<新・とりがら時事放談> 旅・映画・音楽・演芸・書籍・雑誌・グルメなど、エンタメに的を絞った自由奔放コラム
宇宙エンタメ前哨基地



スター・ウォーズがロードショー公開された1978年の夏。
高校1年生だった私は中学時代の友人6人と一緒に先行ロードショーの栄えある1回目の上映を見るために大阪梅田OS劇場を訪れていた。
劇場前は昨年から公開を待たされた続けた多くの映画ファンで大混雑になっていた。
もちろん全席指定席のそのシネラマ劇場のチケットは事前に買い求めていたのだ。
「アメリカでなにやら物凄いSF映画が大ヒットしているらしい」
という噂が月刊プレイボーイなどで報じられはじめたのは一年前。
私はまだ中学生だった。
その映画はどんな映画なのか。
題名の良く似た宇宙大作戦こと「スタートレック」の新作なのか。
想像は誤解も含めてだんだんと膨らんでいった。
ところが大変気になるその映画についてはスチル写真は見かけるが、動く映像がなかなか公開されない。
現在のようにネットもない時代なのでアメリカで公開されていた映像を内緒で見る機会もなかった。
ただ前もって発売されていたサントラ盤のLPレコードを聴いて想像をふくらませるしかなかったのだ。
動く映像を初めて見たのはこの年の正月にスピルバーグ監督作「未知との遭遇」を見るためにこの劇場に来たときだった。
数分の予告編は私に「何か物凄い新しいもの」を感じさせるに十分だった。
期待はますます膨らんだのであった。

なお、中学生の私がプレイボーイをどうやって手に入れたは記憶にない。

そんなこんなで焦らしに焦らされて公開されたスター・ウォーズは期待を裏切ることなくティーンだった私達に数々の映像による初体験をもたらした。
ロンドン交響楽団によるフルオーケストレーションの心躍るテーマ曲。
後にスカイウォーカーサウンドと言われるようになる高音質の立体音響。
共和国軍の宇宙船を追う巨大なスターデストロイヤーに始まる特撮。
アメリカ映画なのに日本の時代劇と同じ立廻りの剣術シーン。
CGを思わせるデススターの設計図。
スピード感溢れる戦闘機飛び交う戦闘シーン。
何もかも新鮮で、何もかもエキサイティングで、つまり、超カッコウ良かったのだ。

劇場を出てきた時、興奮して頬が紅潮していた。
仲間の一人は映画を見ながら飲むはずだった缶コーヒーを封も切らずに握りしめたままだった。
スターウォーズはまるでロックコンサートのような映画だったのだ。

しかしこの後作られたシリーズ6つの作品で同様の興奮を味わうことは二度と無かった。
どれも楽しく、面白いことは間違いなかった。
でも、何か重要なものが欠けてしまい最初の一作目のような高揚感を味わうことはなかったのだ。

先日「ローグワン スター・ウォーズ物語」を期待せずに観てきた。
たまたま時間が空いたので時間つぶしで観てきたのだ。
で、観てビックリした。
なぜなら期待していないことも大いに影響していたとはいえ、そこには初めてスター・ウォーズを観た時の高揚感が溢れていたからなのだ。

物語はエピソード4の直前。
謎の秘密兵器デス・スターを誰が設計し、そしてその設計図を共和国軍側がどのように手に入れたのかが軸になっている。
レギューラーシリーズと異なりスター・ウォーズにしてはかなり重厚な雰囲気が漂う。
シリアスなドラマ作りだったのだ。
シリアスなゆえに他の同種のB級SF映画には無いスター・ウォーズ独自の匂いがより強調されていた。
かといってスピード感も満点だ。
アクションといい戦闘シーンといい、物語そのものの運びといい、観ているこちらを飽きさせない軽快のリズムが何とも言えない魅力になっていた。
もちろんスピンオフにしかできない魅力も満載されていた。
終盤の重要なポジションを占めるダースベイダー。
共和国軍の戦闘機の出動を見つめるC-3POとR2D2。
エピソード4にも登場し、ルークやハン・ソロと共に戦うことになる戦闘機のパイロットたち。
そして圧巻はターキン提督とレイア姫だった。

ターキン提督演じるピーター・カッシングは1994年にすでに故人となっている。
そのターキン提督がピーター・カッシングによって演じられていたのだ。
はじめは良く似た俳優が演じているのかと思ったのだが、違った。
高度で精工なコンピューターグラフィックスによりカッシングのターキン提督がスクリーンに蘇らせられていたのだ。
これはいわゆる「不気味の谷」を凌駕した素晴らしいレンダリング技術で最後まで違和感を感じさせなかった。
そして最後の登場したレイア姫も同様に素晴らしい技術の結集だった。
この映画が製作された時点ではキャリー・フィッシャーは存命していたがエピソード7に登場したようにすでに年齢を重ねており1977年時のレイア姫を演じるには難がある。
そこで登場したのが最新技術によるレイア姫なのであった。
もしかすると観ている人の多くが彼らは本当のそっくりさん俳優が演じていると思っているに違いないだろう。
そしてこれらのCGをレンダリングしていたソフトがピクサーのレンダーマンだった。
エンドクレジットにレンダーマンのロゴが現れたとき、なるほどと合点がいった。
ピクサーはもともとジョブスがルーカスから買い取ったILMのCG製作部門だった。
30年の歳月を経てピクサーのソフトがILMで活かされていたのであった。

次々に登場する懐かしい兵器の数々と、その見せ方。
よく練られたストーリー。
座頭市を彷彿させるジェダイ騎士の登場。
そして筋書きに容赦のないエンディング。

「ローグワン スター・ウォーズ物語」は実はスピンオフにしてスピンオフにあらず。
レギュラーシリーズよりも正統なスター・ウォーズなのであった。


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