この年末年始にのんびりとTEDの番組を見て過ごした。一つの番組が約10分なので、知らず知らずに数十本も見てしまいました。TEDは、最近NHK BSでも放送されており、ご存じの方も多いと思います。最新の科学、技術、ITの現場で何が起こっているのか、またアフリカ、中東、東南アジア等を含んだ新興国で何が起きているか、よく分かります。国会議員として永田町あるいは霞ヶ関と地元の往復をしている身で、比較的豊富で多様な情報に触れる機会があると思っていますが、それは間違いであることがTEDやYou Tubeなどインターネットを通じた情報に接していると分かります。やはり国会議員は、どうしても国内や永田町的・霞ヶ関的な既存の考え方が中心で、グローバル化するネットの世界で起こっていること、新興国で起こっていることの知識が希薄であると痛感しています。
以前「日本型モノづくりの敗戦?(2013年10月30日)」の記事でも書きましたが、90年代に強かった日本の家電、PC、携帯メーカーが、2010年代に入り大変苦戦しています。市場の変化、特に1.3億人vs.70億人といった市場の変化に十分に対応できず、ガラパゴス化していったことが敗因の一つに上げられいます。日本のメーカーに比べて、韓国、台湾、中国のメーカーは新興国市場に低価格の商品を作る技術を磨くことで対応し、アップル、グーグル、アマゾンなどの米国企業は、独創的な技術や選択と集中で対応しました。このようなパラダイムシフトに対して、残念ながら十分に対応できないのは日本のこれらのメーカーだけではなく、私ども議員や日本の行政機関もどうようであります。自戒の念と自己研鑽の思いの意味を込めて以下の文章を書きました。時間がある方は、ぜひ「水色の下線部分」をクリックして、TEDを見てください。きっと参考になると思います。
バンカー・ロイ氏の「裸足の大学から学べること」は、日本のアフリカ等の発展途上国に対する政府開発援助のあり方へのアンチテーゼとなります。日本の家電よろしく高額高級なODAだけではなく、現地の事情にあった低価格の援助も可能であり、日本が学ぶ点かもしれません。またアンドレアス・ ラプトポウラス氏の「道路がないなら 無人飛行体がある」は、最近アマゾンが 「Amazon Prime Air」として配達に無人飛行体(ドローン)を用いるという構想が話題になりましたが、このような無人飛行体を道路が整備されていないアフリカで利用しようというもんです。アフリカでは、固定電話の普及を経ずして携帯電話が爆発的に普及していますが、輸送の方法が道路港湾の十分な整備を経ずして、無人飛行体での輸送が増えることも考えられます。この時、日本のODAといえば、従来型の道路港湾建設でそれに追随する形でゼネコン、商社が当地に仕事を求めて進出するというビジネスモデルだけでいいのか疑問です。勿論、道路、港湾、鉄道、電力などのインフラ技術、輸出は、これからも日本にとり重要ですが、無人飛行体製造、運行、管理、規制・法制の世界標準化などは、、インターネットの規格化同様に米国が独占することのないよう注意を払うべきでしょう。
Toby Eccless氏の「社会貢献型投資、Social Impact Bond」は、社会改革に貢献する投資が最近英国、米国、豪州、独逸等でブームになっていることを紹介しています。刑務所の囚人に民間企業が教育、更生支援を行い、再発率を下げるという試みを民間投資を通じて制度化するという試みです。TEDでは、まだ日本語訳ができていませんが、松尾順介桃山学院大学教授・当研究所客員研究員が 「ソーシャルインパクト債と社会貢献型投資」に関して寄稿しています。通常国会が1月下旬から始まりますが、法務省、金融庁や財務省と日本でもこのような社会貢献型投資が可能か議論していきたいと思います。
Marco Annunziata氏の「Welcome to the age of the industrial internet」とダニエル・ピンク 氏の「やる気に関する驚きの科学」 は、インターネット時代の大きな変化がわかります。ビッグデータが昨年は新聞紙上を賑わせましたが、飛行機のエンジン、電車、工場の機械設備がインターネットでつながり、そこからもたらされるデータを解析し、機械などの保守点検が自動でできるようになった場合に、安全基準やさまざまな業法もそれれに応じて変更されるべきです。日本の規制、法体系は、技術はあっても、その導入を妨げるように機能する恐れもありますので、国会でも議論が必要です。最後に「やる気に関する驚きの科学」は、報酬等のインセンティブ付が創造性や生産性を低くするとの研究結果に目を疑いました。どうしてグーグルが、社員に20%の時間を何でも好きなことに使うことができるようにしているか良くわかりました。国会ではブラック企業の労働問題が議論されていますが、労働者を酷使しているブラック企業の業績が意外と伸びていないのにはこの辺に問題があるのかもしれません。ブラック企業の経営者にも是非見てもらいたいと思います。