「なんか笑える小説はないかなっ、と」
という気持ちで書店の本棚を物色していたら、
「25万部の大ベストセラー『県庁の星』の著者、渾身の傑作長編!」
という宣伝帯が目にとまった。
織田裕二主演の映画「県庁の星」はついに映画館で見ることなくロードショーが終ってしまった。
しかし、原作小説「県庁の星」は読んでいる。
あの物語は勉強にもなり、涙と笑いに溢れたアップテンポの娯楽現代劇で、とてつもなく面白かった。
その作者の「新作」?
私は平積みされた陳列から、一冊抜き出して中身もチェックせずにレジへ持っていった。
桂望実著「レディー、ゴー」は、大都会で一人暮らしをしている何の変哲もない23歳の普通の女の子「南玲奈」が主人公。
派遣社員のその玲奈はひょんなことからキャバクラで働くようになるが、それから物語はメチャクチャ面白くなっていくのだ。
「県庁の星」の時もそうだったが、この作者の描く人物像は実に魅惑的だ。
主人公の「ボンヤリ」した性格は、どこにでもいる普通の女の子を思い描かせ、その主人公を取り巻くキャバクラの店長やボーイ頭、オカマのスタイリスト、キャバクラのキャスト仲間などなどが、性格俳優的に活き活きとしており、憎めない。
一人一人の背景はほとんど描かれていないが、その個々の人生に刻まれているものはなんなのか、という読者の想像を引き出していく広がりが、この物語にはある。
そして「レディー、ゴー」では、読者を「県庁の星」で織田裕二が演じた出向役人の立場にさえさせてしまう驚きがある。
主人公の出向役人は、パート従業員の子持ちの女にスーパーとは何かを伝えていくのだが、「レディー・ゴー」では主人公の南玲奈が、キャバクラのビジネスとは何か、ということを試行錯誤する行程を彼女自身の言葉として描くことにより、読者に「それは、キャバクラだけではないぞ」と気づかせる凄みがある。
お客様に喜んでもらえるにはどうしたらいいのか。
品格はあるか。
嘘は必要か。
営業メモはいつつける?
などなど
キャバクラビジネスの中身を知ることが出来るという面白い面を持った小説だが、何よりも今の私のように少し元気をなくしている者にとっては「夢を持って、元気に生きよう」と思わせる素晴らしい物語である。
一気に読み切り、最後に涙したのはいうまでもない。
~「レディー、ゴー Lady Go」桂望実著 幻冬舎刊~
| Trackback ( 0 )
|