自然とデザイン

自然と人との関係なくして生命なく、人と人との関係なくして幸福もない。この自然と人為の関係をデザインとして考えたい。

”生きる価値”を問う~政治も経済も「情報」である⑥

2018-10-30 15:00:30 | 自然と人為
 経済は物々交換に始まり、その物々交換を貨幣が仲介することによって発達した。その原点は現代でも変わっていないはずだ。しかし、物々交換の貨幣が主人公になり、お金のために働く現実がある。
 経済はお互いが競い合う競争ではなく、お互いが全ての人々の“生きる価値”を認めて共創するもののはずだ。ところが、お金が利子を生む「金融システム」が“生きる価値”を無視した勝者を生み、格差を拡大させている。科学的根拠のない政治や経済は「ジャンケン」と同じで、「民主主義」も物事の価値判断を自分でする責任を持つ「自立した個人」が育たない限り、つまるところ既存の常識に基づく既存勢力の勝ち負けの問題に流されるに過ぎない。

1.自立した個人
 “生きる価値”とは自立した個人の自由と尊厳を守ることである。日本の家族制度は伝統として守られてきたが、現在はバラバラになりつつある一方で、「自立した個人」が育っていない。「自立した個人」が育っていないのに、「家族システム」が崩壊したらどうなるだろう。「家族」という言葉には、美しさと懐かしさと愛着を感じる。しかし、我が国の家族システムは男尊女卑の伝統を土台とし、女性の犠牲の上に成立していることを忘れてはいけない。しかも今日、国が国民の犠牲で強い国になることを美徳、道徳として求めるような、戦前と変わらない政治勢力が蠢いている。自立した個人が組織や国に拘束されないで、自由に人生を充実できる社会にしなければならない。その「自立した個人」について私に教えてくれたのは、エマニュエル・トッドであった。
 参考:エマニュエル・トッド 混迷の世界を読み解く
     「愛国と教育」は何を目指すのか?
(「教育と愛国」動画の一部)
     「教育と愛国」(導入部) 「教育と愛国」(本編) (論議)(動画)
     人間=動物+道具+情報~政治も経済も「情報」である④


2.自己責任論の批判
 シリアで3年半も拘束されていた安田純平さんが、日本政府ではなくカタール政府の助けにより解放された。このジャーナリストに対して「自己責任論」できつく批判するテレビタレントの顔ぶれが脳裏から離れない。この人たちは自覚していないのかも知れないが、個人よりも組織や国を大切にする人達だ。浜野研三氏は論文『自立と依存:「自立した個人」の虚実』で、『自立を支える基盤を掘り崩すような政策を推進しながら,自立した個人の自己責任を謳い,その基準に合致しない人々を無責任な,個人の名に値しない存在として切り捨てるような言説は,まさにためにする議論であり,厳しく批判されねばならない』としている。
 参考:自己責任論の正体【安田純平氏解放と日本型ネオリベラリズムの蠢動】
     安田純平氏への「自己責任論」は大本営発表を再来させる

 
3.「自立した個人」と他者との共同作業
 浜野研三氏は同論文で「自立した個人」について次のように指摘しているので、引用させていただく。『われわれが正しく明快な言葉を用いて自立的な思考をなし,それを公的な議論の場で表明しながら,国家権力などの様々な権力による結論の押しつけを排して自立的な市民としての意志決定を行い,それを政策として実行する政府を作ることができるためには,そのような能力や態度を形成するための,数多くの他者,そして他者との共同の下で作り出している多様な制度の支えが必要である。重要な問題についての自立的な判断を可能にする,信頼できる情報の提供が確保されるシステム,訴えに対して迅速かつ納得できる判決が下される司法システム,市場競争に勝ち残ることを至上価値とするものではなく,自由な知的探求が奨励され,それを助ける多様なメニューが用意されている教育システム,市場機構の役割を十分に評価しながらもそれを絶対視することなく,それを生活全体の中での適切な位置に置くシステム,それは真の意味で社会に貢献することが実感できるような労働と生産のシステムを含むであろうが,等々の構築を必要としているのである。自立した個人の出現を望む者は,そのようなシステムを作り出すことに努力することをそれこそ自己の責任として引き受けねばならない。』

4.多様な考え方と「誰も否定できない前提」
 人それぞれの考え方や生き方があるが、人の集団がバラバラに生きていけるわけでもない。ある考え方で集団が出来るが、その考え方にも「誰も否定できない前提」がある。①人間は地球に生きる生物の一員であること、人類は700万年の歴史を生き、これからも絶滅しないで生きていくには、②「人間の尊厳は不可侵である」ことを世界各国が守ること、そして③経済は「お金の量=価値の量」で成立することを世界の常識にする必要性を大西先生から学んだ。

5.人間の尊厳の不可侵
 ドイツの若き哲学者「マルクス・ガブリエル」は、「なぜ世界は存在しないのか」で世界の注目を集めた。世の中に「世界」という対象はあっても、それをどう理解するかは、人それぞれによって異なり、その総和として「世界」がある、と私なりには理解している。したがって科学的知見を除けば、政治も経済も集団によって解釈が異なり、ある理解を常識として共有する人たち同士の勝ち負けが社会を動かしている。
 マルクス・ガブリエルは科学的知見だけでなく、ドイツ憲法(基本法)の第一条に示された「人間の尊厳の不可侵」を如何なる価値観を持つ人間も否定できない真実として守らねばならないという。世界は電子情報化、グローバル化によって、益々関係を深めている。ドイツだけではなく日本も含めて、憲法とは国内問題だけではなく、多様な価値観を持つ世界の人々の生き方を束ねる土台となる必要性が益々大きくなっている。ドイツは戦時中のヒットラーの過酷な人種差別の経験から、戦後はヒットラーを完全に克服している。日本は戦時中の教訓、国民の自由を奪い国に従わせた反省をどう生かすのであろうか。
 参考:「欲望の時代の哲学〜マルクス・ガブリエル 日本を行く〜」(動画)
     マルクス・ガブリエル「なぜ世界は存在しないのか」
     半世紀もくすぶっていた難問に挑んだ「天才哲学者」驚きの論考
     「ドイツ観念論の現在」:マルクス・ガブリエル×大河内 泰樹


6.お金の根源を考える
 『経済はお互いが「全ての人々に生きる価値」を認めて共創するもの』と私は大西さんから教わった。そのことは「経世済民~政治も経済も「情報」である」に紹介している。大西さんは自分の言葉と公表されている資料をもとに丁寧に説明されている。大西さんの話はドイツのシルビオ・ゲゼルの思想に起源があり、ケインズは『雇用・利子および貨幣の一般理論』においてゲゼルの思想について考察し、「将来の人々はマルクスの精神よりもゲゼルの精神からより多くのものを学ぶであろうと私は信ずる」と評している。
 参考:シルビオ・ゲゼル(2)
     S. ゲゼルの「基礎利子」論

 また、作家のミヒャエル・エンデもドイツ人でゲゼルの影響を受けており、代表作の『モモ』は彼の思想から着想を得ていると述べている。
 参考:『希望』大西つねき(出版)
     エンデの遺言 ~根源からお金を問う~(動画)
     ミヒャエル・エンデ『モモ 時間どろぼうと…』あらすじ・読書感想文・名言
     千夜千冊:ミヒャエル・エンデ『モモ』
     きっと驚愕するはず。忘れていた『モモ』の名言
     お金ってそもそも何だろう。機能不全に見える資本主義社会
     貨幣制度変革のヒントは「自由貨幣」に?


7.大西つねきの週刊動画コラム
 「大西つねき」のブログ 「動画」をクリックすると、以下の動画があります。

衆議院選神奈川8区出馬会見 2017年9月29日
vol.1_2017.11.14:衆議院選の総括と今後の活動について
vol.2_2017.11.20:何故、あえて政治家か?
vol.3_2017.11.27:大西つねきの色々秘話
vol.4_2017.12.4:大きな時代の流れ
vol.5_2017.12.11:パラダイムシフト
vol.6_2017.12.18:財源論をぶち壊せ
vol.7_2017.12.25:お金の発行のしくみ
vol.8_2018.1.8:政府の借金=お金の発行
vol.9_2018.1.15:お金の発行の仕組みの本質
天木×大西=自由・自立・共生の未来
vol.10_2018.1.22:天木さんとの対談を受けて
vol.11_2018.1.29:仮想通貨とブロックチェーン
vol.12_2018.2.5:仮想通貨補足と党大会お知らせ
vol.13_2018.2.12:若者たちよ怒れ!
vol.14_2018.2.19「マイナンバーと個人情報 」
vol.15_2018.2.26「経済成長信仰を打破せよ! 」
vol.16_2018.3.5「フェア党の理念 」
第一回フェア党大会 2018.3.4
vol.17_2018.3.12「真実の時代へ 」
vol.18_2018.3.19「財務省のウソ(1) 」
vol.19_2018.3.26「財務省のウソ(2) 」
vol.20_2018.4.2「財務省のウソ(3) 」
vol.21_2018.4.9「政府通貨の疑問に答える 」
vol.22_2018.4.16「政府通貨の疑問に答える (2)」
vol.23_2018.4.23「正しいベーシックインカム(1)」
vol.24_2018.4.30「正しいベーシックインカム(2)」
vol.25_2018.5.7「国家経営の本質」
vol.26_2018.5.14「個人の自立と他者への尊重」
vol.27_2018.5.21「日本から世界を変えよう」
vol.28_2018.5.28「売国政策を糾弾する」
vol.29_2018.6.4「アベノミクスの功罪(1)」
vol.30_2018.6.11「アベノミクスの功罪(2)」
vol.31_2018.6.18「アベノミクスの功罪(3)」
vol.32_2018.6.25「告知、その他いろいろ」
vol.33_2018.7.2「脱資本主義の旗を掲げろ」
vol.34_2018.7.9「個人の自由が全て」
vol.35_2018.7.16「資本主義がダメな理由(1)」
vol.36_2018.7.23「資本主義がダメな理由(2)」
vol.37_2018.7.30「生産を強制する社会」
vol.38_2018.8.6「民主主義について」
vol.39_2018.8.13「日本の戦後について(1)」
vol.40_2018.8.20「Japan should help Turkey」in English」
vol.41_2018.8.27「日本の戦後について(2)」
vol.42_2018.9.3「皆さん、政治のお時間です」
vol.43_2018.9.10「今後についてもろもろ」
vol.44_2018.9.17「東京オリンピックを真剣に返上しよう」
vol.45_2018.9.24「大西つねきの政治の原点(1)金融編」
vol.46_2018.10.1「大西つねきの政治の原点(2)震災編」
vol.47_2018.10.15「消費税と今後の活動について」
vol.48_2018.10.22「オリンピック返上と消費税ゼロ集会」
vol.49_2018.10.29「個人の心の自由」
vol.50 2018.11.5「新オフィスと色々やりたいこと」大西つねきの週刊動画コラム
vol.51 2018.11.12「新しい著書のご紹介」大西つねきの週刊動画コラム
全国で講演依頼募集のプロモーション動画
vol.52 2018.11.19「土佐桂浜より」大西つねきの週刊動画コラム
2018.11.16 最先端の未来通貨会議①
vol.53 2018.11.26「新潟講演を終えて〜ほうちゃんゲスト」大西つねきの週刊動画コラム
2018.11.25 新潟講演「みんなが知るべきお金の本当の話」①
vol.54 2018.12.3「外国人労働者について」大西つねきの週刊動画コラム
vol.55 2018.12.10「いい加減にしなさい!」大西つねきの週刊動画コラム
2018.12.7 大阪講演「皆さんに知ってほしいお金の本当の話」①
vol.56 2018.12.17「憲法改正について」大西つねきの週刊動画コラム
vol.57 2018.12.24「イエローベスト運動について」大西つねきの週刊動画コラム
vol.58 2018.12.31「経済バカを断捨離せよ」大西つねきの週刊動画コラム
vol.59 2019.1.7「今年についていろいろ」大西つねきの週刊動画コラム
vol.60 2019.1.14「大きな戦略」大西つねきの週刊動画コラム
vol.61 2019.1.21「告知いろいろ」大西つねきの週刊動画コラム

フェアな経済、社会とは(1)(2)(3)
こどもたちの未来のために大人がすべきこと(1)(2)(3)


8.『大西つねき』講演会
 江戸時代やアフガニスタン王国の常識に見られるように、常識は時代と共に変わる。我々の常識を新しくするために、大西さんは経済を変えるためには政治を変える必要があると、「自由な自立した個人」、「生きる価値」、「お金の発行のしくみ」、『経済は「お金の量=価値の量」で成立する』等のお話をされ、その実現に向けて行動もされている。大西さんのお話をじっくり学びたいと思い、多くの方々のご参加を期待して、多くの方々が集まれる会場を準備し、下記の講演会を実施します。多くの方々がお誘い合わせ頂き、多くの方々がご参加頂きますように、お待ち致しています。

 講演会 日本の未来~“生きる価値”と『経済は「お金の量=価値の量」で成立する』を考える(仮題)
 主催 畜産システム研究所(移転記念講演会:事務所は東京の予定
 場所:福山市西部市民センター ホール(200~500人収容)
 日時:2019年4月28日(日)13:30~16:30
 参加費 無料

 講師 
 三谷克之輔(広島大学名誉教授)「人間=動物+道具+情報(仮題)」30分
 大西つねき(フェア党党首)「消費税とお金の発行のしくみ(仮題)」90分
 討論 60分


初稿 2018.10.30 更新 2019.1.24 更新 2020.2.23(ブログ目次削除)

敗戦と新憲法~政治も経済も「情報」である⑤

2018-10-25 23:46:20 | 自然と人為
 憲法改正に安倍首相は前のめりである。憲法は政治権力から国民を守るためにある。それなのに政治権力のトップにある首相が憲法改正の指揮を執る。これでは政治は自分のためにあるかの如くの行動したドイツのヒットラーと同じだ。憲法は押し付けられたとか、国民の意志が入っていないとか、まるで国民の考え方は一つしかないかのように、一方的な理由で変えようとしている。考え方はいろいろあるだろうが、憲法はその様な日本独自の、自立した個人が育たない異常な精神構造の国内問題だけではなく、「戦争放棄」を宣言した国際的な責任も持つことを忘れてはいけない。ここでは、ネットで検索できる情報を紹介しながら、日本の憲法の責任について論理的に考えて見たい。
 参考:『映画 日本国憲法』予告編  2分34秒 必見!!
     ビデオニュース 2013.05.03【世界は日本国憲法をどう見ているのか

1.憲法の公布と施行
 日本国憲法は1946年11月3日に公布され、半年後の1947年(昭和22年)5月3日に施行された。その公布日を「文化の日」、施行日は「憲法記念日」とし、国民の祝日となっている。新しい憲法は、大日本帝国憲法の下、帝国議会で承認された。なお11月3日は明治天皇の誕生日にあたり、明治期に天長節、昭和初期に明治節として祝日となっていた日でもある。
 参考:BS歴史館「帝国憲法はこうして誕生した~明治・夢と希望の国家ビジョン 動画
     幕末 日本外交は弱腰にあらず (2011年) 動画


2.カイロ会談ヤルタ会談ポツダム宣言による世界大戦の処理
 1943年11月23日~27日、アメリカ大統領ルーズヴェルト、イギリス首相チャーチル、中国主席蔣介石が参加し、エジプトのカイロで会談が開催され、1943年12月1日、その合意事項(カイロ宣言)として次の項目が発表され、後のポツダム宣言のもとになった。
1)日本は満州、台湾、澎湖島を中国に返還すること。
2)日本は1914年以来獲得した全ての太平洋上の島嶼を手放すこと。
3)朝鮮は、適当な時期に独立すべきであること。
 さらに、ロシアのクリミア半島にある保養地で有名なヤルタで1945年2月、アメリカ・イギリス・ソ連の三国首脳(ルーズベルト,チャーチル,スターリン)による戦後処理に関する会談が開催された。このときルーズベルトとスターリンは、「ソ連が対日参戦すれば、その見返りに樺太と千島列島を譲る」という密約を交わしている。

 また、1945年7月にはドイツのベルリン郊外のポツダムで、アメリカ・イギリス・ソ連の首脳はポツダム会談を開催した。なお、ルーズベルトはヤルタ会談後の4月に死去し、アメリカ大統領はトルーマンに交代した。1945年7月26日に連合国が発表したポツダム宣言(全訳)を日本が「黙殺」し続けたために、イギリスも原爆投下を認め、ソ連が参戦して北方領土問題を生み、その後の米ソ対立から朝鮮半島を南北2分することになる。
 参考:ドキュメント太平洋戦争 第6集(最終回)一億玉砕への道~日ソ終戦工作~(動画)

 ポツダム宣言を「黙殺」している間に、世界の情勢は刻々と変わっていった。「戦争の継続と本土決戦を強硬に主張」した阿南陸軍大臣を始め陸軍関係者を含むA級戦犯は、戦争犯罪のみならず、原爆、北方領土問題と朝鮮半島2分にまで影響し、非常に重い爪痕を残した。そのA級戦犯、岸信介の孫が安倍首相である。これらのことは日本人は知らない人が多いかもしれないが、世界の要人は知っている。

 なお、アメリカが原爆実験に成功したのは1945年7月16日、ポツダム宣言の10日前であった。
 そして、1945年8月14日に日本政府がポツダム宣言の受諾、つまり無条件降伏を決定。翌15日に天皇が降伏の詔書を放送を通じて国民に発表した。しかし、日本の降伏調印式は1945年9月2日、東京湾上に浮かぶ米戦艦ミズーリ号で行われ、正式に第二次世界大戦が終結したのであり、世界の常識は日本の敗戦は9月2日なのである。
 参考:ポツダム、カイロ宣言の内容を知らない日本人
     日本の無条件降伏
     日本人だけが8月15日を「終戦日」とする謎

3.極東委員会とGHQによる日本の占領統治
 1945年8月14日に、連合国軍の1国であるアメリカ陸軍の太平洋陸軍総司令官のダグラス・マッカーサー元帥が連合国軍最高司令官 (SCAP) に就任し、米戦艦ミズーリ号の降伏調印式に出席するため、1945年8月30日、厚木の海軍飛行場に来日した。日本を占領統治する極東委員会は1945年9月に設置されたが、1945年12月に、連合国側のアメリカ国務長官バーンズ、イギリス外務大臣ベヴィン、ソ連外務大臣モロトフの臨席でモスクワで開催されたモスクワ三国外相会議で英・米・ソと中華民国を含む11カ国代表で構成されることが決定し、合わせてワシントンD.C.にあった極東委員会の出先機関として、対日理事会を東京に設置することも決定された。極東委員会は日本占領管理に関する連合国の最高政策決定機関となり、GHQもその決定に従うことになった。とくに憲法改正問題に関して米国政府は、極東委員会の合意なくしてGHQに対する指令を発することができなくなった。
 参考:連合国軍最高司令部/GHQ(General Headquarters)
     極東委員会の設置とGHQとの会談
     日露間領土問題の歴史に関する共同作成資料集

4.GHQによる占領政策
 マッカーサー連合国軍最高司令官の任務は、極東委員会が決定する日本占領政策を執行することであった。ただ実際には、GHQメンバーの大半がアメリカ人だったため、事実上、アメリカ政府の意向に基づいて行動した。マッカーサーは1950年6月、朝鮮戦争が勃発すると国連軍総司令官となったが、1951年4月、北朝鮮の背後にある中ソを攻撃するために、中国大陸での原爆使用をトルーマン大統領に進言し、退任させられた。1951年9月には第二次世界大戦での西側諸国と日本の講和条約であるサンフランシスコ講和(平和)条約が締結(1952年4月28日発効)され、日本に対する占領の終結と日本の主権回復が認められているので、日本の占領政策は殆どマッカーサ連合国軍最高司令官の期間であったと言えよう。

 マッカーサー連合国軍最高司令官の配下のGHQで、『最初に力を持ったのは民政局であり、マッカーサーの側近で日本国憲法の草案作成を指示しホイットニー准将が局長を務めていた(実際の作成担当は、彼の部下ケーディス)。彼は日本弱体化のため、かなり革新的で冒険的な実験的政策を行った。・・・日本国憲法をはじめ、労働組合の育成、政治犯として投獄されていた日本共産党幹部の釈放、社会党・片山哲の首相推薦と、保守派が絶対やらないような政策ばかりを実施した。・・・民政局に集中した絶大な権力が汚職の蔓延につながり、延命を図る日本の企業や政治家連中からの賄賂が集中した・・・これが原因で民政局は力を失い、ライバルの参謀第二部(G2)の台頭を許すことになる。新しく伸びてきたG2はGHQ内の保守派で、“対冷戦の情報機関”的な部署だった。こちらのトップはウィロビー少将。強固な反共産主義者として知られていたウィロビーは、アジアにおける社会主義の台頭を脅威に感じ、トルーマン大統領に日本を「反共の砦」として利用するよう進言した。GHQではこの後G2が実権を握り、それと同時にウィロビーととても「仲よく」していた吉田茂が首相になり、ここから弱体化とは逆の方向、すなわち“戦後復興”が本格的に進み始めるのだった』。(64年前に日本の運命を変えた日米安保条約とは?)より部分引用。

 その後米ソ対立を反映してか、マッカ―サーの軍人としての本質からか反共的となり、・・・『マッカーサーの弱体化路線の継続をケーディスがいくら訴えても聞き入れてもらえず、結局、民政局のケーディスはそのまま辞任した』。・・・マッカーサーは『自らが「労働の民主化」を進めた日本で、公務員から争議権を奪い団体交渉権を厳しく制限する「政令201号」の公布を指示し、労働組合活動を弾圧した。・・・1950年に朝鮮戦争・・・マッカーサーは日本に「警察予備隊」の設置を指示し、・・・公職追放も解除され、血の気が多いと見なされた戦中派の大量復帰も実現した。そのかわり、共産党員が公職から追放される「レッド・パージ」を敢行・・・(マッカーサーのご乱心とGHQの方向転換より)部分引用

 『マッカーサー更迭後の1951年、日本は連合国側の48ヵ国といっせいに仲直りするための条約「サンフランシスコ講和条約」を締結し、ついに独立を達成した。同条約の調印式には、首席全権の吉田茂(総理)、全権委員の池田勇人(蔵相)・・・らが、サンフランシスコの華やかなオペラハウスで調印した。ただしこの条約には、東の面々は参加していない。ソ連もいなければ中国もいない。こういう“社会主義国抜き”で結んだ条約を、全面講和に対して「片面講和」という。また、厳密に言うと“戦っていない”という理由で、韓国と北朝鮮も招請されなかった。・・・その日の夜、吉田茂だけがこっそり場所を替え、「日米安全保障条約(安保条約)」に調印した。1952年4月28日、サンフランシスコ平和条約が発効したが、独立後の日本はアメリカの属国としての道を歩み続けて今日に至ることになる。』(ついに念願の独立!――サンフランシスコ講和条約)より、部分引用
 参考:日本はこうしてつくられた!今読み直す、米軍占領下のシナリオ
     64年前に日本の運命を変えた日米安保条約とは?

    やりなおす戦後史

5.GHQ下の内閣
 戦後、初代の内閣は『日本軍百万を武装解除して大過なく占領軍を受け入れるには、天皇の身代わりである皇族が事態を主導するしかなかった。』占領下の内閣については下記の紹介が丁寧であり、信頼のおける紹介だと思う。
 東久邇宮稔彦王内閣 194.8.15-1945.10.5
 幣原喜重郎内閣 1945.10.9-1946.5.22
 第一次吉田茂内閣 1946.5.22-1947.5.24
 片山哲内閣 1947.5.24-1948.3.10
 芦田均内閣 1948.3.10-1948.10.15
 第二次吉田茂内閣 1948.10.15-1949.2.16
 第三次吉田茂内閣 1949.2.16-1952.10.30 (講和条約への道のり)
第三次次吉田茂内閣は占領下における最後の内閣となったが、『吉田内閣最終年の1954年、吉田の腹心・池田勇人自由党政調会長とアメリカのウォルター・ロバートソン国務次官補の間で開かれた「池田・ロバートソン会談」で日米相互防衛援助協定(MSA協定)が結ばれ、日本はアメリカから援助を受ける見返りに「自国の防衛力増強」の義務を負うことになった。それを受けて吉田内閣は「防衛二法」(防衛庁設置法+自衛隊法)を成立させ、ついに我らが「自衛隊」の誕生と相成ったのだ。』(自国の防衛軍「自衛隊」の誕生)より引用
 参考:MSA協定と日本―戦後型経済システムの形成(2)

 また、占領下にGHQが国会に関与した下記の記録も興味深い。
                    参考:国会法 (1947年4月30日法律第79号)
 国会法の制定ーGHQの合理的行動と議員自立権の後退ー
 国会法立案過程におけるGHQとの関係
 
 宮沢 これは、あとの規則の段階になると、全然司令部は関係ないのですか。
 西沢 やはりございます。ございますけれども、国会法のときほどあれはございませんでした。
 宮沢 やはり前に一応OKをもらうのですか。
 西沢 ええ、もちろんOKは全部もらつております。
 西沢 今から考えると、どうもおかしな話みたいだけれども、そのころはちつともおかしくなかつたからね。私はウイリアムズは知らないけれども、どつかで変な奴に会つたんですよ。あとで聞いたら、それがウイリアムズで、あれはある方面で有力でね。それぞれ専門があるので・・・・・。
 佐藤 ウイリアムズが実際の議事を指導しに議事堂にやつて来たことがあるわけでしよう。
 西沢 ありました。二回ぐらいあります。
 佐藤 何の事件のときですか。
 西沢 それは例の芦田内閣から第二次吉田内閣に移りかわるときの例の・・・・・。
 佐藤  山崎首班問題・・・・・。

 1954年11月10日 占領体制研究会出席者 東大法学部長室にて
  衆議院法制局長 西沢哲四郎
  東京大学教授 宮沢 俊義
  成蹊大学教授 佐藤 功
  東京大学助教授 林 茂
  東京大学助教授 芦部 信喜
  東京大学助教授 高柳 信一


初稿 2018.10.25 動画追加 2018.10.27 更新 2020.2.23(ブログ目次削除)

ダイアモンド博士の“ヒトの秘密”

2018-10-22 21:40:51 | 自然と人為

ダイアモンド博士の“ヒトの秘密”
 第1回「チンパンジーからヒトへ1.6%のドラマ」
 第2回「動物のコトバ、ヒトの言語」
 第3回「芸術のジョーシキを疑え」 
 第4回「性と出会いのメカニズム」
 第5回「夫婦の起源 性の不思議」
 第6回「不思議いっぱい ヒトの寿命」
 第7回「農業は人類に何をもたらしたのか」
 第8回「“進化”から見た文明格差」
 第9回「地球外生命体(エイリアン)も進化する?」
 第10回「集団虐殺はなくせるのか」
 第11回「文明崩壊 人類史から学ぶもの」
 第12回「“格差”をのりこえて」


初稿 2018.10.22

人間=動物+道具+情報~政治も経済も「情報」である④

2018-10-16 20:28:35 | 自然と人為
 『経世済民~政治も経済も「情報」である』で「情報」について思いつき、考えを深めたのは次の資料であった。「人類は、その誕生の時点から社会的であり、”個人”であったことなどない」
 人間だけでなく、サルや他の動物も群れで生活し、「鳴き声」等で連絡し合う。鳴き声がコトバとなり、名詞が動詞とつながる言語となり、絵画や音楽も発達させ、今ではインターネットで連絡できる電子情報になっている。人間は動物+道具(機械)ではなく、動物+道具(機械)+情報=人間なのである。

    情報は「鳴き声」から「言語」、そして「電子情報」へ
  
  ダイアモンド博士の“ヒトの秘密”第2回「動物のコトバ、ヒトの言語」より引用

 言葉や文化は発達させたが、人間も動物の一員であることには違いはない。その動物としての性サガが人と争い、人を支配する本能として残っている。人間は地球に生きる生物の一種であるとともに、「人間の尊厳の不可侵」は、人間として生きるための必要条件であることを全員が自覚する時代を目指さなければならない。それは「理想」ではなく「常識」であり、人間として生きる「宿命」だと思う。そうではないとすれば、『「動物」として生きることに「誇り」を持て』、とでも言うのだろうか。

1.ネットワークで出会う情報と人
 私は歩行困難になり運転免許は返上したが、運転をしないと地理情報も失われていくような気がする。一方、ブログ「自然とデザイン」を書くことを楽しみにしていて、経済の本質について語られる大西さんと出会い、「政治も経済も情報である②」に私なりに理解したことを書かせていただいた。大西さんの行動は我々の今までの常識を変え、真に生きていくことを考える素晴らしい話だと確信し、まだお会いしたこともないのに、来春の講演会の打ち合わせを始めている。

2.貿易収支黒字と軍事費
 最近、米中貿易戦争のニュースが流されている。例えば、『トランプ政権が発動した貿易戦争が狙う「中国潰し」』の裏に、中国の対米大幅貿易黒字がある。この黒字が無くなると食糧を輸入している中国は大変なことになる。しかし、あれだけ広大な土地がありながら、食料を輸入しているのもおかしなことだ。それはともかくとして、ドルで決済される貿易収支を利用したアメリカの強欲な戦争だ。戦争と脅されればアメリカに守ってもらおうと思う人が多いかもしれないが、アメリカは産軍複合体の国でもある。戦争で儲ける国だから、中東やあっちこっちで戦争を仕掛けて儲けている。日本も基地を置かれ、アメリカから武器を購入する世界一の国である。防衛を理由に、武器を日本に買わせていることを見逃してはいけない。また、トランプ政権は北朝鮮に非核化を迫る一方、小型核兵器の増強を進める矛盾を平気でしている国であることも。

 日本も貿易黒字であることは、7.貿易黒字の行く先で紹介した。貿易はドルで決済されるので、使えない(使わない?)まま黒字額を放置し、アメリカはこれを利用して、世界一の貿易赤字にも拘らず財政破綻をしないで生き延び、日本は財政破綻をしないためと噓をつき、消費税を10%に上げると言っている。消費税は人間の活動を抑制するので完全撤廃すべきである。政治とは「人の時間と労力、資源を大事にすること(動画)」であり、今の政治や経済のトップにいる人たちは、「お金の発行の仕組み」を知らないか、知らない常識が国民支配に都合が良いのだろう。我々は「トップにいることは支配することである」という長い歴史を生きてきた。150年先の常識はどう変わっているだろう。

 日本がアメリカから購入している武器は、平成23年度は589億円だったが、2012年(平成24年)暮れに第2次安倍政権が発足して以来増加し、平成28年度は、4881億円と5年間で8倍以上に急増大切な情報なのに削除されているので、近い情報を引用しておく)している。しかも、戦争放棄の憲法9条に自衛隊を追記し、アメリカの属国として戦争ができる国にしようとしている。安倍晋三が国民の為ではなく国民を支配するために、日本の首相の地位を利用している姿をメディアは報道しない。メディアは政府に支配されているが、勝ち組の政府に従うのがメディアの生き残り策だと思っているのだろう。経済と政治は一体であり、情報化の時代には政治が経済を支配し、国民は勝ち組の政治に支配される。
 参考:「アメリカの財布」と化している日本の兵器調達
     アメリカ製兵器 もっと買え? 2017年11月14日 削除!
     日本の武器輸入、11年間で198兆ウォン注ぎ世界1位
     日本が世界一の武器輸入国に、独自の開発も強化


3.戦争は人間を鬼にする
 「国を守るために」と美しい言葉で、国民を幸福から戦争へと誘導している安倍政権。「富裕層や大企業を豊かにすると、富が国民全体にしたたり落ち(トリクルダウン)、経済が成長する(動画)」と大嘘を平気で言って、国民よりもお金を大切にして格差を拡大させている一方で、「国を守る」と言って、憲法9条を改悪して「自衛隊」を明記し、「集団的自衛権」で憲法9条の命である「戦争放棄」から、戦争で儲けている「アメリカと戦う自衛隊」にしようとしている。戦争の現場は人間を鬼にする。安倍政権の危険な道、1)民間船の自衛隊(戦争)への利用、2)道徳教育の重視が国民の自由を奪い、3)敗者も勝者も戦争は人間らしい生活を奪う、ことを下記の番組は教えてくれる。

 ザ・ベストテレビ2018
  第1部
  防衛フェリー 民間船と戦争
  教育と愛国(導入部) 教育と愛国(本編) (論議)
  記憶の澱(オリ) (論議)

 戦争は自分とは関係ない?戦争は過去にあらず。いつの間にか戦争の中にいた。今の空気が昔と似ている。そのうち、戦争に協力しないと「国賊」と言われる時代になるのではないか。戦争は現場で起きる。だから戦争を現場の責任にする官僚、ひょっとしたら首相まで?現場に責任を持たない体質は、先の大戦と変わらない。
 道徳は評価できるか?子どもの将来は子供の責任。大人は子供の可能性を見守り、その能力を引き出してやること。一部の大人の価値観を子供に押し付けて、それが日本の伝統を守ること?歴史から学ぶことはない?「歴史」は過去に学ぶことなのに、道徳教育に熱心な人にとって「歴史」は「道徳」なのだ。戦争体験は歴史に残し、歴史から学ばないといけない。しかも、戦争は個人を「被害者」にするだけではなく「加害者」にもする。殺人事件は多いが、戦争は普通の人を殺人者にする。戦争では人間性を破壊する訓練を経て、殺人が任務になる。戦争は人格を破壊し、美しい言葉「国を守る」で、個人を破壊する。

  第2部
  地方の時代 「かあちゃんのごはん」(動画)削除! (論議)
  父を捜して〜日系オランダ人 終わらない戦争〜(動画)(論議)
  知られざる被爆米兵~ヒロシマの墓標は語る~(動画)(論議)

 地方の時代「かあちゃんのごはん」は、淡々とシングルマザーの生活と地方への移住を語っているが、私にはエマニュエル・トッドが日本の問題と指摘していた「家族制度」と重なって見えた。日本の家族制度は誇りだと思っていたが、それは個人を尊重する男女平等のフランスからすると「男性を尊重する」男社会の問題をはらんでいる。私が3人の姉を持つ末っ子の長男として生まれ、何不自由なく思いのまま生きてこれた背景には、女性の犠牲と苦労と大きな負担があった。出生率が減少して東京でも小学校の廃校があるというのは、パリでは考えられないことだそうだ。その日本的価値観から脱却しないと、日本は老人社会になって大変なことになると警告する。日本で「家族制度」が崩壊していくとき、個人の尊厳は守られるであろうか?
 第2部でも「戦争」に関する番組が選ばれている。今、日本は危険な道を歩もうとしていることに対する警鐘のように私には思える。この問題は憲法の問題として次回に考えて見たい。
 参考:エマニュエル・トッド 混迷の世界を読み解く(動画)
     憲法と日本人~1949-64 知られざる攻防(動画)


 戦争は絶対悪であり、「国を守るために国民を犠牲にする戦争」は絶対にしてはならない! 戦争をしないのだから自衛隊はいらない。国際災害救助隊にして武器を捨てれば、日本の人も世界の人も安心して生活できる。安倍晋三は現場に責任を持たないで、自分たちの国を守ることを妄想し、政治を私物化して総裁任期3期9年、延長決定し、首相在任を21年まで可能にし、憲法改正で国民支配をすることを執念に生きている。その姿からドイツのヒットラーを連想し、嫌悪を感じる。異常性格者? 少なくとも公人失格者は早く政界から追放しなければ、国民が不幸になる。

4.金融システムの破綻:貿易黒字が消える?
 日本は対米貿易黒字が毎年10兆円程あり、大西さんの話によれば、対外資産は1012兆円だそうだ。対外負債は683兆円で対外純資産は約330兆円である。この対外資産等はドル/円の為替相場(為替レート)(2)によって変化する。日本銀行の異次元緩和は円安、輸入物価の上昇と株高という三方良しを追求する政策だった。マネーゲームの時代にあって、我が国の経常収支は構造変化し、「貿易立国」から「投資立国」へと変化している。
 参考:対外資産、初の1000兆円突破 昨年末 対米投資が過去最大
     対外資産、初の1000兆円超=海外直接投資が加速-17年末

    日本が揺れた消費税導入の舞台裏(動画)
    消費税「導入」と「増税」の歴史
    「財政赤字の拡大」は政府が今やるべきことか
          日本の20年にも及ぶ長期停滞の真因

 「租税とは、国民経済に影響を与え、物価水準、雇用水準、金利水準あるいは富の再分配を操作するためのマクロ経済政策の手段。増税は総需要を抑制し、インフレを阻止するために必要となる。反対に、デフレのときに必要となるのは、減税なのである。そう、今の日本に必要なのは消費増税ではなく、消費減税なのだ。」

 1979年1月、大平正芳内閣は財政再建のため「一般消費税」導入を閣議決定。同年10月、総選挙中に導入断念を表明したが、大幅に議席を減らした。1989年4月、竹下 登内閣は3%の消費税法を施行した。1997年4月、橋本龍太郎内閣は消費税率を5%に引き上げ、野田佳彦内閣は消費税率を2014年に8%、15年に10%に引き上げる法案を提出。8月10日、参院本会議で可決成立した。そして、安倍晋三内閣で消費税率が2014年4月1日、5%から8%に上がった。
 日本は財政の専門の旧大蔵省(財務省)だけでなく、与野党ともに消費税の意味やお金の流通の仕組みを知らないか、国民が知らないことに安心しているようだ。政府が消費税5%を決定した頃、財界の大物はこれに反対し、せめて1%にすべきだとしたが、今や10%に増税しようとしている。しかも財政赤字は1000兆円と増加している。この増加分を税金で補えるわけがない。どこかに大嘘が隠されている。中野 剛志さんも消費税の問題を指摘しているが、今、計画を進めている大西さんの講演会で、もっと経済とお金の仕組みについて勉強したい。

 2014年4月の消費税率8%への引き上げの影響は予想外に大きく景気はもたついたが、日銀の質的・量的金融緩和をきっかけに「円安・株高」の流れ(2)が一挙に進み、アメリカのドル高は顕著に進み始め、それ以降、米実質貿易収支は悪化(赤字が拡大)している。2018年9月27日、アメリカのFRBが0.25%の利上げを決定し、「緩和的」政策の終了を示唆している。しかし、アメリカはいつまでも永久に貿易赤字を続けることも出来ないし、日本も貿易黒字を維持できないはずだ。『2019年「金融危機」説』,(2)は、現在の持続不可能な金融システムの崩壊が近いことを予感しているのかも知れない。予測される金融危機に対して、我々が備えることが出来るのは、「里山資本主義」,(2)を尊重し、静かに楽しく農業を守るしかない。
 参考:【図解・経済】主な国・地域の対外純資産(2018年5月)
     焦点:トランプ政権のドル安志向、世界最大の債務国に不都合も : 2017年2月1日
     我が国の経常収支の構造変化:「貿易立国」から「投資立国」へ
     コラム:トランプ政権の矛先、日米協議で円安に向く可能性:2018年9月21日
     日銀レビュー「実質実効為替レートについて」2011.J.1
     昭和59年 世界経済報告「拡大するアメリカ経済と高金利下の世界経済」経企庁
     昭和63年 世界経済白書 本編「変わる資金循環と進む構造調整」経企庁
     経常収支と貿易収支はどう違う?
     異常な日本の貿易黒字とGDPに関わる問題 v.s 日本復活の方法
     トランプ政権の矛先、日米協議で円安に向く可能性:2018年9月21日
     このままだと2019年に「金融危機」が来る?
     差し迫っているのは世界的金融危機、貿易戦争は序の口



初稿 2018.10.16 更新 2019.1.24 更新 2020.2.23(ブログ目次削除)


誰も否定できない前提~政治も経済も情報である③

2018-10-09 14:09:13 | 自然と人為
 人間は想像力が豊かな動物である。しかも、他者と言葉や絵や音楽などの豊かな交流が文化を発達させてきた。しかし、人間の想像している世界は一つではなく、個々の人間が想像する総合体として存在している。考え方が人さまざまなように、世界の見え方も人それぞれであるが、集団の行動をバラバラにしないために、常識や法律などを作ってきた。常識や法律は誰が作ってきた?「歴史は勝者によってつくられる(語られる)」と言われるが、常識も法律も勝者によってつくられる。
 民主主義の国は多数決で決めると言われるが、「ジャンケン」だけではなく「多数決」も、勝者を決める方法の一つだ。それぞれの国には、それぞれの常識と法律がある。これも「国とは動物の縄張り」だと考えれば、動物である人間の縄張りのルールとして理解出来よう。人間も動物の一員であることを忘れてはいけない。

1.人類の歴史
 人類は約700万年前に猿から分離し、ヒトとサルの遺伝子の差は1%しか違わないと言われてきた。しかし、最近はそれに否定的な考えが出てきている(1)(2)(3)。私も人間の進化には遺伝子の影響だけではなく、生まれてからの環境に脳神経の組み立て方が対応し、長年の間に一つの祖型として出来上がり、生まれるたびに祖型は影響され変化している。その祖型が文化の発達に従って変化してきたことも、ヒトとサルの違いであろうと、素人なりの考えは持っている。
 専門家は仮説を研究で実証していくのが仕事だ。考古学は大昔の事実を、人間の想像力によって遺跡等の証拠から推定するものである。過去には帰れないから、あくまでも推定の域で同意することであり、それを越えることはできないと思う。しかし、人や他の起源を訪ねて、証拠を見つけてどう説明するかは面白いものだ。人間は未来だけでなく、過去も想像する楽しみを持っている。

2.想像すること、考えることで、誰も否定できない前提
 常識や法律は勝者により作られているなら、敗者が勝者に転ずれば、常識や法律も転ずるはずだが、日本は急激な変化を好まない。革命が起きるとどう変わるかは分からないが、普通は政権が変わっても、国民がそれを求めないなら、少なくとも常識までも変えようとはしないであろう。それでも、常識や法律は徐々に変わりつつある。しかし、時代が変わろうとも、絶対に変わってはいけない常識がある。まだ、これは世界の常識にはなっていないが、この「変わってはいけない常識」を当然としないと、世界は戦争や金融恐慌で大変なことになる。
 世界の見え方が人それぞれに違っていても、人が生きていく常識の前提、考える前提として、誰にも否定できない前提がある。まだ、世界の人々がそのことの重要性に気がついていないだけだ。

1)自然の一員としての人間
 我々人間は地球上に生まれ、生きて死ぬ、動植物の一員であることは誰も否定できない。このことは、常識や法律を考える上で大前提となる。我々は植物や動物、他の生物との闘争はあるにしても、動植物が生きる根源の自然を人間の手で荒らしてはいけない。地球温暖化も地球の放射能汚染も人間の責任だ。この人間の責任を否定する人は、地球では生きてはいけないはずだ。

2)人間の尊厳
 「人間の尊厳の不可侵」は、第2次世界大戦の反省から、ドイツ憲法の第1条に定められた。

 ドイツ連邦共和国基本法(ドイツ憲法)
第1条 [人間の尊厳、基本権による国家権力の拘束]
  (1) 人間の尊厳は不可侵である。これを尊重し、および保護することは、すべての国家権力の義務である。
  (2) ドイツ国民は、それゆえに、侵すことのできない、かつ譲り渡すことのできない人権を、世界のあらゆる人間社会、平和および正義の基礎として認める。
  (3) 以下の基本権は、直接に妥当する法として、立法、執行権および司法を拘束する。


 上記の第一条に示されたように、「人間の尊厳の不可侵」を憲法の柱にし、「それゆえに、侵すことのできない、かつ譲り渡すことのできない人権を、世界のあらゆる人間社会、平和および正義の基礎として認める」としている。
 「人間の尊厳」とは、約700万年も地球の様々な変化に対応しながら生き延びてきた人類に感謝し、これからも同じように人類が生き続けることへの祈りと誓いのコトバだ。これを否定する人はいないであろう。

3)経済は「お金の量=価値の量」で成立する
 政治も経済も情報であることや、そのいろいろな情報の根拠を示すことは、誰も思わなかったし、確認してしてこなかった。
 しかし、前回のブログで経済の根拠を示したように、経済はお金の循環で成立し、「お金の量=価値の量」等を守らないと破綻することは、誰も否定できない。皆さんは、このことを確認されただろうか。これを否定する人は、その根拠を教えて欲しい。世の中に充満する情報の内、否定できない前提である「自然の一員としての人間」と「人間の尊厳」を守る経済行為が「里山資本主義」(「2.お金の原点」)なのである。
 政治は勝ち負けの日常の場だが、1.自然の一員としての人間、2.人間の尊厳、3.経済の「お金の量=価値の量」を守ることは政治の責任でもある。資本主義であろうが社会主義であろうが、そして共産主義であろうが、これらを常識の前提として守らなければ、その国は破綻し、世界は戦争や金融恐慌で大変なことになる。
 これらの3つの前提をあえて否定することは、人間ではなく動物であることを宣言するようなもの。それでも人間ではなく動物として生きたいのであろうか。3つの前提を否定する人は、その理由を教えて欲しい。

3.政治は「支配力を証明する権威」を求める
 水戸黄門様の「この印籠が目に入らぬか!」は有名で、子供の頃、真似して遊んだ記憶がある。「自身の存在に権威づけをする」言葉だが、以前、このブログでも秀吉は「太閤」、家康は「征夷大将軍」を権威づけに選んだことに触れた。信長は天下布武を目前にして、明智光秀の本能寺の変で倒れた。これは信長が常識的な権威を求めたのではなく、「日本に2人の支配者はいらない(天皇もいらない)」と言ったことに、常識派の明智光秀が恐れた謀反だという説もあるようだ。
 世間の常識で頑張っている人、現役を引退しても現役との交際が仕事として残っている人にとって、常識を疑う仕事をしている研究者が常識を疑えと言っても、光秀とまでは言わないまでも、常識人にとっては受け入れ難いことかもしれない。

 一方、明治維新はウソの「討幕の密勅」「錦の御旗」によって成功した。その功労者、岩倉具視はお札にまで採用されたが、これも勝てば官軍だ。最後の将軍、徳川慶喜こそ日本の恩人だ。維新派と戦えば勝てる軍事力を持ちながら、国民に多大な被害を与えることを避けただけでなく、英仏と薩摩、幕府を交えた戦争で、日本が植民地となる可能性を避けた。日本を守った御礼として、お札にして讃えるべきは徳川慶喜の方であろう。しかし、歴史は勝ったものによって書かれた。そして天皇を権威として利用した新政府の憲法を権威とした戦前の政府は、太平洋戦争まで暴走し、日本をアメリカの属国にしてしまった。

4.常識を生きる
 先日、「太陽がいっぱい」で有名な(と言っても1960年の作品なので若い人は知らないかもしれないが)アラン・ドロンのインタビューをNHK番組(アラン・ドロン ラストメッセージ~映画 人生 そして孤独~)でしていた。彼は演劇を学んだことはない。したがって、「俳優は役を演じる」のではなく「俳優は役を生きる」と言い切っている。演劇を学ぶと、その演技が常識となり、「役を演じる」のが仕事になってしまう。アラン・ドロンは役を生きて世界的スターになり、幸せな人生だと思う。

 一方、研究者は常識を疑い、見えてくる仮説を論理的に積み上げて証明することが仕事である。数学者・ペレルマンはポアンカレ予想の問題を徹底的に考え、数学のノーベル賞と言われるフィールズ賞の授与の栄誉を受けたが、論理の世界に全力で生き、常識に満ちた世間に興味を失い、受賞も辞退して世間を遠ざけて生きている。
 世間の人々は自分の考えを楽しんだり、悲しんだりしながら生き、意欲のある人は、自分の考えを実現することが仕事となる。常識を疑えと言われても、難しい話を考えよと言われるようで頭が痛くなる。世間のもっと明るい話をしろと拒否反応する人もいれば、あなたの生き方を疑えと言われているようで、何を寝ぼけたことを言っているのかと耳障りな人もいるかも知れない。常識は勝者(成功者)がつくり、仕事を成功させる意欲のある人は、その常識を目標に生きるが、3つの前提を守らない常識は、無意識のうちに呼吸している空気のようなもので、その人を誤らせる。

5.情報の支配
 国民の常識に大きな影響を与えるものに、公共放送であるNHKがある。NHKの仕事に憧れる人は、NHKに入社する方法から考え始め、入社すると上司の指示によって働き、NHKに自分の存在を認めさせようと努力する。そのうちNHKは公共放送であり、いつでも誰でも見る権利があることを忘れ、NHKオンデマンドで見逃し番組の一部を有料公開する一方で、検索しても見ることができない放送番組を国民がyoutubeに投稿すると、著作権を理由にこれを拒否する。youtubeにとって投稿が増えれば増えるほど事業の価値が増すので、NHK番組の投稿を拒否する理由は何もない。NHK番組にクレームが生じるとすれば、それはNHKの責任だ。NHKは政治的にも経済的にも情報公開の基準を握り、公共放送であるNHK番組を国民に公開する義務を拒否している。これも勝者の常識になっているかも知れないが、根拠のない情報独占の例だ。否、違う!受信料を払っている人だけなら見せる? それも違う。公共放送が国民に与える影響も恩恵も大きいので、受信料は無料にすべきだ。これを税金ではなく、使えないまま積み立てている貿易黒字のドルを減らす方法(「貿易黒字の行く先」を参照)として使えば簡単なこと。地球温暖化対策も放射能汚染対策も貿易黒字のドルを使えば良い。しかも、国の特別枠の予算として付加価値から人件費を削除して、給料が上がるように税の仕組みを変えるべきだ。

6.現金取引と電子取引
 我々はお金と言えば貨幣のことだと思うが、商取引では電子取引が普通になってきた。いずれも売買や貸し借りでプラス・マイナスゼロになる。電子情報も帳簿の様なものなので、プラス・マイナスゼロは同じこと。ただ、国同士の売買や貸し借りはドルで決済されるので、輸出入の商品取引は決済されるが、輸出超過で蓄積したドルは、輸出相手が円を持っていないと円に換えようがない。アメリカは輸入超過だが、日本などの輸出超過のドルが蓄積しているので、その分を自国でドルを発行し、貿易収支が赤字なのに豊かな国を演じている。このように日本等の貿易黒字分をアメリカの国内で使うことが持続可能であろうか。いつアメリカは貿易黒字にするつもりだろうか。日本はアメリカの属国なので、貿易黒字のドルが勝手に使われ、日本も文句を言わないでいるような気がする。
 電子情報の「円」を紙幣に変える権限は、財務省(日本銀行)にしかないので、ドルを円に換金できないとすれば、貿易黒字分を日本国内で政府が使うしかない。例えば地震に見舞われたインドネシアの支援に使えば、その分だけ日本の貿易黒字は減少する。国内においても貿易収支の黒字分だけ特別枠の予算として使えば、貿易収支は正常な範囲内で、国民はアメリカより豊かになれる。そのためには、この特別枠の予算から人件費を付加価値から外し、国民の給料が上がる仕組みづくりを始めるべきであろう。
 今や、国有財産の電子情報がハッカーによって盗まれる時代だ。日本の日銀総裁も国会議員も、電子情報の決済について知らないはずはない。知らないと弁明することは、非常に無責任なことだ。
 参考:BSドキュメンタリー ハッカーに屈す 電子の海に消えた8100万ドル

7.動植物の世界に学ぶ

 ここからは蛇足だが、動植物の身を守る例として、面白いと思った情報を記しておきたい。私のブログは起承転結がなく、だらだら長い。これは私の主張というよりも、主としてNHKテレビ番組から教えられた興味ある問題について、さらに知りたいと思うことからインターネット検索により調べて勉強している報告だ。そろそろこのブログも閉じようと思っていたが、人間=動物+道具だという番組から、人間は動物+道具+情報ではないかと気がつき、政治も経済も情報だと思い始めてから1ヵ月、おもしろくて筆が走り出した。私は物知りではない。検索で論理的に調べた事実を書いているだけだ。記憶力は衰えてきたが、論理力は正常でおかしいことは言っていないと思うので、ここから若い人への遺言として、第2のブログの発信だ!これまでのブログは、今の私と視点が違うので読み直したいと思っている。

1.恐竜は小惑星によって滅ぼされたわけではない?その原因は「植物」にあるとする新たなる説が浮上(米研究)
 植物が進化によって毒による防御機構を発達させた一方、恐竜は消化器系の不調に悩まされながらもそれを食べ続けたと主張する。
 また、哲学番組として、「植物に学ぶ生存戦略」,(2)は、科学的定説なのか、哲学的仮説なのか分からないNHKらしくない終わり方だが、考えることに刺激を与えてくれて面白い。
2.7万年前の超大噴火の影響は予想より小さい?
3.ホッキョクグマの生態について
 ホッキョクグマは子供まで優劣の階級があると、NHKテレビ番組で見たことがあるが、その番組の情報は検索しても見つからない。そこで、検索を続けていて、、私にとっては驚くべき情報がえられた。
 【動画】衝撃、子グマを食べるホッキョクグマ
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 本当は透明な熊だった白熊の知られざる生態

 ホッキョクグマは子育ての時期以外は、家族で行動することはないそうだ。子供も母離れすると独立して行動する。飢餓に陥ると共食いさえする。子孫を残す行為はあるが、そこに愛はないのだろう。母も子も父を恐れながら生きている。厳しい北極で生き延びるための進化の方法だろうが、そのホッキョクグマに地球温暖化による食糧難が追い打ちをかけている。動物も厳しい環境で進化した辛い生き方があるものだ。

 そして人間の世界、共産主義はみんな平等の世界だという幻想がある。しかし、ここでも勝者はそれを許さない。中国は共産主義の国ではないが、ここでも国の役人は国民に対して勝者の立場にある。かつて共産党員だったが、何の理由か分からないが重婚の罪で共産党を解雇され放浪生活している男の話だ。30年も放浪生活をしているが、1番目の重婚の相手は、今もその男の故郷の実家に住み続け、男はもう一人の妻と放浪生活をしている。1番目の妻からは愛情より憎しみを感じるが、それでも別れないのは妻としての権利により生活が支えられているからだろう。一緒に放浪しているもう一方の妻は、生活苦の生活を夫婦の愛が支えているのかも知れない。しかし、いずれもどん底の生活に生きている。人間の生き方にも深い理由がありそうだ。
 参考:NHK番組中国 さすらい農民工の物語」(動画)


初稿 2018.10.9 追加修正 2018.10.13 更新 20202.23(ブログ目次削除)