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トランプ大統領はそこそこ面白い大統領だと思っていたが、最後の最後がよろしくなかった。
自分の支持者に「議事堂へ行進せよ」と言ったのが気に入らないのではなく、男らしく負けを認めなかったところだ。

そもそも米国人の偉い人は正々堂々としているところが魅力なのであった。
歴代大統領でも初代のワシントンは周囲の「王位につけ」の説得を拒否して選挙によって元首を選ぶという画期的なアメリカスタイルを誕生させて、米国型民主社会の礎を作った。
個人の利益よりも公共の利益を優先したのだ。
第二次世界大戦終結後、卑屈になっている日本海軍首脳に激を飛ばしたのはニミッツ提督なのであった。彼は「負けたので廃棄します」といった戦艦三笠を「世界の歴史を変えた誇るべき戦艦を廃棄する必要なし」と保存を訴えた。
もちろん卑怯な米国人も少なくないが、一本筋が通った偉人が多いことがアメリカを民主国家のリーダーたる位置につけていることは間違いない。
そこんところが中国とは違うところだ。

このトランプ大統領。
もう一つの失態はCDCの予算を削ってしまったことだ。
このCDCの予算を削り、人員を削減させていしまったことが今回の新型コロナウィルスのパンデミックの間接的原因になっている。

そもそもCDCはアメリカの感染症に関わる情報集約研究機関であり、この仕組を持った世界で活躍できる機関は他に無い。
日本の国立感染症研究所の何倍ものスケールで全世界的に凶悪な感染症を監視し封じ込める組織なのだ。

この組織は単なる研究機関ではない。

感染症に対するCIAというか隠密同心のような役目を果たす機関でもある。
世界のある地域で未知の感染症が発生したという噂が伝わると、即研究員が送り込まれる。そしてある時は公に、またある時は隠密理に調査し、原因の病原体を見つけたときは冷凍して持ち帰りバイオセイフティーレベル4の研究室でそれらの正体を暴くという重要な任務をこなすのだ。

当然のことながらこれらには非常に多くの費用を要する。
細かい話になるけれどもときには領収書をもらうことのできない費用もかかるのだ。
そう、ジェームズ・ボンドが「領収書ください」と言っているのを見たことがないように、CDCの研究員も領収書の取れない任務を多数抱えているのだ。
火付盗賊改方長官の長谷川平蔵が手下に自腹を切ってお金を渡すのも同じ。

従ってCDCには地球規模で感染症から人々を守るための潤沢な資金が必要になる。
トランプ大統領は直接的な銭勘定しか考えていなかった。
だからCDCの予算をカットして弱体化させ、今回のコロナを食い止めることができなかったのだ。

ハヤカワ文庫「ウィルスハンター アメリカCDCの挑戦と死闘」はエボラのみならず世界で発生している謎のウィルスに挑戦するCDCの姿とその設立から今日に至る歴史を記したノンフィクションだ。
そもそもそんなに重要ではなかったCDCを、世界でも特筆すべき研究施設に育て上げた多くの人々の努力が垣間見られて面白い。

CDCはアメリカの機関だが世界の機関でもあることを痛烈に意識させる良書なのであった。


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