作家の曾野綾子さんが著書の中で、
「人はいくら偉くなっても50代まではエコノミークラスで我慢すべきです」
というようなことをおっしゃっていることを目にしたことがあり、
「なるほど、なるほど」
と納得した。
というのも、その著書を目にした少し前、「国境を越えた医師団」という海外ノンフィクションを読んでいて、その組織で活躍する医師たちが「移動の長い飛行機もエコノミークラスということを耳にしていたからだ。
マイレージも貯まれば自分のために使わずに、
「途上国から米国や西欧に患者を運ぶための費用に充てる」
などということが書かれていたので、さらに「なるほど」と感心した。
以上のように社会的に信頼されている人々のホントの意味でのお金の使い方に対するシビアさには、時に素晴らしいものがある。
尤も、こういう立派な意見を私はビジネスクラスを利用できない私自身の「いいわけ」に利用しているわけで、情けないと言われればそれはそれで仕方がない。
でも、情けない。
ということで、ビジネスクラスの客を見ていていつも羨ましく感じるのはノイズキャンセルヘッドフォンの貸し出しだ。
ノイズキャンセルヘッドフォンとは周囲のノイズを打ち消す音波を発生させ、静かな環境を提供するというハイテク製品。
もともとはパイロットのインカム用に開発された技術らしいが、ここ数年、民生用に転用された商品が続々と登場。
ヒコーキのビジネスクラスではボーズ社のコンフォートなる1台3万円以上もするヘッドフォンが供されていることが多いらしい。
ホントは喧しい飛行機の機内で映画や音楽を「静寂」と共に楽しむ。
なんて贅沢な体験なんだ!
ということで、広い座席やチョットはマシな料理よりも、このハイテクヘッドフォンを是非ともエコノミークラスでも、と私は考えていたのだ。
で、よくよく考えてみればヘッドフォンぐらい自分で買えば良いわけで、買いました。
ノイズキャンセルヘッドフォン。
買ったのは日立マクセル社製「HP-NC18」。
密閉式インナーヘッドフォン。
つまりイヤホン型のノイズキャンセルヘッドフォンだ。
1台3万円以上もするボースなんて買えないのでヤマダ電機のポイント使って7000円(それでも私には、出費が痛い)のマクセルを買ったのだ。
早速、昨日一昨日の東京出張で使ってみると、
「ノイズキャンセルって大丈夫?」
という、少しだけ持っていた技術に対する疑いが、あっというまに晴れてしまったのだ。
まず、新幹線車内。
乗車したのは700系のぞみ。
加速時、減速時に作動するインバータの高い音いは残念ながら大きな変化はなかったが、「ゴー」という走行音は打ち消されてこれまで聞きにくかった小さな声もクッキリと聞き取ることができた。
でも新幹線といえど鉄道が独特の「ガタンゴトン」というリズムあるノイズもあまり小さくならず、もうちょっと努力が必要か、という内容だった。
で、次が航空機。
搭乗したのは全日空B777-300。
ノイズキャンセリングヘッドフォンは電源内蔵の電子機器なので離陸してシートベルト着用サインが消えるまで装着を待たなければならなかった。
やがてランプが消えてヘッドフォンを装着しスイッチを入れてみた。
周りの音が「す~」と小さくなり、あっという間に静寂空間が広がった。
微かな音は残るもののジェットエンジンの「ゴー」という音は打ち消されて飛行機なのにメチャ静か。
床から伝わる足元の振動に生まれて初めて気がついた。
iPodのプレイボタンを押してBen Wilmotのピアノソロを再生すると、ピアノが奏でる微妙な音までクッキリ聞える。
まるでコンサートホールにいるようだ、といえば大げさか。
耳栓のような装着感だけいただけないが、それにさえ慣れてしまえば、なかなかな優れものだ。
ということで、ノイズキャンセルヘッドフォンは廉価な商品でも耳元だけはビジネスクラスに変える威力のあることを確認した。
これは移動の時の必需品になること間違いなし。
次はバスで試してみよう、と思うのであった。
| Trackback ( 0 )
|