「貴重なご意見かと思われます。ここに記された先生の学説を発表して頂けませんか?今年6月に京都で、豚の新興・再興感染症に関する学会が開催されます。日本学術会議の後援も決まっております。OIEのバラ氏の基調講演も行なわれます。おそらく先生が話したい動衛研の人も多数参加されると思います。そのような学会の場で、是非先生の発表を聞かせて頂きたいです。よろしくお願いいたします。」
また、「武士道」と「茶の本」にも下記のコメントをいただいている。
「(韓国で)ワクチンを接種しているにもかかわらず、発生が継続している理由を教えて下さい。よろしくお願いします。」
私は獣医ではなく豚についても現場を知りませんのでお役に立てるかどうか不安ですが、取り急ぎ韓国の最近の口蹄疫発生について調べましたので、「韓国における口蹄疫発生について(2015-03-20 更新)」に追加して私の考え方を述べておきたいと思います。せっかく発表の機会を与えていただけるのであれば前向きに検討したいと思いますが、現在、足が不自由で外出していないことと、参加させていただいてもこのブログで申し上げていること以上のことはご説明できないと思います。しかもなによりも大切なことは、このブログで紹介していることは、私の学説ではなく科学論文が発表されているのに、それを検討もしていないし、採用もしないで、被害を拡大する可能性が高い危険な口蹄疫防疫指針を改正しようともしない農水省の問題点をここでは指摘しています。しかし、ブログだけではなく学会で誰かが発表することは大切なことだと思います。まずは韓国の最近の口蹄疫発生について以下の私の考えをどう評価されますか、意見交換からさせていただきたいと思います。意見交換につきましてはメール(mitani3277@globe.ocn.ne.jp)でも結構ですよ。意見が一致したら私が参加できない場合は連名であなたに発表していただくことも含めて検討させてください。
昨年9月(2014-09-21 更新)の段階で「7月24日に韓国で豚の口蹄疫が発生しました(OIE公表,農水省)。さらに2件(OIE)発生の確認(合計3件)があり、その後の感染拡大は阻止されているようです」とご報告しました。この2件を含めて、韓国からOIEへの報告が確認できないので不審に思いつつ、韓国の口蹄疫発生が断続的に発生していることはコメントをいただくまでは気がつきませんでした。
昨年12月5日以降の韓国の口蹄疫発生がOIEに報告され、農水省も韓国の口蹄疫に関する情報の周知徹底をし、2015年3月17日現在の韓国口蹄疫発生状況を紹介しています。最新の韓国からの情報によると、2014年12月3日から2015年3月17日までに、6市・道の31市・郡で合計151件(豚147、牛4)の口蹄疫が発生し、予防殺処分9戸4,374頭を含む160か所の農場で139,061頭の殺処分をしています。
韓国は2010年12月に口蹄疫ワクチンの予防接種を始めて以来、防疫措置の殺処分は感染畜のみとし、感染農家の全頭殺処分も地域単位の予防的殺処分もしていませんでした。前回、感染が認められた農家はワクチン接種が不十分であったことが原因の一つに考えられていましたが、今回は感染畜の移動等の不正が感染拡大の原因の一つとなっています。不正が確認された農家については全頭殺処分(予防殺処分9戸)しているようですが、生産サイクルの早い豚ではワクチンの予防接種は困難が伴うことが予想されます。香港では全ての種豚及び12 週齢以上の豚に対し、4 か月ごとにO 型口蹄疫ワクチン接種を実施しているようですが、台湾の方法はどうなのでしょうか。韓国についても詳細については知りません。日本の場合は豚が発生源になるケースは少ないと思われますし大陸続きではありませんので、予防ワクチンの必要はなく、口蹄疫発生をしっかり国と県で監視しておき、英国の例のように早期発見と発見後1週間以内に緊急ワクチンを接種できる態勢を準備するのが良いと思います。また、ワクチン接種により感染の拡大は阻止できますので、韓国のようにワクチン接種した場合は感染畜の殺処分だけで良いと思います。
具体的なワクチン接種法につきましては、備蓄ワクチンは3種混合ワクチン(Asia1型・A型・O型)を国内に備蓄しておき、口蹄疫発生が国内で認められた場合は、この備蓄ワクチンを直ちに接種し、発見後1週間以内に緊急ワクチンを輸入して発生している口蹄疫のウイルスに最も適したワクチンに切り替えるべきでしょう。この点につきましては、備蓄ワクチンと国費の無駄遣いに説明していますし、口蹄疫が発生したら国内備蓄ワクチンを接種することに決めておいた方が混乱がなく予算執行上も問題がないと思います。またそうすることによって口蹄疫の殺処分は感染畜のみと明確にすることができます。
今回も韓国では途中から口蹄疫ワクチンの効能補完のため、O-3039が含まれたO型(単種)ワクチン(O1-manisa + O-3039)に切り替えています。以前に「豚さん大好き」さんからいただいたコメント(2014-09-06 23:17:47)では、WRLFMD Quarterly Report July-September 2012の「16ページの下段の表(Table C:TypeO)の一番上に、Jpn 01/2010のワクチンマッチングの成績が示されています。O Manisa株に対しては、「N」となっています」とありましたが、O 3039とは「M」となっています。Jpn 01/2010は2010年宮崎口蹄疫の口蹄疫ウイルスですが、このときも備蓄ワクチンはO Manisa株でO 3039株のワクチンを緊急輸入したのかも知れません。この点の事実については公表されていませんが、会計検査で明確にして欲しいものです。いずれにしても韓国では備蓄ワクチンのO Manisa株に問題があり、感染拡大を阻止できなかったことが考えられます。
なお、口蹄疫発生を早期に発見できる遺伝子検査法(LAMP法)が宮崎大学で確立され、国際学会誌(Journal of Virological Methods 192 (2013) 18-24)にも掲載されていますので、これを一次検査として各都道府県で実施すべきです。
これまで韓国の口蹄疫発生に関して、2014年12月3日から2015年3月17日までの報告を紹介していたが、韓国口蹄疫発生が3月3日~4月28日までの64件で終息したことを2015年6月19日にOIEへ報告している。発生しているウイルスを分析し、緊急輸入したワクチンの効果が明確に認められていることと、ワクチンを接種したので症状の認められた家畜の殺処分だけで感染拡大は阻止できることを実証したものとして、農水省は口蹄疫防疫指針を早急に見直すべきであろう。
参考:
備蓄ワクチンと国費の無駄遣い~誰も責任を取らない中空構造③
口蹄疫のワクチン対策と遺伝子検査
口蹄疫45分で診断 山崎・宮大准教授が開発(2011-04-04 15:45:40 )
LAMP法を用いた口蹄疫簡易迅速診断法の開発と有用性評価
口蹄疫の簡易・迅速・低コスト診断:LAMP法(2011年農林水産研究成果10大トピックス)
韓国における口蹄疫発生について(2014-09-21 更新)
口蹄疫被害最小化のためのマネジメント-遺伝子検査とワクチン接種
初稿 2015.3.20 2015.7.10 更新