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とりがら時事放談『コラム新喜劇』



DVDのソフトには映画以外にも色々な種類のものがある。
むしろその色々なものの方に劇場やテレビでは見ることの出来ない面白いコンテンツが少なくないが、この「世界の傑作コマーシャル」シリーズもその一つと言えるだろう。

不思議なことに、テレビのコマーシャルは自分の住んでいる国のものしか目にすることが出来ない。
さらに突き詰めれば、自分の住んでいる地方で放送されているものしか見ることが出来ないのだ。
だから、例えば関西以外の人はあの名作CM「関西電気保安協会」を目にしたことはもちろん無いだろうし、「大阪梅田の天佑ちゃん」や「大阪十三の美女の逆立ち」「京橋グランシャトー」「味園」「サウナ・ニュージャパン」「たよし」「ボトムライン」などのCMを目にすることなど、なおさら無いに決まっている。(こんなローカルCMは収録されていません、ハイ)

かなりローカルに走ってしまったが、このように自分の住んでいる地方のCMを他の地方の人が目にすることは稀なことなのだ。
ましてやそれが海外のCMとなればなおさらだ。

この「世界の傑作コマーシャル」には、世界各地で数々の賞を受賞した作品を中心に、一度見たら強烈に印象に残る作品が収録されている。
もちろん、もともとがテレビコマーシャルだから一つの作品時間が非常に短く、まるで4コマ漫画を読んでいるような感覚で楽しむことができる。

収録されているほとんどの作品が欧米や南米の作品であることは、もしかするとアジアやアフリカのテレビコマーシャルというのは世界市場ではまだまだ未熟なものと見られていることが原因ではないかと思われる。
私なんぞは、このブログでも度々紹介しているようにタイのCMなんかは楽しくて可笑しくて仕方がないのだが、そういうCMは一作品も収録されていない。
「世界の」と謳われているのだから、ともかく新興アジア各国のCMも収録されていたとしても良いのではないかと、悔やまれるポイントだ。

しかし、それでも収録されているコマーシャル作品は素晴らしいものばかりだ。
可笑しなものもあれば、ちょっぴり怖いものもある。
これはちょっとやり過ぎでしょう、という作品も少なくないが、それはそれで、各国の文化が映し出されて面白い。
ヨーロッパで描写されるセックスシーンを盛り込んだCMなんぞは、まず日本を含めたアジアでは放送できないだろうし、残酷すぎる描写も少なくないので、一瞬引いてしまうこともある。
結局、国内CMでさえ地域に配慮した内容であるのだから、CM作品が各国ごとの文化的特徴を写し出していたも不思議ではないのだ。
ともかく、世界各国のCM作品を見ていると、作品そのもののアイデアに文化や習慣の違いを痛烈に感じて、映画やドラマよりも楽しめる。

また、CMはタイムマシンの役割も果たしている。
各巻に収録されている日本の名作CMを見ると、当時の社会背景さえ思い出すのだ。
とりわけ「ソニートリニトロンカラーテレビ」のCMは、印象的だ。
「ぼく、タコの赤ちゃん」のナレーションで始まるソニー製テレビジョンのCMは、品質と性能を第一にに誇る日本の製造力と技術力の余裕さえ感じさせる力作だ。
あのコマーシャルから30年以上が経過して、そのCMを流した同じ会社が技術力と製造能力で没落し、CMさえ見るべきものがなくなっていることに気づいて愕然とする。

ともかく、「世界の傑作コマーシャル」は映像作品の宝石箱といった趣の作品集DVDだ。

~「世界の傑作コマーシャル」ワーナーミュージック・ジャパン刊行~

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