開して参ります。」 (動画:9分~9分20秒)
 「日本も議長国としてG7合意に従い、世界経済が危機に陥るリスクに立ち向かうため、あらゆる政策を総動員して、アベノミクスのエンジンをもう一度最大限吹かしていく決意であります。日本として何をなすべきか、消費税率引き上げの是非も含めて検討し、夏の参議院選挙前に明らかにしていきたいと思っています。」 (動画:10分27秒~11分15秒)
と議長国としての挨拶をしている。

 安倍首相は「今日の平和と繁栄を私たちの子や孫の世代へとしっかりと引き渡していく。」と言うが、集団的自衛権で戦争への危険性を高め、「アベノミクス」で格差を拡大させ、財政出動で巨大な赤字を「後代にしっかりh引き渡していく」ということではないか。

 ものの見方、考え方はどこに視点、力点を置くかで180度違ってくる。集団的自衛権も核の傘も仮想敵国を想定するから正当化される。しかし、仮想敵国を想定することは、その相手国を不安に陥れて、その国も抑止力を強化しようとさせる。軍拡競争のイタチゴッコだ。戦争は国民が始めるものではなく、国の支配者が始めるものだ。国の支配者の裏には戦争で儲かる軍需産業があることを忘れてはいけない。憲法9条は戦争を放棄している。これに個別的自衛権を認めること自体が戦争への第一歩であることは、世界大戦で経験している。
 何度でも言いたい。「自衛隊の任務を世界の国民の命を守る災害緊急援助隊に特化することで、独立国に対する固定観念を打破すれば良い。そうすれば自衛隊も世界に誇れる仕事ができ、財政政策の健全化にも役立つ。我々も次の世代も未来を目指して生きているのだから。」
参考:安倍首相が「G7はアベノミクスの3本の矢をもう一度世界レベルで展開させることだ」
    伊勢志摩サミットが、一足飛びに安倍政権に晩秋をもたらす    
    空虚なドタバタ騒ぎは終わった。
    4年目のアベノミクス 厳しい論調に転じた海外メデイア
    アベノミクス、安倍首相の自己評価は「67点」–竹中平蔵氏が点数の内訳を分析
    日本人には意外!? 海外はアベノミクスをどう評価しているか
    英「エコノミスト」のアベノミクス評は激辛だ
    国家の品格貶めるアベノミクス詐欺の横行
    無恥・無知の首相<本澤二郎の「日本の風景」(2371)
    G7異聞<本澤二郎の「日本の風景」(2375)
    嘘と隠ぺいの社会<本澤二郎の「日本の風景」(2376)
    「安倍晋三首相が誇る数字に疑問」〜アベノミクスは民主党政権に完敗
    「なぜ大新聞とテレビは『電通』の名を報じないのか」(「週刊ポスト」)
    世界の首脳を内政茶番につき合わせた “浅ましき安倍晋三”
    サミットで恥をかく安倍晋三、オバマの真似をする!
    破綻アベノミクス強弁する安倍首相の反知性主義
    <伊勢志摩サミット>「リーマン級」に批判相次ぐ
    「リーマンショック前に似る」安倍首相、G7では違和感
     「安倍首相の言葉は日本の選挙民向けのものなのだろう」
    「リーマンショック前と似ている」 安倍首相の見解に批判の声も
    自民は追い込まれている…本紙が掴んだ「W選断念」の理由


初稿 2016.6.5

人々が希望を持って生きることに、科学と経済学はいかに貢献できるか

2016-06-01 18:14:24 | 自然と人為

 敗戦を境に価値観が大きく変わった日本、高木仁三郎さんはより確かなものを求め、科学者を目指すようになりました。人間の顔を持った科学を求めて闘った62年の生涯でした。
人々が希望を持って生きることに、科学はいかに貢献できるか
そのことを抜きに、人間の顔を持った科学を語ることはできない。


高木仁三郎(NHK あの人に会いたい)

「(原子力を)我々の制御するようなもににして、平和目的とか、民事(民政)目的に使えたらどれだけ世の中が発展するだろうと、ちょうどアイゼンハワーの平和のための原子力「アトムズ・フォー・ピース」という演説がその頃ですから、時代的思想としては、その中に私自身もはいっていたということはあると思います。」

当時、夢のエネルギーと言われていた原子力、その開発の最前線「日本原子力事業」に入社 し、放射性物資の研究に携わりました。

「小さな原子炉ですけど縁まで行って、バケツで直接原子炉の炉水をくんできて計るわけです。考えてみれば、かなり乱暴な話で原子炉の上に行って、自分で こうやって水をくんでいて落ちたらどうなんだというようなことが、放射能を怖がっているみたいな人間はバカみたいに思えてくるんです。典型的な専門家になって行く。」

「計ってみると、炉水の中に放射能が、いろんな放射能が非常に多いんです。『なんでこんなに出てくるのかな』というふうにそれをレポートにまとめて原子力関係の学会で発表するという機会がいろいろあるんですけどそれをわりと積極的に推し進めようとすると、妙にやっぱり会社の中で嫌がられる。会社はこれからアメリカの原子炉を導入して、日本で商売を始めようという会社ですから、汚染なんていう方向のことが、いろいろ会社の中で見えてきては困ると。」


 「これは実際に原発が生み出す放射能の環境で働いている労働者たちの被ばくの状況なんですけど、発電所の社員の被ばくはたったのこれだけで、95パーセントは下請け、孫請け ひ孫請け、そういう悲惨な現実、被ばくの押し付け、そういう下に原発は運転されている。」

専門分野に閉じこもらず、現代社会に向き合う科学者を目指しました。

「40年ぐらい科学者をやってきて、今どう思うかというと確かに知識は増えたんです。しかしそれと同時に、そのまわりに未知の世界それもどうやら真っ白な未知の世界でなくて、暗黒を含めたような未知の世界が、もっと大きな未知の世界が広がっている。ということも同時に分かってきたんです。高木学校というものをやりたいというのはこっち側をやる。ちゃんとやる人たちを、つくりたいんです。そうでないと本当に人類の未来は奪われてしまうんじゃないか。」

人々が希望を持って生きることに、経済学はいかに貢献できるか
そのことを抜きに、人間の顔を持った経済学を語ることはできない。

「現実は経済学者にとって『ある特殊なケース』にすぎない」とした宇沢弘文も人間の顔を持った偉大な学者であった。しかし人類にとって偉大な学者が、その時代を支配する人々には尊敬されないことが多い。
 現場で起こっていることよりも経済学の理論を重視した専門家は、「富裕層中心に富を得て、それが次第に低所得者層にも拡がっていく」という「トリクルダウン」を基本にした「アベノミクス」という政策を支持している。これは明らかな格差拡大政策であるが、このことを政府の御用学者が明言したNHKの番組「グローバルディベートWISDOM」(2014年1月25日)があることは、地方をどう創生するのか~アベノミクスと日本経済の未来①で紹介した。

 これまで規模拡大によるコストダウンは農業を衰退させてきた。さらに、これに国際競争力のある農業の産業化で「地方創生」を目指すのであろうが、農業は産業ではなく生活である。日本の地方は資源に恵まれているが、政府の考え方と高齢化と少子化により里山を荒らしている。農業は「コストゼロ」を目標とし、生産(農協)と消費(生協)を地域でつないで、「地方再生」を目指すべきだと考える。




アベノミクスと賃金

司会A「まずはダボス会議に出席している浜田さんに伺いたい。安倍首相はダボス会議で日本経済の復活をアピールしたわけですが、海外の受け止めはどうですか?」

浜田1「私も会場にいましたが、皆の言うことでは大変に力のこもった講演であった。特に第3の矢、構造改革に対して日本政府の決意がちゃんとあるんだよということを示されたということで、海外のメディアからも非常に高い評価を得られていると思います。ついその総理の施政方針演説等では、お役所の人の書いた文書というか非常に固苦しい形の講演が多いんですが、この場合は聴衆の心に迫る講演であったということです。」 アベノミクスと賃金 動画(1分3秒~2分5秒)

司会B「ちなみに浜田さんはこれまでのアベノミクスの成果をどう見ていらっしゃいますか。」

浜田2「これは半ば冗談でもありますが、金融政策は当然効くことである訳ですが、それが思った以上に効いている。そういう意味でA+であろう。財政政策は財政を使うということは財政長期収支にマイナスにも効くから、まあ、AではなくてB。そして問題は第3の矢になりますけれども、これは政府のできることは今限られていて、一番なすべきことは規制改革である。しかし、規制があるので喜んでいるのはどちらかと言えば官僚である。そういうお役人に自分が利益を得ているようなことを止めさせることは、侍に鎧を脱げと言うことでなかなか厳しいということで私はEとつける。そうするとA,B,Eとなってアベノミクスがまた戻ってくるというのが私の評価です。」 アベノミクスと賃金 動画(2分48秒~4分05秒)



司会A「(藻谷さんの考えは、賃上げは大切だが、現場はそうはなっていない。また、国債発行して景気対策をするより、)財政再建、規律(医療・社会福祉システム)をしっかりすることが先で、(安心社会になれば)消費が回復するということですね。浜田さんはこの藻谷さんの考えをどう思われるのでしょうか。」

浜田3「よく現実は違うんだ。学者の考えていることは空論だと強く言われるが、逆に言うと経済学200年以上の歴史を全く無視して自分の考え方を述べておられる、という点で、経済は分かっているかもしれないが、経済学を分からないでしゃべっておられると思うぐらいおかしい。 アベノミクスと財政問題 動画(4分1秒~4分28秒)


「"富や成功"への欲望、”資本”は自由自在に移動する、”消費”が資本主義のエンジンだ。私たちはいつからこんな世界を生きているのだろう?」と問いかけるNHK番組「欲望の資本主義~ルールが変わる時~で、シカゴ大学時代(1965年頃)に故宇沢弘文先生が恩師であったスティグリッツは「貧困層から富裕層へと富みは吸い上げられ、富裕層は貧困層に比べお金を使わない。これが全体の需要を押し下げ成長にブレーキをかケている。」 欲望の資本主義~ルールが変わる時(1) (4分52秒~5分5秒) と指摘している。「アベノミクス」が日本経済を停滞させているのではないか。
 「スティグリッツ教授は消費税問題には触れず、『(アベノミクスの間違いを認めて)アベノミクスを停止し、経済政策を180度転換することによって、次のG7サミットで主導権を取るべきである』と安倍首相と官邸の側近たちに強く進言したのです。」 ブログ「伊勢志摩サミットが、一足飛びに安倍政権に晩秋をもたらす」より引用






欲望の資本主義~ルールが変わる時(2)(動画)

 現在の日本の政治経済は目先の経済成長を求めすぎ、地域の自然と生活を大切にする安定した経済を見失っている。それは経済学の父とされるアダムスミスの「自己的な利益の追求が経済を発達させる」という『国富論』を資本主義の成長ルールと考え、その前提にあった「人は他者によって生かされる」という『道徳感情論』を無視しているからだと思う。

 人間は幼児期が長いことで人間となりえた。文明の発達により地域のコミュニティと子供の世界が壊れて行くことは、人間を益々文明の家畜化として行くことだろう。日本の高度成長期前の貧しいが幸せであった時代を知っている世代としては、将来の家畜化された人間社会は想像したくない。我々の子供時代から成人するまでの経験を次世代にも残したいと思うのは単なるノスタルジアに過ぎないのであろうか。

参考:
【アダム・スミス―『道徳感情論』と『国富論』の世界】レポート
[書評]アダム・スミス 『道徳感情論』と『国富論』の世界(堂目卓生)

初稿 2016.6.1 追加更新 2016.6.4