自然とデザイン

自然と人との関係なくして生命なく、人と人との関係なくして幸福もない。この自然と人為の関係をデザインとして考えたい。

人も国も他者を大切にして生きよう~宗教と欲望と植民地支配

2018-06-26 22:43:20 | 自然と人為

 私のモットーは「人は一人では生きられない。だから他者を大切にして生きる」ことであるが、これに75歳にして不染鉄に教えられた「芸術はすべて心である」から、「人生は全て心である」と悟っている。余生を他者との楽しい思い出に感謝し、「人は何故他者を大切にしないのか」を考えながら、これまで生きて来れた幸せを味わいたい。

 若い頃から「競争」はあまり好きではなかった。競争にはルールがあり、ある目的や種目により競争があるときには、「人に勝つこと」とは、「自分を鍛えて自分に勝つことである」と思ってきた。自分を鍛えなくて人に勝てるはずがないし、自分を鍛えるには怠け者だから競争が嫌いだったのかもしれない。自分の思うようにこの世の中が動くはずがない。 しかし/だから? 自分の思いや感情で人を動かす者が秀でた人だと思われている。

 この地球は誰のものでもない。生きてきた環境や常識によって、自分の住んでいる土地は自分の国であり、自分のものだと思っているに過ぎない。この地球はあなたが作ったものではない。人類はこの地球を自分の所有のように思っているが、自然災害からは逃げるしかない。仮想敵国を作って軍にお金を使うよりも、その軍を自然災害に対する緊急救助隊にして、世界の人々が助け合うべきだ。難民を拒否する権利は人類にはない。こんな簡単なことさえできない人類は、ヒトというより動物の段階にまだある。

 人類は集団をつくり、集団は組織や国を作ってきた。国も闘争に勝ち残った者の王制独裁から、一部の代表で国のあり方を決める議会制へ、議会制も特権階級により構成されるものから一般国民の参加へと移行しつつある。しかし、国によって時代によって一党独裁から、今の日本のように独裁に近い議会を生んでいるが、選挙制度と国民の民度民主主義(民主主義の原則)の理解の程度】によって選出される議員の民度も違う。今の日本の国会議員にはヤクザの親分の様な言動をする議員がいるが、どうしてこんな人を国民は選ぶのか。議会や議員は自分の利益のために働きさえすれば良く、政治には関心がない人が多いのかも知れない。しかし、利己主義の動物の殻を脱皮できない人間が、人間も動物だと開き直れば進歩はそこまでだ。
 社会には強い人も弱い人も、尊重し合って生きていけるルールが必要だ。ルールなしで競争するのは暴力であり、国がルールを無視すると戦争になる。人類の進歩とは、人も国も他者を大切にして生きるルール作りが常識となる時代に向かって進み歩むことである。

 明治維新は日本の夜明けとされ、NHKの日曜日の大河ドラマでよく取り上げられる。しかし、開国した日本は何故、日清戦争や日露戦争のように大陸と戦争をし、それがアメリカとの太平洋戦争にまで拡大したのだろうか。明治維新の頃、アジアはヨーロッパにより植民地化された時代であり、植民地化はある意味でヨーロッパの常識であった時代と言えよう。
  イギリスの植民地(パキスタン、インド、バングラデシュ、ミャンマー、マレーシア)
  フランス(カンボジア、ベトナム、ラオス)オランダ(インドネシア)スペイン~米国(フィリピン)

  
   参考:19世紀末から20世紀初頭の東南アジアの植民地支配
    日本の戦争の歴史
    ③オランダの台頭/江戸幕府、鎖国政策へ
    ④イギリスとフランスの時代/江戸時代の平和

①ヨーロッパの世界侵略開始以前
 「世界進出を本格的に開始する前のヨーロッパは、各地域を支配する王国が存在し、それらの王国はキリスト教を国教(国の宗教)に定めて、ローマ法王庁という巨大なキリスト教団の影響下で国家を運営していた。・・・1400年代後半になってくると、オスマン帝国というイスラム教勢力が拡大し、キリスト教徒であるヨーロッパ人は陸路をあきらめ、アジアの品々を求めるために、代わって海路を利用することになる。これが、以後500年間に渡り世界中を席巻したヨーロッパの植民地争いの動機だった。」
 「信じる者こそ救われる」という1神教は、無宗教の私からすれば「もっと自己を清め高める宗教」のはずだと思うが、聖地、エルサレムを同じくするキリスト教、イスラム教、ユダヤ教は自己中心的で他者を認めない近親憎悪の宗教のように見える。「他者を尊重する」のは多神教と言えるかもしれないが、信じるものが神である宗教には、危うさを感じる。「他者を尊重する」ことを深めるのは哲学であろう。

②スペイン・ポルトガルの大航海時代/信長 秀吉 家康
 1400年代末期から1600年代中頃までは一般に『大航海時代』と呼ばれ、イベリア半島のスペインとポルトガルの時代だった。この二国はイスラム勢力を追いだした後に、海路でアジアに行く便利な立地と海外からの利益を求め、香辛料の生産地で有名だったインドを目指した。
 スペインは「古代のプトレマイオスの世界地図地球球体説に影響を受けて、西廻り航路で東洋に到達出来ることを提唱したトスカネリ世界地図(2)に教えられたイタリア生まれのコロンブスがスペインのイザベル女王に提案した。女王は国土回復運動/レコンキスタでイスラム勢力の最後の拠点グラナダを陥落させた1492年にその提案を受け入れ、コロンブスは大西洋を西へ向かった。それがアメリカ新大陸の発見につながるのだが、コロンブスはインドの海岸に到着したと死ぬまで思っていたという。参考:西インド諸島がアメリカにあるのはコロンブスの勘違いが由来
 一方、ポルトガルは「権力基盤を強化拡大するためカトリック教会・修道院を保護し、1249年にイスラム勢力を完全に追い出したが、15世紀になるとアフリカ西岸進出を開始、1482年にはアフリカ西岸のギニア湾に面したエルミナ(現在のガーナ)に要塞を建設し、金・黒人奴隷・胡椒・象牙などの獲得拠点とした。このころから明確にアフリカ南端への到達と、インド洋への進出をめざすようになり、1488年には喜望峰に到達した。」
 そしてコロンブスの西インド諸島の発見を契機にローマ法王庁も関与して、スペインとポルトガル両国間で成立した支配領域を最終的(1494年)に西経46度37分を分界線とし、そこから東で新たに発見された地はポルトガルに、西の地はスペインに権利が与えられることにしたトルデシリャス条約を結び、後にスペインがアメリカ大陸の大部分、ポルトガルがブラジルを領有する根拠となった。まさに大航海時代のスペインとポルトガルは、ローマ法王庁も関与して「トルデシーリャス条約」で地球まっ二つの山分けしたことになる。

 日本の統一がなされつつあった戦国時代の終わり1549年に、ポルトガル人宣教師フランシスコ・ザビエルが、織田信長に接近することで日本にキリスト教を布教しようとし、1603年来日したルイス・ソテロが徳川家康や秀忠に謁見、日本での布教に従事した背景には、本人の人格は別にして、ローマ法王庁とスペイン・ポルトガルの「宗教と欲望と植民地支配」の思惑があった。
 参考:豊臣秀吉の朝鮮出兵の真実を、日本人として知って置くべき!
       学校では教えてくれない豊臣秀吉が朝鮮に出兵した真実
       学校よりわかる!ザビエルが日本に来た理由と隠れキリシタンの歴史
       支倉常長・慶長遺欧使節の足跡を辿って
       歴史から日本を学ぶ~400年後の真実:支倉常長とガリレオ


 少し長くなった。⑤アヘン戦争/黒船が来航、明治維新へからは次回に回させていただく。


初稿 2018.6.26 修正 2018.7.2



明治150年、憲法を考える。

2018-06-20 14:31:19 | 自然と人為

 今年は明治150年と言われるが、明治改元の10年前、1858年に日本最初の通商条約「日米修好通商条約」が締結され、翌年1859年、横浜港からの貿易が始まる。ペリーの黒船来航 1853年が鎖国から開国へと促したが、国内政治の安定まで15年も必要としたことになる。

 今日では情報技術の革新により、国民が様々な情報に接することができ、国の権力者が国民を情報操作し難くなっている。NHKが政府寄りの情報、または偏った固定観念の情報を流すにしても、その評価は歴史がするものであり、放送番組の全てを国民が検証できる体制を整備することは、これから益々重要となる。前回は私がNHK番組を批判したが、番組の録画があれば、国民全体で考えることができる。受信料を払っている人は録画を観る権利があると思っていたが、NHK番組の批判に対しては国民全員が録画を観る権利がある。批判のみが独り歩きすることは、NHKにとっても国民にとっても不幸なことだ。 

 「NHKスペシャル これまでの放送」をクリックし、左欄の「歴史・紀行」をクリックすると、下段に「11」までの数字が表示される。これをクリックすると、数字が動くので「14」をクリックすると、最上段にNHK JAPANデビュー第1回『アジアの“一等国”』(NHK放送内容)が表示される。これをクリックすると下段に4回分の放送が表示される。この放送内容とNHKオンデマンドをリンクさせれば、見たい番組を自由に選択して見ることができる。私はある番組を観たいと思って1か月分の契約をしたが、一つの番組を観ただけでオンデマンドの契約を忘れれてしまったことがある。気が付いて契約を解除したが、番組1回見るのに数ヵ月も契約金を払うことになってしまった。「NHKスペシャル これまでの放送」とオンデマンドをリンクすれば大いに利用したいと思う。NHKの情報を国民が共有し論議できる時代が早く来て欲しい。

 明治以降の日本の歩みを考えるNHK番組「JAPANデビュー」が2009年に放送されている。ネットで公開されているので紹介させていただく。NHKの放送をコマーシャル収入に利用するのであろうが、コマーシャルがしつこすぎると商品イメージを悪くするので、コマーシャルも品よくお願いしたい。根気よくコマーシャルを消したら、私のパソコンではコマーシャルは気にならなくなった。皆さんも快適に観れますように。
 NHK JAPANデビュー 第1回 ~アジアの“一等国”~
 NHK JAPANデビュー 第2回 ~天皇と憲法~
 NHK JAPANデビュー 第3回 ~通商国家の挫折~
 NHK JAPANデビュー 第4回 ~軍事同盟 国家の戦略~

 なお、この番組は反響が大きかったようで、【NHK一万人訴訟番組】として台湾を扱う「アジアの一等国」の番組、そして「天皇と憲法」の番組は中国でも紹介されている。コマーシャルが気になる方は、こちらをどうぞ。
 NHK JAPANデビュー第1回『アジアの“一等国”』(動画)2009年4月5日
 NHK JAPANデビュー第2回『天皇と憲法』(動画)2009年5月3日

 いろいろな問題提起については時間があれば考えることにして、ここでは「憲法は国家権力を拘束する」という世界の常識を無視した安倍首相を日本のメディアは問題にしない酷い状況にあることを警告している動画を紹介しておく。日本人は敗戦直後は国民主権や戦争放棄の大切さに気が付いたのだろうが、戦後70年もすれば、政治家も3代目の世襲が多くなり、それを偉いと地域では大名みたいに仰ぎ見る封建的な性分は変わっていないのだろう。3代目も大名気分で自分の理想の国造りが責任と思っている。そのことにメディアも怒らない。これでは国民は首相のもとに自由を失ってしまう。国が国民の支配を始めている。その危機感から私も政治については語らないが、安倍批判だけはしてきた。皆さんにも警戒して欲しい。

 2013年06月17日、小林節慶応大学教授が日本記者クラブで会見
  「憲法が何であるかを理解しないまま議論が進められていることが問題」
 「憲法は国家権力を拘束する」、「衆議院の解散、誰に解散権があるのか憲法にはない」等、憲法学者として小林節教授は「護憲的改憲論」と自称され、その意見は概ね理解できる。しかし、私は憲法の「戦争放棄」を積極的に評価していて、戦争は自国も相手国も国民に死を伴う犠牲を強制するもので、私は「自衛のための戦争」も認めない。
 世界のどこかでは小競り合いがあり、そこに日本の自衛隊の出兵が求められることはあろうが、「戦争放棄」の憲法を掲げてきっぱり断ることが、日本が戦争に巻き込まれない秘訣である。「戦争放棄」の丸腰の日本を武力で占領する国があれば、世界がこれを認めないだろうし、丸腰を武力で攻める国が今の時代にあるだろうか。日本国民は世界の平和に貢献する国民であり、これを他国が支配することは世界の恥であるように世界が認める政治を目指して欲しい。インターネットの普及により、国が国民を情報誘導することも困難になっている。核兵器の使用は禁止して当然だが、その所有は第3次大戦の様な世界戦争の抑止力になっている。これが「自衛のための戦争」を認めない私の理由だが、残念ながら、世界に軽蔑される政治を馬鹿な安倍首相は目指している。
 総理大臣が立憲主義からの離脱を表明しても問題にならない国 2013/07/06
 立憲主義を否定する首相が「憲法を解釈するのは私だ」 2014/02/15
 立憲主義と「決めるのは私」の問題点 2014/06/14

 ビデオニュース 2013.05.03【 世界は日本国憲法をどう見ているのか 】
 「安倍首相はまず、憲法改正のために衆参両院の3分の2以上の賛成を求めている第96条の国会発議の要件を引き下げ、過半数の賛成で可能にする改正の意向を示している。しかし、言うまでもなく安倍首相、そして自民党の目指す憲法改正の最終目標は第96条ではない。自民党は既に、基本的人権条項などを削除した独自の日本国憲法改正草案を発表しているし、戦争放棄を謳う憲法第9条の改正が自民党の長年の念願であることも周知の事実である。」
 2005年の日本の政治-小泉首相退陣、新政権発足へ-
 自民党改憲案の粗悪な人権感覚 (動画)2013/02/23
 安倍首相 06年9月28日会見 (動画)
 第2次安倍内閣発足 首相就任会見 (動画)2012/12/26


初稿 2018.6.20


軍は自国民にも銃を向ける~韓国光州事件から米朝和解まで

2018-06-18 22:54:13 | 自然と人為

 2018年6月12日のテレビは、各局共に「米朝首脳会談」を報道した。 NHK番組は受信料を支払っている公共放送にもかかわらず、ネットで録画を見ることができない。かつて私はNHK番組をYouTubeに登録(2)していたら、すべて削除された。これはどうもNHKの横暴のようだ。

 NHK「国際報道2018」:徹底検証 米朝首脳会談では、アメリカABC放送の「60年の敵対関係が終焉を迎えた」との報道を紹介している
  
  
が、この番組の司会者花澤氏は冒頭から『共同声明では、焦点となった非核化について具体的な行動や検証方法についての言及はありませんでした』とし、『米朝歴史的和解』を全く評価しない態度で番組を進行させた。核は使用できない兵器である。北朝鮮が核を使用した途端に多くの人命が失われるとともに、北朝鮮も潰れる。核保有の大国が核保有の小国に非核化を迫り、その実現の具体化に焦点を当てて問題にすること自体がナンセンスであり、米朝首脳会談の目的を全く把握していない。これでは専門家の資格がないし、NHKも「国際報道」する資格がないと言わざるを得ない。
 この番組では金正恩が2016年の施政方針に当たる「新年の辞」で「第1の国事」として「先軍政治より経済強国」を最重視する姿勢をアピールしたことには全く触れず、「北朝鮮の態度は変わっていない」とし、米ソ冷戦構造のままを平和だとするかの如く、対米従属ではない真の平和への望みを無視した最もひどい報道であった。
 参考: 2016/7/8:金正恩氏の露骨な「軍イジメ」…北朝鮮の先軍政治に異変
      2016/12/20:金正恩氏の暴走が先軍政治を超える時

 ネット上で「米朝首脳会談」を『米朝歴史的和解』として報道したのは「日刊ゲンダイ」の下記の記事であった。
 『会談冒頭にトランプは「素晴らしい議論をし、成功を収めるだろう。素晴らしい関係を築くであろうことに疑いはない」と語った。
 正恩が「ここまで簡単な道のりではなかった。我々には足を引っ張る過去があり、誤った偏見と慣行が時に目と耳を塞いできたが、あらゆることを乗り越えてこの場にたどり着いた」と応じた。静かに聞いてきたトランプは「その通りだ」とうなずくと、2人は再び握手。トランプは満足げに親指を軽く上げ、「サムアップ」のジェスチャーを見せた。』
    2018年6月12日「『米朝歴史的和解』の舞台裏と取り残された日本の命運

 日本の各放送局はこの金正恩の挨拶を無視したが、会談冒頭に世界に向けてこのような正直な挨拶ができるとは素晴らしい。トランプが何を満足したかは別にして、このような挨拶ができる米朝会談を準備したトランプと金正恩を私は見直した。トランプがこれまでの大統領と違うのは、その人の個性もあろうが、「アメリカに二大政党制はない。超党派のCFR(外交問題評議会)があるのみ」で、彼はCFRとは距離を置いているのかもしれない、という気がする。
 参考:アメリカの中枢神経 外交問題評議(CFR)とは?
    
 軍の反発を抑えて、軍主導の政治を経済主導に切り替えることは、何処の国でも大変なことだと思う。クーデターさえ起こりかねない。
 朝鮮半島の南北の統一には、まずいずれも徴兵制を廃止し、軍を世界災害緊急救助隊の一員とし、軍に属する多くの隊員を経済主導の貢献者として位置づけ、南北融和を図る必要があろう。

 軍の身近な問題として、日本ではトランプ大統領の米韓演習中止の可能性を聞き、2018年6月15日の報道「自衛隊、ミサイル防衛影響懸念」では、「米韓の合同演習と日米韓の共同訓練は3カ国の安全保障を確保していく上で、重要な柱だ」と防衛相が強調している。軍は仮想敵国がいて存在する。仮想敵国は空想によっていくらでも大きくでき、その空想を膨らますのは軍の支配者と軍を利用する国の支配者だ。米軍においても1972年の沖縄返還にあたり、米大使が軍主導の日米合同委見直しを提起し、米軍抵抗で頓挫したことがある。

 日本も韓国も軍主導の政治を経験しているし、クーデターも経験していることを忘れてはいけない。米朝首脳会談行われた2018年6月12日に、NHKアナザーストーリーズ「その時、市民は軍と闘った~韓国の夜明け 光州事件(動画)が放送されたのは偶然ではないと思う。韓国の軍主導政治を終わらせたのは南北和平を進めた文在寅大統領が誕生してからだ。軍は国民を守るために存在すると言いながら、国が持つ暴力装置であり、国民を支配する組織にもなる。人類の進歩は国が暴力装置を持つことを恥と思うことから始まる。
 参考:2017.5.19 文在寅大統領「現代史の悲劇だった」 民主化運動を弾圧した光州事件から37年(声明全文)
    2017.5.18 文在寅の正体〜「親北・反日」とレッテルを貼って片付けるな!
    2018.5.4 「人が住むに値する世の中に」文在寅大統領が南北和平を進める理由
    「済州4.3事件」70周年を迎えた韓国の今 -国家による暴力と分断を越えて
    2017/10/25 朴槿恵氏を罷免に追い込んだ「ろうそく集会」 初開催から1年
    2018.6.13 ハフポスト:「朝鮮半島の完全非核化」米朝首脳会談の合意文書に盛り込む
    2018.6.14 ダイアモンドオンライン:米朝首脳会談、「具体性なし」でも評価すべき理由


 なお、「米朝首脳会談」の開催前に『米朝歴史的和解』を予測していたフリーの国際情勢解説者 田中宇がいる。
 2018年5月29日 田中宇「グレイトになって戻ってきた米朝首脳会談
 2018年6月 9日 田中宇「在韓米軍も在日米軍も撤退に向かう

 ここでは「米朝首脳会談」に関するテレビ番組と朝鮮半島の「南北分断」を考える資料を集めておいた。

「深層NEWS 2018年6月 5日」 米朝首脳会談 いまはどっちのペース?
「深層NEWS 2018年6月12日」 米朝首脳会談 成果はあった?
「深層NEWS 2018年6月13日」 米朝首脳会談 北朝鮮“脱・先軍政治”へ?
「深層NEWS 2018年6月14日」 米朝首脳会談 北朝鮮 不安は消えたか 
「深層NEWS 2018年6月15日」 米朝首脳会談 北朝鮮 拉致問題?

北朝鮮と韓国の国境「38度線」の謎
北緯38度線
なぜ朝鮮半島は38度線で分断されたのか?を考えてみた。
アメリカ軍に認められなかった左右ごちゃ混ぜ統一政権
朝鮮人民共和国
北朝鮮の正式名称「朝鮮民主主義人民共和国」
朝鮮半島を分断する38度線の秘話


初稿 2018.6.16 更新 2018.6.18


憲法の「平和主義」と「戦争放棄」の違い

2018-06-12 21:19:24 | 自然と人為

 「日本国憲法」の三原則を「国民主権」、「基本的人権の尊重」、「平和主義」と説明する教科書等(2)が多い。しかし「平和主義」は主義、主張に使われるように、「考え方を表現」する言葉であり、国民・国家の「権利と義務」を表明する法律用語としてはきわめて曖昧であり、国民・国家の行為としての「戦争放棄」と明確に説明すべきだと思う。
 日本国憲法の3つの柱
   [1] 国民主権 (主権在民)
   [2] 基本的人権の尊重
   [3] 戦争放棄 (平和主義)
     憲法制定当時の新聞の一面には、
      象徴天皇、主権在民、戦争放棄
     いわゆる三原則が踊っていたという。

 戦後の民主主義教育を受けてきたものとして、なぜ憲法を変えたい人がいるのか、しかも人類の理想の行為を目指す憲法9条をなぜ変えたいのか、さっぱり分からない。
  
  
                      1947年 中学校教科書

 私は憲法学者ではない。憲法について勉強しておく責任と義務を自覚している国民の一人である。国民には他者に厳しく自分には優しい人、他者に優しく自分に厳しい人、他者に優しく自分にも優しい人、いろいろいるが、私は他者にも自分にも優しい(甘い)と思っている。集団の一人として生きている我々は、「競争」という教育を受けるが、「競争」とは他人に勝つことではなく、ある目的に対して自分に勝つことだと思っている。しかし、集団で生きていくとき、人は他人に勝ち、他人を従わせることを競争に勝つと思いがちだ。それは人が人間ではなく動物であることの証であり、私は人間でありたいと願っている。

 なぜ憲法を「戦争放棄」ではなく、曖昧な「平和主義」で説明するのか、なぜ自民党は「憲法の自主的改正」を結党以来の「党の使命」とするのか、前回は憲法について考える資料のみを紹介したが、ここではNHKの放送した憲法に関する番組を集めて、もう少し考えてみたい。

 今年(2018年)は憲法施行から71年だが、安倍晋三首相は2020年の東京オリンピックまでに憲法9条を改正したいと表明している。これまでも、1949年から1964年(東京オリンピック開催)の15年間、改憲論議があったことを、NHK「憲法と日本人~1949-64 知られざる攻防(動画)は教えてくれる。
  
憲法9条
 (1)日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又(また)は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。 
 (2)前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。


 なぜ1949年から「憲法の自主的改正」の動きが始まったのか? まず、1948年、A級戦犯の東條英機ら7人が処刑され、翌日には岸信介らA級戦犯容疑者19人をGHQは釈放した。
  1948/12/23 東條英機・広田弘毅ら7人、絞首刑執行
  1948/12/24 GHQ、岸信介らA級戦犯容疑者19人を釈放と発表
 そして1949年10月1日、北京で「中華人民政府協商会議」が招集され、ここで中華人民共和国が成立する。
  
 さらに1950年から朝鮮戦争(2)が始まる。これらが「戦争放棄」の日本の憲法を、アメリカに従い戦争ができる憲法に変えようとするアメリカの動きにつながる。
  
 
 岸信介とCIAの密接な関係(2)が噂されているが、戦後の日本はアメリカの産軍複合体(2)に支配され続けてきているようだ。すなわち、一方では戦後の憲法はアメリカに押し付けられたと言いながら、一方ではアメリカの圧力で戦争が出来る国になるように「憲法の自主的改正」と称して憲法9条を変えようとしている。

 1950年6月、朝鮮戦争が勃発し、アメリカの要望により警察予備隊が発足し、1952年に保安隊(現在の陸上自衛隊)に、そして1954年に国防を任務とする自衛隊に改組された。   
 国防のために自衛隊があるのは当然だと考える人もいるだろうが、戦争を予期した備えではなく、戦争を放棄した未来に貢献すべきだ。
 したがって、世界で戦争をしているアメリカに従属して海外派兵への道を開く自衛隊ではなく、世界の災害の救助に貢献する災害緊急救助隊に、さらに改組するか職務を変更べきだと私は確信している。

  広瀬久忠 公職追放(1946年8月-1951年8月)改憲派
  
  憲法はアメリカに押し付けられたものではないと報告し解散

 2016年2月25日放送の報道ステーション『岸時代の調査会』の内容を文章にした「憲法9条は日本人の発案だった!」とその一部の動画「岸時代の憲法調査会の肉声テープ」も貴重な資料である。NHK「憲法と日本人~1949-64と合わせてご覧いただきたい。
 また、1993年2月5日に放送されたNHK「日本国憲法を生んだ密室の九日間」は、ポツダム宣言を執行するために日本で占領政策を実施したGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)が毎日新聞のスクープ記事(1946年2月1日)、日本政府の「憲法問題調査委員会試案」に関する「ホイットニー・メモ(1946年2月2日)によりGHQ憲法草案を作成した経緯を知らせてくれる。

 なお、ポツダム宣言では、「日本に平和と安全と正義の新秩序が確立され、戦争能力が失われたことが確認される時までは、我々の指示する基本的目的の達成を確保するため、日本国領域内の諸地点は占領されるべきものとする」とし、第10条「・・・日本政府は日本国国民における民主主義的傾向の復活を強化し、これを妨げるあらゆる障碍は排除するべきであり、言論、宗教及び思想の自由並びに基本的人権の尊重は確立されるべきである」と明文化している。また、第11条「日本は経済復興し、課された賠償の義務を履行するための生産手段、戦争と再軍備に関わらないものが保有出来る」ともある。
 また、「日本国憲法の誕生」では、日本国憲法の制定過程に関する概説と貴重な資料を公開していて、「GHQ草案と日本政府の対応」「極東委員会の設置とGHQとの会談」,「極東委員会の関与」等、参考になる資料が多い。

 昨年(2017年4月30日)に放送されたNHKスペシャル「憲法70年 平和国家はこうして生まれた」(動画),論評(NHKが“日本国憲法はGHQの押し付け”を真っ向否定する検証番組)や2007年2月10日放送のNHK「日本国憲法の草案はメイドインジャパン」(動画),(紹介)、そして日本国憲法誕生 全編(2007年4月29日)(動画)もあるので、参考にしていただきたい。

 戦争で国家を動かすものは利益を上げるかも知れないが、戦争するどちらの国民も殺し合う悲惨な現場がある。戦争はいかなる国民も不幸にする。憲法の問題は戦後の問題というよりも、戦前の問題、さらには明治から150年の日本の歴史まで考えてみる必要がありそうだ。そのことは今後また、考えて見たい。

初稿 2018.6.12


ジョン万次郎と福沢諭吉

2018-06-08 18:51:10 | 自然と人為

 人それぞれの人生は、生きた時代がどんな状況であっても、素直で美しい心と好奇心、そして頑張れる能力があれば、その心と能力が人生を豊かにしてくれる。それが人類に求められる常識とすべき理想のはずだ。しかし、その理想を破壊する人類の様々な欲望と他者のために自己の欲望を抑えようとしない利己主義が、世界で闊歩している現実もある。なかでも戦争という現実だけは絶対悪であり、人類に許されることでは絶対にない。戦争は人を殺し、生活を壊し、自然までも破壊する。自然の覇者のつもりで思い上がり、自然を自分の都合で変えることを進歩だと信じている人類だが、その人類に戦争を許す理由など、この世にあるはずがない。この世の決定権は人類しか持たないかのごとき、人類同士のエゴと理屈による戦争を指図する者は、自然界から追放されるべきだ。人類は自然界に生かされていることを、決して忘れてはいけない。

 ジョン万次郎こと中浜万次郎は、文政10年(1827年)1月1日に今の高知県土佐清水市中浜で貧しい漁師の次男として生まれた。9歳の時に父親を亡くし、14歳だった万次郎は仲間5人で漁に出て遭難。数日間漂流した後、太平洋に浮かぶ無人島「鳥島」に漂着し、過酷な無人島生活を生き延びた。漂着から143日後、万次郎は仲間と共にアメリカの捕鯨船ジョン・ホーランド号によって助けられ、船長の誘いに応えて、一人だけアメリカに渡る。遭難して生き延びたことは運も大きいだろうが、アメリカに渡ることができたのは、英語も分からなかった万次郎の心と能力が外国人にも認められたからだと思う。少年期の5か月間の運と心と能力が、万次郎の人生を大きく変えることになる。
 
            捕鯨船ジョン・ホーランド号の船長
 
 元船長宅が老朽化し、売りに出されたのを聞いた聖路加国際病院の日野原重明理事長が発起人となり、寄付金を募り、修復がなされ『ホイットフィールド=万次郎友好記念館』として、2009年5月7日に開館。
 
        16歳 小学校 19~21.5歳 捕鯨船の船乗り

 捕鯨船で世界を廻っていた万次郎は、日本の鎖国が遭難した船乗りを助けないことを知り、「私は船乗り達が保護されるよう、日本を開港させるつもりです」と船長に手紙を出している。その志を持って22歳に帰国を決意した万次郎は、カリフォルニアの金鉱で現在の日本円にして600万円の帰国資金を稼ぎ、1851年1月に琉球着(24歳)、1852年7月に土佐に帰る(25.5歳)。日本に着いて1年半も土佐に帰れなかったのは、取り調べがきつかったというより、方言が通じなかったことがあろう。行きも帰りも言葉には苦労したが、素直な心は通じたのではないかと思う。万次郎が土佐に帰国した翌年(1853年6月3日)に黒船来航(2)。日本の、万次郎の、福沢諭吉の将来を大きく変えることになる。
 
 参考: その時歴史が動いた「ジョン万次郎 漂流民の挑戦/鎖国の扉を開け」(動画)
     <ペリー来航>が運命を変えた」ジョン万次郎の挑戦(下)
     ジョン万次郎の生涯(2)(3)(4)(5)
     歴史秘話ヒストリア「ジョン万次郎」(1)(2)(3)
     ジョン万次郎(坂本龍馬人物伝)
     ジョン万次郎に影響を受けた幕末の志士
     「福沢諭吉」と「ジョン万次郎」
     日米交流 2、和親条約と開国
     黒船はどうやって日本に来たの?~捕鯨の街と日本との意外な関係
     ペリー提督、5代目の子孫に感動。涙が出ました。

 「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らずと云えり」で有名な福沢諭吉は、万次郎が生まれた8年後の1835年1月10日、大阪玉江橋北詰中津藩蔵屋敷に下級武士の次男(末子)として生まれた。数え歳で3歳の時、父が病死したために母子6人(2男3女)は中津に帰り、長男の三之助(万次郎と同じ年)が家督を相続した。
 福沢諭吉が漢学の勉強を始めたのは人より遅く14,5歳からというから、万次郎が漁師として海に出て遭難したころから勉強を始めたことになる。諭吉は漢学で頭角を現し、万次郎は捕鯨船とアメリカで英語とアメリカを実地に学んだことになる。

 福沢諭吉の『天は人の上に人を造らず』は、「門閥制度は親のかたき」と叫んだ福澤の生涯をある意味で象徴した言葉と言われ、「アメリカ独立宣言」に由来している。福沢諭吉がアメリカ独立を紹介した『西洋事情』は慶応2年(1866年)で、明治改元(1868年)の前に出版されている。『西洋事情』初編二p6左(コマ番号5/54)には次の言葉がある。「天の人を生ずるは億兆皆同一轍にして、之に附与するに動かす可らざる通義を以てす。即ち共通義とは人の自から生命を保し自由を求め幸福を祈るの類にて、他より之を如何ともす可らざるものなり」と。この現代語訳は幸福雑記 福沢諭吉に紹介されているが、日本国憲法13条の「個人の尊重、生命・自由・幸福追求の権利の尊重」にも通じている。憲法13条「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」


 参考:福澤諭吉の生涯
    西洋事情
    福沢諭吉の儒教批判(1)(2),(3)(4)
    哲学の私情は立国の公道
    「知られざる福沢諭吉 下級武士から成り上がった男」の品格(1)(2)(3)
    福沢諭吉「天は人の上に人を造らず」で門閥制度を嫌った啓蒙思想家
    孔子は働く人の水先案内人
    福沢の思想には儒教的な所がかなりある
    福沢諭吉の家族愛
    福翁自伝
    福沢諭吉の生涯

 日本国憲法は国民主権、基本的人権の尊重、戦争放棄の「三つの基本原理」を持つ。明治憲法のもとでは天皇が国の主人公(主権者)だったが、国民が自ら主人公となった。また、戦争が国内外に多くの犠牲者を出したことへの反省から、戦争の放棄をうたった。

 しかし、その憲法は戦後の占領下に総司令部(特にマッカーサー)に押し付けられた「押し付け憲法」なので自主憲法を制定すべきを党是とする自民党議員たちがいる。彼らの自主憲法とは日本の伝統の明治憲法に帰れというものと、日本の独立のために自衛隊を軍隊として認めよというものだが、自衛隊は朝鮮戦争の1950年,日本の治安維持と防衛のためマッカーサーの指示により設置した「警察予備隊」を起源としている。日米同盟で自衛隊をアメリカのために戦わせたい意図と日本の独立とは矛盾する。戦争を前提にした考えと戦争放棄も矛盾する。戦争犯罪のA級戦犯から解放され日本の首相になった岸信介が「安保条約改定」「自主憲法制定国民会議」(2)を創設したのも、「アメリカのためになることが日本のためになる」ということだろうか。
 NHK番組「憲法・70年の潮流」(動画)があるが、NHKは憲法を守ってきた歴史を称賛しないで、何を根拠に改正させたいのか? と私は思った。本当の国民のための政治がされているだろうか。福沢諭吉が怒っていた門閥政治が、現代でも日本を危うくしている。今、日本の政治は国民支配に向かっていて危ない。
 参考:自由なき自主憲法か、自由ある占領憲法か

 ドイツのヒットラー政権は戦後の賠償とインフレに対する不満から、個人の自由と責任から逃れたドイツ国民が求めたという。エーリッヒ・フロムによって1941年に発表された『自由からの逃走』は、「ナチズムに傾いていくドイツ国民とそれを先導した独裁者の心理状態を詳細に説明」している。「天は人の上に人は造らない」が、強欲な政治家や国民という集団は「人の下に人を造る」。集団の動きに個人は弱い。現代の日本は国民の不安からというより、国民を支配したい強欲な政治家が官僚やメディアを支配している。どうか日本では個人の自由と責任と美しい心を忘れないでいただきたい。このことはいずれ書き残さねばならないと思っているが、ここでは話題がそれ重い問題になるので資料だけを紹介させていただく。
 参考:民主主義は独裁者を生み 独裁者は民主主義を破壊する
      ~ヒトラー・トランプ・安倍政権に共通する思考~
    戦後日本のコントロール
    「憲法と安保法制」2015.6.15(動画)
    安保法案「憲法違反」:安倍政権「独裁の始まり」「バカ殿を許すな!」
    安倍首相の祖父・A級戦犯岸信介の正体(前)(後)
    【妖怪・岸信介の子孫】安倍 × 加計の蝕害/加計孝太郎も岸の孫
      2010年(平成22年)2月2日
       ①「頑張れ日本 全国行動委員会」結成集会
       15:17~ 安倍晋三の基調講演(動画)
    日本国憲法の誕生
    (教えて 憲法)GHQに押しつけられたの?

 現在の憲法がアメリカに押し付けられたものであろうとどうであろうと、国民にとって良いものは良い。嘘を嘘で誤魔化そうとする政治問題から大学問題まで、今のこの国の支配者の堕落は目を覆うばかりだ。美しい心のない者に、国民のための美しい憲法は作れない。


初稿 2018.6.8