<新・とりがら時事放談> 旅・映画・音楽・演芸・書籍・雑誌・グルメなど、エンタメに的を絞った自由奔放コラム
宇宙エンタメ前哨基地





東京都写真美術館を訪れたのは、実はコレクション展「子供の情景ー戦争とこどもたち」を見るためではなかった。
2階展示室で開催されていた「ジェセフ・クーデルカ プラハ1968」を観ることを目的に訪れたのであった。

私が最も好きな写真のジャンルは「報道写真」。
これは学生の時に担当してくださったY助教授がドキュメンタリーを重んじる写真家であったことに少なからず影響されている。

「一瞬を切り取る」

写真は、フィルムやビデオで見る世界と比べると、時間経過が無い分、その時の出来事が瞬時に凝縮され、強烈な力強さを秘めているのが魅力なのだ。

以来、色々な報道写真展を見に行ったり、ライフの写真集を買い求めたりしていたが、その習慣は今も尚、残っていて今回のような展覧会が開かれていると足を向けたくなってくる。

今回の展覧会は「プラハの春」という20世紀を代表する大きな出来事をテーマにしていただけに、私は興味津々。
早く、観に行く機会を作ることはできないかと、そのタイミングを見計らっていたのだ。

結論から述べると、写真そのものよりも、そこここに展示されている、当時のチェコの新聞と、ソビエト国営タス通信の記事の対比が最も興味深く、かつ不気味なものを醸し出していた。

自由世界を垣間見ようとしているチェコの新聞は、ソビエト軍侵攻の一部始終を冷静に、かつ正確に伝えようとしていることに対し、タス通信はソビエトの社会主義的イデオロギーを全面に押し出し、事実を捏造し、正義を創作していることなのであった。

このようなマスメディアの情報操作は今も決して少なくないが、インターネットはおろか自由に海外のメディアが取材することもできなかった「プラハの春」は、ある種の恐怖と自由市民の闘いであったことが、写真と共に、よく理解できる展覧会であった。

チェコが自由を手に入れたのは、あの写真から20数年後。

今だからこそ、客観的に鑑賞することのできる報道写真展なのであった。

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )



« 子どもの写真 現代日本の「... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。