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とりがら時事放談『コラム新喜劇』



またまた日本人の若者が海外で行方不明になったらしい。
昨日の夕刊によると、慶応大学の学生が9月にインドのニューデリー空港を下り立ち両替した後、消息を絶ったという。
本人から連絡が入らず、ついに10月になって帰国の航空券が失効してしまってので、心配になった両親が記者会見を開き息子がどうなったのか「だれか知りませんか?」と訴えはじめたという。

この手のニュースを最近頻繁に目にするようになった。
昨年だったか同じくインドのムンバイ空港で帰国直前の日本人ビジネスマンが行方不明になった事件があった。
そのビジネスマンは空港近くの荒れ地で死体で発見されたのだが、逮捕された犯人は金銭目当ての強盗殺人であったことを認めていた。

足下に置いてあった荷物を盗まれて、盗んだ犯人を捕まえたら犯人曰く、
「床に落ちていたものを拾ったのだから、これはオレのものだ」
と厚かましく主張するのがインドだという。
またそれはインドの正論であり、私たちには否定することができない文化なのだとも謂う。

国内と同じ感覚で旅行すると思わぬ災難に巻き込まれることになるのが外国だろう。

たとえば両替一つにしても注意を要する。
空港の到着ロビーで両替をするときは、なるべく財布の中身を見られないように、しかもその財布も何処へ直したのか分らなくするか、ちょっとやそっとじゃ盗めませんよ、という場所に収納する智慧が必要だ。
両替なんか慣れておらず、ましてや日頃ほとんど目にすることのないドル紙幣など持っていたりすると、現金ではなく人生ゲームのオモチャのお金を持っている感覚に陥る日本人だから、そのあたりの案配は、かなり無防備になる。
もしかすると行方不明の慶大生はニューデリー空港の両替所で多額のドル紙幣や円紙幣をもっていることを悪いヤツに認められたのかも分らない。
日本人にとってたかが3~4万円もインドの低階層の人々にとっては年収以上に値する金額なのだ。

PHP新書「日本人が知らない世界の歩き方」は作家の曾野綾子さんがキリスト教の慈善団体や日本財団の会長を務めていた時の経験を、数々の書籍に記したものからハイライト部分を抜き出したダイジェストだ。

そこには日本人の思い込みや価値観は世界では通用しないということを如実に描き出している。
単に「平和」を叫び「紛争は単に悪いこと」と決めつけることや、乏しいものは「正義で純粋」だという考え方は、頭の惚けた日本人のならではの発想だが、正しい面もある一方、実際にはそんな呑気な考え方は世界ではまったく無意味であることを、本書に記されている数々のエピソードは物語っている。

アラブの石油プラントで暮らす日本人の子供はアメリカやイギリスの子供とはすぐ仲よくなるが、アラブ人とは遊ばない。しかし、それは差別ではなく純粋に文化の違いが子供にさえ交流を難しくさせること。
巨額の援助を拠出しても、「それはその国が悪から当然だ」というパレスチナの考え方。
などなど。

物見遊山の海外旅行ばかりでなく、こういう旅のしかたがあるものだと考えさせる、海外へ出る時に最低限は読んでおきたい一冊だ。

~「日本人が知らない世界の歩き方」曾野綾子著 PHP新書~

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