<新・とりがら時事放談> 旅・映画・音楽・演芸・書籍・雑誌・グルメなど、エンタメに的を絞った自由奔放コラム
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最近の図書館はその存在価値が変化しているために様々な試みを展開している。
例えば鳥取県立図書館は図書館という機能に加えて地元企業支援の運営を行なっているという。
具体的にどういうことをやっているかというと、中小の企業ではなかなか買うことの出来ない業界紙やマーケティング資料を集めている。
ご存知の方も多いと思うがマーケティング資料というものほど高価な本はない。
どの商品がどのくらいどの地域で販売されているのか。
その起業のマーケットシェアはどのくらいか。
価格は。
といったデータが満載なのだが、こういう物を発行している会社というのは、秘密情報をネタにしているだけに、かなりもったいぶる。
一冊10万円ぐらいするのは当たり前だが、実際どういう中身なのか買わないとわからないのがほとんどだけに、思い切って買うということができない。
アマゾンドットコムのように中身拝見というようなサービスは展開していない。
もし中身を見られたら、あまりのしょうむなさに買う人がいなくなるからかもわからない。
だからこういう書物を揃えるのも公立の図書館の役目として動いているのだ。

ここの凄いところは書物を揃えるだけではない。
その書物の分野に精通したスペシャリストを配していることで、これも例えば仮にですけど、
「温度や湿度、硬度などによる金属疲労の進行に関する見方を教えて下さい」
というと、そいういう分野で活躍していたシルバー人材がいて相談に乗ってくれるのだという。
まさにインキュベーション機能も果たしているというのだ。

この図書館の試みはいかに凄いかは図書の購入に当てられる予算の取り方が半端ではなく、ちょっとした大都市の図書館でもびっくりするようなアカデミックな熱意が溢れているところなのだ。

また、別の図書館では大学や研究所などと連携し、研究室を設けて知の蓄積だけではなく、知の拡充や展開を試みているところもあるのだという。
図書そのものが電子化されつつあり、書籍の保管に場所を取らなくなってきているのが背景にあるともいう。
で、どのくらい電子化が進んでいるかというと、日本はどちらかと言うと後進国で、図書館には現物の書籍が溢れているというのが現状だが、またまた例えば、沖縄県恩納村にある国立沖縄科学技術大学院大学を訪れると、その図書館にびっくりする。
ほとんど書棚がないのだ。
図書館にはMacやiPadなどの電子デバイスが並び、書籍を呼び出して画面上で読む仕組みになっているのだ。
恩納村というリゾートエリアでじっくりと最新の研究をする場所として国費が数百億(と私は思っている)が投じられて設立された大学ではあるわけだ。

図書館がこうだから書店も変わりつつある。

まず、規模が超大きくなっている。
大阪梅田の淳久堂と丸善のコラボ書店。
大阪難波のジュンク堂書店。
東京丸の内の丸善。
東京代官山の蔦屋書店。
などなど。
共通するのは大きいだけではなく、各ジャンルの本について精通したスタッフがいるらしく一般書籍から専門書まで、痒いところに手が届くこと素晴らしいということろだ。

私の場合、ノンフィクションがお気に入りで、その中でもサイエンス、紀行ものを好んで読む。
こういうものを好んで読み進んでいくと、やがてマニアックでニッチな世界に突入し、読みたい本がなかなか見つからず結局アマゾンで買うことになる。
ところが前述の大型書店では痒いところに手の届く本が信じられないことに平積みになっていたりするので、アマゾンでは不可能な現物を手にとって買い求めるということのできる利便性がある。
これは無視できない傾向なのだ。
もちろん中小の書店でも、例えば大阪本町の紀伊國屋書店やブック1stの一部などは、なかなかチョイスが素晴らしい。

ただ単に新聞や雑誌の書評で評価されたものを選んでます、という感覚がないのが好感が持てるのだ。

こういう技は書籍のことを熟知しているスタッフが必要だ。
このスタッフをなんでもブックコーディネータと呼ぶそうで、司書とも違う現代の知のガイドとも言うべき、面白い職業があるという。

こういうことを考えると、リアル図書館、リアル書店は多分、なくならないのが日本の文化という気がして、やっぱりKindleやKoboなんかそれほど売れないだろうな、と思うのであった。


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