「理想の日本人像を追い求めて」(動画): マル激トーク・オン・ディマンドの「理想の日本人」は素晴らしい言葉だとは思う。でもそれなら理想の中国人や韓国人、さらには北朝鮮人のことも尊重しなければならないが、それを国が求めることは愛国心を過剰に求めることにならないか。
この「理想の日本人」もその危険性を指摘したものだ。しかし、今の改憲論議で安倍首相は「自由」より「規律」を、日本の独立よりアメリカへの従属を求めているが、このままではそれが「理想の日本人」にされてしまう。
グローバル化の時代に考えなければならないのは理想の世界人の中における日本人ではなかろうか。理想の日本人を求めることはオリンピックで日本を応援するように、ある意味では愛国心を刺激する。
「愛国心」は心理学的には「生の欲動」(動画)だそうだ。過剰な「生の欲動」も破壊や攻撃につながる「死の欲動」も戦争につながる。過剰な「ニッポン万歳!」も戦前の「天皇陛下万歳!」につながりかねない。
「象徴天皇」と「戦争放棄」が一体になっているのが現行憲法だ。
自衛のための軍隊は必要で、そのために憲法改正が必要だとする説があるが、戦争は国の責任であり、国に戦争をさせないために現行憲法がある。必要なのは「理想の日本人」を教えることではなく、「理想の世界人」のことを考え、教えることではないか。「戦争放棄」と「理想の世界人」を一体にして、現行憲法を世界にゆるぎないものとして定着させねばならない。それは国民一人一人が後世のためにできる仕事だ。
今年の5月3日は日本国憲法施行70年を迎えたので、私なりに憲法を考えてみたい。貴重な動画や資料を皆様に活用していただければ、私の考えを知っていただくより、はるかに価値があると思う。
サンデーモーニングの「風をよむ」ではテーマとして、
『施行70年 日本国憲法』(動画)を取り上げていた。国民を国家権力から守り、国民としても大切にしたい憲法を、権力者の立場にいる安倍首相自らがオリンピックの日本開催
(2020年)を目途に改正憲法の施行の日(録画 サンデーモーニング 2017.5.14)にしたいと宣言した。憲法のもとで首相である人間が堂々と改憲を言う。そんなに改憲したいなら議員も首相も辞任して改憲の地下活動をして、
「共謀罪?」で逮捕されればいい。現首相の言動も「共謀罪」もそういう類いの問題だ。
また、首相は
教育勅語,
(2)を素晴らしいとして「瑞穂の国小学校」の建設予定に
官房機密費から100万円寄付,
(2)したそうだが、個人と公人の区別のつかない首相がいて、その意志に官僚が従うのは当然という評論家もいる。その評論家は状況の一面しか説明していないが、まさか公私の区別のつかない官僚も首相も「理想の日本人」だと言いたい訳ではなかろう!?
公私の区別のつかない人は官僚になってはいけないし、政治にも関わってはいけないことは、1943年生まれの私達にとって、当時の小学生の常識だったはずだが。
かつて右翼団体代表として改憲を訴えていた「一水会」元最高顧問の鈴木邦男さんは次のように話しておられる。
「学生のときから『この憲法がすべての日本の悪の元凶』だと思っていた。そうも言っていた。 でも今はずいぶん変わりました。『憲法が変わって、それですべてが良くなるのか?』と疑問を持ったのと、(日本国憲法)原案を作った時の理想や夢、いろいろ聞いて変わった。今、我々が憲法を変えようとするときに彼らほどの情熱があるか。彼らほどの夢があるか、理想があるか。僕はないと思う。ただ過去に戻るだけ。今の状況だったら『もっと強い国家にしたいそこの中で我々は生きたい』という方向に行く。国家が強くなったら自分も強くなれるような錯覚を持つ。それは間違っている。むしろ国家が強くなって軍隊を持って法律を作ったら、個人個人の自由はもっと無くなるし、弱くなります。」
ヴォルテールの名言
「偏見は判断を持たない意見である」を
前回紹介したが、鈴木邦男さんは真摯に日本のことを考え続けて自分の考えを大きくされている。一方で自分は愛国者で自分の考えは優れていると根拠もなくエリート意識を持つ人もいる。先日も元首相が年老いてなお、改憲を誇らかに訴えていた。こういう人を元老扱いするメディアがあり、愛国心を吹聴するから戦争もなくならない。自分の偏見の世界に閉じこもるより、鈴木さんのように知らない世界を知ることに感動し、自分を大きくできる人は国民まで幸福にする人だと思う。
NHKは10年前と今年、日本国憲法を記念した番組を放送している。
焼け跡から生まれた憲法草案(動画):07年2月10日放送 放送レポート編集長 岩崎貞明
憲法70年 “平和国家”はこうして生まれた, (動画)
また、
朝鮮戦争以来世界の戦争に加担しているアメリカは、日本にも
自衛隊,
(2)を持たせ、
湾岸戦争,
(2)では、アメリカ国務副長官アーミテージなどが、露骨に日本に「ショー・ザ・フラッグ(艦隊を派遣せよ)」「ブーツ・オン・ザ・グラウンド(地上部隊を派兵せよ)」等、自衛隊の派遣を求め、
自衛隊の海外派兵への道を開いた。これまで軍隊としてアメリカとともに歩む道を阻止してきたのが日本国憲法9条であったが、安倍首相は憲法改正してアメリカとともに堂々と戦う自衛隊にしようとしている。それは彼の尊敬する
A級戦犯を免れて首相にまで上り詰めた祖父岸伸介が
日米安保条約改定(新安保条約),
(2)で、自衛隊がアメリカ基地を守る義務を持ったことに続いて、「安保法制」てアメリカ属国への道をさらに進めるとともに、安保改定60年後の2020年には憲法9条に自衛隊の存在を明文化しようとする安倍首相の愛国心というものだろう。アメリカの属国化と愛国心という矛盾した政策は、日本国の暴走を防いでくれるという安心感が少しはあるとしても、自衛隊はアメリカのためにあるという不安は増す。
「自衛隊と憲法」日米の攻防(動画)は、これまでの政府とアメリカとの交渉の苦労を伝えてくれる。
資料: NHK「自衛隊と憲法 日米の攻防」(動画)
日本国憲法 70年の潮流~その時、人々は~, (動画)
憲法を守ることは、いかなる状況に置かれても戦争をしないことと、国民の生存権を含む基本的人権を守らせることだ。公私の区別もつかず、個人と組織の責任関係も分からない首相に国会で民主主義が破壊されても、優秀と言われる官僚は、国民に責任を持つよりも、自己保身して首相に従うのが仕事の義務だと思っている。”核兵器禁止”決議にさえアメリカに気兼ねして反対する。このような腐った社会を後世に残してはいけない。残念ながら今の憲法を守るのは政権与党の議員でもない。彼らにも憲法や民主主義に対する見識はないし、身を犠牲にしても国民を守る気概はない。憲法を守るのは、私たち一人一人が後世のためにできる仕事だ。
資料: ”核兵器禁止”決議 日本はなぜ反対?(動画)
ニュースZERO NEWS23 報道ステーション ニュース9
風をよむ『たいまつとSEALDs』
風をよむ『最近の国会審議』
初稿 2017.5.14