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とりがら時事放談『コラム新喜劇』



ホッパ山の形はワイオミング州のデビルズタワーに本当によく似ていたのだった。
違うことといえば、デビルズタワーの周辺は緑の少ない茫漠たる原野だった(未知との遭遇ではそう見えた)のに対し、ホッパ山の周辺は緑豊かななだらかな山々に囲まれているということ。
そしてデビルズタワーには人工的付属物がなく、その裏側にはUFOを向かいいれるため(いわゆるファーストコンタクトのため)の政府の施設が設置されていた(未知との遭遇ではそうだった)のに対し、ホッパ山には麓から頂上に登るための階段が設置され、麓には多くの僧院や祠、平たい頂上にはキラキラと金色に輝く寺院と祠が建っている、という違いがあった。

で、よくよく考えてみると似ているのは形だけで、あとはまったく違うことに気がついたのだが、ホッパ山イコール、デビルズタワーという第一印象を大切にしようと自分自信を納得させたのであった。

ホッパ山の麓は大変賑やかなところで、多くの参拝者や僧侶などで賑わうちょっとした町になっていた。
私たちは一軒の土産物屋の前でタクシーを降り、参道へ向かって歩きはじめた。
もちろん履物はタクシーの中へ残してきたことは言うまでもない。

さて、ホッパ山の名物といえば、猿。
ここには日光猿軍団というか、大阪箕面の山猿というか、そういう猿たちが生息し、私たち観光客や参拝者にちょっかいを出してくるのだ。

参道を上りはじめると、まず目に飛び込んでくるのが超印象的な達磨さんである。
この日本の達磨さんと同じように真っ赤に色塗られた達磨さんは、もしあなたが日本人なら一度見たら忘れられないという表情の持ち主なのだ。
で、どういうふうに印象的なのかというと、実に漫画チックなのである。

パッチリお目目に長い「まつげ」。
センター分けした「頭髪」。
マリリン・モンローも真っ青な赤く太い「くちびる」。

で、この達磨さんの頭の上に、名物の猿が座って私たちをお出迎えしてくれていたのであった。

ホッパ山の猿は、サイズ、姿、気性など、どれもこれもニホンザルとほとんど同じだった。
若干目がつり上がっており、ニホンザルと比べるとちょっとばかしヤンキー顔であったものの、きっとどこかでルーツは繋がっているのではないかと思えるような猿なのであった。

急な坂道の参道のあちらこちらでは、猿に与える餌が売られていた。
餌は新聞紙で南京豆を中国チマキのかたちに包み込んだもので、値段はTさんが買ってくれたので覚えていないが、随分と楽しめるものであった。
「ハハハ、キャ!」
と石山さんも楽しそうに猿に餌を与えている。
できれば、小猿を抱っこしている母猿や、小猿そのものに与えようと思うのだが、その瞬間を狙ってオッサン猿が奪いに来るので思い通りにするのはなかなか難しい。

関西人である私は自然と奈良公園の風景を思い出していた。
奈良公園では「鹿せんべい」なるものが売られていて、観光客や訪問客がそのせんべいを買い求め、そのへんをウロチョロしている鹿に手渡しで与えることができるのだ。

遠い昔、幼児であった私は両親に鹿せんべいをねだって買ってもらい、自分で食べようとした。というのは冗談で、子供ながらに、かわいい子鹿「バンビ」ちゃんに手ずからせんべいをあげようとトライしたのであった。
ところが、バンビちゃんがあと数歩で私の手元に届きそうな距離にやって来た時、不意に角を生やしたオッサン鹿が現れて、私の手元から鹿せんべいを「束で」奪い取ったのであった。
私は悔しいという感情よりも、恐ろしい、という感情で泣き出した、ということを良い大人になった今も法事などで親戚が集まると公衆の面前で語られるので困ったものである。
ついでながら、九つの時に寝小便タレをしたという話と二本立てにされると、もっと困ったことになってしまうのだが、それは余談。

ともかく、ホッパ山の猿どもは奈良公園の鹿どもと大変よく似た連中なのであった。

新聞に包まれた南京豆を取り出すと、大きな猿が襲いかかってくることがある。
「こらっ!何すんじゃい!」
と日本語で怒鳴っても相手はミャンマーの猿なので言葉が通じない。
「Tさん、通訳して」
などと言ったりしたら、Tさんにぶっ飛ばされる恐れがあるので言えるわけがない。

ともかく、南京豆を販売している売り子には襲いかからず、客が金を払って買い求めた途端に、客に向かって群がってくるところなど、まったくもって奈良公園の鹿と同じなのであった。

つづく

東南アジア大作戦

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