自然とデザイン

自然と人との関係なくして生命なく、人と人との関係なくして幸福もない。この自然と人為の関係をデザインとして考えたい。

口蹄疫対策強化月間は県・国の責任を農家に転嫁するプロパガンダ

2012-02-08 16:58:07 | 牛豚と鬼

 口蹄疫の発生防止に万全を期するためとして、2 月を口蹄疫対策強化月間とし、全国一斉に防疫実態調査及び机上防疫演習が実施されている。 (参考a) (参考b)
 口蹄疫の発生が防止できるにこしたことはない。しかし、口蹄疫に感染した牛に健康な牛を同居させても、牛の口蹄疫感染実験で感染するのは口蹄疫ウイルスの排出量が多い2日間程度と短く、それ以外の時期に健康な牛を同居させても感染はしない(リンク1)、中には感染はしても感染させない牛もいる。しかも1対1での感染はそうであっても、群頭数が増えるとウイルス量も増幅して感染しやすくなることなどを承知の上での演習なのであろうか。

 口蹄疫対策強化月間と言いながら、都府県レベルでの口蹄疫ウイルスの遺伝子検査、遺伝子解析による感染源と感染経路の解明、口蹄疫発生を確認後直ちに備蓄ワクチンを接種し、1週間以内に発生した口蹄疫ウイルスに最適なワクチンを英国から緊急輸入して危険地帯に接種することなど、県や国の準備すべき責任体制は全く考えられていない。これでは口蹄疫対策は強化されたのではなく放置されたままなのである。観光客や市民がウイルスを運んで来るといたずらに恐怖心を煽るような口蹄疫対策は、2010年の口蹄疫禍の県や国の責任を隠蔽し、これを農家に転嫁して、被害者であるはずの農家を加害者に追い込むプロパガンダのようなものだ。

 2012年1月20日に宮崎県で開催された家畜伝染病防疫対策に関する国際シンポジウムは、わが国で初めて口蹄疫対策に関する「最新の科学的知見と国際動向」が語られる場となることを期待していた。ことに口蹄疫に関する優れた遺伝子検査法(LAMP)が宮崎大学で開発されたことが披露される場でもあるので、LAMPを都府県での病性鑑定に導入することに宮崎県、宮崎大学とJA宮崎が一体になって率先して取り組み、口蹄疫対策に関する「最新の科学的知見と国際動向」が専門家により語り始められることを期待していた。しかし、何故か専門家は沈黙を守り、行動を開始する気配はない。

 都府県での病性鑑定にLAMPを何故採用しないのか。2010年2月15日から3月31日、4月5日、4月9日と3農家から4件の異常な牛の検査依頼があったにもかかわらず、国で口蹄疫の検査をしなかった責任は許されるものではない。農家に「早期の発見・通報」を義務づける前に、県や国の責任で検査体制を充実させるのが筋というもの。

 一方、小規模農家の消毒の不徹底を非難するのは筋違いだ。小規模農家は朝牛舎に行くと異常があればすぐ気が付き、獣医に連絡するものだ。牛の異常を隠蔽していた大規模農場が感染を拡大した罪こそ許されるものではない。その責任は、何故不問にされる?
 小規模農家に消毒剤の購入、消毒作業、書類の提出等の負担をかけているが、口蹄疫の発生拡大を防止するのが目的なら、農家当たり50頭以上飼養している農家に限り実施すべきだ。そうすれば農家も行政も事務作業と経費を軽減できるだけでなく、適正規模での飼養管理を推奨することにもつながる。

 2000 年に92年ぶりに発生した口蹄疫は、それまで消毒が徹底していたからか?2010年の発生もそれまでの10年間は消毒が徹底されていたからか?いずれも宮崎で発生しているが、これは偶然か?しかも、いずれも農業資材のワラ等が牛のエサに使われたという噂があるが、いずれも感染源は不問にされ、今回の発生防止策でも重視されていない。口蹄疫の進入経路は人を介してよりも、闇でエサに使われる農業資材である可能性が高いはずなのに、何故この問題に真面目に取り組まないのか。

 また、個人情報守秘義務を理由に発生が拡大している最中に、農家にはどこで口蹄疫が発生しているかという情報さえ知らされなかった。疫学調査チームも第1回、2回の検討結果を公表していない。さらに、最初に確認すべき口蹄疫ウイルスの遺伝子解析の公表も牛豚等疾病小委員会第12回(平成22年5月6日):概要と遅れ、この遺伝子の塩基配列の解析による口蹄疫の発生源や感染経路についても調査をしていない。しかも早い時期に発生したが治癒して抗体ができている牛はワクチンを接種して殺処分してしまった。このように疫学調査の責任を放棄する一方で、科学的根拠もなく意味もない発生順を示した疫学調査の中間とりまとめを公表したのは何故か?これらの事実をつなぐと、県と国を動かす人脈による意図的な犯罪が臭ってくる。

 韓国は口蹄疫で350万頭も殺処分した。これは発生農場から半径500m~3kmの全殺処分(予防的殺処分)が原因であるが、そのことを当局が認めるはずはない。日本で29万頭も殺処分した原因は「最新の科学的知見と国際動向」を無視した防疫指針にあったが、これも当局は認めるはずはない。韓国は予防的ワクチン接種に切り替えたが、日本は「最新の科学的知見と国際動向」を無視し続けているだけでなく、予防的殺処分を合法化するために家畜伝染病予防法を改悪までしてしまった。

 日本の獣医村は原子力村のように「嘘つき集団」であるが、このまま誤りを認めないと悲劇が繰り返され、その悲劇は地域住民や市民、さらには消費者にも悪影響を及ぼし、国家財政に無意味な過大の負担を強いることになる。口蹄疫対策は殺処分を最小にして最短期間で感染拡大を終息させることであることを忘れてはならない。

2012.2.8 開始 2015.7.13 更新