カナダのモントリオールに住む友人が最近翻訳のアルバイトを始めたという。
なんでも、
「カレーは辛いからカレ~て言うんだよ」
という日本語の英訳に苦心したらしいが、こうまでも見事な「滑るシャレ(オヤジギャグ系シャレ)」を英訳しなければならない彼女の今後の苦労が思いやられて、今私は無責任にも笑っている。
尤も、彼女はこのシャレをたいそう気に入っているようで、私は思わずシンガポールに長年在住した別の友人が「最近NHKの海外放送でやっている『コメディ、お江戸でござる』が物凄く面白いように感じられるようになってんねんけど、これってビョ~キ?」と言っていたことを思い出した。
海外在住の日本人のギャグセンスの病的変化に危惧している私ではある。
ところで、日本語のシャレを外国語に訳すのは難しいが、外国語から日本語に訳すのもこれまた難しい。
そういう難しい仕事ばかりをしている人に、外国のテレビ番組を日本語に翻訳している人たちがいる。
常日ごろ私たち一般人は彼らの努力の結晶を知らず知らずにテレビで見ていることになり、画面を見ながら「キャハハハ!」と何も知らずに笑っているわけだ。
そこで今日はいくつか「このテレビの翻訳は素晴らしい!」というのを挙げて見たいと思う。
まずは、古くさいテレビシリーズ「マペットショー」の日本版から。
この「マペットショー」は以前このブログにも書いた通り、日本では15本放送して打ち切りになったアメリカの人気番組で、セサミストリートに登場する人気キャラクターが毎回ゲストを迎えトークやミュージカルを演じるというバラエティーショーだった。
初回のゲストはエルトン・ジョン。
当時、エルトンはまだサイケティックな派手派手衣装で活躍していた頃だった。
で、番組の中でのキャラクターの一人、鷲のイーグル・サムが楽屋うちで他のキャラクターと会話をしている時に巧い翻訳セリフが交わされた。
各キャラクターがイーグル・サムにエルトンの派手なカツラをかぶせる。
「なんじゃこりゃ!(とイーグル・サム(声は納谷悟朗))」
「とっても似合っているよ(とスクーター(声は近石真介))」
「カツラ鷲などありえん! だいたい偉大な芸術家はカツラなどせん!モーツアルトを見よ」
原文の英語のセリフがどういうものか今となっては不明だが、なかなか苦心の跡が窺える。
しかしこの番組でもっともびっくりしたセリフは以下のようなものだった。
「僕、と~てもお口が臭いの(と電話の着ぐるみを着たフォジー・ベア(声:神山卓三))」が言うと、
「これがホントの公衆(口臭)電話!(とスクーター(声:近石真介))」
これなどは本文の英語はどうだったのか、あまりに画面とピッタリのセリフだったので「面白い」と思う前に驚愕した。
で、もっとも凄い翻訳は日曜洋画劇場の「未知との遭遇」
「未知との遭遇」は言わずと知れたスピルバーグの初期の傑作SF映画。
これでフランスの映画監督トリフォー演じるUFOリサーチャーとその通訳を務めるアメリカ人(役者名忘失)が交わす会話がすばらしかった。
オリジナルではトリフォーはフランス語で話しているのだったが、この日曜洋画劇場版では巧みな日本語で話す通訳との掛け合いになっていて、それでいて不自然さを感じさせない見事なセリフ運びになっていたのだ。
現在発売されている同映画のDVDがこの吹替えバージョンを貼付されているのかどうか知らないが、ともかく翻訳セリフの最高傑作と言えるだろう。
で、本題から少しくずれていると思えなくもないが、私が言いたいのは、
「海外テレビ映画は翻訳手本の宝庫だった」ということだ。
ともかく、モントリオールのお姉さん。翻訳はシャレのセンスを磨きながら頑張るように。
応援しています。
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では、のってあげましょう。
以前このブログで紹介された有名な人気SF「宇宙大作戦」での翻訳。
岩でできた謎の生命体がケガをしたため、カーク船長から治療を命じられたDr.マッコイ、
「私は医者だ。石屋じゃあない!」(声:故吉沢久嘉)
名翻訳ではありませんが、この番組では中国の上海を「かいじょう」と言うとったシーンがあります(「惑星アルギリスの殺人鬼」)。
「緊急修理班、緊急に修理しろ!」(声:矢島正明&○野○久)
これはある意味、名翻訳やと思いますがwww
はじめまして。
書き込みいただいていたのに申し訳ありません。
よくご存知ですね。
マペットショーの再放送が無いのが残念です。