<新・とりがら時事放談> 旅・映画・音楽・演芸・書籍・雑誌・グルメなど、エンタメに的を絞った自由奔放コラム
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むかしから気になっていた歴史上の人物。
伊能忠敬。
定年が見えてきだしたら多くのビジネスマンがその生き様を羨ましく且つたくましく思う人。
隠居後に本格的に測量を学び、習得した科学的知識と類まれなるマネジメント力をもって公儀公認をとりつけて日本全国を実測して地図に仕上げるという偉業を成し遂げた。

伊能忠敬は定年後の人生を考えるシンボル的な存在ということができるのではないか。
と、私はずっとそういう印象を持ち続け、現在に至っている。

その伊能忠敬が神戸へやってきていた。
もちろん200年前には実際にやってきて測量をしていたわけだが、今回その伊能忠敬がまとめた地図の写しの数々と測量につかった各種測定器具や関連備品が神戸市立博物館にやってきていたのだった。

そもそもこの展覧会が開催されるのを私はちっとも知らなかった。
神戸市立博物館は暫く閉館して全館リニューアル工事をしていた。
そのためイベント案内サイトでもめったにチェックされることがなく、日頃は兵庫県立美術館や京都市京セラ美術館などに気をとられているので、チェックを怠っていたのであった。

で「なんか面白いのやってないかな〜」とたまたま直接「神戸市立博物館」と検索すると、なんと伊能忠敬展が開催されているではないか。
私は即、見に行きたいと思った。
だが、即決することがなかなかできなかった。
というのも仕事がそこそこ忙しいことと、
「ドラえもん展を見に行きたい」
というカミさんの要望をなんとか払拭しなければならず、なかなか言い出せなかったのだ。

勝手に神戸へ行くと文句を言われるので、それもまた困る。

ドラえもん展は京都市京セラ美術館で開催されており、大阪に住む私にとっては神戸市立博物館とは反対方向。
同日に一緒に行ってしまうということはできなくはないが、面倒くさい。
しかもドラえもん展は入場料が大人2000円もする。
二人で行ったら4000円。
さらに図録を買ったらそれだけで2750円。
合計6750円必要で、京都までの交通費と昼飯代を含めると軽く15000円コースになってしまう。

「図録はやめてコロコロコミックじゃだめ?」

と訊いたら「バカにしてんのぉ〜?」と怒られるに違いない。

実はドラえもん展を開催している京セラ美術館には2ヶ月ほど前に行ったことがある。
それはフランソワ・ポンポン展を見るために行ったのだが、その時すでにドラえもん展が開催されており、私は、
「これ、見たい?」
と訊いたところ。
「今日はいい」
との答えだった。

この「今日はいい」のニュアンスが微妙なので注意を要する。
「今日はいいけど今度ね」
なのか、
「今日はいい、つまり今回はもう見なくていい」
という回答なのか熟慮する必要があるのだ。
で、結局その時はポンポン展を見ただけで大阪へ戻ってきたのだったが、その数週間後、たまたま聞いていたFMラジオでドラえもん展が紹介され、見たくなったというわけなのだ。

それにカミさんが伊能忠敬に興味を示すかどうか微妙だと思った。
地図を作った江戸時代の理系趣味の地味なオッサンの偉業を称える展覧会。
どう考えても色気がない。
どちらかというとアートというよりも理科や地理の世界であって、ナビのついている自動車を運転していても道に迷う可能性のあるカミさんに興味があるかどうか疑わしい分野でもあった。

でも、そうはうかうかしていられない。
開催終了日が近づいていたのだ。

「あのぉ〜〜〜、実は伊能忠敬展が神戸の博物館でやっていて」

と恐る恐る切り出したところ、

「行きたーい!」

と即決なのであった。
カミさんも伊能忠敬には興味があるという意外な展開で、二人して神戸市立博物館へ行くことになった。

それにしても緻密な地図であった。
こういうものを江戸時代に測定して製作した人というのは信じがたい忍耐力があったのであろう。
まさか想像でここまで緻密に描けるわけがない。
私は展示されている伊能図の数々をみてひしひしとそう感じたのであった。

伊能忠敬の地図は残念ながらオリジナルのほとんどが失われているという。
原因は維新後すぐに伊能図を保管していた政府の書庫が火災で焼けてしまったこと。
残った地図も関東大震災の時に消失してしまい残っていないというのだ。

ところが伊能忠敬は御公儀の支援のもと測量したのはもちろんのこと各地域の殿様の援助も受けており、その返礼や殿様自らの依頼もあり数多くの写しやその藩専用の地図などが各地に残されているという。
これが今回神戸で一堂に会したということで見応え充分の内容なのであった。

国宝の測量隊の幟。
国宝の伊能忠敬日記。
国宝の何々と、国宝づくしなのであった。

もし今回の神戸市立博物館の展覧会を逃したら千葉の伊能忠敬記念館を訪れればよいわいな、と当初考えていたものの、これだけの各地に点在する資料を見ることは難しかったに違いない。

伊能忠敬の地図に魅了され、日本を旅する素晴らしい展覧会なのであった。

なお、本展覧会はすでに終了しているので神戸に行っても見れません。
京都のドラえもん展はまだやってるけど。


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コメント
 
 
 
Unknown (ダル)
2021-09-08 20:11:48
亡義父は古地図が好きでした。伊能忠敬も尊敬していた。生きていれば、死ぬまでダブレットとスマホ離さない人だったから調べて行っていたかも
 
 
 
地図の魅力 (監督@とりがら管理人)
2021-09-09 07:33:26
そうなんですね。
私も子供の頃から地図が好きで小学生の時は本を買ってもらうよりも地図を買ってもらったほうが嬉しかったです。
最近はネットの地図に占領されつつありますが絵図も含めて魅力的な世界ですね。
そうそう。
もしダルさんがお住まいの地域で伊能忠敬展があったら必ず小さな双眼鏡を持参してください。
展示されている地図が緻密すぎて肉眼では読みにくいです。
 
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